地獄の氷叢さん家   作:M.T.

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第62話 氷叢さんのアップデート・1

No side

 

 部屋王決定戦の翌日。

 六花達は、A組の教室で当面の方針について説明を受けていた。

 

「昨日話した通り、まずは仮免取得が当面の目標だ」

「「「「「はい!」」」」」

「ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然取得する為の試験はとても厳しい。仮免といえど、その合格率は例年5割を切る」

「仮免でそんなきついのかよ!?」

 

 相澤が話をすると、峰田が弱音を吐く。

 

「そこで君らには1人最低でも2つ……必殺技を作ってもらう!!」

 

 そう言って相澤が指先で手招きをすると、教室の扉が開く。

 

「「「「「「学校ぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァア!!!」」」」」」

 

 扉の外からミッドナイト、エクトプラズム、セメントスが現れ、クラスのボルテージは最高潮に達していた。

 

「必殺! コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」

「その身に染みつかせた型・技は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

「技は己を象徴とする! 今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館・γに集合だ」

 

 エクトプラズム、セメントス、ミッドナイトが言い相澤が指示すると、生徒達は全員体育館・γに向かった。

 

 

 

 〜少年少女移動中〜

 

 

 

 体育館・γ通称……

 

「トレーニングの(T)台所(D)ランド(L)略してTDL!!!」

 

(((TDLはマズそうだ!!)))

(TDLってなんだろう……)

 

 セメントスの説明に、A組のほとんど全員が心の中でツッコミを入れる。

 六花だけは、TDLがわからずきょとんとしていたが。

 広大な体育館の中には、目立ったものは特に無い。

 だがセメントスが床に手をつくと、コンクリートでできた床が盛り上がり、巨大なオブジェクトを形成していく。

 

「ここは俺考案の施設。生徒一人一人に合わせた地形や物を用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」

「なーる」

 

 セメントスが訓練のフィールドを作っていくと、上鳴が納得する。

 すると、飯田が手を挙げて質問した。

 

「質問をお許しください! 何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!!」

「順を追って話すよ。ヒーローとは事件・事故・天災・人災.あらゆるトラブルから人を救い出すのが仕事だ。仮免試験では当然その適正を見られることになる。情報力・判断力・機動力・戦闘力・他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など、多くの適正を毎年違う試験内容で試される」

「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし! 技の有無は合否に大きく影響する」

 

 相澤が言うと今度はミッドナイトが説明し、セメントスもニィと笑みを深くしながら言った。

 

「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有していることになるんだよ」

「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ…飯田クンノレシプロバースト。一時的ナ超速移動、ソレ自体ガ脅威デアル為必殺技ト呼ブニ値スル」

「アレ必殺技でいいのか……!!」

 

 ミッドナイトやセメントスに続けてエクトプラズムも言うと、飯田がじぃんと感動する。

 そんな飯田を見ながら、隣にいた砂藤が口を開く。

 

「なる程…自分の中に『これさえやれば有利・勝てる』って型を作ろうって話か」

「そ! 先日活躍したシンリンカムイの『ウルシ鎖牢』なんか模範的な必殺技よ。わかりやすいよね。相手が何かする前に縛っちゃう」

 

 ミッドナイトが、砂藤の言葉に頷きながら説明する。

 すると今度は、六花が手を挙げて質問した。

 

「既に必殺技が2つある人はどうすればいいですか?」

「その場合は、今ある技を極めるか、さらに技を増やすかだね。技を見せてくれれば、どっちに方針を固めるかアドバイスするよ」

「……わかりました」

 

 セメントスが六花の疑問に答えると、六花は納得して頷く。

 

「中断されてしまった合宿での『“個性”伸ばし』は…この必殺技を作り上げる為のプロセスだった。つまりこれから後期始業まで残り十日あまりの夏休みは、“個性”を伸ばしつつ必殺技を編み出す、圧縮訓練となる!」

 

 相澤が説明している間にも、セメントスが地形を作り、エクトプラズムの“個性”で分身体を生成し、訓練の準備が整う。

 セメントスが各々の“個性”に合った地形を造り、エクトプラズムが分身を使ってマンツーマンで指導をするという方針だ。

 

「尚、“個性”の伸びや技の性質に合わせて、コスチュームの改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」

「「「「ワクワクしてきたあ!!」」」」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

拳藤 side

 

「必殺技を作る……!?」

「そうだ! A組はもう始めているぞ」

 

