My Hero Grand Order   作:BLUE@

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第三種目 温度差が激しい戦い。

『さあ、始まりました! 雄英体育祭最終種目決勝トーナメント!

早速ルール説明。だが至ってシンプル!

相手を戦闘不能にするか、場外に押し出せば勝利!

リカバリーガールが待機しているから倫理はひとまず捨ておけ!

ただし!あんまりにクソな行為はアンチヒーロー行為として反則失格となるぞ!』

 

観客の歓声が響く中、僕と相手はステージに上がる。

 

『さあ、早速入場だ!一回戦二回戦と一位になった優秀すぎる主席の一人!どんな姿になるか分からない千変万化の個性を持つ主席の一人!緑谷出久!

VS ここまで目立った活躍なし、ただしその個性は未知数!本選進出者唯一の普通科の期待を一身に背負い参戦!心操人使!」

 

プレゼント・マイクの説明が響く中、僕らはお互い睨み合う。

 

『スタート!!』

 

開始の合図と共に、僕は個性を使う。

 

「憑依召喚。ルーラー【マルタ】」

 

選んだのは世界三大救世主の1人と直接の面識があり、「竜退治」の逸話も持つ聖人の中の聖人の1人

 

キリスト教の伝承において、妹弟と共に歓待したかの救世主の言葉に導かれた事で信仰の人になり、悪竜・タラスクを鎮めた一世紀の聖女。

 

その彼女の水着霊基に憑依させた僕は心操君に向かって走り出す。

 

「おい、みど――」

「せいやぁ!」

 

何かを喋り出した心操君の顔面を思いっきり殴り飛ばす。

 

「カハ、あ、てめ――」

「はあっ!」

 

苦痛に歪む彼にボディブローを叩きこみ。

 

「オラオラオラオラオラ!」

 

更に拳によるラッシュでボコボコにする。

 

『おおっと緑谷選手!?水着姿になったと思ったら、ステゴロで心操選手をボコボコにしていくぅ!つーか容赦ねぇ!?』

『えーと、以前緑谷から教えて貰った英雄に関する情報によると【マルタ】っていう聖女らしいぞ』

『聖女!?あれが!?素手でぶん殴ってますけどぉ!?』

 

実況席で何か言ってるけどそれでも僕は相手をボコボコにする。別に恨みは無いけど。

 

「おらあ!!」

「げぼぉっ!?」

 

そして最後に顎にアッパーカットを決めてフィニッシュ。

ボッコボコにされた心操君はそのまま気絶した。

 

「……勝者、緑谷出久!」

「「「……」」」

 

まさかのフルボッコに周りの生徒と観客は言葉を失っていた。

その後、気絶した心操君は普通科の仲間達から祝福と慰めを受けながら搬送ロボによって運ばれていった。

 

 

―――

 

 

一回戦が終わった後、僕は周り(クラスメイトも含めて)にドン引きされながら他の試合を見る。

 

轟君 対 瀬呂君

何故か不機嫌な轟君がステージごと凍らせて瀬呂君を戦闘不能にさせる。

 

塩崎さん 対 上鳴君。

上鳴君は頑張ったが塩崎さんの茨で拘束されて敗退。

 

飯田君 対 発目さん。

発目さんによるアイテムの発表会に会場は大興奮。それに満足した発目さんは棄権した。

 

芦戸さん 対 青山君。

青山君は個性の副作用で動きが鈍った所で芦戸さんに倒された。

 

常闇君 対 八百万さん。

ダークシャドウが強すぎて、常闇君の勝利。

 

鉄哲君 対 切島君。

個性ダダ被りの殴り合いに盛り上がりはしたが両者ノックアウトで決着は持ち越し。

 

一回戦最終組 かっちゃん 対 麗日さん。

 

「丸顔、引くなら今の内だぞ」

「丸顔って。……爆豪君はヒーローを目指すのを痛いのが嫌で引くの?」

「そうか、なら」

 

加減は無しだ。

 

かっちゃんはそう言って、爆破で距離を詰めると至近距離で爆破させる。

 

「ヒーロー基礎学の時みてえに軽くして衝撃から逃げようとしてもコイツには意味がねえ」

 

飯田君の蹴撃とは違い、爆破の衝撃と火力は回避より早くその身を焼く。

 

「まだまだぁ!!」

 

奮い立とうとする彼女の叫びも放たれた追撃が捻じ伏せる。

 

「おらぁっ!」

 

今度は爆破を使わず彼女の腕を取り、その勢いを乗せて投げ飛ばし、更に爆破で場外に吹き飛ばす。

 

「勝者!爆豪勝己!」

「負けられねえよな、よく分かる」

 

