雄英高校襲撃事件。
オールマイト台頭以降最大規模のヴィラン集団による襲撃事件は、プロヒーローである二人の教師、特別講師として呼ばれたレディ・ナガン、才気溢れるヒーローの卵達の尽力により幕を下ろした。
生徒に負傷者は無し、重傷であった教師達も僕の医療系の英霊の力により無事完治した。
翌日は臨時休校。事件概要をざっくりと聞いてパニクる母を宥めるのが大変でした。
そして次の日。
「お早う」
「相澤先生が無傷で出勤ーっ!!緑谷とリカバリーガール凄えっ!!」
英霊の力ならどんなに重症でも治せるんだよね。ナイチンゲールさんいつもありがとうございます。
「俺の安否はどうでも良い、何よりまだ戦いは終わってねえ」
相澤先生が発する張り詰めた雰囲気に何かの予感が脳裏に過る。
「戦い?」
「中間テスト?」
「またヴィランがー!!?」
「おい今ヤバい単語言ったの誰だ」
クラスメイト達が色々と言っている中、相澤先生は大きく目を見開いた。
「雄英体育祭が迫っている!」
「クソ学校っぽいの来たあああっ!!(ホッ)」
学校なのに学校っぽい行事に過剰反応するウチのクラスって何なんだろ?
けど行事とかは事件後は自粛したりするものだよね、安全面の問題もあるし。
そこら辺の疑問は相澤先生がサクサク答えてくれた、逆に開催することで危機管理体制が盤石だと示すこと、例年の五倍の警備をしくこと。
まあそうでなくとも観客にはスカウト目的のヒーローが大勢きている。仮にヴィラン連合が突貫してきても袋のネズミだろう。
因みに雄英高校生の地味な特権である雄英体育祭身内用観戦チケットを母さんに渡そうと思っていたけど、涙で周りに迷惑かけるからテレビ中継を見ると言ってた。
年に一回、計三回だけのチャンス。ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ。
だけど実は僕はオールマイト関係からサー・ナイトアイ事務所に既に内定もらっているんだよね。
テンション上がる皆に反して凄く気まずい。
「緑谷君、飯田君、頑張ろうね体育祭」
「顔がアレだよ麗日さん」
真剣というか眉間にシワが寄っている。周りもいつもと違う様子が気になっているよ。
「皆!!私!!頑張る!」
気合が入っているというよりかは、気負ってるようにも感じる。
食堂までの移動中、ヒーローを目指す理由を語る麗日さん。何でも苦労している両親の為にヒーローを目指しているらしい。
ちなみに飯田君は尊敬する兄のようになりたくてヒーローを目指している。
「君の両親を助ける為にヒーローを目指しているならとても立派な事だと思うよ」
僕の言葉に麗日さんは喜んでいる中、オールマイトが乙女チックにお昼を誘ってきたので(麗日さんが吹き出した)、今日はそちらにすることにした。多分体育祭の事で話もあるんだろうし。
―――
「ところで緑谷少年、君って雄英体育祭参加に乗り気じゃないだろ?」
「そうですね。卒業後はサーの元に行くと決めてますから。どうしても必要性が感じなくて」
元気とユーモアの無い社会に未来はない、という理念以外は相澤先生レベルに合理的なサー・ナイトアイは学ぶべきことが多い。
彼を笑わせる為に色々と準備しないといけないのが手間だけど、必要な事として割り切るしかない。
「だからですかね。僕のせいで皆に評価がされなくなるんじゃって」
麗日さんの話を聞いたら余計にそう思ってしまった。英霊憑依による技と魔術も人目を引く派手な力だからだ。
そのせいで他の皆が注目されなくなってしまうかもしれない。
「君が注目されたら、同級生が評価されないかもという懸念も分かる」
そんな僕にオールマイトは真っ直ぐ見つめる。
「けど私としては君に活躍して欲しい。君というヒーローの姿を人々に示して欲しい!」
オールマイトの気持ち、願い。
「体育祭、全国が注目しているビッグイベント!君が来た!ってことを世の中に知らしめて欲しいんだ!!」
その言葉を聞いて僕はヒーローを目指す理由を思いだしていた。花の魔術師が警告した困難に立ち向かうためじゃないもう一つの理由が。
そうだ、助けたいと思ったんだ。誰かのために頑張りつくす彼みたいな人々を。
ならその期待に応えよう。その先で笑って過ごしてくれるなら。
「分かりました。全力で頑張ります」
「ああ!期待しているよ!」
―――
僕が雄英体育祭への決意を固めた後も時間は流れた。
放課後に皆で帰ろうとした時、各クラスの生徒が昨日の事を聞こうとA組に押し寄せてきた。
「うおー、何事だー?」
「出れねーじゃん何しに来たんだよ」
「敵情視察だろタコ」
「緑谷ー! お前の幼馴染どういう教育受けてんの?!」
峰田君が僕に向かって叫ぶ。お母さんは結構厳しい人だけどねえ
「ヴィランの襲撃を勝ち抜いたクラスだもんなあ。本番前に見ときてえんだろ」
かっちゃんの説明に皆は納得する。
「で?一応聞くが何しに来た?言っとくが詳しい事は話せねぇぞ?」
鋭い目つきで周囲を見渡すかっちゃんにずいっと男子生徒が近づいてくる。
「こういうの見ちゃうと、幻滅するなあ。普通科にはヒーロー科落ちた人間も結構在籍してるんだ
知ってるかい?体育祭のリザルトによっちゃあヒーロー科編入も検討してくれるんだって。
俺は偵察じゃない。調子のってると足元ゴッソリ掬っちゃおうっていう宣戦布告に来たつもりだ」
普通科生徒、心操人使君による丁寧な説明。
だがそれはヒーロー科生徒は運が良かっただけで、自分の実力は劣っていないと宣言するに等しい。
それを聞いてA組の皆は反感を抱くが、僕には無理して挑発している様に見えた。
心操君はあらかた説明を終えると今度は僕に標的を変えた。
「そういえばお前は噂の強個性の首席様の一人だな?ヴィラン襲撃で活躍したらしいけど、どうせデタラメだろ?図に乗っているだろうから叩き落してやるよ」
心操君はそう言って僕に挑発するが僕はそれに応えようとするとかっちゃんが僕の肩を叩いてきた。
「行くぞ、お前ら」
そう言って心操君の横を通り過ぎる。他の皆は戸惑いながらもついていく。
「おい爆豪。良いのか?無視して」
切島君が先頭で歩くかっちゃんに聞くがそれに対してかっちゃんはこう答えた。
「好きなだけ言わせてやれ、俺達の貴重な特訓時間をあいつらに割く義理はねえよ」
「それは分かるけどよ。舐められっぱなしだぞ?」
「そんなもん体育祭で存分に見せつけてやればいい。俺達の力がまぐれじゃないって事を骨の髄まで刻み込んでやる」
確かに口だけじゃあ彼らは納得しないし更に調子づいてくる可能性がある。だったら今は相手にせず本番で思い知らせてやれば良いか。
「実力で黙らせるか。漢らしくて良いじゃねえか!」
「確かにな」
「おっしゃあ!あいつ等に目に物を見せてやるぜ!」
かっちゃんの言葉にクラスメイト達はやる気を出したようだ。
その後、B組の鉄哲徹鐵君が襲撃事件の話を聞きにきたので、同じヒーロー科で彼らも襲撃された可能性があったため説明した。
体育祭までの二週間、それぞれの思いを抱き、自己鍛錬に励みながら、あっという間に時間は過ぎた。