My Hero Grand Order   作:BLUE@

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ヒーローとは

個性が発現してから数日後、僕は教室で先生から高校への進路について話を聞いていた。

 

「えー、お前らも3年ということで、本格的に将来を考えていく時期だ」

 

教室で、先生がそう話を切り出した。

 

「今から進路希望のプリントを配るが、皆……」

 

先生がプリントを掴むと、クラスの全員がゆっくりと個性を発動させていく。

 

「だいたいヒーロー科志望だよねぇ」

「いえーーーい!」

 

クラスの皆が個性を発動させながら叫んだ。

 

「んーんー!皆いい個性だ!でも、校内での個性の使用は、原則禁止な!」

 

先生が皆に注意してるけど。もうそこら辺の校則はあってない様な物だ。

 

「先生ぇ!皆とか一緒くたにすんなよ……」

 

その時、僕の幼馴染みであるかっちゃんがそんな声を漏らした。

 

「俺はこんな没個性どもと一緒に底辺なんか行かねぇよ」

 

かっちゃんは机の上に足を乗せながら不遜な態度で言い放つ。それを聞いた他の皆は当然かっちゃんに抗議する。

 

「そりゃねぇだろ!勝己!」

「そーだそーだ!」

「モブがモブらしくうるせぇ!」

 

周囲の抗議なんてなんのその、更に煽り散らかす幼馴染みに僕は諦めの境地となっていた。

 

「あー、確か爆豪は雄英高だったな」

 

その瞬間、クラス中からザワザワと声が聞こえ始めた。

 

「え?」

「あの雄英って、あの国立の?」

「今年偏差値79だぞ?!」

「倍率も、毎度やべぇんだろ?」

「そのザワザワがモブたる所以だぁ…」

 

かっちゃんは机の上に立つと高らかに笑う。

 

「模試じゃA判定。俺はこの学校うちのただ2人の雄英圏内!あのオールマイトをも超えて!俺はトップヒーローとなり!必ずや!高額納税者ランキングに名を刻むのだ!」

 

高額納税者なんて欠片も興味ない癖に良くそんな嘘が付けるなぁ。清姫がこの場に居たら即丸焼きにされているよ?

 

「そういえば、緑谷も雄英志望だったな」

 

僕が呆れているとまた先生が僕の進路をばらし、そのせいで皆が僕に注目する。

 

「えぇ?!緑谷も?!」

「うちのトップ2が二人とも雄英志望?!」

「何その胸熱展開!」

 

僕が雄英を受けると聞いたクラスメイトが歓声を上げる中、かっちゃんは好戦的な笑みを浮かべる。

 

「おい、デク。絶対に受かれよ。受かなきゃ俺がぶっ飛ばすからな?」

「うん、分かっているよ。かっちゃん」

 

かっちゃんなりの激励に僕は笑顔で答える。

 

「くっそぉ!お前らのライバル感堪らないなぁ!先生もそんな青春したかったなぁ!」

「かっこいいぞ緑谷!」

「爆豪も頑張れよ!」

「これで落ちたら恥ずかしいぞ二人ともぉ?」

「うっせぇ!受かるわ!」

 

そこからは隣のクラスの先生に怒られるまで、僕達は沢山檄を飛ばしあった。

 

そして放課後。僕はいつもの場所に向かうために手早く変える準備をしていると友達と話していたはずのかっちゃんが話しかけてきた。

 

「おい、デク。今日もあそこに行くんだろ?俺も行くぞ」

「別に良いけど、かっちゃん友達に誘われていなかった?」

「今日はやめとく事にした。それにお前の考察は色々と為になるからな」

「そっか。分かったよ」

 

僕はかっちゃんと一緒に色んなヒーローについての考察などを話しながら家に向かう。無個性の時には考えもしなかった関係の変化に苦笑いを浮かべる。

 

かっちゃんと今の関係になったのは僕が退院して直ぐの事だった。

 

かっちゃんは僕が個性が発現したと知ると多古場海浜公園に連れていくといきなり勝負を挑んできた。突然の事で戸惑う僕にかっちゃんは容赦なく個性を使ってくるため、仕方なく僕も個性を使って対抗した。

 

結果は僕の勝ち。発現した個性が強力なのもそうだがあの戦いを思い出した僕の経験が勝敗を分けた。

かっちゃんは僕に負けたことに悔しがるがそれが収まると僕に向かって今まで虐めてきたことをその理由を全て話して謝ってきた。

 

その後、騒ぎを聞きつけた警官にこっぴどく叱られたが、あの時が僕たちの関係が変わるきっかけになったんだ。

 

