レセプションパーティーに参加するために正装に着替えて約束の場所に行ったらそこには男性陣が到着していた、女性陣はドレスだから時間がかかっているのだろう。
「ごめん、遅刻してもーたぁ」
「ごめんなさい」
時間厳守と飯田君が唸っていると、可愛らしくも大胆なドレスを着た麗日さんと渡我さんが到着した。
さらに八百万さんと耳郎さんも集まった。
「やっぱホテルで寝てれば良かったか」
そんな華やいだ空気が性に合わないのか、かっちゃんはどこか面倒そうに呟いた。
「皆まだここにいたの?パーティー始まってるわよ」
自動ドアが開き現れたのはメリッサさん。メガネを外し華やかで大胆なドレス姿は綺麗どころ揃いの中で一際目立っていた。
女性陣はドレス姿に盛り上がり、上鳴君、峰田君は大興奮。飯田君は時間を気にして、轟君は無反応で、かっちゃんはうんざり気味と皆それぞれの反応だった。
だが穏やかな時間はそこまでとなる。
鳴り響く警報、発動する警備システム。
セントラルタワーにて閉じ込められた僕達は、I・アイランドをよく知るメリッサさんの存在もあり現状に疑問を抱いていた。
「携帯も圏外だ、どこにも繋がらねえ」
「エレベーターも反応ないよ」
「マジかよ~」
出来ることは試してみるがその反応は思わしくない。その様子に何か嫌な予感がする。
「パーティー会場に行くべきかな?」
とりあえずそこには各国のトップヒーローにオールマイト、そしてI・アイランド屈指の頭脳であるデヴィット博士がいる。ならまずは合流すべきだろう。
「だったら非常階段から会場近くに行ける筈よ」
隅にある重そうなドアを指差しながら彼女は言う。ならば行動あるのみだ。
そして行った先、パーティー会場を覗き込めばそこはヒーロー達が拘束されヴィラン達により銃を向けられていた。
とりあえず情報収集としてオールマイトに携帯の光で気づいてもらい、耳郎さんのイヤホンジャックで聴こえるように小声で話してもらった。
皆で相談した結果、まずやるべきことは。
「警備システムまで行って、システムを元に戻すのが最善かな?」
「だな。ついでに遭遇したヴィランも殺れば良いしな。あとは連れてかれたデヴィット博士と助手が厄介だな」
「とりあえず、僕がアサシンクラスの誰かに憑依して探してみるよ」
「ああ、頼む」
とかっちゃんとサクサク方針を決める。
パーティー会場の救出は容易い。だがそれで警備システムを動かされることが問題なのだ。
だったら警備システムを解放してから殲滅すればそれで問題は解決だ。
「って何を動こうとしているのかね!オールマイトは逃げろと言っていたではないか!?」
「飯田さんの言うとおりですわ。私達はまだ学生、ヒーロー免許も無いのに敵と戦うわけには」
「どこに逃げんだ、島だぞ此処」
「資格とか罰とかは助けた後で考えるよ」
規律やルール、さらに自分らの実力を加味した飯田君と八百万さんの判断は正しい。
けどそれで助けられるモノを取りこぼすことを僕達は許容できないんだ。
巻き込むつもりは無い、これは僕の勝手な行動なのだから。
「じゃあ警備システムとデヴィット博士の捜索は僕がやるから、かっちゃん頼むよ」
「おう、気を付けろよ」
英霊の身体能力を持ってすれば警備システムのある最上階までもそう時間はかからないだろう。辿り着いたらヴィランを撃破してナイチンゲールさんで職員達を治療すればなんとかなる。
「待ってっ!!」
電子機器は電波障害とかで使えなくなるからアナログな地図は必須だと思って懐からセントラルタワーの見取り図を取り出していると、メリッサさんの必死な声がした。
「イズクがなんとかするの?イズク一人でなんとかする気なの?」
「それが最善だからね」
全員の心が決まっている訳ではない、まだどうするか揺れている状態だ。ならば協力を仰ぐべきではないと思う、迷いを抱えて戦いの場にでるべきではないのだから。
「出久君、何か私にできることはないのですか?」
渡我さんの共に戦いたいという言葉、しかし目指す場所が最上階、200階となると集団で動くメリットは無い。
「同感だ、俺も出来ることはしたい」
「ウチだって」
轟君と耳郎さんも同じ気持ちだ。いやヒーローを志す皆がなんとかしたいと思わないわけがないのだ。
「どうしようかっちゃん?」
僕が単独で突貫するのは確定だ。あまりに移動速度に差があるからだ。けど皆の気持ちを無下にしたくない。
「囮だな」
「「「オトリ?」」」
「連中も予備戦力を警戒して対処できる配下ぐらいいるだろう?そういった腕自慢のヴィランを引き付ける役がいたほうがいいだろ。そもそもそうやって動いてる連中とは別に本命がいるとは思わないだろうしな」
つまり本命は僕で皆が囮になるわけか。
「つーか確かイズクは飛べたよな?空から侵入は出来ないのか?」
「それは出来るよ」
その方法で行くならメリュジーヌの方が良いかな?
「あ、外部からの侵入は止めた方が良いわ。警備用のドローンがある筈よ」
隙がないなあ、流石I・アイランド。僕なら問題ないけどそれで敵側にバレるし。
「なら目立つ囮はより必要だな」
突破できても隠密行動のための外部侵入だからね。発見される可能性があるならやめた方が良い。
「よし、そんじゃデクは警備システムの奪還とデヴィット博士と助手の救出。
もう一組は非常出口から隠密行動と見せかけた囮役どっかでわざとらしく警報鳴らすぞ。
あとの残りはパーティー会場近くで待機だ、警備システムが奪還されたらヒーロー達の援護をすりゃいい」
やっぱりこういった時の仕切りはかっちゃんがいると助かるよね。
「緑谷君に負担が大きいが仕方ないか」
「機動性の問題ばかりはどうしようもありませんわ」
「無重力で軽くなって引っ付いていくとかならどうやろ?」
皆もどうやらそれで納得してくれたみたい、怖い気持ちがあった峰田君もそれならばと了承してくれた。
「待って、私もイズクについていくわ」
「まあ警備システムの設定変更できるヤツは必要だし、妥当だな。場所にしても携帯のナビが使えねえから案内してもらった方が確実だ」
確かに一緒に連れて行った方が良いか。
「お願い」
彼女もヒーローを志した誰かを助けたいと思う人、引き下がりはしないか。
「分かった、一緒に行こう。君は必ず僕が守ってみせるから」
危険があることはわかっている、それでも出来ることはしたいという彼女の思いを無下にはしたくない。
「決まりだな」
飢えた肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべたかっちゃんは宣言する。
「三方別れての襲撃犯撃退。テメェら、しくじるんじゃねえぞ」
「「「ああっ!!」」」
その場の全員が力強く頷いた。