 私達は、B組の教室で、ブラド先生から今日の訓練の説明を受けていた。

 襲撃で致命傷を負った切奈やポニー達も、セントラル病院の先生達の治療のおかげで家庭訪問までには完治して、全員無事に集まる事ができた。

 

「悔しいが、A組は我々よりも何周も先を行っている。俺自身、林間合宿の訓練でそれを実感させられた。その上、敵(ヴィラン)の襲撃からお前達を守りきれなかった。だからこそお前達には、A組同様……いや、A組以上に力をつけてもらいたい!」

「「ブラド先生……!!」」

 

 ブラド先生の言葉を、鉄哲や凡戸が涙を浮かべながら噛み締める。

 ブラド先生の言う通り、私達は、A組に差をつけられている。

 おまけに、敵(ヴィラン)の襲撃を受けて、クラスの半数以上が決して軽くはない怪我をした。

 だからといって、急成長していくA組を、指を咥えて見ている場合じゃない。

 私もB組委員長として、仮免合格目指して皆を引っ張っていこうと密かに意気込んだ。

 

「そんなわけで、お前達の“個性”をさらに伸ばす為、今日は特別講師の方に来ていただいた!」

 

 特別講師という言葉に、私達が頭の中で疑問符を浮かべていると、教室の扉が開く。

 教室には、ヘアバンドで長い髪を纏めてラフな格好をした外国人の女の人が入ってきた。

 

「はじめまして。I・アイランドアカデミーから来ました、ソフィア・ミネルヴァです。皆のサポートを頼まれて来ました。皆、一緒に頑張りましょうね!」

「彼女はI・アイランドアカデミーの教授で、今日からサポート科の非常勤講師として、しばらく雄英に滞在することになった。林間合宿前のA組のパワーアップにも一役買っていたそうだ。お前達、心して指導を受けるように!」

 

 今日から特別講師として、圧縮訓練のサポートをしてくれる事になったソフィア先生。

 後から聞いた話によれば、I・アイランドのI・エキスポでA組に助けてもらったらしくて、その恩返しに、A組のパワーアップに協力したらしい。

 ソフィア先生が雄英に来てくれたのは、私達がA組に差をつけられている事を憂いたブラド先生が、校長経由でソフィア先生にアポを取ってくれたからだそうだ。

 

 私達B組は、まずサポート科の開発室に行って、ソフィア先生に私達全員の“個性”を診てもらった。

 私達の“個性”を解析したソフィア先生は、先生達と相談して、私達一人一人に合わせたトレーニングプランを考えて、それに合わせたサポートアイテムの考案までしてくれた。

 

「ソフィア先生の指導、すげぇ的確だよな」

「これなら、仮免試験までに今の倍は強くなれるぜ!」

「そりゃA組が短期間であんなに強くなってたわけだ……」

 

 プッシーキャッツ達の訓練は、私達の“個性”を短期間で効率的に伸ばす為に考えられたものだったけど、ソフィア先生のトレーニングプランはそれ以上だった。

 おまけに、“個性”伸ばしを補助する為のサポートアイテムまで用意してくれている。

 これなら、仮免試験までにはA組に追いつけるかもしれない。

 私達の為にここまでしてくれたブラド先生やソフィア先生の期待に応える為にも、強くなるんだ!

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

No side

 

「ソレデハ、コレカラ我ノ指導ヲ始メル」

「はい、よろしくおねがいします」

 

 六花は、エクトプラズムの分身に必殺技の相談をしていた。

 

「えっと、まずひとつがこれです。『焼きそばパンチ』」

 

 六花はまず、拳を硬い氷に変えてセメントの塊を砕いてみせた。

 

「で、ふたつめが、『ぐるぐるキック』」

 

 次に六花は、高く飛び上がると錐揉み回転しながら落下し、セメントの塊に踵落としを叩き込んで砕く。

 

「ドチラモ近接主体ノ技ダナ。セッカク氷結ノ“個性”ガアルノダカラ、近ヅカセズニ敵ヲ無力化スル必殺技ヲ作ル方向デ考エヨウカ。遠距離技ハ無イノカ?」

「ん〜……技っていうか、こう……冷気をバァーってやるのはどうですかね?」

 

 そう言って六花は、掌から冷気を放ち、周囲に冷気を拡散させる。

 すると周囲のセメントが薄く凍りつき、六花の周囲10mが銀世界と化す。

 それを見たエクトプラズムが、六花にアドバイスをする。

 

