俺が買った『猿でも分かる魔法の使い方』が本物の魔導書だったので、とりあえず確率操作で無双します【リメイク】   作:パラレル・ゲーマー

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第12話 猿とオカルト板と予知者K

 土曜日の朝。

 

 佐藤健司は、いつもより少しだけ遅く目を覚ました。

 

 カーテンの隙間から差し込む日差しは明るく、外からは遠くを走る車の音や、鳥の鳴き声がかすかに聞こえてくる。

 

 ほんの一か月前の彼なら、深夜バイトの疲労を癒すために昼過ぎまで泥のように眠りこけていたはずの時間だった。

 

 だが、健司はベッドから這い出すと、無意識のうちに机の前に座り、ノートPCの電源を入れていた。

 

 画面が明るくなり、証券会社の取引ツールが立ち上がる。

 

 しかし、そこに表示されるチャートは完全に動きを止めていた。板情報には金曜日の引け間際の数字が残っているものの、それが更新されることはない。気配値も、出来高も、何もかもが金曜日の午後三時で凍りついたままだ。

 

「…………」

 

 健司は、動かない画面を呆然と見つめていた。

 

 静かすぎる。

 

 昨日まで、自分の心臓は画面の中で赤や緑に変わる数字の上下に合わせて、激しく脈打っていた。市場の呼吸と自分の呼吸がリンクしているような、異常な高揚感。それが急に断ち切られたことで、自分の中の歯車までがどこかへ吹き飛んでしまったような、ひどい落ち着かなさを覚える。

 

 一か月前の自分なら、土曜日といえば「休める日」でしかなかった。

 

 それが今では、市場が開かないというだけで、手持ち無沙汰で息苦しくなっている。

 

「俺、完全におかしくなってるな……」

 

 乾いた笑いをこぼしながら呟くと、手元のスマートフォンがブルッと震えた。

 

『今さら気づいたのか、猿』

 

 魔導書からのメッセージだった。健司はため息をつきながら画面をフリックする。

 

「いや、土日くらい休ませろよ。神経すり減らしてんだぞこっちは」

 

『市場は休んでいる。だが、未来は休まない』

 

 その言葉の響きに、健司はわずかな違和感を覚えた。

 

 無視してXのアプリを開く。画面には、【株のK】宛ての通知が滝のように溜まったままになっていた。

 

 照須田リョウの爆益報告と土下座の余波は、一晩明けても全く収まっていなかった。フォロワー数は六万八千人を突破し、今この瞬間も増え続けている。タイムラインをスクロールすると、自分の名前があちこちで飛び交っていた。

 

【含み損OLミナ】 @mina_kabu_loss

 土曜日なのに朝ポエムないの寂しいw

 Kさん、今日は何の風が吹いてますか? 

 

【損切り侍@退場寸前】 @samurai_cut

 市場が休みなので、今日はKさんの過去投稿を読み返して損切りの勉強します。生き残る。

 

【板読み初心者タケ】 @take_itanomi

 Kさんの朝ポエム、相場がない日は何を見るんだろう。

 

【株負け太郎】 @make_taro_loser

 予知者Kとか言われ始めてるの草。

 じゃあ土日は天気でも地震でも当ててみろよw

 

【株クラまとめ速報】 @kabu_matome_sokuho

【ゆる募】株のKに土日当ててほしいもの

 ・競馬

 ・天気

 ・地震

 ・芸能スキャンダル

 ・月曜の寄り付き

 ・俺の含み損が助かる日

 

 健司は画面を見つめながら、背中に嫌な汗が伝うのを感じた。

 

「おい……なんか変な方向に期待されてるぞ」

 

『いい傾向だ』

 

 魔導書は即座に返してきた。

 

「どこがだよ。相場の預言者だの予知者Kだの、完全にオカルト扱いじゃないか」

 

『観測者たちが、お前に相場以外の未来を求め始めた。なら、次の訓練にちょうどいい』

 

