手男が僕達を殺すと発言した瞬間、相澤先生とレディ・ナガンは僕達を守る為にヴィランと戦い始め、その隙に13号先生が僕達を逃がそうとするが、出口をヴィランに阻まれてしまった。
「初めまして。我々は敵連合。僭越ながら…この度はヒーローの巣窟雄英高校に入らせていただいたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことです。本来ならばオールマイトがいるハズ…何か変更があったのでしょうか?まぁ…それは関係なく…」
13号は警戒して人差し指の蓋を開けいつでも個性を発動できるようにする。
「私の役目はこれ―――」
ヴィランが何かを言おうとした途端、かっちゃんと切島君が攻撃を仕掛けるが霧のヴィランは回避する。
「その前に俺たちにやられることは考えてなかったのか!?」
「危ない危ない…そう…生徒と言えど優秀な金の卵。」
「ダメだどきなさい、二人とも!」
13号が注意した途端、ヴィランの黒い靄を僕達を覆うように広げた。
「散らして、嬲り殺す。」
(マズい!)
僕は直ぐに誰かを憑依させようとするがその前に黒い靄によってどこかへ転送させられた。
「っ!?」
次に目にしたのは水であった。目の前を一面水が貼ってあった。そしてそこがどの場所か僕は見当がついた。
「水難エリア!?」
直後、僕は水の中へと落ちる。
(クソ!事前に憑依させておくべきだった!)
僕は自分のミスに歯噛みしているとボンベを装備したヴィランが目の前にいた。
「来た来た」
「っ!?(しまった!敵が待ち構えていることを頭から外してた!今から憑依しても間に合うかどうか……)」
「オメーに恨みはないけど、サイナラ!」
そう言うと敵は僕に襲い掛かろうとした。だがその瞬間梅雨ちゃんがヴィランを蹴る。彼女の脇には峰田くんが掛けられていた。
「緑谷ちゃん」
梅雨ちゃんは下で僕を確保すると海面へ上昇し僕を船の甲板へと乗せた。
「カエルの割になかなかどうして……おっぱいが……くっ……」
「っ!?」
その時、峰田君がどさくさ紛れに梅雨ちゃんの胸の感触を味わっていたことに気づき甲板に投げつける形で上げた。
「ありがとう、梅雨ちゃん。」
「どういたしまして。それより大変なことになったわね。」
梅雨ちゃんは船に上がると僕と共に身を屈める。
「カリキュラムが割れていた。単純に考えれば先日のマスコミ乱入は情報を得るために奴らが仕組んだってこと。奴らは虎視眈々と準備をしてきたんだ」
「でもよでもよ!オールマイトを殺すなんて出来っこねぇさ!オールマイトが来たらあんな奴らケチョンケチョンだぜ!」
「峰田ちゃん……殺せる算段が整っているから連中こんな無茶しているんじゃないの?そこまでできる連中に私たち嬲り殺すって言われたのよ?オールマイトが来るまで持ちこたえられるのかしら?オールマイトが来たとして……無事に済むのかしら?」
梅雨ちゃんの言葉にだんだん峰田君の顔は青くなる。
「確かに、その通りだ。でも……あいつらはそれをまだ見せていない。」
「どういうことだよ?」
「相澤先生の戦闘を見て気づいたとは思うけど、あいつらは強くない。相沢先生があしらえる相手ってことはチンピラ同然。でも問題はそこじゃない。多分アイツらは捨て駒だ。」
「捨て駒!?あいつらが!」
峰田君が驚くが僕はさらに続ける。
「うん。その証拠に指揮を執っていなかった。つまりいる人材があの中にいなかったってことになる。でもそんなことよりまず僕たちが考えるのは・・・・・ここから脱出することだ。
おそらくあいつらの中にしびれを切らして船を沈めに来る奴らがいると思う。
