その日暮らし   作:夏の一日

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アルビオンバハムート(出てきません)

「というわけで、この度グランサイファーに新しい仲間として加わることになりました、ユウガオさんとメドゥーサちゃんです!わー、ぱちぱち!」

 

 そんなジータの挨拶と共に彼らの騎空団へ入団したユウガオは、現在城砦都市アルビオンの市街地にて懐手をしながらブラブラと歩いていた。他の団員達は到着して早々にアルビオンの領主、ヴィーラの案内で島の中央にあるアルビオン城に向かったらしい。団への挨拶の後二度寝していたユウガオは病み上がりということもあってメドゥーサと共にグランサイファーの留守番係を任されたのだが、隙を持て余した彼はメドゥーサがメドゥシアナと戯れている隙に部屋に置かれていたジータの手作りサンドイッチを風呂敷に入れ、島を散策することにした。

 領主の座を武術大会で決めるほど力を重視するアルビオンには訓練のためか街中にも魔物が放たれており、ユウガオは島に足を踏み入れてから数分の間に既に三度晩蝉を抜刀している。初めて足を運んだ島を歩きながら見る星の民が作ったと言われる白亜の景色は晩蝉を通じて眺めたことはあるものの、直接目にすると目新しいものであり、また街の音や香りなどもあって散歩は彼の無聊を慰めた。通りの店を冷やかしながら襲いかかる魔物を斬り、島の端にあった見晴らしの良い高台で広大な空を前にしてサンドイッチを食べ、またぶらぶらと町を歩く。日が暮れはじめてグランサイファーに戻ると、ジータ達もアルビオン城から戻ってきていた。

 

「アンタ、いつのまにか消えてどこ行ってたのよ!メドゥシアナと船中探したんだから!」

 

「お帰りなさいユウガオさん。サンドイッチ、初めて作ってみたんですけど…どうでしたか?」

 

「美味しかったよ、ありがとう。」

 

 花が咲いたように笑うジータとは対照的に、不機嫌そうに八重歯を剥き出して纏わりついてくるメドゥーサを伴いながら部屋まで戻る。

 

「もう!それで、アンタがずっと大事そうに持ってるそれは何なの?」

 

 ユウガオは部屋の窓際、日の当たる場所に花屋で購入した苗木を置いた。土の中からはぐにゃぐにゃとした不思議な葉が伸びている。

 

「花屋で見かけたチランジアという花が君の髪色に似ていて可愛らしかったから、苗を買ったんだよ。」

 

「ふーん……って、えぇ!?」

 

 頭に両手をやって髪を隠そうとするメドゥーサを尻目に、風呂敷袋を置いて部屋を出る。甲板には団員達が集まっていて、どうやら夜はアルビオン城で宿泊するよう招待されているようだった。ルリアが部屋からメドゥーサを呼び、全員でアルビオン城へ向かう。ユウガオは城の豪勢な食事や浴場を楽しみ客室でぐっすりと眠った。

 

 早朝に起き、調理場で貰った焼きたてのパンを咥えながら城の外へ向かう途中カタリナとすれ違う。

 

「おはようございます。良い朝ですね。」

 

「ああ、ユウガオ殿か、おはよう。…少し良いだろうか。…入団したばかりの君頼むのも気が引けるが、その強さを見込んで頼みたい。ルリア達のことをこれからも守ってやって欲しい。」

 

 思い詰めた顔のカタリナにユウガオは頷いてやり、城を出る。アルビオンの領主との因縁絡みで彼女が抱える問題が、あのような言葉の背景にはある。しかしそれも今日の日暮れまでには解決しているだろう。ユウガオは朝の澄んだ空気に響く鳥の囀りを聞きながら、まだ人気の少ないアルビオンの町を歩く。苗を買った花屋の前を通り過ぎながら、昨日でがま口が空になったことを思い出した。

 

「貴公、奇遇だな。」

 

「ああ、どうもオリヴィエさん。」

 

 アガスティアのバーで同席した女性オリヴィエに背中から声をかけられて、隣に並んで歩く。オリヴィエはベリアルが注目し、数百年前に姿を消した彼女の友人シルヴィアを知るこの男から情報を引き出そうと彼を追跡していた。晩蝉を使って移動するユウガオの位置は捕捉することが出来なかったが、先日ルーキーの騎空団に入団したという噂を聞き、アルビオンへと堕天使の飛行能力で訪れたところ彼を発見し今に至る。

 

「せっかくのデートだけど、生憎金がなくてね。」

 

「?。デートは知らんが、金は私も持ち合わせていない。」

 

「まあ取り敢えず散歩しよう。」

 

 しばらく町を散策していると、太陽が昇ると共にちらほらと士官学校の制服を着た人が増え、店も開き始めた。武器屋に入ってみると実力主義の都市というだけあって上質なものが揃っている。

 

「貴公のその刀は随分な業物に見えるが、どこで手に入れたんだ?」

 

「神社で拾った。」

 

 武器屋から出て町を回っていると、アルビオン饅頭なる美味そうな饅頭の屋台があった。オリヴィエの目の前でユウガオは先日の朝と同じように刀で空間を斬って裂け目の先に向かい、手に袋を持って出てきた。

 

「すみません、これ二つ下さい。」

 

 ユウガオは袋からルピを取り出して饅頭屋のおばちゃんから饅頭を買い、紙に包まれたそれを一つオリヴィエに手渡す。二人はアルビオン城近くの町を見下ろせる場所に腰を下ろし、オリヴィエは饅頭を食べながらユウガオに幾つも質問を投げかける。

 

「ではその刀であれば、覇空戦争の結果さえ覆すことが出来ると!?そのような世迷言…!はむ!」

 

 声を荒げるオリヴィエの隣で、ユウガオは空を見上げた。青空ではいつの間にか港から飛び立っていたグランサイファーが、アルビオンの港に停泊している帝国の戦艦からの砲撃を避けながら空を翔けている。

 

「しかし空間を繋げるその力、まさか本当に時間さえも…。はむ。」

 

 ユウガオの眼下でグランサイファーは帝国の戦艦に突撃し、ジータを筆頭にした騎空士達が海賊のように戦艦に乗り込んでいく。アルビオン饅頭の白餡は甘さが程よく、二人は会話を続けながらもそれを食べ終えた。

 

 

 

 

 

 

 アルビオンの星晶獣シュヴァリエの力をルリアが吸収することで諸々の問題を解決した一行は、損傷したグランサイファーを修復するために職人の集う島、ガロンゾを目指して空を進んでいた。

 

「結局アンタだけ何にもしてないじゃない!アタシとメドゥシアナが大活躍してた間町をフラフラして…。」

 

「植物は優しく声をかけてやると良く成長するらしいよ。」

 

「あっ、あんたねぇ〜…!」

 

 メドゥーサは怒りに震えながらも、チランジアの苗に如雨露で水をかける。

 

「はいっ、どうぞユウガオさん、今日のオムライスは自信作ですよー!あっ、今日もあーんしましょうか?」

 

「しなくて良い!あと何でアンタがこの部屋にいるのよ!」

 

「ユウガオさんのご飯を毎日作ってあげるって約束しちゃいましたから。ねー?」

 

 ユウガオは自室のベッドに座りながら、ジータの作ったオムライスを掬って食べる。卵は口の中で蕩けるような柔らかさで、味の濃いケチャップライスと良く合った。

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