ブルーアーカイブ:マンダロリアン&シロコ   作:ウエストモール

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3話目に突入できました


奪還

 ミレニアムに滞在していた夜、ウルフの元へ愛娘から一本の連絡が入った。

 

「何?セリカが拐われただと?」

 

『ん、おそらくヘルメット団の仕業。先生の権限を使ってホシノ先輩がセントラルネットワークにアクセスしたら、最後の発信地点は無人の廃墟エリアだった』

 

 セリカはアビドスの一年生だ。彼女は余所者への警戒心が強く、大人をあまり信用していない。ウルフも当初は良い感情を向けられていなかった。

 

 彼女はアビドスを愛しており、借金問題の解決のために常に何かしらのバイトをしている。故に先生がアビドスの問題に首を突っ込んでくることに反感があり、昨日は教室から飛び出して姿を消してしまっていた。

 

 そして、今日。バイト先である柴関ラーメンから帰路についていた際、彼女は行方不明になってしまったのだ。現場には一部の荷物と砲弾の破片が残されており、犯人はヘルメット団以外にあり得なかった。

 

「そうか。しかし、セントラルネットワークへのアクセス権限まで持っているとはな……」

 

『こっそりアクセスしたらしいから、バレたら始末書みたいだけど』

 

「生徒のためにそこまでの綱渡りを……それが先生という人間なのか。分かった、急ぎアビドスへと戻る」

 

『ん、待ってる』

 

 ウルフは通話を切り、エンジニア部のガレージに停めてある自らのサイドカーへと向かう。受領した弾薬や装備類は積載済みだ。

 

「ウルフさん、気をつけてね」

「あぁ。また来る」

 

 ヒビキに見送られ、ウルフは出発する。サイドカーが闇を引き裂くように疾走し、遥か彼方へと消えていった。

 

 

「ん、お父さんから他の女の匂いがする。これは、ミレニアムのヒビキとかいう女の匂い……」

「シロコ……そろそろ止めにしないか?」

 

 帰ってきて早々、始まったのはシロコによる尋問だった。彼女にはウルフに対する独占欲があり、鼻が利くこともあって女の匂いに人一倍敏感なのだ。

 

「シロコちゃん、パパが困ってるみたいだから止めてあげたら?今はセリカちゃんが拐われているわけだからさ」

「ホシノ先輩……」

 

 そんな彼女を止めに入ったのはアビドスで唯一の三年生、小鳥遊ホシノである。年齢に釣り合わない小柄な体躯で、ほんわかな雰囲気の少女なのだが、キヴォトスでもトップクラスの戦闘力を持つ実力者で、流石のシロコも大人しく引き下がる程だ。

 

「悪いなホシノ。とにかく、セリカを助け出す必要があるが、場所の目星はついているのか?」

「まあ、先生のおかげでね〜」

 

“ウルフさん、それについては私から説明させていただきます”

 

 そして、先生による説明が始まる。事態は一刻を争うため、説明は簡潔に行われた。

 

「一つだけ提案があるのだが、俺を別働隊としてヘルメット団の進行方向に先回りさせるのはどうだ?」

 

“ウルフさん、一人だけで行くのですか?私としては、ヘイローのない貴方を危険に晒すのは避けたいところ……”

 

「大丈夫だ、俺にはこのアーマーがあるからな。それに、アビドスの生徒はみんな俺の娘みたいなものだ。体を張る価値はある」

「先生、ウルフさんもこう言ってるわけだしさ……急いでセリカちゃんを助けに行ってみようよ」

 

“そうだね、ホシノ。みんな、セリカを助けに行くよ!!”

