そして決勝戦。
勝ち上がった僕とかっちゃんは以前の様に対峙していた。
(そういえば飯田君大丈夫かな?)
友人にかかってきた突然の電話。あの焦燥とした表情が気になってしまう。
集中しなければいけない戦いなのに、どうしても気になってしまう。
「おい、デク。何呆けてんだ?」
「あ、かっちゃん。ちょっと飯田君の事で少しね」
「……今は決勝戦だぞ。気になるのは分かるが、今は集中しろ。それで負けたら承知しねえぞ」
「うん、分かってる」
かっちゃんのいう通り、今は集中しないとね。飯田君の事は一旦置いとこう。
お互いやる気は十分。後は全力を尽くすだけだ。
『さあいよいよラスト!!雄英1年の頂点がここで決まる!!
瞬速連撃の飯田選手を同じ土俵で真正面から捻じ伏せた緑谷出久選手!!
変幻無敵な常闇選手を的確に弱点を暴き、叩き伏せた爆豪勝己選手!!
決勝戦は今!!Start!!』
体育祭最後の試合。全力でぶつかるなら。この人だな!
「憑依召喚。アーチャー【超人オリオン】!」
選んだのはギリシャ神話に登場する、世界有数の知名度を持つ星座の元となった狩人。
あのヘラクレスに勝るとも劣らぬ剛強な肉体を持ち、弓の腕前も正確無比。
異聞帯では衛星軌道に居る月の女神を命を賭して射抜き、僕達に道を切り開いてくれた。
そんな彼の力を借りた僕はかっちゃんに向かって走り出し拳を振るう。
「おらあっ!」
それに対してかっちゃんは僕の拳を手に取り、背負い投げの要領で地面に叩きつけようとするが僕は両足で着地した瞬間、今度は僕もかっちゃんを叩きつけようとするが直前に手を離されたことで失敗する。
「くっ!」
嫌な予感を感じた僕は一旦その場から離れると同時に爆破された。
「はあっ!」
爆破から逃れた僕は再びかっちゃんに向かい、今度は右足で蹴り上げる。
「あめぇっ!」
かっちゃんは僕の蹴り上げを左腕で防ぎながらカウンターで僕の顔面に掌底を放つ。
僕はそれを首を曲げることで回避し、更にカウンターで左腕で腹部を殴ろうとするがかっちゃんは後ろに下がることで回避。
その後、お互いに一撃を与えられないまま何度も攻防を繰り広げ続ける。
『緑谷選手!爆豪選手!初っ端からフルスロットルで殴り合う!というか動きが速すぎて目で追えねぇ!?』
『これは凄まじいな、武術だけでここまで出来るとは。俺も見習うべきところがあるな』
プレゼント・マイク先生の言う通り、僕達の動きに着いてこれないのか観客の困惑の声を上げているのがわかるが、僕は気にする余裕もなくかっちゃんと攻防を繰り広げる。
殴り合いが続く中、僕達は一旦離れると少し息を整える。
『ん、もう限界か?二人共急に殴り合いを止めたぞ?』
『いや、どうやら違うらしいぞ』
実況席のいう通り、僕達はまだ行ける。その前に僕はかっちゃんに話しかける。
「準備は終わった?かっちゃん」
「ああ、十分体が温まった。こっから本気で行くぞ!」
僕達の会話に更なる困惑の声が響いた。
『どうやら今のは準備運動だったらしいな』
『はあっ!?あれがっ!?』
実況席が驚く中、僕は時計を見る。
(制限時間はあと十五分か。十分だ)
僕は真っ直ぐかっちゃんを見る。
「勝負だ。かっちゃん」
「ああ、来い。デク!」
僕はここで宝具を切る事にした。
「我が宿命、月女神に請い願う。肉体に剛力を、精神に冷徹を。そして我が運命を此処に定めよう――【月女神の無垢な愛】」
この宝具は月の女神アルテミスの愛がオリオンに降り注ぎ、一時的にではあるが一人を一軍に匹敵するものへと変化させるほどの自身の大幅な強化を図ることが出来る。
その強化量は弱体化してもなおオールマイトに迫るほどでその力に常人ならば耐え切れず爆散するが、オリオンを憑依させた僕は全身の筋肉痛で済む。
宝具を使った僕は好戦的な笑みを浮かべるかっちゃん向かって走り出し、かっちゃんは爆破で迫りくる。
「はっ!」
「ぶっ飛べ!」
僕の拳とかっちゃんの爆破がぶつかった瞬間、巨大な衝撃波が生まれた。
かっちゃんが爆破を使う度に僕は拳の風圧で相殺し、お互い攻撃を逸らしながら殴り合う。
『りょ、両者!先ほどよりも激しい戦いを繰り広げているぅ!?もう何が何だか分かんねぇ!?』
『この二人。やばいな、今後の授業の見直しをしないと』
激しい爆破と打撃が繰り広げる中、僕達は一歩も引かずに戦う。
かっちゃんが拳を躱し、僕は爆破を起こす手を受け流す。
「ふんっ!」
そして、そのまま体を捻り回し蹴りを胴へと叩き込む。
「かはっ!?」
かっちゃんは苦悶の声を上げるがそれでも地面に叩きつけられる寸前で爆破によるホバリングで勢いを殺し、そのまま爆速ターボで再び近接戦へと持ち込もうとする。
それに対して僕は迎え撃つ為に踏み出した左足に重心を乗せ、そして腰を捻り拳を振るう。
それをかっちゃんは回避し僕に爆破を浴びせようとするが、その直前に僕はバク転でそれを回避し、視線をかっちゃんへと戻すとそこには僕の懐に入ったかっちゃんの姿があった。
(しまった!)
