インデリブル・ハート - 嫌われ者の俺が皆を助けて記憶を失ったら、美少女生徒会長が恋人を名乗り始めました 作:夢見戸イル
灯夜は学校を飛び出した後、目的の場所に向かって
律花は、記憶を失う前から自分のことを好きだったと言った。そして自分を支えるために嘘を付いたのだと。
そんなはずがない。いや、それが事実だとしても、真実を知った後まで好きでいてくれるはずがない。そう思うのに、それでも手を差し伸べてくれた律花が頭から離れなかった。
グラグラと心は揺れながら、けれども
そこは、事件のあった別荘。走りながらスマートフォンの電源も切ったから、霧島や信悟でさえ自分の居場所はわからないだろう。
けれども灯夜は、このまま計画を進めていいのか決めきれていなかった。このまま計画が進めば、自分は……。
「あ」
別荘を見た瞬間、記憶が蘇った。
同時に目眩がした。思い出してしまった。ここで何があったのか。
『灯夜。約束通り連れてきてくれたのだね。流石は我が息子だ』
あの日、突然現れた零一が言った言葉に、灯夜は動揺した。だって、そんなつもりなど少しもなかったのだから。
けれども灯夜に集まったのは、裏切られたと自分に失望と怒りが混じった目だった。
自分がそんな目で見られる存在であることは、わかっていたはずだった。
けれどもどこかで期待していたのだ。他の全員に疑われても、律花だけは味方でいてくれるのではないだろうかと。
『新城君! あの、さっき、あなたのお友達が……』
2年生の頃、そう言って心配そうに駆け寄ってくれた律花の顔が忘れられなかった。だって学校にいる全員が、自分のことをどう見ているかなんてわかっていたから。
どうにかしたいとも思わなかった。だってそれが自分の正当な評価だから。
だからその正当な評価をわかりやすくぶつけてくれる、自分のことを
父親である零一が、祖父を喰わせた
けれどもどうしたらいいのかわからなかった。理性を持つ
全てを監視されていることは知っていた。だから言ったとして、信じてもらえなかったらどんな目にあうのかわからなくて怖かった。
だから味方のフリをして確実な証拠を探すことしか、灯夜にはできなかった。
そんなことをしている間に、零一は
流石に止めようとした。子供たちは零一に何もしていないから無関係だろうと。
けれども零一は狂っていた。人間全員が敵なのだと思い込み、
タイミングを見て警察を呼び、檻に入れ、自分たちは助からないと絶望した子供たちを、そして子供たちが喰われた姿を見て絶望した大人たちを
だから子供たちを助けるためには、零一がその場にいないときに助け出す必要があった。けれども自分の行動は全て監視されていた。
そんな時、誘拐された子供のなかに律花の弟がいることを知った。そして律花が必死に弟を救い出そうとしていることも。
だから利用した。警察でもお手上げの状態で、この場所に異常なエネルギーを持つ
エネルギーの大きさに変化がないことをそれとなしに資料に混ぜ込んで弟が生きている可能性をメモに書き込めば、律花は安心してくれた。
けれども、まさか自分たちだけで危険な場所に行くと言うとは思わはなかった。一緒に行こうと誘われたとき、動揺して零一に律花の動きを悟られないようにすることすら忘れてしまった。
もしかしたらその時にバレたのかもしれない。けれどもその時に灯夜の頭にあったのは、律花の笑顔だった。
『新城君は凄いのよ! この魔道具も、この資料も、全部新城君がくれたの!』
生徒会メンバーの動きを探ろうとしたとき、生徒会室からそんな声が聞こえて来た。
慌てて離れたけれども、無邪気な声で自分を信用する律花の言葉が眩しくて、そして暗い心の中を照らしてくれた気がした。
『新城君! お礼を言わせて! あのね……』
キラキラと濁りのない目で自分を見る律花に、期待をしてしまう自分もいた。
もし全てのことが明らかになった後、世界中から責められる結 灯夜は学校を飛び出した後、目的の場所に向かって
律花は、記憶を失う前から自分のことを好きだったと言った。そして自分を支えるために嘘を付いたのだと。
そんなはずがない。いや、それが事実だとしても、真実を知った後まで好きでいてくれるはずがない。そう思うのに、それでも手を差し伸べてくれた律花が頭から離れなかった。
グラグラと心は揺れながら、けれども
そこは、事件のあった別荘。走りながらスマートフォンの電源も切ったから、霧島や信悟でさえ自分の居場所はわからないだろう。
けれども灯夜は、このまま計画を進めていいのか決めきれていなかった。このまま計画が進めば、自分は……。
「あ」
別荘を見た瞬間、記憶が蘇った。
同時に目眩がした。思い出してしまった。ここで何があったのか。
『灯夜。約束通り連れてきてくれたのだね。流石は我が息子だ』
あの日、突然現れた零一が言った言葉に、灯夜は動揺した。だって、そんなつもりなど少しもなかったのだから。
けれども灯夜に集まったのは、裏切られたと自分に失望と怒りが混じった目だった。
