My Hero Grand Order   作:BLUE@

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皆でI・エキスポ巡り

「なるほどかの有名なデヴィット・シールド博士にお会いしに来て、今は友人二人だけで話されていると」

 

カフェに移動し問い詰められることしばし、なんとか二人で見て回っていた理由を説明することができた。どこかホッとしている二人の様子が不思議だけど納得してくれたのが幸いだ。

 

「ま、初対面の美少女と腕を組んでデートしていたのは事実だけどね」

 

ニヤニヤと楽しそうに笑う耳郎さん。君、性格悪いよ。また麗日さんと渡我さんが不穏な空気を纏い始めたよ。

 

とりあえず何とか落ちついたので話題は雄英高校の日々に変わる、その中でも最近のイベントである職場体験が特にメリッサさんの興味を引いたようだ。

 

「へー!お茶子さん達、プロヒーローと一緒にヒーロー活動したことあるんだ!」

「訓練やパトロールくらいですけど」

「ウチは事件に関わったけど、避難誘導くらいで」

「私はなぜかテレビCMに出演するハメに」

 

僕はヒーロー殺しステインを秘密裏に捕縛してましたとは言えないよね。

 

「僕はサー・ナイトアイの事務所でお笑い修行をしながら書類仕事をしてましたね」

「「「なんでっ!?」」」

 

僕の職場体験に皆が突っ込むけど実際にやったんだよなあ。元気とユーモアが超大事な人だから。

 

「マイトおじさまのサイドキックだった方ね、凄いわ!!」

 

メリッサさんの明るくフランクな態度が壁を作らないで親しく接することができるみたいだ。おかげで皆はメリッサさんとかなり打ち解けていた。

 

「お待たせしました」

 

スッと注文したオールマイトサイダー(レモンサイダー)を置いたのは聞き覚えのある声だった。

 

「上鳴君に、峰田君?」

「あんたら何してんの?」

 

耳郎さんの疑問に二人は、エキスポの間だけの臨時バイトだと答える。他の皆と違ってナンパと趣味でお金が足りなかったそうだ。

 

「しかし緑谷よお、また新しい女かアアン?随分楽しい時間を過ごしてたのかよおお」

 

と峰田君がメリッサさんに目ざとく気づいて額に青筋を浮かべ血涙を流しながら僕を問い詰めてくる。

 

「両手に華どころか、全身に花畑だな」

 

上鳴君は羨ましそうだけどどちらかといえば呆れている感じだ。

 

いや、そういう訳じゃないからね?

 

僕は二人の誤解を解こうと説明しているとまた聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「君達!遊んでないで労働に励みたまえ!」

 

声がした方に向けると叫びながらこちらに走ってくる飯田君と轟君がいた。

 

話を聞くとI・エキスポはヒーロー業界の一大イベント。だからこそ飯田君や轟君のようなヒーロー一家や八百万さんのようなスポンサー関連にも招待状が贈られるそうだ。

 

他のクラスメイト達はアルバイトの上鳴君と峰田君を除いて一般公開で参加するとのことだ。だから明日に備え今頃はホテルでのんびり寛いでいるようだ。

 

「良ければ、私が案内しましょうか?」

「いいんですか?」

「うん!」

「やったー!」

 

I・アイランドをよく知る彼女の申し出に女子達が喜び、上鳴君と峰田君もバイトそっちのけで便乗しようとするが雄英高校の信用にも関わるので認められないとのことだった。

 

飯田君と合流し、まだ招待客のみでお客もまばらなカフェを後にする。

 

さて次はどうするかと悩んでいると、近くの会場からズンと大きな破壊音がした。そこは体験型アトラクションのコーナーだとメリッサさんが教えてくれたので皆と向かうことにした。

 

敵を模したロボットを次々と倒していくアトラクション、「ヴィラン・アタック」。

 

その会場にて15秒というトップタイムを叩き出して立っていたのは我が幼馴染であるかっちゃんだった。どこか物足りなそうな様子の彼はスタート地点に戻ると観客席の僕達に気づいた。

 

ボムッと最小限の予備動作で飛び上がり、こちらと合流するかっちゃん。

 

「来るのは聞いてたがプレオープン組は全員で回ってんのか?」

「かっちゃんは一人?」

「ああ」

 