圧勝。

一回戦最終試合、爆豪勝己の勝利。

女の子相手にと批判する間も無くついた決着。

だが、彼女を弱者と嘲る声はない。

爆豪勝己のその強さと麗日お茶子の根性は誰の目にも明らかだったからだ。

 

そして試合が終わった後、僕は医務室で彼女の様子を見に来た。

 

「負けてしまった」

 

医務室のベットで強がって笑う麗日さん。

辛い時にこそ笑える人が一番強いのだと僕は知っている。その笑みが誰かのために向けられることを。

頼ってほしい、泣き言を吐いても構わないよ、そう思うのは傲慢かな。

放送に流れる切島君の勝利。二回戦目進出者はこれで決まり、僕の出番はもうすぐだ。

 

「駄目だなあ僕は」

 

僕は何も言えず見送られるだけだ。見とるね、頑張って、その言葉を言うのがどれだけ辛かったか。

いや、今は切り替えよう。

 

そんな風に考えて歩いていたら出口間近で思わぬ人物と遭遇した。

 

「おぉいたいた」

「エンデヴァーさんですよね、なんでこんな所に」

 

探していたのか?何のために。

 

「君の活躍見せてもらった、英霊憑依だったか?オールマイトの正体不明な個性に劣らぬ素晴らしい個性だ」

 

エンデヴァーの目に嫌な感じがした。

 

「次の君の対戦相手であるウチの焦凍には、オールマイトを超える義務がある。君との試合はテストベッドとしてとても有益なものとなる。くれぐれもみっともない試合はしないでくれたまえ」

 

オールマイトを超える、か。

あの人なら誰だってできるよと笑いながら言うだろうに。いやそんな性格で普通に言っちゃうから周りが拗れるのだろうか?

 

とはいえせっかくのエンデヴァーからの言葉だけど。

 

「すいませんが、その言葉には応えられません」

 

やるべきことは決めている。

 

「なんだと?」

「僕は貴方の息子を完膚なきまでに打倒します。彼に越えられない壁を見せます」

 

いずれ来るだろう悲劇を起こさないために。彼が全力を出さないことで後悔しないように。

 

「轟焦凍は敗北を知るべきだ」

「舐めるなよ小僧っ!!焦凍は俺の最高傑作だっ!!あの子の無念を果たす存在だっ!!貴様ごときに負けるものかっ!!」

 

激昂するナンバー2ヒーロー。

あの子の無念、なるほど。この人は自身の欲だけで周りを利用していたわけではないか。

 

「勝てませんよ、貴方の息子は今から壁を知る。貴方以上の存在を知るんだ」

「その大言で無様を晒せば許さんぞ」

 

向けられる敵意と怒気にエンデヴァーが強者であると理解させられる。

このビリビリした気配はまさしくオールマイトに匹敵していた。

不機嫌そうに去っていく強者を見ながら僕は気合を入れ直した。

 

『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!!まさしく両雄並び立ち今!!

緑谷出久 対 轟焦凍!!スタート!!』

 

「おい、お前は俺に壁を見せるって言ったな、見せてみろよ英雄の力をな」

 

うん、不機嫌だなあ。自身の拠り所を否定されたから当たり前だけどね。

 

「うん、見せるよ壁を。憑依召喚。アーチャー【アシュヴァッターマン】」

 

選んだのは叙事詩『マハーバーラタ』の登場人物であるバラモン最強の戦士。

 

クル・クシェートラ戦争においてはカルナと共にカウラヴァ陣営であり、アルジュナ擁するパーンダヴァ5兄弟の陣営と戦った大英雄。

 

そしてクリプターの1人、スカンジナビア・ペペロンチーノが召喚したサーヴァント。

 

その彼の力を借りた僕は真っ直ぐ轟君を見る。

 

「それが壁か?随分と舐められたもんだな?」

 

轟君は僕の姿を見て更に不機嫌になる。彼の父と同じく炎を纏っているからそうなるか。

けどこの英霊の力はそんな生易しい物じゃない。

 

「行くよ、轟君!」

 

この言葉と共に轟君は氷塊を放つが僕が持つ赤熱する鉄塊の如き巨大な戦輪を振り回して粉砕しながら突き進む。

 

「ちっ!」

 

轟君は横に避ける事で僕が振り下ろした戦輪を回避して再び氷塊を放つ。

僕はそれを避けず拳に炎を纏わせて砕く。

 

「イラつくな!親父の真似か!?緑谷!」

 

轟君は憎しみの感情を顕わにして僕に攻撃を繰り出し続ける。それに対し僕は回避という選択を捨て、ひたすら砕く。

 

「くそ!くそ!どうしてだ!?」

 

轟君は叫びながら氷を使い続けるが段々動きが鈍くなっていた。

 