ミスに気付いた僕は何とか回避しようと後ろに飛ぶが、かっちゃんは逃さず、渾身の爆破を僕の腹部に叩きこむ。
「ぐぅっ!?」
爆破の衝撃をモロに喰らった僕は何とか踏ん張り、次の攻撃をしようとしたかっちゃんを背負い投げて距離を無理矢理とる。
そして爆破によるホバリングでどうにか体勢を立て直したかっちゃんは僕を見ていた。
(残り時間は3分、そろそろ決める!)
僕の意図に気付いたのか、かっちゃんも最後の攻撃を始める。
「これで、終わりだ!デク!ハウザーインパクト!!」
ホバリングで跳躍すると両手を左右逆方向に向けて爆発を連続発生させ、その反動で錐揉み回転しながら僕に突撃してきた。
僕はそれに対抗するために右拳に全ての力を貯める。
「はあああああ!!」
右腕に感じる熱をそのまま、放った。
二つの攻撃がぶつかり合った瞬間、巨大な爆煙と共に衝撃波が全体に響き渡った。
そして煙が晴れると、僕とかっちゃんはステージ中央で倒れていた。
お互い、一歩も動けない状態にミッドナイト先生はこれ以上の戦闘は無理と判断するとこう宣言した。
「両者共に戦闘不能!よって引き分け!」
この宣言に会場は特大の歓声に包まれた。
―――
「それではこれより!!表彰式に移ります!」
ミッドナイトの声と共に熱狂した雄英体育祭の締めが始まった。
実は僕とかっちゃんを腕相撲などで決着する事も考えていたらしいけど僕達の闘いを見て、それじゃあ格好が付かないと却下された。
表彰台の上に立つ、一位に立つ僕とかっちゃん、二位の常闇君。三位である飯田君はお兄さんであるプロヒーローのインゲニウムがヴィランに襲撃されて重体なため早退した。飯田君が尊敬する立派なヒーロー、無事でいてほしいと願わずにはいられない。
「メダル授与よ!!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」
確か三年なら校長先生で、二年は生徒から要望されたヒーローだっけ?多忙だからと今まで参加しなかったオールマイトに贈呈される僕達は幸運だと思う。
「私がメダルを持って「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」ぁ!」
あ、被った。
「気を取り直して、常闇少年おめでとう!強いな君は!」
「もったいないお言葉」
「ただ相性差、苦手な状況を覆せる地力を身につけるんだ!そうすれば君はトップヒーローにだって成れる!!」
「御意」
常闇君にアドバイスを伝えると、今度は僕とかっちゃんに向かう。
「緑谷少年、爆豪少年、おめでとう。素晴らしい戦いだったよ。まさかここでも同一1位となるとは雄英高校始まって以来の快挙だよ」
「ありがとうございます」
「……俺はまだ納得してねえがな」
「君達はまだ上を目指せる!現状に満足せず進み続けるんだ。」
「はい!」
「おう!」
そう言ってオールマイトはメダルを僕達に手渡す、流石にこの結果は想定してなかったからメダルは一つしかない。
とりあえず僕とかっちゃんは同時にメダルを受け取ってそれを掲げた。
それを見た観客の人から再び歓声が響いた。
「さァ!!今回は彼らだった!!しかし皆さん!
この場の誰にもここに立つ可能性はあった!!ご覧いただいた通りだ!競い!高め合い!さらに先へと登っていくその姿!!
次代のヒーローは確実にその芽をのばしている!!てな感じで最後に一言!!せーの」
楽しかった。
今はその気持ちでいっぱいだ。
「プル「お疲れ様でした!!!」ト、えっ?」
「そこはプルス・ウルトラでしょオールマイト!!」
なんか締まらない終わりだけどオールマイトらしくて笑えてくるよね。
普通の学校ならここから生徒総出で後片付けだけど、雄英高校は作業ロボットと職員に業者さんのお仕事だ。僕達生徒は着替えた後に教室で休校と指名について告げられた。
そして皆で帰ろうとすると。
「緑谷!!」
「リカバリーガール?」
こちらへと走ってきたリカバリーガールに呼びとめられた。
「どうしました?」
常に冷静なこの人が急ぐなんてよっぽどな事態だろう。
「インゲニウムの治療に力を貸しておくれ、このままだと間に合わない!」
「分かりました!すぐに行きます!」
宝具に頼るほどの事態か、なら急がないと。
その後、着いた保須総合病院でリカバリーガールの指示の元、ナイチンゲールの宝具を唱え、無事飯田君のお兄さんは助かった。ヒーローとしての復帰も充分に可能だろう。飯田君から感謝の言葉を掛けられた僕はそのままお暇した。
激動の一日は最後に一仕事をしてこうして終わったのだった。
緑谷のヒーローネーム、変えた方が良いですか?
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原作通りデク
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オリジナルのヒーローネーム