「……は?」

 

 健司はスマホの画面を凝視した。

 

『今日から、相場以外の予知を始める』

 

「嫌だ」

 

 考えるよりも先に、拒絶の言葉を打ち込んでいた。

 

『返事が早いな』

 

「当たり前だろ! 株のデイトレだけでも頭がパンクしそうになってるのに、これ以上変なことを始めたら洒落にならない。だいたい、相場は所詮『金』の話だからまだいい。外れても俺が損するだけだし、他人が勝手に乗ってきても自己責任って言える」

 

 健司は必死に文字を打つ。

 

「でも、相場以外の未来ってなんだ? 事件とか、災害とか、もっと生々しい『人間の人生』が絡むことだろ。そんなものを面白半分で当てるなんて、俺にはできない」

 

 彼のまともな倫理観が、強く警鐘を鳴らしていた。

 

 だが、魔導書はどこまでも冷徹だった。

 

『だからこそ、今のうちに扱い方を学ぶ必要があるのだ』

 

『お前はすでに、予知という禁断の領域に足を踏み入れている。見ないふりをしても、お前の目が開いている限り、見えるものはいずれ見えるようになる』

 

 健司は押し黙った。

 

 確かに、株のチャートを見つめている時、ただの数字の羅列から「風」を感じ取るあの感覚は、単なる分析を超えた異常な体験だった。

 

『株式市場は、未来を見る訓練場として極めて優秀だった。人間の欲望、恐怖、金、情報、噂、期待、失望。それらが全て数字と板とチャートに集約されて現れるからだ。だが、世界は板の上だけで動いているわけではない』

 

「政治とか……災害とか、事故とかか」

 

『そうだ』

 

 魔導書の文字が、画面上で一段と冷たい光を放ったような気がした。

 

『そして、いずれお前は、直接的に人の死に関わる未来を見る』

 

 ドクン、と心臓が不快な音を立てた。

 

「……そういうのは、見たくない」

 

『見たくない未来ほど、見えた時に扱いを誤る。だから、まだ軽い未来から段階的に訓練するのだ』

 

 健司は深いため息をつき、ノートPCの前で頭を抱えた。この魔導書に魅入られた時点で、普通の人生に戻る道は絶たれているのだ。

 

『いいか、猿。まず基本を叩き込む。予知には大きく分けて三つの種類がある』

 

 魔導書は講義を始めた。

 

『一つ目は【予測予知】だ』

 

『これは、現実側にすでに散らばっている前兆から、最も確率の高い未来を読み解くものだ。株の朝ポエムは、ほとんどがこれに該当する。お前は板やニュース、人間の欲望のうねりから、まだ表面化していない流れを計算し、予測している』

 

『政治スキャンダルや企業トラブルも同じ理屈だ。記者、秘書、会計責任者、告発者、野党、週刊誌……すでに現実側で因果の糸が動いていれば、お前の力はそれを予測予知として拾い上げることができる』

 

「それって……ただ分析力が異常に高いだけじゃないのか?」

 

 健司が尋ねると、魔導書は満足げな間を置いた。

 

『猿にしてはいい疑問だ。予測予知と高度な分析の境界は、極めて曖昧だ。だからこそ、お前の最初の予知は“ただの情報通”だと疑われる。それでいいのだ。最初から狂信されるのは危険すぎる』

 

『次だ。二つ目は【未知予知】』

 

『これは、お前が現実側で一切の情報を持っていない未来を直接拾い上げるものだ。地震、突発的なシステム障害、交通事故、誰も予測できない突然の事件。これが本来の意味での予知に近い』

 

『だが、未知予知は極めて危険だ。根拠を論理的に説明できない。当たった時、周囲への衝撃と畏怖が大きすぎる。外れた時は一気に信用を失う。そして何より……当たった内容によっては、人が直接傷つく』

 

 健司はごくりと唾を飲んだ。

 

『最後、三つ目は【上位者予知】だ』

 