 

「「「「おぉーー!!!」」」」

 

 

 

 所変わって、アビドス自治区の端に存在する廃墟地帯に程近い砂地。そこに砂煙を立てながら疾走する車両群があった。

 

 その数十台のうち、バイク用ヘルメットを被った連中が乗るトラックやジープが多数を占めているのだが、中には三台の装輪戦車の姿も見受けられた。

 

 彼女らはカタカタヘルメット団だ。セリカを誘拐し、トラックの一つに押し込めた状態でアジトへと向かっているのだ。

 

「アビドスの連中もざまあねえよな」

「あいつらが誘拐に気付いたところで、もう遅いってわけ。私達が何処にいるか分かるはずもない」

「仮に追いついてきたとしても、こちらには雇い主から貰った装輪戦車がある。まあ、何とかなるでしょ」

 

 ヘルメット団はすでに自分達の成功は揺るぎないものと認識している。しかし、彼女達は知らない。向こうには先生という超法規的権限を持つ大人がついているということを。

 

 そして、前方に立ち塞がる誰かを最初に発見したのは、先頭を走っている一台のジープに乗るヘルメット団員だった。

 

「おい、前を見ろ!誰かがいるぞ!!」

「はあ?こんなところに誰もいるわけが……って、いたぁぁぁ!!!」

「あいつ、例のヘルメットの大人じゃねえか!」

「それを倒せば賞金が貰える!このまま轢いてしまえ!!」

 

 ジープは速度を上げてウルフへと迫る。そのまま、彼を弾き飛ばそうとするのだが、彼は転がるようにして横に身を投げることで進路上から逃れると、腰に装着された何かの持ち手を掴み、勢いよく引き抜いた。

 

 猛スピードのジープとすれ違う刹那、ウルフは引き抜いた鉈のような刀剣を一閃。片側の二輪と車体側面を安々と切り裂く。

 

「な、何ぃ!?」

 

 その一撃でタイヤが破裂し、ジープは勢いそのままに横転する。ヘルメット団員は空中に投げ出されるか、車体の下敷きとなる結果に終わった。

 

『こちらウルフ、戦闘を開始する』

 

 ウルフは報告すると、バイブロ=マチェーテを華麗に一回転させてから腰に納刀する。そんな彼を包囲するように車両群が停車し、ヘルメット団がわらわらと降りてきた。

 

「遅い」

 

 しかし、それはヘルメット団にとって致命的な隙だった。戦車の砲塔を向けていたとはいえ、ジェットパックで飛び上がるという素早い動きに対応できず、高所を取られてしまった。

 

「まずは一台……」

 

 左腕の腕甲に備え付けられた発射装置から小型ミサイルが発射され、装輪戦車に真上から突き刺さる。トップアタックを受けたそれは、弾薬庫に引火したのか一撃で爆散した。その爆発には数人が巻き込まれ、衝撃で大勢が硬直する。

 

「クソ、ふざけやがって!!」

 

 そこへ生き残りの装輪戦車から砲撃が見舞われるが、巧みな空中機動で容易く回避され、逆に距離を詰められて真上に乗ることを許してしまう。

 

「これは挨拶代わりだ」

 

 装輪戦車の上部ハッチを開け、そこに右腕を突っ込むと狭い車内に火炎放射をお見舞いする。灼熱地獄と化し、悲鳴の響く車内に手榴弾を放り込んで再び空中へと離脱すれば、一台目と同様の末路を辿ることになった。

 

「う、撃て!!撃てぇ!!」

 

 ようやく、ヘルメット団からの銃撃が始まる。空中のウルフに向けて何本もの火線が迫るが、やはり当てることは著しく困難だ。仮に当たってもベスカーなので効果は低く、ブラスターを撃ち返されて倒れていった。

 

「お前ら、いいのか?俺だけに集中していても」

「は、何を言って……?」

 

『ドローン、作動開始』

 

 ウルフの耳に愛娘の声が聞こえ、ヘルメット団の後方から一機のドローンが飛び上がる。その機体を挟み込むように装備された多連装発射機から何発もの小型ミサイルが解き放たれ、後方に着弾した。

 

「う、うわぁぁぁ!?」

 