「おい、どうした?そんなぼぅっとして」

「え、あ、ちょっと考え事してた」

 

僕がこれまでの事を振り返っているとかっちゃんが僕が黙っているのが気になったらしい。正直に答えると呆れられるのは目に見えてるからね。

 

そんな他愛ない話をしていると背筋に悪寒が走った。

 

「Mサイズの隠れ蓑……。鍛えてあるし、これはいいの見つけたぁ!」

「「っ!」」

 

僕とかっちゃんはとっさに左右に逃げる。すると僕達が居た所に泥の様なものが通り過ぎる。

 

「避けやがった?!」

「何だ、この泥野郎は」

 

僕は敵ヴィランの動きを観察して、あのヘドロの様な体がどう動くかを予測して攻撃を躱す。

隠れ蓑って言葉から察するに、アイツは体を乗っ取れるらしい。

そうやって警察やヒーローの手から逃げてたとすると……。

 

「お前今まで、何人の人を隠れ蓑にして来たんだ?」

「ん?何人?さぁ、覚えてないなぁ!」

(コイツ、やっぱりもう何人か被害者を出してる。ここで逃がしたらさらに被害がでる!)

 

僕は目の前のヴィランに怒りを覚えているとかっちゃんが前に出る。

 

「おい、やんぞデク」

「言うと思ったよ。でも、個性の無断使用は禁止されてるよ?」

「そんなもん、正当防衛と言えば何とかなんだろ?それにこいつは俺達を逃がすつもりは無いみたいだしな」

「確かにそうだね。じゃあ、僕は援護するよ。かっちゃんは全力でやって」

「はっ!言われるまでもね!」

 

かっちゃんは前に出てヴィランを釘付けにする様に立ち回り始めた。その間に僕は目を瞑り自身の個性を発動させる。

 

思い浮かぶはある英霊の姿。

 

中国・三国時代に謳われた蜀の政治家にして天才軍師。

 

戦闘でもそれ以外でも僕達に勝利に導いてくれた偉大な存在。

 

「憑依召喚。キャスター、【諸葛孔明】」

 

その英霊の名を口にした瞬間、僕の姿が変わっていく

 

黒い長髪に黒色の瞳。

 

そこに追加される黒い眼鏡とスーツ。

 

英雄の力を宿した僕は目の前のヘドロヴィランと対峙する。

 

これが僕の個性【英霊憑依】だ。僕がかつて繋いできた英霊達の力の一部を借り、その身に宿す。いわば疑似サーバントに近い能力だ。

 

本人と比べればかなり弱体化しているがそれでも破格な力を持っている。

 

「っ?!」

 

ヘドロヴィランは姿が変わった僕を見て動きが止まる。その隙を僕は見逃さなかった。

 

「宝具【石兵八陣】!」

 

僕はヘドロヴィランに向けて彼の宝具【石兵八陣】を放つ。

 

諸葛孔明が自軍の敗走が決まった際に仕掛けておいた伝説上の陣形。巨岩で構成された陣であり、侵入した者たちを迷わせ死に追いやる。

 

諸葛孔明の十八番「奇門遁甲」を利用した、地理把握・地形利用・情報処理・天候予測・人心掌握の五重操作からなる、まさに軍略の奥義にして最終形態というべき閉鎖空間。

 

地の理を把握し進軍・撤退の有利を読み、地形を利用して敵軍の進軍・撤退を阻み、現在・過去・未来の三点をつぶさに予測し次なる手を打ち出し、風と雲の流れを読んで天候を予測して利用し、人間の思考と心理に精通してその心と考えを操作する。

 

これを破れる者は例えトップヒーローであろうと不可能だ。

 

「な、何だこれは!?体が……」

 

ヘドロヴィランはこの宝具の効果によって動きを阻害されている。その隙に僕はかっちゃんに声を掛ける。

 

「かっちゃん!今!」

「眠ってろ!ヘドロ野郎!」

 

かっちゃんは個性【爆破】で宙に浮くとそのヘドロヴィランの顔面に全力の爆破を叩きこんだ。かっちゃんの爆破を受けたヴィランは壁に叩きつけられて気絶した。

 

「さて、こいつをどうするか」

「流体だから何か入れる物が必要だよね」

 

僕達は何か入れる物が無いか探そうとしたその直後。

 

―――ガコンっ!

