ある日、遥か彼方の銀河系より来たる狼は砂漠の狼と出会った。二人は親子となり、キヴォトスを駆け抜ける。

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マンダロリアン&グローグーを見てきた結果、この作品が生まれました


第1話

 その大人は変なヘルメットを被り、アーマーを纏っていた。彼とアビドス高校が接触したのは、今から一年以上程前のこと。砂漠に謎の物体が墜落した翌日、野宿していたところをホシノが発見したのだ。

 

 初めての接触は到底、友好的と言えるものでは無かった。先輩を失い、たった一人でアビドスを守っていたホシノは気が立っており、その不審者へ挨拶代わりに銃口を突きつけた。

 

 しかし、銃口を突きつけられながらも彼は冷静だった。現時点で持っている武器を地面に置き、敵意がないことを示した上で事情を説明し、墜落した宇宙船の場所までホシノを案内した。

 

 彼は見知らぬ星に流れ着いた哀れな漂流者だったのだ。同情でもされたのか、彼は治安維持に協力する約束でアビドス自治区に滞在することを許され、放棄された家屋で生活を始めた。

 

 彼の名はウルフ・ヴィズラ。遥か彼方の銀河系、惑星マンダロアよりやって来た戦闘民族マンダロリアンの戦士である。

 

 

 

「おはよう、お父さん」

「あぁ、おはよう。シロコ、朝食はできているぞ」

 

 起床して階下に降りてきたシロコを出迎えたのは、頬に傷のある黒髪の渋い男だった。青いアーマーの上に可愛らしいピンクのエプロンをしている彼はフライパンを持っており、皿にハムエッグを移し終えたところだ。

 

 T字のバイザーが特徴的なヘルメットを被っていないので分かりづらいが、彼こそがマンダロリアンのウルフ・ヴィズラだ。

 

 シロコはある日、記憶の無い状態で彷徨っていたところをウルフに保護された。名前はホシノによって付けられ、第一発見者であるウルフを父親として慕うようになった。

 

「シロコ、野菜も食べるんだ。それでは大きくなれないぞ」

 

 今日の朝ご飯は食パンとハムエッグ、レタスのサラダ、牛乳だ。バランスの良い食事なのだが、シロコはサラダに手を付けようとしない。

 

「……ん!大きくなれなくていい!」

「はぁ……仕方ない。食べさせてやる」

 

 ウルフは箸でレタスの一切れを摘み、シロコの前に差し出す。すると、彼女はそれに食いついた。これは、ウルフ家において恒例の光景となっている。

 

 しばらくして、通学の時間となった。ウルフ家の前にはアビドスの制服に袖を通してロードバイクに跨るシロコと、フル装備のウルフの姿がある。

 

 ウルフのマンダロリアン・アーマーは、青一色で統一され、T字のバイザーを備えたヘルメットの側部には照準装置であるレンジファインダーが設置されていた。その他、様々な装備が搭載された腕甲やジェットパックを備えている。

 

「行ってくるね、お父さん」

「あぁ、気をつけていけよ」

 

 シロコはロードバイクを漕ぎ出し、瞬く間に住宅地へと消えていく。その姿を見送ったウルフは、いつも通り賞金稼ぎとしての活動を開始しようとしたのだが……

 

「やはり、心配だ……胸騒ぎがする」

 

 ウルフはかなりの親バカである。血の繋がらないシロコのことを溺愛しており、本当の娘のように思っているのだ。

 

 ウルフはジェットパックを点火し、アビドス上空へと舞い上がるとシロコを追いかける。その先で彼が目撃したのは、スーツを着込んだ痩せ型の若い男と一緒にいるシロコの姿。そして、二人を攻撃するヘルメット団の姿だった。

 

 

 

 マンダロリアンの戦士、ウルフは爆発と共に現れた。ガントレットから放たれた小型ミサイルがヘルメット団の何人かを吹き飛ばし、彼はシロコ達の前に降り立つ。

 

「……お父さん?」

「シロコ、そいつを連れて学校に行け。こいつらは俺が引き受ける」

「ん……分かった。先生、付いてきて」

 

 シロコは男の手を引き、その場を離脱しようとする。しかし、彼はウルフを残して逃げることに難色を示した。

 

“シロコ、あの人だけに任せて大丈夫かい?私と同じ大人で、ヘイローもないみたいだけど……”

 

 彼は連邦捜査部シャーレの先生である。アビドス高校からの救援要請を受けてやって来たのだが、過疎化が進む市街地の中で遭難し、生き倒れていたところをシロコに助けられたばかりだ。

 

