雄英体育祭本番当日。
日本どころか全世界が注目するこのイベント、ましてや今回は事前情報として、雄英高校襲撃事件やナンバー2ヒーローエンデヴァーの息子の存在、オールマイトの教師就任もあり、その注目度は天元突破していた。
控え室で開始を待っていると、普段付き合いの無い轟君に声をかけられた。
「客観的に見て、お前の実力は頭抜けてると思う。それにおまえオールマイトに目ぇかけられているよな。別にそこに詮索するつもりはねえが、おまえには勝つぞ」
上鳴君がクラス最強に宣戦布告と呟き、クラスの和に気を配る切島君が諌めようとするけど、轟君は取り合わない。
「何か勝ちたい理由が君にあるのは分かった。けどそれは全ての生徒にも、僕自身にも勝ちたい理由がある。だからこう言わせてもらう」
思い返すのはオールマイトの言葉。
僕という新たな光を人々に見せる。
託された平和の象徴というバトンを握り締め宣言する。
「その勝負、受けて立つよ」
僕が来た、と世界に示す。誰かに託すその日まで、僕は負けるわけにはいかない。
「おお」
返された轟君だけではなく、A組皆に気合が入った所で入場の時間がきた。
暗い廊下の先の輝く出口、魅せつけよう世界に。
ああ注目されてるよ。
慣れてない視線の波に皆が圧倒されている。
ヴィラン襲撃もあってかプレゼント・マイク先生の司会でも持ち上げられてるけど、チンピラレベルとはいえヴィランを撃退したのは事実だしね。実戦経験の有無は行動に差がでるものだし。
続いてB組、普通科、サポート科、経営科、と凄い人数の生徒がでてくる。
『選手宣誓』
出番だ。
一年主審であるミッドナイト先生に呼ばれている。今年は特例として主席である僕とかっちゃんの二人で生徒代表となっている。
「選手宣誓!僕達雄英高校一年全生徒は、巣立ち活躍される先達方に誇られるよう、精一杯力の限り戦い抜くことを誓います。
雄英高校一年代表 緑谷出久」
まあ無難だよね。けど目標であっても優勝宣言とか柄じゃないし。
『次、爆豪勝己』
次はかっちゃんか……何か嫌な予感がする。
「宣誓。……俺が一位になる」
あ、予感が当たった。
かっちゃんの宣誓を聞いた他クラスの生徒は大ブーイング。もはや収拾が着かない。
「せめて、俺の踏み台になれ」
更に火に油を注いだ。どうすんのこれ?
その後、何とかブーイングを収めると早速、ミッドナイト先生が競技のお題を知らせる。
『さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう。いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ!!さて運命の第一種目!!今年はコレ!! 障害物競走!!』
計11クラスによる4キロの総当りレース。ヒーロー科が20名ずつだから不参加の生徒を考えても100〜220名という大人数。これだけの人数からどれだけ予選通過できるか分からないと、焦らせられるね。
『さあ位置について、スタート!!』
先生の合図と共に全生徒が一斉に走り出す。その中で僕は冷静に個性を使う
「憑依召喚。ライダー【アストルフォ】」
選んだのはイングランド王の息子にしてシャルルマーニュ十二勇士の1人
原典においても騎士としては「弱い」とされているが、「魔法の槍」「魔法の本」「魔法の角笛」「幻馬ヒポグリフ」などの様々なアイテムを駆使して巨人を捕まえたり、月に行ったりと冒険を繰り広げた英雄。
そんな破天荒な英霊であるアストルフォを憑依させた僕は彼の宝具の1つを使う。
「宝具【この世ならざる幻馬】!」
シャルルマーニュ伝説で伝えられる上半身は鷲、下半身は馬の幻獣。
本来は「グリフォンに馬を番わせる」という、西欧の【不可能を示唆する慣用句】を原点に持つ。
これはヒポグリフの原形たる鷲の上半身と獅子の下半身を持つ幻獣「グリフォン」が、馬を特に獲物として狙う習性があるため、両者の間に子を成すなど無理だとされたため。
