「……見事な絶望顔だね」
期末テスト翌日。
先生方を纏めて撃退した僕を尊敬するクラスメート達と演習試験で目標達成ならずな四人組。
「セメントス相手は心底同情するがな。正直都市では相手したくねえよ」
かっちゃんの言葉に僕は頷く。あのヒーローの相手はそもそもコンクリートを砕けるパワーないと何もできないからね、というかハンデの超圧縮おもりが意味をなしてなかった気がする。
「爆豪もよく勝てたよな」
「ハンドカフスを付けただけだ、勝ちじゃねえ。デクから高速戦闘の訓練を受けてなきゃ無理だった」
オールマイトの超パワーを爆破と格闘技でいなしていたかっちゃん。時間ギリギリになった所でオールマイトの拳を見切って躱した際にハンドカフスをはめたんだ。かっちゃんは納得してないけど。
「皆、土産話っひぐ、楽しみに、うう、してるっがら!」
明るくてイベント好きな芦戸さんにはより辛いよね。
「試験で赤点取ったら林間合宿に行けずに補習地獄!そして俺らは実技試験クリアならず!これでまだわからんのなら貴様らの偏差値は猿以下だ!!キエエエ!!」
皆のフォローに逆ギレして八つ当たりする上鳴君。
いや君は校長先生を舐めてかかったから自業自得でしょ。
瀬呂君がそんな彼らをフォローするけど、彼も危ういからね。
明らかに成長してるクラスメートに比べて一段劣って見えたのは事実だし。
「予鈴が鳴ったら席につけ」
そんな中、カァンと現れる相澤先生。
「おはよう今回の期末テストだが残念ながら赤点が出た、したがって。林間合宿は全員行きます」
「「「「どんでんがえしだあ!」」」」
まあ補習地獄担当で先生割り振るのも大変だろうしね。
一年以外だって、二年は学校で仮免資格取得のための集中講義で、三年はインターンと仮免試験再受験者は二年と講義。さらに普通科は部活動の大会、サポート科は文化祭での発表のため学校研究する人もいるらしい、経営科も希望者は簿記などの資格試験勉強とか。
ましてやヴィラン襲撃されたからプロヒーローである先生方をバラけて配置はできないだろうし。
「筆記はゼロ、実技で切島、上鳴、芦戸、砂藤、あと瀬呂が赤点だ」
「行っていいんスか俺らあ!!」
「確かにクリアしたら合格とは言ってなかったもんな、恥ずい」
いやでも最初に瀬呂君が峰田君を逃したからなんとかなったんだけど、そこまで評価されなかったのかな?
「今回の試験我々敵側は、緑谷と爆豪を除いて生徒に勝ち筋を残しつつどう課題と向き合うかを見るように動いた。でなければ課題云々の前に詰む奴ばかりだったろうからな」
セメントスに対してはとにかく殴る以外のアプローチが必要だったのか。確かに二人とも殴って捕えるとか言って突っ込んでいったしね。
校長先生には勝ち目ないような?でも二人は何をすればいいのかの判断も出来ないというやらかしをしでかしてたからね。
「本気で叩き潰すと仰っていたのは?」
「緑谷はな、爆豪も加減はされてたろ?
他の連中は追い込む為さ、そもそも林間合宿は強化合宿だ。
赤点取ったヤツらこそここで力をつけてもらわなきゃならん。
ま、合理的虚偽ってやつ」
「「「「ゴーリテキキョギィー!!」」」」
いや相澤先生なら期末テストで本当に駄目判定されてたら除籍だったのではないかと。
途中で真面目な飯田君が水を差したりしたけど、相澤先生は全て嘘ってわけではないと告げる。
「赤点は赤点だ。お前らはB組の物間と共に合宿中に別途補習時間を設けている。
ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツいからな。
あと上鳴と芦戸、テスト前に随分と余裕な態度で浮かれていたが今後もその姿勢だったら、今後の課題を倍にするからな?」
まあ、舐め腐った二人には丁度いいかもね。何なら僕が文系、理系サーヴァント直伝の追加授業をしてあげようかな。
「まぁ何はともあれ全員で行けてよかったね」
全員行ける事が分かってテンションが上がる皆。
けど峰田君が不穏な雰囲気を出してるな。警戒しないと。
「あ、じゃあさ!明日休みだしテスト明けだし、ってことでA組みんなで買い物行こうよ!」
葉隠さんの提案に場が盛り上がる。
うん、楽しそうだ。中学時代は勉強や特訓ばかりで同世代の誰かと買い物なんてしたこと無かったし。
「おお良い、何気にそういうの初じゃね?」
「おい爆豪、お前も来いよ!」
「キャンプ用品は大概持ってるから買うもんねえんだが。まあ、良いぜ」
かっちゃん登山が趣味だから休日は色んな山に行ってるからね。
「轟君もいかない?」
せっかくなんだし、どうだろう?