「ん……お父さんなら大丈夫。最強だから」

 

“まあ、シロコがそう言うなら……”

 

 シロコと先生は姿を消し、その場にはウルフとヘルメット団だけが残される。

 

「どうする、俺とやり合うか?」

「う、うるせえ!お前を倒せば莫大な賞金…がああああぁぁぁ!?」

 

 ヘルメット団の一人がそんなことを言い出すが、全て言い切る前にDL-44重ブラスターピストルの一撃を顔面に受け、断末魔の叫びを上げた。バイザー部分が粉砕され、辺りに散乱する。

 

「リーダーがやられた!この野郎!」

 

 怒りに燃えるヘルメット団の反撃が始まる。が、ウルフは素早い身のこなしで銃弾を避け、ヘルメット団にブラスターを叩き込む。

 

 無論、複数の銃口を前にして被弾しないわけがなく、何発かは直撃を受けている。ヘイローのない彼がそれでも立っていられるのは、ベスカー製の装甲服のおかげである。

 

 アーマープレートで守られている頭部や肩、胸部は守りが頑強で、真正面から銃弾を弾き返している。それ以外の部分に当たったものは、下に着込んでいるベスカー製の鎖帷子が防いでいた。

 

「死ね!アーマー野郎!」

 

 ウルフが早撃ちでヘルメット団員を次々と沈め、蹴り飛ばしていると、彼女らの後方にいたスナイパーが狙撃を実行する。大口径の銃弾が彼の頭部へと真っ直ぐに吸い込まれ……

 

ガキンッ!!

 

 それはウルフのヘルメットに直撃すると跳弾し、別のヘルメット団員を昏倒させる。衝撃で彼の動きが一瞬だけ止まるが、すぐに動き出して反撃に転じる。

 

 ウルフが右膝を持ち上げると、ニーパッドに備え付けられた小型ロケット弾が発射され、スナイパーへと向かう。標的はそれに反応できず、爆発で吹き飛ばされることになった。

 

 

「見事なものだな……シャーレの先生とやらの指揮は」

 

 時は流れ、夕方頃。ウルフはとある高台から、爆発炎上するヘルメット団の前哨基地を眺めていた。この状態を作り出したのは、先生に指揮されたアビドスの生徒達である。

 

 双眼鏡を覗いてみれば、彼女達が基地の周辺で活動し、保管されていた弾薬や消耗品を押収しているのが見えた。

 

 ウルフがアビドス高校に辿り着いた時、すでに校舎に襲来したヘルメット団は先生の指揮で蹴散らされ、シロコ達はヘルメット団の前哨基地を壊滅させるために出撃した後だった。

 

 校舎に残っていた一年生のオペレーター、アヤネから情報を得た彼はシロコ達を追いかけ、親心から先回りして戦いを見守っていたのだ。

 

「お父さん、こんなところにいた」

 

 すると、背後から声を掛けられる。振り返ってみるとシロコがおり、シャーレの先生と思わしき男が走ってきていた。

 

「シロコ、戦いの様子は見ていた。見事な戦いだったぞ」

「ん、ありがとう。お父さん」

 

 シロコは父親から褒められるだけでなく、頭もナデナデされてご満悦の様子だ。

 

「ところで、あれがシャーレの先生とやらか?」

「ん、そう。頼りになる面白い人だよ」

 

 やがて、例の男が二人の近くに到着するのだが、かなり頑張って走ってきたのか肩で息をしていた。

 

 “はぁ……はぁ……シロコ、早すぎる。突然、お父さんの匂いがするとか言い出してビックリしたよ……”

 

「ごめん、先生。お父さんがいると知って嬉しくなっちゃって……」

「あんたがシャーレの先生か」

 

“ええ、そうです。連邦捜査部シャーレで先生をしているサトウと申します”

 

 ウルフは見定めるような目をサトウとかいう大人に向ける。いかにも優男といったところで、明らかに戦士ではない。風が吹けば飛んでしまうかと思われた。しかし、彼の長所は別のところにあった。

 

「あんたは優れた指揮能力を持っているな。着任したその日の活躍も聞いている」

 

“いえ、生徒達が頑張ってくれただけですから”

 

「謙遜はいい。サトウ、あんたの持つ指揮能力と権限なら、アビドスの抱える問題を解決する一助になるはずだ。どうか、シロコ達のことを宜しく頼むぞ」

 

“分かりました。できる限り頑張りますので、こちらこそ宜しくお願いします”

 

 シャーレの先生とマンダロリアンの戦士は握手を交わす。これ以降、二人はキヴォトスの各地で度々出会い、時には共闘することになる。


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