空を高速で駆けることができ、その突進はAランクの物理攻撃に相当する。
更に真名を解放することで本来「ありえない」存在であるヒポグリフはこの次元から昇華されて存在が抹消される。
そこで完全に消滅する寸前に、現実の存在である「乗り手」が元の世界に引っ張り上げることで、一瞬だけ消滅し、また出現するという状況を引き起こすことができる。
この世界から消滅している瞬間だけはあらゆる観測から逃れ、攻撃を無効化することが可能となる。
そんな伝説の生物に騎乗した僕は一気に空を駆け上がり、先頭の轟君とかっちゃんに直ぐに追い付く。
『おおっと!?轟選手と爆豪選手に近づくのは――誰だ!?鷲と馬が合わさった謎の生き物に乗った騎士鎧姿のピンク髪のGIRLは!?』
『あれ緑谷だな。恐らく個性でこの競技に最適な誰かの英雄の力を憑依させたんだろ』
『はあ!?あれ緑谷選手!?ほとんど面影が無いぞ!?』
『あいつの個性【英霊憑依】の力だな。緑谷の個性は世界中の偉人や英雄の力をその身に宿すことで戦闘、補助、妨害、回復などをこなせる』
『世界中!?それはすげぇな!一体何人憑依できるんだ!』
『あいつが言うには軽く400は超えているらしい』
『桁がおかしくね!?』
僕は二人を追い越すと目の前に出てきた入学試験に出てきた0Pヴィランの頭を槍で吹き飛ばして後続への妨害しながら進む。
『さぁ!!早速緑谷選手がぶっ壊したがいきなり障害物だぁ!!まずは手始めぇ!第一関門!!ロボインフェルノ!!』
「せっかくなら……もっとすげぇの用意して貰いてぇもんだな……クソ親父が見てるんだから!」
轟君がとんでもない範囲に冷気をばらまいて0P一体を完全に凍結させて動きを止める。
「ちっ!緑谷も巻き込みたかったが流石に無理か」
そして轟君が通り過ぎた瞬間、凍結した0Pヴィランは倒れて生徒が地味に数人巻き込まれる。
『1-A轟選手!!攻略と妨害を一度に!!こいつはシヴィー!!けど緑谷選手には追い付けていない!!すげぇなこいつら!!あれだな!もうなんか!ずりぃな!!』
『合理的かつ戦略的行動だ。とはいえ緑谷は高度を上げてたみたいだから効果が薄かったみたいだな』
『流石は推薦入学者と入試トップゥ!!
片や初めて戦ったロボインフェルノを全く寄せ付けないエリートっぷり!英雄の力を借りて駆け抜ける主席の一人!!
こいつは予選からいきなり注目だぁ!』
プレゼント・マイクの実況が響く中、僕は次の難関を悠々と入っていく。
『オイオイ!第一関門チョロいってよ!!んじゃ第二関門はどうさ!?落ちればアウト!それが嫌なら這いずりな!!THE・フォール!!!』
『まぁ飛んでる緑谷にはなんも意味ねぇがな』
『一位緑谷!その鷲馬で飛んでるからなんの妨害にもならねぇ!?』
僕は第二関門を全く余裕で突破するとすぐに最後の関門が見えてきた
『さぁ!速くも最終関門!!かくしてその実態はぁ!!
一面地雷原!!地雷の位置は良く見りゃ分かる仕様になってんぞ!!目と足酷使しろぉ!!
ちなみに地雷は競技用で威力はたいした事ねぇが音と見た目は派手だから『失禁』必死だぜ!!」
『それは人によるだろ。あとこれも緑谷には効果が無いからな』
後方で爆発音が響く中、轟君とかっちゃんがもうなりふり構わなくなったのか全力を出してくる。それを見た僕は次の手を使うことにした
「宝具【恐慌呼び起こせし魔笛】!」
アストルフォが持つ宝具の一つである善の魔女・ロジェスティラから託された音色を聞いた妖鳥が恐怖で逃げ出すといわれる角笛。
その角笛を障害物の終点あたりで飛び降りながら全力で吹く。
「ぐあ!?」
「何だ!?」
魔笛を喰らった二人は個性の制御が乱れてあらぬ方向に行ってしまう。
その隙に僕は両足に魔力を送って更に速度を上げながらゴールを目指す。
『序盤の展開から誰がこんなの予想出来た!?今!一番にスタジアムに帰ってきたその男!!緑谷出久の存在をぉぉおおお!!!』
僕は観客の歓声を浴びながらゴールし嬉しさの余り右腕を上げた。