「悪い、休日は見舞いだ」
「ノリが悪いよ空気読めやKY男共ォ!!」
そんな感じで明日の予定は決まった。
楽しみだなあ。
―――
そして翌日。
僕は今A組の生徒と共に県内最多店舗数を誇るナウでヤングな最先端である来椰区ショッピングモールに来ていた。
メンツは麗日さん、芦戸さん、八百万さん、葉隠さん、常闇君、飯田君、切島君、峰田君である。
各々買う者の目的がばらけているため各自解散して動いていた。
「さて……僕一人になりましたから用があるなら付き合いますよ」
「……へー、気づいてたんだ。」
一般人を装って近づいてくる手男、死柄木に僕は顔を向けないまま声を掛ける。
「んで、ヒーローに連絡するのか?」
「いいや。君ならその間に数人は殺しそうだ。そしてその騒ぎで大勢の人が恐怖で逃げるために個性を使って二次被害が出る。そんなリスクを僕は犯さないよ。腰を掛けて話そう。その方が互いにフェアだ」
「いいね」
死柄木は微笑みながら僕の隣に腰を掛ける。
「お前の事は調べさせてもらったよ緑谷出久。まさかU〇Jで邪魔した女がお前だったとはな。本当にどういう個性なんだ?」
「そんなこと言われても僕も分からないんだよね。言っとくけど五本の指で個性を発動させようとする行為を少しでもしたら君の両手首の関節を外して指を一本逆に曲げるよ」
「……出来そうだな、お前。もしかしてこっち側の人間じゃないのか?」
「そんなわけないだろ。でもしなければ死ぬ。生きるためなら最低限度の努力で最大限の成果を出す。それが策を講じる上での基本だよ」
「なるほど……んで、こっちとしては聞きたいんだよ。大体なんでも気に入らないんだけどさ、今一番腹立つのはヒーロー殺しさ」
そう言って死柄木は虫唾が走った様な顔をしながらステインと会った時の事を話す。
「いくら能書きを垂れようとも結局あいつも気に入らないものを壊している。俺と何が違うと思う?緑谷」
「……君の事は良く知らないから断言はできない。でもこれだけは言える」
僕は真っ直ぐと死柄木の目を見る。
「……明確な目的が無い、信念が無い。ただ気に入らないから壊してる。やっていることが子供なんだ。欲望が無い悪意はただの我儘。正に今の君だ」
「……まるで信念ある悪意にあったことがあるみたいな言い方だな」
死柄木の言葉に前世で会った七つの人類悪のひとつ『憐憫』の理を持つ獣が脳裏に過った。
「……否定も肯定もしない」
「だがおかげで分かったよ。ああ…スッキリした。点が線になった気がする。なんでヒーロー殺しがムカツクか…なんでお前が鬱陶しいか、わかった気がする。全部、オールマイトだ」
深くかぶったパーカーからは不敵な笑みを浮かべている死柄木弔の顔があった。
「そうかぁ…そうだよなぁ。結局そこに辿り着くんだ。何を悶々と考えていたんだ、俺は。こいつ等がヘラヘラ笑って過ごしているのも、オールマイトがヘラヘラ笑っているからだよなぁ。救えなかった人間がいなかったかのようにヘラヘラ笑っているからだよなぁ!!」
その時死柄木弔の中で明確な悪意が芽生えた。
「話せてよかったよ、緑谷出久」
死柄木がその場を立つと丁度麗日さんが来た。
「デク君、その人は?」
「ただの知り合いだよ、麗日さん」
「連れがいたのか、ごめんごめん」
死柄木は一般人を装い明るい顔であいさつする。
「じゃあ行くわ。追ったりしたら……わかるよな。」
「僕がそこまで阿呆に見える?最後に一つ、死柄木弔。AFOは何が目的だ?」
「死柄木・・・!?」
僕の言葉に麗日さんは驚くが手で制する事で彼を刺激しないようにする。
「……しらないな。それより気を付けな。次会う時は殺すと決めた時だ。」
死柄木はそう言うと人ごみに紛れその場から去った。
そのあと麗日さんが警察に連絡をしてデパートは一時封鎖されたが死柄木は既にいなくなっていた。僕はその日のうちに事情聴取を受け、死柄木と話した内容を話した。
僕が警察署から出ると母さんが出迎えた。帰りは警察の車で送ってもらった。
そして強化合宿は予定をすべてキャンセルし当日まで一部教師以外知らせないという判断が下った。
そして夏休みに入る終業式の放課後、オールマイトが僕を休憩室に呼んだ。
「どうかしたんですか、オールマイト?」
「実は招待状が届いたんだ。君も知っているだろう?I・アイランド」
I・アイランド。世界中の有能な科学者たちを一万人以上集めて住んでいる学術人工移動都市だ。でもなんでそんなことを?
「実は古い友人の娘から招待状が届いてね。君の事を話したら是非会いたいと言っているんだ」
オールマイトの古い友人の娘さんか。どんな人だろう。
「一般公開のプレオープンを記念してパーティーが開かれるから君も正装を持ってきてくれ」
「わかりました」
こうして僕はオールマイトと共にI・アイランドに行くこととなった。