第二種目である騎馬戦が終わって昼休憩の時間。
皆でお昼ご飯を食べようとした時、轟君に話があると呼びだされた。
「それで話って?」
轟君との接点は同じクラスなのにあまりない。個人的な会話も今までロクになく、せいぜい個性が強力なクラスメートくらいの認識だ。
襲撃事件から注視されているのは分かってたけど敵意があるように感じないから流していた。
体育祭開始前にも宣戦布告してきたからそれ関係だろうか。
「少し長い話になるが、まず聞いてくれ」
そこから話された内容は轟 焦凍という人間の全てだった。
父であるエンデヴァーの目的と所業。
自分の生まれた理由。
母との関係。
そして、自らの目的。
「お前がとんでもない実力があるのは理解した、オールマイトが目をかけるのも納得だ。だからこそ俺は、クソ親父の個性を使わずにお前の上に行く。奴を完全否定するためにな」
「そうか。君の在り方をどうこう言うつもりはないよ。君は悪事を働いているわけじゃないから」
これが見返すためにヴィランになるって言い出したなら止めたけどさ。炎を使わないでトップヒーローになるとか止める理由がないよね。
それでも。
「でもこれだけは言っておくよ、君はこのままだと後悔することになる。自分より強い相手に全力を出しきれなくてね」
言っておくべきことはあるよね。
「なんだと?」
「君は知らないんだよ、全身全霊を尽くしてまで勝たなきゃいけない戦いを。そしてソレに勝てなかった絶望を」
そう言いながら僕は前世での聖杯探索の出来事を思い出す。
あの時の僕は無力だった。誰かに助けてもらえなければ途中で折れていた闘いばかりだった。
「君は君を強者だと認識するのは当たり前だ。何せナンバー2ヒーローエンデヴァーのお墨付きだからね。でもさ君は、エンデヴァー以上を知らないんだよ」
だからこそ、エンデヴァーを超えることとトップが同じ扱いなんだろうけどね。
けど世界はそんな単純な者じゃない。僕はそれを身をもって知っているから。
「……知ったようなことを言うんだな」
「君の悲しみと辛さはわかってやれない、けど無力だった後悔は誰よりも知っている。だからこそ第三種目」
越えられない壁として立ちふさがるよ。
そう僕は告げた。
「上等だ」
そう言って轟君は去っていった。
プライドを傷つけられたのか不快そうに。
彼が立ち去った後に僕は後ろに振り返る。
「お節介が過ぎるかなあ?ねえ、かっちゃん?」
通路の向こうにて立ち尽くす幼馴染に問いかける。
「今更だろ、ヒーローなんてそんなもんだ」
そんな僕の在り方を彼は肯定してくれた。
ならば迷わずやるだけだね。
その後、昼食を終えた僕達は再び会場に向かう
第三種目の前に体育祭らしい希望者参加のレクリエーション種目もあるらしい。楽しみだなぁ。
そう思っていると突然、八百万を筆頭とした女子たちが僕に話しかけてきた。どうしたんだろ?
―――
……どうしてこうなった?
『どうしたA組!?チアリーディングで応援か!?』
実況席から驚愕の声が上がるが僕はそれに気にする余裕がない。
「峰田さん!上鳴さん!嵌めましたわね!」
これを仕込んだのはこの二人であった。
「なぜこうも峰田さんの策略に嵌まってしまうの、私・・・・・」
「アホだろ、アイツ等!」
落ち込む八百万を横にボンボンを地面へ投げつける耳郎さん。気持ちは分かる。
「まあ本選まで時間空くし張り詰めててもしんどいしさ、いいんじゃない!やったろ!」
「な!?」
「透ちゃん、積極的ね。でも一番の被害者は……」
梅雨ちゃんが可哀そうな目でこちらを見てくる。
『つーか緑谷も居るじゃねえか。何してんだあいつ?』
相澤先生の言葉に僕はこの場で崩れ落ちる。
何せ僕も英霊を憑依させた状態でチアリーディングの格好をしているのだ。
憑依させているのは以前、U〇Jで使用した英霊【ドブルイニャ・ニキチッチ】のライダー霊基だ。峰田君と上鳴君に頼まれたって聞いてから何かおかしいと思っていたがこんなことをするとは。
まあ、とりあえず。制裁は必要だよね?
「……来い。我が愛馬よ」
僕は飛竜を召喚して邪な笑いを浮かべる峰田君と上鳴君の前に立つ。
「「へ?」」
僕の異様な雰囲気に二人は呆けた顔をするが容赦はしない。
「真なる約定、真なる誓い。目覚めよ、三頭竜!【邪竜来りて罪を吐く】!!」
僕はかつてドブルイニャ・ニキチッチが退治した邪竜・ゴルィニシチェを召喚。
僕の背後に突如現れた三つ首の竜に二人は恐怖に振るえる。
「何か弁明は?」
邪竜を背にした僕はにっこりとほほ笑むと二人は土下座をした。
「「すんませんしたあああああ!!」」
―――
二人への制裁を済ませた後。僕達はレクリエーション種目前に、トーナメントの組み合わせのくじ引きを引いた。
なんだけど、心操チームだった尾白君と庄田君が辞退を宣言。
正直体術に秀でた二人と戦えないのは残念だけど、ミッドナイト先生が認めたから仕方ないよね。
それにより繰り上がり、話し合いの末アピールの凄かったサポート科の発目さんと、B組から推された鉄哲君になった。A組の皆は名乗りでなかったようだ。
轟君とは一回戦で勝てれば二回戦で戦えるか。
『よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間、楽しく遊ぶぞレクリエーション!』
僕は見学かな、今までテレビで見てたから生で見れるのは正直楽しみだ。
盛り上がるレクリエーション、個性使用もありだからこちらもド派手で見応えあるね。
そんな風に眺めていたら、借り物競争に参加した峰田君が叫んでいた。
「緑谷ーーー!!お前の個性で何か伝説っぽい武器を貸してくれーーー!!」
伝説の武器?……あの人のなら良いかな?
「憑依召喚。セイバー【アルトリア・ペンドラゴン・リリィ】」
僕は選定の剣カリバーンを抜き王としての道を歩み始めたばかりのアルトリアの力を借りて峰田君の元へ向かう。
「はい、ちゃんと返してね」
「お、おう。ありがとう。……これなんの剣?」
「ん?【カリバーン】だよ」
アーサー王が選定の岩より引き抜いたとされる伝説の剣。
別名「選定の剣」とも呼ばれ、現在はカンタベリー大聖堂に安置されている。
よくエクスカリバーと同一視されているが、正確なところは不明で一説では折れたカリバーンを打ち直したのがエクスカリバーだとか、エクスカリバーは湖の貴婦人から貰った別物だとか諸説様々だ。
「えっと、とりあえず助かった!」
そんな代物を渡された峰田君はちょっと戸惑っていたが、それをもってミッドナイト先生の元へ向かう。
先生の反応を見るに合格らしい。
こうして色々とあったけど、それぞれの思いを胸にあっという間に時は来る。
雄英体育祭、最後の種目。
そのはじまりの時が。