自分がそんな目で見られる存在であることは、わかっていたはずだった。
けれどもどこかで期待していたのだ。他の全員に疑われても、律花だけは味方でいてくれるのではないだろうかと。
『新城君! あの、さっき、あなたのお友達が……』
2年生の頃、そう言って心配そうに駆け寄ってくれた律花の顔が忘れられなかった。だって学校にいる全員が、自分のことをどう見ているかなんてわかっていたから。
どうにかしたいとも思わなかった。だってそれが自分の正当な評価だから。
だからその正当な評価をわかりやすくぶつけてくれる、自分のことを
そのはずだった。そのはずなのに、自分に心配という感情を向けた律花の顔が忘れられなかった。
父親である零一が、祖父を喰わせた
けれどもどうしたらいいのかわからなかった。理性を持つ
全てを監視されていることは知っていた。だから言ったとして、信じてもらえなかったらどんな目にあうのかわからなくて怖かった。
だから味方のフリをして確実な証拠を探すことしか、灯夜にはできなかった。
そんなことをしている間に、零一は
流石に止めようとした。子供たちは零一に何もしていないから無関係だろうと。
けれども零一は狂っていた。人間全員が敵なのだと思い込み、
タイミングを見て警察を呼び、檻に入れ、自分たちは助からないと絶望した子供たちを、そして子供たちが喰われた姿を見て絶望した大人たちを
だから子供たちを助けるためには、零一がその場にいないときに助け出す必要があった。けれども自分の行動は全て監視されていた。
そんな時、誘拐された子供のなかに律花の弟がいることを知った。そして律花が必死に弟を救い出そうとしていることも。
だから利用した。警察でもお手上げの状態で、この場所に異常なエネルギーを持つ
エネルギーの大きさに変化がないことをそれとなしに資料に混ぜ込んで弟が生きている可能性をメモに書き込めば、律花は安心してくれた。
けれども、まさか自分たちだけで危険な場所に行くと言うとは思わはなかった。一緒に行こうと誘われたとき、動揺して零一に律花の動きを悟られないようにすることすら忘れてしまった。
もしかしたらその時にバレたのかもしれない。けれどもその時に灯夜の頭にあったのは、律花の笑顔だった。
『新城君は凄いのよ! この魔道具も、この資料も、全部新城君がくれたの!』
生徒会メンバーの動きを探ろうとしたとき、生徒会室からそんな声が聞こえて来た。
無邪気な声で自分を信用する律花の言葉が眩しくて、そして暗い心の中を照らしてくれた気がした。
『新城君! お礼を言わせて! あのね……』
キラキラと濁りのない目で自分を見る律花に、期待をしてしまう自分もいた。
もし全てのことが明らかになった後、世界中から責められる結果になったとしても、律花だけは変わることなくその目を自分に向けてくれるのではないだろうかと。そして心配するような目で、自分に手を差し伸べてくれるのではないかと。
そんな淡い期待を抱いていたからこそ、律花を危険な目に合わせたくないということだけが頭の中でいっぱいになっていた。
違った。そんなことはなかった。零一の言葉に、あっさり律花は失望した目を向けた。
当たり前だ。それが自分の価値なのだから。律花から向けられるまっすぐな目に、心配してくれたその目に、ただ浮かれていただけだった。
そして、そのきっかけを作ったのは自分だった。そのこともわかっていた。だからせめて自分がどんな目にあっても大地を助け、律花のもとに返そうと心に決めた。
そんな記憶を思い出した。そして今もまた、律花に同じことを望んでしまったことに気が付いてしまった。
「期待、するだけ馬鹿だ。罪を、償わないと……」
そう呟いて、灯夜は暗い屋敷の中へと吸い込まれていった。
記憶が戻ったからこそ、大地たちが捕まっていた地下がどこにあるのかも迷わなかった。けれども部屋に入った瞬間、またあの日のことを思い出して体が震えた。
あの日の自分は、魔力が使えない檻に入れられた子供たちに作戦を伝え、鍵だけを開けて零一が来るのを待った。
今から思えば、最初から仕組まれていたのかもしれない。だって子供たちや律花たちを出すための鍵があまりにも無防備に置いてあったのだから。
そんなことを知らない自分は、零一が部屋に現れた瞬間、子供たちに合図をして逃がし、自分は零一に掴みかかった。
普段はどれだけ殴られても蹴られても、大人しくしている方がすぐ終わるからとされるがままになっていた。けれども高校生の自分が本気を出せば、40を超えた父親など簡単に抑え込める、そう思っていた。
『父さん、もうやめよう? もうすぐ警察も来る。だから……』
『……はあ。ここまでしてやられるとは。潮時とでもいうのか……』
そう言いながら、零一は暴れることを止めた。
諦めてくれた。そう思って、灯夜も少し力を緩めた、その時だった。
『などと思うわけないだろう!』
その瞬間、痺れるような痛みが灯夜を襲った。その痛みに体が動かなくなって、その隙に灯夜は突き飛ばされた。