『国家規模の崩壊、世界規模の戦争、上位存在が直接介入するような、人間の脳では扱えない規模の未来だ』

 

『これは今のお前には絶対に無理だ。覗こうとすれば脳が焼ける。言葉にする前に、お前自身の精神が物理的に壊れる。ゆめゆめ試そうなどと思うな』

 

 以前聞かされた、「星の自転を止めようとすれば脳が破裂する」という話を思い出し、健司は身震いした。

 

「分かった……予測予知から始めるってことだな。で、どこに書くんだ? 今のXのアカウントか?」

 

『馬鹿。今のお前がXで政治や災害の予知を流せば、どうなるか分かるだろう。一瞬で大炎上だ』

 

『株クラの観測者が多すぎる。最初から大勢の目に晒された状態では、ノイズが強すぎて因果の糸が濁る。訓練にならない』

 

「じゃあ、どうするんだよ」

 

『お前のPCで、5ちゃんねるのオカルト板を開け』

 

「は?」

 

 健司は耳を疑った。

 

「オカルト板って……あの、やばい奴らが集まってる吹き溜まりみたいなところか?」

 

『そうだ。お前の訓練にはちょうどいい檻だ。匿名性があり、痛い自称予言者がいくらでもいるため、最初は見事に埋もれることができる。だが、ログはしっかり残る。当たった時の検証文化もある。株クラの一部は面白がって流入するだろうが、Xのように一瞬で燃え広がることはない』

 

「また濃い場所に行くな……」

 

『猿にはお似合いのジャングルだ』

 

「言い方」

 

 健司は渋々ブラウザを開き、5ちゃんねるのオカルト板にアクセスした。

 

 殺風景な掲示板の画面。怪しげなスレッドタイトルがずらりと並んでいる。

 

『名前を決めるぞ。完全に株のアカウントと切り離すな。株クラでの実績を捨てるのはもったいない。分かる者には分かる程度でいい』

 

「じゃあ……【株のK】をもじって……予知者K、とかか?」

 

 健司は適当に打ち込んでみた。

 

「いや、自分で予知者とか名乗るの、痛すぎないか? 中二病全開だろ」

 

『お前はすでに朝ポエム猿として名を馳せているだろう。今さら羞恥心など持つな』

 

「やめろ」

 

 健司は【予知者K】という名前に、なりすまし防止のためのトリップをつけた。

 

【予知者K ◆Predict/K】。

 

 これが、これから彼が背負う新しい名だ。

 

 該当しそうな総合スレッドを見つけ、健司は最初の書き込みを行った。

 

 564:予知者K ◆Predict/K

 普段はXで相場予測をしています。

 株の方では、多少は当ててきました。

 これから、相場以外の予知も記録します。

 検証できる形で残します。

 

 書き込んだ直後から、オカルト板の住人たちの反応が返ってきた。

 

 565:本当にあった怖い名無し

 また痛い奴が来たぞwww

 

 566:本当にあった怖い名無し

 予知者www自分で言うなwww

 

 567:本当にあった怖い名無し

 株? 

 

 568:本当にあった怖い名無し

 まさか株のKか? 

 

 569:本当にあった怖い名無し

 あの朝ポエムの猿アイコンのやつ? 

 

 570:本当にあった怖い名無し

 本人なわけないだろ。なりすまし乙

 

 571:本当にあった怖い名無し

 いや、トリップつけてるから一応同一人物かは追えるな。Xの方でトリップ公開すれば分かる

 

 572:本当にあった怖い名無し

 相場屋がオカ板来てて草生える

 

 573:本当にあった怖い名無し

 昨日株クラで大騒ぎになってたやつだろ? たぶん本物っぽいなこれ

 

 574:本当にあった怖い名無し

 株だけやってろよ

 

 575:本当にあった怖い名無し

 でも株のKが相場以外を当てるなら少し見たいわ

 

 576:本当にあった怖い名無し

 予知じゃなくてただのポエムだろどうせ

 

 オカルト板の住人たちは基本的には半笑いだったが、株クラでの実績がわずかに持ち込まれたことで、完全にスルーされることはなかった。

 

 そして、この動きはすぐにX側にも伝播した。

 

【名無し投資家A】 @nanashi_invest

 オカ板の予言スレに予知者Kってトリップ付きで出てきたんだけど、これ株のK本人? 