 ヘルメット団の中でも後方にいた者達が吹き飛ばされ、トラックが損傷する。やがて、砂丘の向こう側から飛び出してきたのは、アビドスの面々と先生の乗るジープだった。

 

「来たか」

 

 ショットガンとシールドを装備したホシノが真っ先に飛び降り、後輩達を守るように最前線を張る。さらに、ガトリングガンを装備した二年生のノノミが弾幕を展開し、ホシノを援護した。ウルフによる挟み撃ちもあり、ヘルメット団は三人に釘付けである。

 

 その隙にシロコとアヤネが捜索を行う。やがて一台のトラックの扉が開かれ、涙目で縛られている猫耳生徒セリカが発見された。

 

『こちらシロコ。半泣きのセリカを発見』

『な、なに言ってるのよ!?な、泣いてなんか!!』

 

「よくやった、シロコ」

 

“みんな、気をつけて。ヘルメット団はまだ残っているよ”

 

「それじゃ、後片付けしよっか」

 

 救出されたばかりのセリカを含め、皆が戦意を滾らせる。地平線より朝日が顔を出しはじめる中、まだ残っているヘルメット団に対して容赦のない攻撃が開始された。

 

 

 

 

 

 ヘルメット団のアジトが襲撃を受けたのは、セリカを奪い返されて敗走した日の夜だった。早々にアジトの電源を落とされて真っ暗となった中の襲撃である。

 

「敵の姿が見えない!!う、うわぁぁっ!?」

 

 赤いブラスターボルトが暗闇を切り裂き、ヘルメット団員が正確無比な射撃の餌食となっていく。付近には同様の目に遭った仲間達が転がっていた。

 

 襲撃者の目には、暗闇の中であろうと標的の姿が赤く浮かび上がっている。ヘルメットのT字バイザーに備えられた熱源感知機器が作動しており、冷たくなっていなければ逃れることは叶わない。

 

 赤いプラズマは恐怖の象徴と化している。また一人、また一人とブラスターボルトで撃ち抜かれ、彼女達は昏倒していく。たまらずヘルメット団は逃走を図るが……

 

「シロコ、そちらに向かったぞ」

『ん、任せて』

 

 逃げ出したヘルメット団の目の前に、Y字のバイザーを備えたヘルメットを被った人物が飛び出し、手にしたアサルトライフルによる銃撃で逃走を阻止した。

 

 シロコの被るヘルメットはウルフから贈られたものだ。マンダロリアンの女戦士と同様のY字バイザーを備え、熱源感知機器や望遠装置も標準搭載している。流石にベスカー製ではないが、エンジニア部の手で頑丈な合金で仕立てられていた。

 

 なお、狼耳を出すための穴も空けられており、無防備な耳には専用のカバーを被せる特別仕様である。マンダロリアンに獣の特徴を持つ者はいないが、ここは様々な身体的特徴を持つ生徒の多いキヴォトスなので、エンジニア部は手慣れていた。

 

「お前がリーダーだな」

 

 最後に、左腕から発射したワイヤーでカタカタヘルメット団のリーダーと思われる生徒を捕縛する。彼女は動けなくなり、アジトは完全に制圧された。

 

「お父さん、お疲れ。ヘルメット団はどうするの?」

「警察にでも引き渡しておこう。このアジトにトラックがあるのを見つけた。それに乗せて連行する」

 

 ウルフとシロコは倒したり捕縛したヘルメット団を縛り上げ、トラックの荷台に載せていく。二人は運転席に乗り込み、トラックを発進させた。

 

 しかし、二人は知らない。すでにヘルメット団を口封じで始末するために黒幕から雇われた存在がおり、意図せずしてターゲットを奪ってしまったことを。

 

「なななな、な、何ですってーー??!!へ、ヘルメット団が始末されてるじゃないのぉ!!!」

 

 直後、破壊されたアジトで響き渡ったのは、内心で白目を剥いている悪魔のような生徒の悲鳴にも似た叫びであった。

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