 

不意に、金属がぶつかる音が鳴ったのが聞こえた。僕達は音がした方に振り向くととんでもない人が居た。

 

「もう大丈夫だ少年達!私が来た!……って、あれ!?もう終わってる!?」

 

現ナンバー1ヒーローであり平和の象徴とうたわれるヒーロー、オールマイトだった。

 

 

―――

 

 

あの後オールマイトが持っていたペットボトルでヴィランを回収して貰った後、注意を受けた。

 

「君達、今回は正当防衛として扱うけど、本来は個性の無断使用は法律違反だからね?気を付けるんだよ」

「分かってるよ」

「すみません、オールマイト」

 

オールマイトの言葉に反省する。

 

「だが、君たちのおかげで被害を最小限に抑えられたのも事実だ。そうだ。出会えた記念にサインでもどうだい?」

 

オールマイトがそう提案するとかっちゃんは目を輝かせる。

 

「それじゃあ、何か書けるものを貸してくれるかい?」

「これに書いてくれ」

 

かっちゃんは幼い頃から持っているオールマイトのカードを取り出して渡した。

 

「よしっ!それじゃあ!」

 

そしてオールマイトは力強くサインを書いてくれた。そしてサインが書かれたカードをかっちゃんは大事そうに受け取る。良かったね、かっちゃん。

 

「ありがとうオールマイト。一生大事にする」

「HAHAHA!!そうしてくれると助かるよ!君もどうだい?」

 

歓喜に振るえるかっちゃんを他所に今度は僕にサインを書くか聞いてくる。僕はどうしようか悩むとかっちゃんが僕の背中を叩いてきた。

 

「あのオールマイトのサインだぞ?ヒーローに興味が無くても貰っとけ」

「かっちゃん……でも良いのかな」

「別に良いだろ。何も悪い事はしてないんだし」

「……うん、分かった。すみませんオールマイト、僕も良いですか?」

「HAHAHA!もちろんだとも!」

 

僕はとりあえずノートを手渡すとオールマイトは今度も力強く書いてくれた。

 

「所で緑髪の少年。君はヒーローに興味が無いのかい?君ぐらいの子ならヒーローに憧れている事が多いが」

「全然という訳では無いんですけど、今のヒーローに疑問を抱いているんです」

「疑問?何か気になることがあるのかい?」

 

サインを書いたノートを返すオールマイトに僕が思っていることを伝える。

 

「今のヒーローは何というか、誰かを助けるのを二の次にしている気がするんです。ただ人気や名声を得る為に人を助けている様に感じるんです」

「っ!?」

 

僕の言葉にオールマイトが固まった気がしたが僕は気にせず続ける。

 

「本来のヒーローなら、人を助けることを第一に考えると思うんです。どんなに困難でも苦しんでいる人を救うために全力を尽くす。僕が思うヒーローはそういう勇気がある人だと思います」

 

僕は自分が思うヒーロー像を話しながら、かつての僕、藤丸立香だった頃を思い出す。

 

右も左も分からないまま突然世界の命運を背負わされ、度重なる戦いと理不尽に押し潰されそうになりながらもカルデアのスタッフや多くのサーヴァント、そしてマシュに支えられながら最後まで進み続けた。

 

一度目は【生きる】為に戦い、二度目は【終わる】為に戦った。

 

そして今、僕は花の魔術師が警告した新たな戦いに備えてヒーローになろうとしている。この先、僕にどんな困難が降りかかるかは分からないが、それでも進み続ける。今までそうしてきたのだから。

 

自分の過去を振り返っているとかっちゃんが僕の背中を叩く。

 

「お前、また悪い癖が出ているぞ?全部一人で背負い込もうとすんじゃねぇ」

「……かっちゃん」

「お前が背負えねえもんは俺が背負う。一人で助けられないなら皆で助ける。前にお前が言った言葉だろ?」

 

かっちゃんは以前の大喧嘩で僕が言った言葉と同じ事を言って肩を組んでくる。

 

「……そうか。なるほど、確かに君達の言う通りだな」

 

オールマイトは僕達の言葉に思うことがあるのか、神妙な顔で頷く。

 

「二人共、名前を聞かせてくれないか?」

「緑谷出久です」

「爆豪勝己だ」

「そうか。緑谷少年、爆豪少年。君達と出会えて良かった」

 

オールマイトはそう言いながらポケットにヘドロの入ったペットボトルを入れた。

 

「じゃあ、私はこれを警察に届けるので。液晶越しに、また会おう!」

「はい!」

「おう!」

 

オールマイトは少し屈むと、驚異的なジャンプ力で去っていった。

僕達はこの事を明日クラスの皆に話そうと思いながら、再び帰路に着いた。

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