かっちゃんは今までずっと一人で体験型アトラクションを制覇していたそうだ。

こちらに連絡しなかったのは予定あったら悪いだろと気を遣ってとか。

メリッサさんにかっちゃんを紹介しつつ今までのいきさつを説明した。

 

「せっかくだしお前もやったらどうだあのアトラクション。ミルコとの敵捕縛に比べたら退屈だがな」

 

とかっちゃんが提案してきた。

 

「リアルヴィランアタック体験者」

「職場体験なのにヴィラン捕縛しまくっとたよね」

 

そんなかっちゃんに女子達はこんなコメント、職場体験だとかっちゃん、轟君、八百万さんと拳藤さんが有名になったからね。そしてヴィラン・アタックかあ。

 

「折角だし、僕も参加しようかな」

 

僕は早速、ヴィラン・アタックのステージに上がる。

 

「さて、飛び入り参加してくれたチャレンジャー!いったいどんなタイムを叩きだしてくれるのでしょうか!」

 

MCが盛り上げる中、僕は折角だからあの英霊の力を借りることにする。

 

「憑依召喚。キャスター【チャールズ・バベッジ】」

 

選んだのはフォーマルスーツのような意匠が目立つゴツいロボット。

 

だがその正体は十九世紀に存在した数学者にして科学者。

 

世界の変革を夢見た蒸気王。

 

蒸気機関を用いた世界初となるコンピューター「階差機関」「解析機関」を考案した天才碩学。

 

現代では「コンピューターの父」とも呼ばれる彼の力を借りた僕の姿に会場に来ていた人たちは驚く。

 

「え?何あれ?ロボット?」

「めっちゃ蒸気吹かしてる」

「凄いわ!素材は何を使用しているのかしら?後構造も知りたい!」

 

クラスの皆もこの姿に困惑している。

メリッサさんだけは科学者なのかこの英霊の体に興味津々の様だ。……バラされたりしないよね?

 

「すごい個性ですね!それではヴィラン・アタック、スタート!」

 

スタートした瞬間、襲い来る仮想ヴィランに対して僕は早速宝具を使う。

 

「見果てぬ夢を此処に。我が空想、我が理想、我が夢想――【絢爛なりし灰燼世界】!!」

 

この宝具は彼が生前に設計した「階差機関」「解析機関」が真に完成していれば到来していたはずの、蒸気機関華やかなりし文明世界。

すなわちバベッジの渇望と夢想が昇華された固有結界であり、彼の心であり、身に纏う機関鎧そのもの。

 

真名解放時には内部蒸気機関が全力稼働し、敵に突撃しつつ高威力の範囲攻撃を行う。

 

それにより目の前の仮想ヴィランは物言わぬ鉄屑と化した。

 

「おーーっと!なんと驚異の10秒ジャスト!変身したかと思えばまさかの展開!さぁ、これを超える挑戦者は現れるのか!」

 

会場が歓声に包まれる中、僕はみんなの元へと戻る。

 

それからは皆で一緒に閉園時間までI・エキスポを堪能した。

 

レセプションパーティーにも参加するため一旦ホテルで正装に着替える必要があるのだがその前に労働に勤しんでいた上鳴君と峰田君にメリッサさんが用意してくれた招待状を渡す。I・エキスポでのバイト期間は多忙になること間違いなしなのでその前にせめて今日くらいはということだ。

 

「「俺達の労働は報われたあ!!」」

 

と抱き合う二人だが、まだまだこれからだということは忘れないでほしい。

飯田君がテキパキと委員長らしく仕切り、その場は解散された。

 

「イズク、ちょっと私につき合ってもらえないかな?」

 

 

―――

 

 

「ここが私の通うアカデミーの校舎。そしてここが私が使っている研究室。散らかっててごめんね」

 

たくさんの資料と本格的な実験機械、テーブルの上には実験器具やノートが散乱している。それだけではなく資料棚には彼女の功績を示すたくさんのトロフィーや盾まで置かれていた。彼女がガサゴソと何かを探す間に僕はそれらを眺めていた。

 

「実はね、私、そんなに成績良くなかったの。だから一生懸命勉強したわ。どうしてもヒーローになりたかったから」

 

彼女の語る自身の過去。それはどこかかつての自分に似ていた。

 

「プロヒーローに?」

「ううん、それはすぐにあきらめた。だって私、無個性だし」

 