そうなったら峰田君が一番危険だ。蛙吹さんの個性と僕の個性で逃げ切ることはできるけど峰田君は水中で長く息も続かないし背が低いから敵につかまってしまう。
幸い僕の個性の中に二人を運べる英霊がいるからそれで二人を安全な場所に移動させながら僕が一網打尽にする」
「それは危険よ緑谷ちゃん。その発想はいいけれど相手がこっちの個性を知っているって可能性はないのかしら?」
梅雨ちゃんのが言った可能性に僕は首を振るう
「断言できる。それはないよ」
「どうしてかしら?」
「梅雨ちゃんがいるからだよ。例えば僕が敵だとしてみんなの個性を知っているのだったら僕は火災ゾーンに梅雨ちゃんをワープさせる。」
僕がそう話していると突然船が大きな音を立て揺れた。それと同時に船に大きな傷ができた。
「じれったいだけだ。ちゃっちゃとおわらそう。」
ヴィランの一人の攻撃が船を割った。
「なんて力…!船が割れたわ!」
「く、時間が無いか。二人共、作戦は」
僕は手早く思い付いた作戦を伝える。それを終わらせると早速実行する。
「憑依召喚。ランサー、【ドブルイニャ・ニキチッチ】」
選んだのはロシアの口承叙事詩『ヴィリーナ』に登場する英雄の一人。
ウラジミール公に仕える三勇士の一人であり、イリヤー・ムーロメツに次ぐ知名度を誇る英雄。
本来はライダーのクラスだが今回は水辺なので水着霊基のランサーにした。
「緑谷ちゃん、何で水着なの?」
「白髪ケモ耳巨乳に黒ビキニだと!?ごっちゃんです!」
僕の格好に梅雨ちゃんが首を傾げ、峰田君はどういう訳か感謝の言葉をささげながらお辞儀をする。
ごめん、そういう霊基なんだ。
後、峰田君。そんなにガン見しないで、怖いから。
「来てくれ!」
僕は彼女の愛馬(飛竜)を召喚して騎乗すると同時に二人も乗せる。
その際なぜか峰田君が真ん中に座ろうとしたけど梅雨ちゃんによって一番後ろに座らされた。
二人が乗ったことを確認すると空中に飛び立った。
「何だあれ!?」
「白い竜だと!?」
「一体どこから!?」
僕達を嬲り殺そうとしたヴィラン達は空を飛ぶ僕達に目を見開く中、僕は飛竜から飛び立ち宝具を発動させる。
「宝具【四つに裂けよ、母なる大地】!」
僕は彼女の宝具を真下に打ち込む。
撃ち込まれた槍は水辺を四つに裂き、その裂け目にヴィラン達は吸い込まれていく。
この宝具は三頭竜・ゴルィニシチェを倒した後、その死骸から無限に湧き続ける竜の血を封じるためにニキチッチが用いた槍の絶技。
天の声を受けたニキチッチは、タタール製の槍を大地に打ち付けたことで地は四つに裂け、そこに竜の血が吸い込まれていった。
そしてニキチッチは、囚われた40人の皇帝と40人の皇子、40人の王と40人の王子、無数の兵、そしてキエフ大公の姪・ザバーヴシカ姫を救出したという話だ。
「うおおおお!やってやるよおおおお!」
そこに峰田君の個性【モギモギ】を大量に投げ入れ、ヴィラン達を拘束する。それを確認した僕は飛竜の上に着地してそのまま相澤先生の所に向かう。
「!?」
広場が見えた瞬間、僕は息を呑んだ。ヴィランと戦っていた相澤先生が脳を剥き出しにした巨体のヴィランに押しつぶされており、目の前で腕を小枝を折るかのようにへし折られた。
短い苦痛の悲鳴に僕の中でなにかが揺さぶられる。抵抗しようとした先生の頭を掴み、地面に打ち付け、その額から血が流れ落ちると、それは僕の中で弾けた。
炎に巻かれた管制室の中で瓦礫の下敷きになる大事な女の子、まだデミサーヴァントになっていなかった彼女の姿が今の相澤と重なって見えた。
『せん、ぱい……どうか、てを……にぎってくれますか?』