「轟君、震えてるよ。」

「っだからなんだ?」

「個性は身体能力の一種だ、君のその個性、片方だけじゃ体温調節がままならないんだろう?その右側って左の個性を使えばどうにか出来るんでしょ?」

 

僕の言葉に轟君の顔が強張り、目を吊り上げ、睨み付けた。僕だって普段だったらここまで踏み込むようなことはしないが、今回ばかりは例外だ。

 

「それでも、この力は使わない!」

 

必死だよね轟君。今までの自分を否定されたくないよね。けど、失ったと思う絶望はこんなものじゃないから。君は全力を出して強くなるべきなんだ。

 

「君がエンデヴァーさんを憎む気持ちは君だけのものであると思うよ、僕がどうこう言う事じゃないと分かってる。だけどね……抱き続けていい物なんかじゃない。その憎悪を、抱き続けてしまえば君は死ぬまでその憎悪が晴れることはないんだよ」

 

ジャンヌ・オルタから聞いたアヴェンジャーの存在の本質、ついそれと轟君を重ね合わせてしまったからこそ気づいてしまった。彼は復讐者の持つ素質を持っている、ならば僕は止めたいのだ、憎悪と復讐を生きる糧としてほしくない、それで心を満たしてほしくなどない。

 

「そんなっ悲しいものを死ぬまで君は背負うの?」

「お前に何が分かる!?」

 

僕の言葉に轟君は心の内を晒し始めた。

 

「お前に、俺の何が分かる!!俺の生まれた意味も、俺がいたから傷ついた人もいる!!俺の所為で、こんな個性の所為で、俺は!!親父の個性なんかの所為で!!」

「それでも……その力は君の物だ!」

 

僕の叫びに轟君は言葉が止まる。そんな彼を真っ直ぐに見て、首を横に振り、違うよ。と幼子に言い聞かせるかのように言葉が続ける。

 

「エンデヴァーさんから受け継いだ個性でも、お母さんから受け継いだ個性でも、君に宿った時点でそれは君のものだよ!他の誰かのものなんかじゃない君だけの力だ!!」

「俺の…力…」

 

頭を抱え、攻撃の手が止まった轟君に僕は呼吸を整えながら脱力し更に続ける。

 

「だから、迷わなくていいんだよ、なりたいものを目指して轟君は何になりたかったの!」

「俺、は……!」

 

僕が轟君に問いかけた瞬間、轟君は目を瞑る。しばらくして再び目を開けると先ほどの苦悩の表情は無く、何かの覚悟を持って左から炎を出し始めた。

 

それを見て、轟君に何かがあったんだと気づいた。

 

「続けようか、悪いけど、今出来る本気で往かせてもらうよ。」

「ああ、俺も……本気で往く。」

 

向かい合う僕達の目にはもう、迷いなどは一切なかった。

お互い好戦的な笑みを浮かべ、先程の問答が嘘のように表情は晴れていた。

体温を調節した轟は左側から炎を出し、浮かんでいた涙を拭った。

僕は全身へ強化をかけ、地面へ足を踏み直し、構えている。

 

「何笑ってるんだよ」

「君だって笑ってるじゃないか、こんな状況なのに」

「お互い様ってやつか……どうなっても知らねえぞ」

「……望むところだよ!」

 

僕の言葉を合図に全力の氷結を始めた轟に彼の宝具を使う。

 

「技巧戦闘――戦輪、起動!戦士の誓いはとうに消え、我らは堕落した!それでも僕は堕落を怒り、自分自身にも怒り続けよう!疾走するが良い……【天輪よ、憤炎を巻き起こせ】ッ!!」

 

彼が生前は使用することのなかった――できなかった武器が昇華されたという珍しい宝具。

 

由来は、ヴィシュヌ神が上の右手に持つという108のノコギリ歯を持つ円盤の神器「スダルシャン・チャクラ」とヤマの別名「ヤム(閻魔)ラージ(王)」。

 

ただし、見た目は一般的に知られている薄く鋭い刃の環ではなく、工事現場の重機に付いているタイヤ並みにゴツい世紀末な感じがする大車輪である。

 

そんな巨大な戦輪を炎を纏いながら突き進むのを見たミッドナイト先生とセメントス先生は止めに入ろうと個性を使ったが、それよりも先に僕の宝具と氷結からの燃焼による空気の瞬間的膨張がぶつかり合った。

 

壁となったはずのセメントは積み木のように崩れ、煙が視界を奪い去り、誰もが状況を理解できない。

 

漸く煙が晴れるとそこにいたのは左側の体操服が燃えて場外に出された轟君の姿だった。

 

「轟焦凍場外、緑谷出久三回戦進出!!」

 

ミッドナイト先生の言葉に観客は再び声を上げた。

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