『灯夜、おまえが私の敵だったのだな! まんまと騙されたわ』
『……っ。そう、思ってくれていい。でも、もう無理だよ。檻ももう無いでしょ? 魔法を使えるようになった朝比奈さんたちに、父さんが敵うわけが……』
『私もそこまで馬鹿ではない。おまえの行動など、早々に気付いていた。意味はわかるか? 餌となるのは、あの子供たちでなくてもいい。要は
そう言いながら、零一は灯夜にスタンガンを向けた。先程の痛みはこれか。そう思いながらも、灯夜は零一が何をしようとしているのかわからなかった。
零一は灯夜が近付けないようにスタンガンを向けながら後退る。このまま逃げようとしているのか。そう思ったときだった。
零一は廊下に出て、扉を閉めた。灯夜も追いかけようとすれば、扉は開かなくなっていた。
その瞬間、零一が何をしようとしているのか理解した。
どこかで信じていたのかもしれない。零一は何があっても、息子である自分を
けれども違った。簡単に零一は、自分を
咄嗟に助けを求めようとして、目に浮かんだのは律花たちから向けられた怒りと失望が混じった目だった。
それでも良かったはずだった。例え信じてもらえなくても、律花や大地を助けられるならそれでいいと言い聞かせながら動いていた。
だって自分が犯した罪で皆は危険な目にあったのだから。だから零一が捕まったら自分の罪も明らかになり、全て解決するのだと思っていた。
結局、零一には逃げられた。それどころか、このまま喰われたら自分の魂が世の中を危険に晒す糧になってしまうことも知っていた。
『ワア、スゴク、オイシソウ』
そんな声が聞こえた。地下であるこの部屋には窓もなく、もう逃げられないのだと悟った。
本当は
抵抗する気力はもうなかった。灯夜の心は完全に折れていた。
思い出したのは、そんな記憶だった。思い出せば思い出すほど、心は冷えていった。冷えて、冷えて、自分の選んだ選択が正しいのだと心が固まっていく。
「終わらせなきゃ。大丈夫。大丈夫。きっとこれで……」
そう何度も呟きながら、灯夜は部屋の明かりをつけた。そして壁を見て、魔数式を書くためのペンを取り出した。
どれくらい時間が経っただろうか。外は見えず、スマートフォンの電源も落としているから時間の確認もできなかった。
けれども、準備は全て終わった。だからもういいだろうと、灯夜はスマートフォンの電源を入れる。
瞬間現れたのは、メッセージアプリの通知。それが煩わしくて、灯夜は通知自体をオフにした。
そして開いたのは、今のスマートフォンになってほとんど使っていないメールアプリ。そこに、思い出した零一のメールアドレスを入力した。
『全部思い出した。父さんに謝りたい。会って話したいから、あの別荘の地下に来れる?』
心にもない文章を書いて、送信ボタンを押す。自分以外からは連絡が来ないのに、通知が来ればすぐにスマートフォンを見る零一のことだ。きっとすぐに気付くだろう。
そんなことを思っていると、狙ったかのように電話が鳴った。表示された名前を見て、灯夜は小さくため息を付いて電話に出る。
「灯夜君。今どこにいますか? よろしければ、迎えに行きますよ」
「場所、霧島さんなら伝えなくても、もうわかってますよね?」
それだけ言えば、少しの間が生まれた。けれども、霧島は何事もなかったかのように続ける。
「……何をしようとしているのか教えて頂いてもよろしいですか? 私もご協力しますよ」
「それなら、霧島さんの家の本棚の部屋の奥に作った魔道具を置いているので、俺以外の誰かが作ったことにして、生徒会長の朝比奈律花さんに渡してくれませんか? 彼女の魔力でしか使えない魔道具なので。付ける人の体に書き込まないといけないことがありますけど、その方法はまとめてあります。彼女の許可が得られるなら、使用前に好きに分析して頂いて大丈夫です」
「例の魔道具ですか。流石に灯夜君の作る魔道具は癖がありますから、他の人が作ったと誤魔化すのは私にも難しいですねえ。それに、せっかく彼女のために作った魔道具ですから、灯夜君自身が渡す方が彼女も喜びますよ」
霧島の言葉に、浮かんだのは律花の喜ぶ笑顔だった。けれどもすぐに律花の失望した目が浮かんで、自分に向けられた笑顔などすぐに壊れるものだと別の自分が指摘した。
自分はそういう存在なのだ。けれども、例え目的があったとしても、こんな自分に優しくしてくれた霧島にお礼を言わなければと、灯夜は口を開いた。
「……霧島さん。夏休みの間、色々とありがとうございました。後、先生……、朝比奈信悟先生とも、霧島さんは知り合いですよね。先生にもお礼を伝えておいてください。大丈夫です。俺、ちゃんと2人の役に立って、貰ったもの返しますから」
「灯夜君。ちゃんとあなたが帰ってくる作戦でないと駄目ですよ。私達があなたに望んでいることは……」
霧島の綺麗事をこれ以上聞きたくないと、灯夜は通話を切った。綺麗事とわかっているのに、また縋ってしまいそうになるから。
灯夜は覚悟を決めるように、小さい息を吐いた。それと同時に、黒い靄が灯夜の前に現れた。