「方向性ハ悪クナイガ、周リヲ巻キ込ムノハイタダケナイナ。標的ダケヲピンポイントデ凍ラセルコトハデキナイカ?」

「あー……ちょっとやってみます」

「……ソレト、『焼きそばパンチ』ハナイ。皆ガ覚エヤスイ技名ニ改名シタ方ガイイ」

「……あ、はい、わかりました」

 

 エクトプラズムのアドバイスを受けた六花は、早速必殺技の練習を始める。

 

「まずは……『白氷冷拳(はくひょうれいけん)・雹(ひょう)』!!」

 

 手始めに、拳を硬い氷に変え、インパクトの瞬間にセメントを凍らせて粉々に砕く。

 

「で……『垂(しずり)』……からの『風花(かざばな)』……!!」

 

 次に、高く飛び上がって錐揉み回転しながら落下し、落下の勢いを乗せながら脚を振り下ろしてセメントを踵落としで砕く。

 そして次に、セメントの塊を高く蹴り上げ、空中で素早く蹴りを叩き込んで砕く。

 

 次に、冷気を操りながら、どんな事ができるかを思案した。

 まずはシンプルに、相手の体温を奪い行動不能にする。

 相手を氷漬けにして身動きを取れなくする。

 氷や雪を使った武器生成。

 氷や雪による頑丈なバリア。

 氷や雪で作った使い魔による索敵や撹乱。

 自分を氷に変えて、身体能力と防御力を高めた状態での近接格闘。

 氷を使った必殺技は、思いつくだけでもこれだけある。

 万能な“個性”と言えば聴こえはいいが、その分やらなければいけない事も多いのだ。

 六花は、エクトプラズムと相談しながら、必殺技の案を考え出した。

 

「考えてみたんですけど、体を氷に変えておもいっきりぶん殴る系の技は『白氷冷拳(はくひょうれいけん)』、氷や雪を操る系の技は『白氷雪花(はくひょうせっか)』、この二つを必殺技にしようと思ってます」

「ウム。『焼きそばパンチ』ヨリハヨクナッタナ。ソノ方向デ技ヲ練ッテイコウカ」

「はいっ」

 

 六花はまず、近接技の『白氷冷拳』から練習をした。

 単純な打撃技の『雹』、足技の『垂(しずり)』と『風花』。

 自分を雪の巨人に変えて相手を拘束する『雪女郎(ゆきじょろう)』と、その状態で相手を眠らせる『雪枕(ゆきまくら)』。

 そしてオール・フォー・ワンにも使用した最終奥義、『零(れい)』。

 

 次に、遠距離技の『白氷雪花』を練習した。

 氷や雪を霧状にする『氷霧(ひょうむ)』や『雪煙(ゆきげむり)』、氷や雪で氷像や雪像を作って操る『雪童子(ゆきわらし)』や『冬将軍(ふゆしょうぐん)』。

 攻撃系の技は、氷の弾丸を発射する『氷雨(ひさめ)』と氷の剣を造る『凍氷柱(いてづらら)』、雪玉を放つ『雪兎(ゆきうさぎ)』と、相手の遠距離系の技に氷や雪を纏わせて投げ返すカウンター技の『雪礫(ゆきつぶて)』。

 防御系の技は、巨大な氷の結晶で盾を造る『扇六花(おうぎろっか)』と氷や雪で壁を造る『雪室(かまくら)』。

 広範囲制圧技は、冷気を広範囲にわたって操る『凩(こがらし)』、凍結させる『銀世界(ぎんせかい)』、雪を降らせる『吹雪(ふぶき)』。

 そして、リカバリーガールの手伝いを通して生み出した唯一の治癒技『雪解(ゆきど)け』。

 

「ん……こんなもんかな……」

 

 必殺技が固まってきた六花は、コスチュームの改良をしに、サポート科の開発工房に向かう。

 廊下を歩いていると、『Development Studio』と書かれた看板と頑丈そうな鋼鉄製の扉が見えてくる。

 するとだ。

 

「ん」

「あ!?」

 

 六花が工房に立ち寄ろうとしたタイミングで、爆豪が近づいてくる。

 

「なんでてめェがここに……!?」

「……いや、なんでって……コスチュームのことで相談しに来たんですよ。バクゴーさんこそ、何の用ですか?」

「サポートアイテムの改良に来たんだよ。新技用のヤツが要るんだわ」

「へぇー」

「『へぇー』って……てめェから聞いといて興味ナシかよクソが!!」

 

 そう言って爆豪が六花を押し退けて工房の扉を開けた、その瞬間。

 

 

 

 BOMB!!!

