英霊の武器や宝具を調べたいといったメリッサさんに腕を引かれながら目的地であるデヴィット博士の研究室へと向かう。
移動中に、英霊憑依という個性は他に何ができるのかどんな武器があるのかとキラキラした眼差しで矢継ぎ早に質問してくるので何とか置いていかれない様に答える。
僕達が話している間、蚊帳の外にされたオールマイトはちょっと寂しそうにしていた。
そして到着した研究室。
どこか憂いのある表情で携帯を眺めるデヴィット博士の姿、そんな彼を驚かせるようにオールマイトを招待したのだとメリッサさんは告げた。
前々から話しはしたがっていたようだが今日招かれたのはデヴィット博士の研究が一段落したお祝いだったようだ。
友人との再会にテンション高く接するオールマイト。エンデヴァーなどの同郷のヒーローとはどこか壁というか距離があることを気にして寂しそうにしていたから余計に嬉しいのだろう。
「緑谷少年、紹介しよう。私の親友、デヴィット・シールドだ」
「はじめまして緑谷出久です。オールマイトを支えた稀代の発明家にお会いできて光栄です」
「紹介の必要はないようだね」
好意的に笑ってくれる彼は流石オールマイトの相棒なのだろう。
「コホ、コホ」
些かわざとらしいオールマイトの咳。宝具によって負傷は治っているはずだから、デヴィット博士と内密な話しをするための人払いの意図があるのだろう。
「オールマイトとは久しぶりの再会だ。すまないが積もる話をさせてくれないか」
流石は元相棒なのかデヴィット博士はオールマイトの意図を正確に察したようだ。
「メリッサ、ミドリヤ君にI・エキスポを案内してあげなさい。憧れの彼とデートできる機会だしね」
「もうパパったら」
うん、アメリカンなやり取りだね。
「サム、君ももう休んでくれ」
人払いが済んだ後に彼らは話すのだろう、オールマイトの秘密とこれからの事を。
ここに来る前にオールマイトから聞いたのだ。自分の全てを彼に話すと。
できれば僕も同席したかったが親友同士だけの方が伝えやすいか。
二人の話し合いが良い方向に行くことを願っているとエキスポ会場に辿り着いた。とても人工の島とは思えない光景。
自然に出来たものは凄い、けど自ら作り上げる技術と熱意もそれに劣らないくらい凄い。
周囲を見渡せば普段お目にかかれない各国のヒーロー達がいる。中には熱心にファンサービスをする人物もいるほどだ。
ヒーロー社会の最先端に触れる良い機会なのは間違いないからだろう。
ちなみに僕の招待チケットは巡り巡って普通科の渡我さんに渡り、仲の良い麗日さんと共に来るそうだ。A組の皆もそれぞれの手段で参加するのだとか。
「あ、イズク。あそこのパビリオンもおすすめよ」
ガラス張りのサッカーのスタジアムのようなパビリオンに入ると、広い建物内にさまざまなヒーローアイテムが展示されている。
「最新のヒーローアイテムがこんなに」
「イズク見て見て!この多目的ゴーグル、飛行能力はもとより、水中行動も可能なの!」
流石はI・アイランドのアカデミーに通う才女。自分の父であるデヴィット博士の特許が元で作られているからという理由もあるだろうが、わかりやすく詳しく解説してくれる。
そうやって色々なサポートアイテムをメリッサさんの解説付きで見ていく。
そしてある程度見て回った後、二人でと近くにあったベンチで休むと今度はメリッサさんが質問してきた。
「ねえ、イズク。貴方の個性には色んな英霊が居るのよね?もしかしてだけど、その中に私達みたいな人が居たりする?」
メリッサさんが期待の籠った眼差しを向けるのを見て恐らくあの偉人の事を思い浮かべているのかな。
「ええ、居ますよ。憑依できるのはレオナルド・ダ・ヴィンチ、トーマス・エジソン、ニコラ・テスラ、チャールズ・バベッジですね」
僕は歴史で名を残した科学者や天才の名を上げていく。
よくよく考えたらこの四人がそろったらI・アイランドがとんでもない事になりそうだなぁ。
「凄いわ!イズクが上げた四人はいずれも歴史に名を遺した天才達じゃない!そんな彼らの力を借りれるなんて素敵だわ!」
僕が上げた四人の英霊の名にメリッサさんがテンションが爆上がりして大はしゃぎしている。
それからは僕の個性に関する話が続いた。僕が話す度にメリッサさんは色んな表情を見せた。
レオナルド・ダ・ヴィンチとチャールズ・バベッジの姿を知った時は困惑し。
トーマス・エジソンの霊基は全てのアメリカ歴代大統領達が合成されていると話せば目を輝かせ。
ニコラ・テスラの宝具にはゼウスの雷の名を冠していると知れば驚く。
そんな感じで色んな話をしていると不意に背筋に冷たい物を感じた。
「楽しそうやね、デク君」
「そうですね。楽しそうです」
横から聞き慣れた声がしたので振り返るとそこにいたのは麗日さんと渡我さんだった。
なぜか麗日さんと渡我さんは笑顔でありつつもどこか平坦な様子だった。
「……楽しそうやね」
「ええ私と話す時より会話が弾んでいました」
何だろう、二人から清姫と静謐に詰め寄られた時の様な危機感を感じる。
「緑谷さん、そちらの方は?」
この気まずい空気の中で一緒に居た八百万さんがきょとんとした様子でメリッサさんの事を聞いてきた。
「緑谷、聞いちゃった」
八百万さんの横でただ一人面白そうにニヤニヤしている耳郎さんが個性であるイヤホンジャックをユラユラと操りながら言う。
個性を悪用して僕達の会話を盗聴してるよこの人。
「お友達?」
「はい、学校のクラスメイトなんです」
僕がクラスメイト達の事を紹介するとメリッサさんは何か妙案を思いついたのか皆に話しかけた。
「よかったらカフェでお茶しません?」
メリッサさんの行きつけのカフェで改めて話し合うことになった。