 相場以外の予知も記録するとか言ってるんだが。

 

【含み損OLミナ】 @mina_kabu_loss

 えっ、Kさんオカ板行ったんですか!? 

 本人ならちょっと見たいですw

 

【株負け太郎】 @make_taro_loser

 ついにオカルト落ちしてて草

 朝ポエム猿、いよいよ本格的な予言者になるつもりかよ。

 

【検証メモ用】 @kensho_kabu_log

 オカ板の「予知者K ◆Predict/K」。

 本人確認は未確定。

 ただし、淡々とした文体はK氏に近い。

 相場以外の予知。ログとして保存対象とします。

 

【T】 @T_kansoku

 見ています。

 

 相変わらず不気味なタイミングで現れる【T】のポストに、健司は小さく身震いした。

 

『よし、まずはルールの提示だ。先ほど教えた予知の三分類を書き込め。お前が何でもかんでも当てられる万能の神ではないと、奴らに認識させろ』

 

 魔導書の指示に従い、健司は再びキーボードを叩く。

 

 590:予知者K ◆Predict/K

 自分の中では、予知には種類があります。

 

 予測予知:現実側にある前兆から未来を読むもの。

 未知予知:自分が情報を持っていない未来を拾うもの。

 上位者予知:今の自分では扱えない規模の未来。

 

 株の相場感は、ほとんど予測予知です。

 これは、高度な分析や直感と区別しづらいと思います。

 

 591:本当にあった怖い名無し

 設定語り始まったぞwww

 

 592:本当にあった怖い名無し

 上位者予知www

 中二病こじらせすぎだろww

 

 593:本当にあった怖い名無し

 予測予知って、それただの分析じゃん

 

 594:本当にあった怖い名無し

 でもこれ、株のK本人っぽいな。

 自分で「相場は予知じゃなくて分析に近い」って客観的に言ってるのはそれっぽい。

 

 595:本当にあった怖い名無し

 じゃあ未知予知やれよ未知予知! 

 

 596:本当にあった怖い名無し

 宝くじ当ててくれ! 

 

 597:本当にあった怖い名無し

 競馬のメインレース当てろ! 

 

 598:本当にあった怖い名無し

 明日の地震当てろや

 

 挑発的な要求が次々と並ぶ。

 

 健司は深呼吸をして、意識を沈めた。

 

 株のチャートとは違う。現実の社会に流れる巨大な因果の束。ニュース、政治、事件、事故。無数の情報の渦の中から、近日中に形を成すであろう明確な「結び目」を探る。

 

(……これか)

 

 健司の脳裏に、一つの情景が浮かび上がった。

 

 スーツを着た初老の男が、無数のフラッシュを浴びながら深く頭を下げている姿。飛び交う怒号。裏金。週刊誌の見出し。

 

『見つけたな。書き込め』

 

 健司は、震える指を抑えつけながら、最初の「相場以外の予知」を投下した。

 

 612:予知者K ◆Predict/K

 一つ目の予知です。

 

 三日以内に、黒部慎一郎大臣の金銭スキャンダルが報道されます。

 内容は、政治資金パーティー収入の不記載。

 金額は二千万円台。

 最初に報じるのは、夕刊系のネット記事。

 その後、テレビが追います。

 

 これは予測予知に近いと思います。

 すでに現実側に前兆があるはずです。

 ログとして残します。

 

 投稿ボタンを押した瞬間、健司は凄まじい徒労感と恐怖に襲われた。

 