 

 

 

 突然、扉が爆発した。

 扉の前にいた爆豪は爆発に巻き込まれて吹っ飛ばされ、その近くにいた六花は真顔で固まっていた。

 

「フフフ…いっててて……」

「ゲホッゲホッ、思いついたもの何でもかんでも組むなって何度言えばわかるんだよ!! 発目ェ!!」

「わかりません、ごめんなさい!!」

 

 爆煙の中から、パワーローダーの声と、女子の声が聴こえる。

 六花が冷風で煙を払いながら扉の前に目を向けると、そこには……

 

「おや! あなたは確か、ヒーロー科の!」

「退けてめェ!!」

 

 吹っ飛ばされて倒れた爆豪の上に、発目が乗っていた。

 六花は、そんな二人を見て言葉を失っていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「ぼーーー…………」

 

 六花は、開発工房へ案内されてからも、心ここに在らずな状態だった。

 理由は、発目が爆豪の上に乗っかるというラッキースケベを見てしまったからだ。

 目の前の現実を受け入れられずに頭がオーバーヒートし、宇宙猫状態になっていた。

 六花がそんな状態とは露知らず、パワーローダーが声をかけてくる。

 

「君もコス変の件だろ? コスチュームの説明書見せて」

「……えっ?」

「ケースに同封されてたのがあるでしょ。俺許可証(ライセンス)持ってるから、それを見ていじれるとこはいじるよ」

「あっ、ありがとうございます」

 

 パワーローダーが言うと、ようやく現実に戻ってきた六花が慌てて礼を言う。

 小さい変更ならデザイン事務所に報告すれば向こうで手続きをしてくれるが、大きい変更となると、申請書を作成してデザイン会社に作成を依頼しなければならない。

 改良が終わったコスチュームを国に審査してもらい、許可が降りれば手元に戻ってくるとの事だ。

 

「で、君はどこを改良したいの?」

「あー……えっと……蹴り技を使うので、裾を動きやすくしてほしいのと……靴も頑丈なのに変えてほしいです」

「そのくらいだったら今日中にできるよ。爆豪くんは?」

「コスチュームを断熱仕様に変えてぇ。あと、燃焼効率を上げるやつ頼むわ」

「はいはい、なる程」

 

 爆豪がコスチュームの要望をパワーローダーに伝える中、発目がいきなり爆豪の体にヒタヒタと触れてきた。

 

「てめェ何しやがる離せ!!」

「フフフ、体に触れているんですよ」

 

 爆豪に無遠慮に触れている発目を見て、六花は『スンッ』と冷ややかな目を向け面白くなさそうな顔をしていた。

 六花は顎に手を当てて少し考えてから、爆豪を指差して言った。

 

「……バクゴーさん、顔にハナクソついてますよ」

「てめェのそのクソみてぇな嘘は何だコラ殺すぞ!!」

 

 六花がすぐバレるような嘘をつくと、爆豪がキレた。

 気を引きたいのか、気分を害された事による八つ当たりか、誰もその真意を知る事はなかった。

 一方で、無許可で爆豪を触診していた発目が暴走を始める。

 

「フフフフフ……良いでしょう。そんなあなたには、このベイビー!!」

 

 発目は、爆豪に無理矢理ブースター付きのシューズを履かせた。

 

「燃焼効率を極限まで高めたブースターシューズです!! 第48子です!! 可愛いでしょう!?」

「勝手に履かすなクソが!! つーか何で足用のやつつけとんだ!!」

「ブースターオン!!」

「聞けや!!」

 

 発目が手元のスイッチを押すと、シューズのブースターが作動し、爆豪が垂直に吹っ飛ぶ。

 そしてそのまま工房の天井を突き破り、首から上が天井に突き刺さったまま宙ぶらりんになった。

 

「はわ……バクゴーさん……」

「出力のプログラミングをミスりました!! ごめんなさい!!」

「てめェ、ぶっ殺す……!!」

 

 発目が悪びれずにブースターを止めると、自力で天井から抜け出した爆豪が睨みつける。

 暴走する発目に対し、六花が冷静に言った。

 