儚げに、どこか諦めたような笑みを浮かべた彼女の姿が、フラッシュバックした。
気付いたら僕は飛竜に速度を上げるように命令した、二人の静止の声が後ろで聞こえるがそれでも進む。
そしてヴィランとの距離が縮まった瞬間。
「先生から、離れろ!!」
僕は飛竜で全力の体当たりをして先生を押さえつけている脳みそヴィランを吹き飛ばし、その隙に先生を回収して距離を取る。
「二人とも、先生を連れて入口へ。」
「み、緑谷は!?」
「大丈夫。それより早く、さっきよりも余裕ないんだ。あいつの動きをどこまで止めていれるか分からない。急いで」
先生を受け取った二人を庇うように立ち、僕は体の中で魔力を練り上げる。吹き飛ばした脳みそヴィランにダメージが無いようだ。
「何だ、お前?」
恐らく主犯格だろう手男の問いかけ、それに僕は応えず、襲ってきた脳みそヴィランの腕を切り裂く。
だが脳みそヴィランの斬った腕が元に戻る。再生タイプの個性か。
相澤先生の損傷はパワーだけによるものじゃない、何らかの個性か。13号先生はワープで自分の個性を当てられたかな。レディ・ナガンは無事だが、ワープ持ちが居るせいで撃てずにいた。
それらを考慮してやるべきことは。
「全員拘束して聞き出す」
「調子にのるなよ女。複数の個性を埋め込んで改造された脳無、対オールマイト用の切り札がガキにどうこうできるかよ」
対オールマイト用か。再生だけではなく打撃対策もされていると見るべきかな。まあそれなら僕は関係ない。
「はあ!」
僕は飛竜に騎乗し、脳無と呼ばれるヴィランと戦う。
脳無の巨大な拳を巧みに避けながら槍で切り裂き、飛竜の尻尾で吹き飛ばす。
激しい攻防が続く中、再び空中へ飛び立ち、脳無に再び宝具を放つ。
「宝具【四つに裂けよ、母なる大地】!」
放たれた宝具に脳無は掴もうとするがそれすらも吹き飛ばしその巨体を地面に縫い付けた。
それでも傷つけられたその場から傷が塞がっていき、大きなダメージにはなっていない。
だが足止めが出来ればそれでいいのだ、だってそうすれば大丈夫だと分かっていたから。
入口を吹き飛ばすその轟音と現れた巨体……オールマイトの姿に僕は安堵を抱いた。
「もう、大丈夫。」
スーツのジャケットを片手に負傷した13号先生、そしてボロボロ相澤先生の姿を見たオールマイトはネクタイを引きちぎりながら、自分が来たことを示した。
「私が、来た!!」
オールマイトが入口から飛んで来るように勢いをつけ、脳無を殴り飛ばす。その後に続く様に他の先生方も次々とヴィラン達を倒していく。そして。
「っ!?死柄木弔、脳無が機能を停止しました!」
「なっ!オールマイト用に作りだしたんだぞ!なのに倒されるって……化け物かよ……」
オールマイトの必殺技で脳無を殴り飛ばしたところで手男ヴィランは戦慄する。
「撤収です、死柄木弔」
「まあ仕方ないか、予定外の女がいたし」
「逃がすと思うか!」
オールマイトは逃げようとする二人に向かおうとする。
「このような無粋な手段は避けたかったのですがね」
見ればモヤが皆の上に広がって、そこからパラパラと降り注ぐのは、手榴弾っ!?。
「ちいっ!」
「ヒーローならそうするよなあ」
皆を守るために拳を振るったのと、ヴィラン達の撤収は同時。
「今度は殺すぞ、平和の象徴オールマイト。そしてそこの白髪の女」
この捨て台詞を最後にヴィラン共は姿を消した。脳無を含めた大量のヴィランは確保したが、肝心の首領格を逃してしまった。
僕は重体な先生方にできる限りの治療を行っていた。
ヴィラン連合による雄英高校襲撃。
この事件は、後に世界を震撼させる大事件の始まりであったとこの時の僕達は知る由もなかった。