 株なら、外れても自分が損をするだけだ。せいぜいフォロワーに笑われるで済む。

 

 だが、政治スキャンダルは別だ。実在する一人の政治家の人生と社会的地位、そしてこの国の政治という巨大なシステムに直接言及してしまった。

 

 黒部慎一郎内閣府特命担当大臣。もし彼が本当に不正をしているなら、暴かれるべきことなのかもしれない。だが、自分がそれを「予知」として掲示板に刻み込んだことで、その運命の歯車に自分自身が深く関わってしまったような気がした。

 

「……これ、本当にやってよかったのか?」

 

 健司は額の汗を拭いながら呟いた。

 

『まだ軽い』

 

 魔導書は平然と返す。

 

『これは予測予知に近いと言っただろう。お前が書こうが書くまいが、告発者と記者の間で因果はすでに動き切っている。お前はただ、数日早くそれを口にしただけだ』

 

「でも、俺がログを残したことで、これを見る人が増える。面白がって拡散するやつもいるだろ」

 

『それが観測だ。そして、お前がどうしても越えなければならない訓練だ』

 

 健司は唇を噛んだ。

 

 画面の中では、彼の書き込みに対する反応が続々と投下されていた。

 

 613:本当にあった怖い名無し

 政治予言きたー! 

 

 614:本当にあった怖い名無し

 黒部って誰だっけ? 

 

 615:本当にあった怖い名無し

 内閣府の大臣だろ。最近あんまり目立ってないけど。

 

 616:本当にあった怖い名無し

 政治家の金銭問題なんて、いつ言ってもそのうち当たるだろw

 

 617:本当にあった怖い名無し

 でも「三日以内」はまあまあ攻めてるな。

 

 618:本当にあった怖い名無し

 二千万台、とか数字まで言ったぞこいつ。

 

 619:本当にあった怖い名無し

 夕刊系ネット記事が初報って、妙に具体的で草。

 

 620:本当にあった怖い名無し

 外したら土下座な。

 

 621:本当にあった怖い名無し

 株のK本人なら、一応ログ保存しとくわ。

 

 622:本当にあった怖い名無し

 これ、政治記者界隈ではもう噂になってたんじゃね? 

 ただの情報漏洩だろ。

 

 623:本当にあった怖い名無し

 予測予知って自分で言ってるし、本人もそこは逃げ道作ってるな。

 

 624:本当にあった怖い名無し

 逃げ道というか、分類だろ。株の時も自分の予想をやたら慎重に扱ってたし、KっぽいっちゃKっぽい。

 

 625:本当にあった怖い名無し

 まあ、当たったら少しだけ信じてやるよ。

 

 Xのタイムラインでも、まとめアカウントが早速この書き込みを拾い上げていた。

 

【株クラまとめ速報】 @kabu_matome_sokuho

【速報】株のK、オカ板で大臣スキャンダル予知を投下。相場の預言者、ついに政治へ。

 

 健司はノートPCの画面を閉じ、深く椅子に沈み込んだ。

 

 もう後戻りはできない。彼が放った言葉は、デジタルタトゥーとなってネットの海に刻み込まれた。

 

 Xの通知が、最後に一つだけ光った。

 

【検証メモ用】 @kensho_kabu_log

 予知者Kの初回予知ログ保存。

 対象:黒部慎一郎大臣

 期限:三日以内

 内容:政治資金パーティー収入不記載

 金額:二千万円台

 初報:夕刊系ネット記事

 本人は「予測予知に近い」と表現。

 的中・不的中ともに記録します。

 

【T】 @T_kansoku

 見ています。

 最初の予知を。

 

 土曜日の静寂の中で、健司の背筋に冷たいものが走った。

 

 株のチャートとは違う、人間の業が渦巻く新たな世界。

 

 オカルト板の住人たちは、まだ誰もこの猿アイコンの予言を本気では信じていない。

 

 だが、運命のカウントダウンは、すでに静かに始まっていたのだった。

 




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