「ハツメさん、バクゴーさんの“個性”は手から出るんですよ……?」

「フフフフ、知ってますとも! でもね、私思うんですよ。掌だけじゃなくて脚も爆発させれば、スピードもパワーも二倍になりませんか!?」

「あ゛!!?」

 

 発目が滅茶苦茶な事を言うと、爆豪がキレる。

 そのやり取りを見て、六花は僅かに目を見開いた。

 

「…………ぁ」

 

 発目の逆転の発想を聞いて、六花は新しい必殺技のヒントを得た気がした。

 六花が考え込んでいると、パワーローダーが声をかけてくる。

 

「すまんね、彼女は病的に自分本位なんだ。ただまァ、君らもヒーロー志望なら、彼女との縁を大切にしておくべきだよ…きっとプロになってから、世話になる。あの隅のゴミ山…あれ全部発目が入学してから作ったサポートアイテムさ。学校が休みの日もここへ来て何かしらいじってる。今まで多くのサポート科を見てきたけど、発目はやはり特異だ」

 

 パワーローダーが指差した先には、大量の失敗作の山があった。

 その数は、どう考えてもたった4ヶ月で生み出した量ではなかった。

 

「“常識とは18歳までに身に付けた偏見である”、アインシュタインの残した言葉だ。彼女は失敗を恐れず、常に発想し試行している。イノベーションを起こす人間ってのは、既成概念に囚われない」

 

 パワーローダーのその言葉に、六花は僅かに目を見開く。

 するとその時。

 

「あら? やってる?」

「ソフィア先生!」

 

 サポートアイテムの調整をしていたソフィアが、開発工房の奥から顔を出してきた。

 ソフィアの顔に見覚えがある六花は、僅かに目を見開いた。

 

「えっと、確かI・アイランドの……どうして雄英にいるんですか?」

「あなた達、もうすぐ仮免試験なんでしょう? それでここの先生方に頼まれてサポートに来たの。I・エキスポの時助けてもらったよしみだしね。それはそうと発目さん、さっきのサポートアイテムなんだけど、安全装置で関節の動きを制御したらいいんじゃないかしら?」

「ありがとうございます、やってみます!」

「こっちの装置は〜……」

 

 ソフィアが発目にサポートアイテムのアドバイスをすると、二人は完全に二人きりの世界に入り込み、爆豪と六花そっちのけでサポートアイテムの改良を始めた。

 どうやら発明家同士、波長が合うらしい。

 ソフィアのアドバイスを聞いてサポートアイテムを弄る発目を見て、パワーローダーは涙ぐんでいた。

 

「これでも、彼女のおかげでだいぶ問題行動が減ったんだよ……ホント来てくれて助かった……」

 

 パワーローダーは、ソフィアがきちんと発目を制御しているのを見て泣きながら喜んでいた。

 毎日のように発目の暴走に悩まされていたパワーローダーだったが、発目のエネルギーを好転させられるソフィアが雄英に来たおかげで、パワーローダーのストレスはだいぶ減っていたのだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「よかったですね、サポートアイテム作ってもらえることになって」

 

 パワーローダーにコスチューム改良の依頼をした六花は、帰りに爆豪に話しかける。

 

「ところでバクゴーさん、新しい技ってどういうやつですか?」

「林間合宿中に作った『徹甲弾(A・Pショット)』って技、アレの応用を考えてる。爆破を凝縮して一気に起爆させる『クラスター』って技だ」

「ふーん、なんか強そうですね。で、なんでコスチュームの改良しに来たんですか?」

「汗をかきやすくすんのと、体への負荷を抑える仕様にしたんだよ。汗が大量に要るし、反動がバカデケェからな」

 

 質問に対してひとつひとつ答える爆豪に対して、六花は感慨深いものを感じていた。

 入学当初に比べて、聞いた事は素直に教えてくれるようになったように思う。

 

「……バクゴーさん、よかったらいっしょに練習しませんか?」

「あ?」

「わたしがやりたいこと、多分、バクゴーさんのやりたいことと近いと思うので……少しはおてつだいしてあげられると思うんです。どういうことかって言いますとね……」

 

 そう言って六花は、空中に黒光りする氷の塊を出した。

 そのまま黒い氷を6個出現させると、爆豪の周りをふよふよと浮かせる。

 