メリッサが続けた言葉につい目を見開いてしまった。

 

「無個性ですか……」

「5歳になっても個性が発現しないから、お医者さんに調べてもらったの。そうしたら個性が発動しないタイプだって診断されたわ。」

 

何でもないという風にいうメリッサさんについ先程見ていた写真へ視線を向ける。

5歳ぐらいであろうメリッサさんが今よりも若いデヴィッド博士に抱き上げられている、家族の写真。

このぐらいの頃にそう診断されたのだろうと思うと、少し自分と同じであると思ってしまう。

僕とメリッサさんで違うとすれば個性の有無と選んだ道だろうか。

 

「……メリッサさんは、個性がない事をどう思ったんですか?」

「勿論ショックだったわ、でも私にはすぐ近くに目標があったの」

「デヴィッド・シールド博士、ですか?」

「ええ、パパもヒーローになれるような個性を持ってなかったけど、科学の力でマイトおじさまやヒーロー達のサポートをしている、間接的にだけど平和のために戦っている……そう、それが私の目指すヒーローのなり方」

 

メリッサさんは近くに目標があったからこそ、こうして進んでこられたのだろう。そう思うと少し羨ましく感じてしまう。

 

「あった」

 

彼女は見つけてきた箱をテーブルの上に置き、蓋を開ける。そこに入っていたのは、上部にボタンのついた細いベルトのようなものだった。

 

「これはマイトおじさまを参考にしながらね、あれだけの力をどういう風に腕へ負担をかけずに使えるかっていうのを考えて作ったの、名付けるならフルガントレット、かしら?」

「……凄いですね」

「マイトおじさま並みのパワーでも三回は耐えられるぐらいの強度があるわ。良かったらイズクが使って」

 

そう言ってフルガントレットを渡してくるメリッサさんに僕は首を傾げると彼女はさらに続ける。

 

「だってイズクは強くて、優しい人だもの、それに困ってる人を放っておけなさそうだったから。

そんな貴方だからこそ使ってほしい、英霊の力を借りる貴方には必要のない物かも知れないけど。

今の私の技術の結晶であるフルガントレットを」

「メリッサさん……分かりました。ありがたく貰います」

 

笑みとともに伝わってくる彼女のエール。

その思いに応えなければと身が引き締まる気持ちとなった。

 

 

―――

 

 

「サム、例の計画は中止にしてくれ。もう必要なくなった」

 

オールマイトと二人になった時に語られた個性の真実、そして彼の身に何があったかを。

今まで秘密にされていたことはショックではあるが、オールマイトやサー・ナイトアイとは違い家族のいる私を巻き込みたくないと思われても仕方のないことだった。

 

「後継者、新たな光か」

 

親友の見出した次代。

 

その実力は体育祭で知ってはいる。彼の持つ個性は確かに強力なのだろう。だけどオールマイトの代わりになるとは正直思えない。

 

ましてや全盛期の頃よりも強いかもしれないと、笑いながら言われてもあの黄金期を駆け抜けた私が信じられるわけがなかった。

 

「けど君が決めたことだしね」

 

不満はある。

けど否定するような浅い付き合いではない。

緑谷出久についてはこれから知っていけば良い、なにせ彼はオールマイトと出会った時よりも若いのだから。

 

「あとはこれをどうにかしないとな」

 

個性増幅装置、オールマイトの光を取り戻すための発明。だがオールマイトが使わないのであれば画期的であっても危険な発明だ。

 

立案に準備までさせてしまったサムには申し訳ないがなんとか償わないといけないな。

 

まあ色々とやることは出来たが親友と腹を割って話せたのは良かった、これもサプライズでトシを呼んでくれたメリッサの優しさのおかげだなと思う。

 

「さてレセプションパーティーの準備と、礼服は何処だったか」

 

研究者である自分には何度着ても着慣れないが、美しく着飾る愛娘に恥ずかしくない格好でいないとね。

 

 

―――

 

 

デヴィット・シールドは親友との語り合いにより企んでいた計画を中止にした。

あくまで親友のための装置だからこそ、親友が必要ないのなら止めることが出来たのだ。

 

だが彼は知らない。

 

それで止まれない程に助手は追い詰められていたことと、最初から利用する気でしかなかったヴィランの思惑を。

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