「……んだこれ、熱ちぃ」

「さっきのハツメさんの逆転の発想を見て、そういえば、熱い氷を使った必殺技ってまだ作ってなかったなぁって思ったんです。……ので、普通の白くて冷たい氷と、この黒くて熱い氷を使った必殺技を作ってみました。『黒白氷拳(こくびゃくひょうけん)』……なんてどうですかね?」

 

 六花は、右手から白い氷を、左手から黒い氷を出しながらドヤ顔してみせた。

 仮免試験まで、残り11日。

 

 

 

 




B組の強化イベント入りました。
A組ばっかりだと可哀想なのでね。
ハングリー精神で喰らいついて少しでも差を縮めてもらいます。
それと爆豪のかっちゃん君は、ソフィア先生と六花ちゃんのおかげで、原作より早い段階かつ低リスクでクラスターを修得してます。


以下、六花ちゃんの必殺技一覧でございます。

・『白氷冷拳(はくひょうれいけん)』
 自らの肉体を使う近〜中距離技。
 機動力や膂力、防御力等の身体能力が大幅に上がり、人間には不可能な動きができる。

 ・『雹(ひょう)』
  旧・焼きそばパンチ。自分の拳を硬い氷に変えて殴る技。
 
 ・『垂(しずり)』
  旧・ぐるぐるキック。自分の脚を硬い氷に変えた状態で空中で錐揉み回転しながら落下し、落下の勢いを乗せた踵落としを叩き込む技。

 ・『風花(かざばな)』
  旧・10連キック。相手を上空に蹴り上げ、目に見えない速度で何度も急所を蹴りつける技。

 ・『雪枕(ゆきまくら)』
  相手に抱きついて体温を奪い、気絶させる技。

 ・『雪女郎(ゆきじょろう)』
  自ら雪の巨人の姿になり、相手に抱きついて拘束する技。

 ・『零(れい)』
  相手の体に触れ、凍死するまで体温を奪い続ける技。
  神野区の戦いでオール・フォー・ワンに使用した。

・『白氷雪花(はくひょうせっか)』
 氷や雪、冷気を生み出して操る中〜遠距離技。

 ・『氷霧(ひょうむ)』
  冷気で霧状の氷を発生させ、付着した相手を凍結させる技。

 ・『雪煙(ゆきげむり)』
  冷気で煙幕を発生させる技。

 ・『雪童子(ゆきわらし)』
  氷や雪で使い魔を生み出して操る技。
  特にシマエナガの使い魔に思い入れが強く、『ユキちゃん』と名付けて可愛がっている。
  その他にも、『高龗・闇龗』という二匹の龍がいる。
 
 ・『冬将軍(ふゆしょうぐん)』
  氷像を生み出し操る技。
  デフォルトは氷でできた将軍の形をしているが、オールマイトの姿をした冬将軍を生み出した事もある。

 ・『氷雨(ひさめ)』
  拳大の氷の弾丸を無数に撃ち出す技。

 ・『雪兎(ゆきうさぎ)』
  鋼鉄並みの硬度の雪兎を上から降らせる技。

 ・『雪礫(ゆきつぶて)』
  相手が繰り出してきた遠距離系の技に対し、氷や雪を纏わせて投げ返すカウンター技。

 ・『凍氷柱(いてづらら)』
  無数の氷の刃物を生成して操る技。
  攻撃が当たった箇所から凍らせる事ができる。

 ・『扇六花(おうぎろっか)』
  巨大な氷の結晶を生み出す技。
  盾やブーメランとして使える他、氷の塊や冷気を発射できる。

 ・『雪室(かまくら)』
  氷や雪で壁を生成する技。
  一瞬で巨大な城を生み出す事もできる。
  
 ・『凩(こがらし)』
  強烈な冷気を広範囲に放つ技。
  風の流れで周囲のものを察知でき、狙った相手のみを凍らせる事ができる。

 ・『銀世界(ぎんせかい)』
  強烈な冷気で一定範囲内のものを全て凍らせる技。
  凩と違い、狙った相手のみを凍らせる事ができない。

 ・『吹雪(ふぶき)』
  巨大な雪雲を生み出し、一定範囲に猛吹雪を起こす技。

 ・『雪解(ゆきど)け』
  相手を特殊な氷で覆い、相手を治癒する技。
  特に火傷や出血多量の外傷に有効。

・『黒白氷拳(こくびゃくひょうけん)』
 通常の白く冷たい氷と、黒く熱い氷を生み出し組み合わせる技。
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