「オールマイト!!」
「緑谷少年、そしてメリッサ、二人共良くやってくれた!!」
親友を助けだしたオールマイトに駆け寄り二人の安全を確認する。
「ミドリヤ君、メリッサ、サムを見なかったかい?」
辛そうな表情で博士は聞いてくる。
恐らく博士はサムの遺体を僕達が見たのではないかと思ってしまったのだろう。撃たれたその時に居たのなら彼が助かるとは思えないからだ。
「治療したので無事です。だから安心してください」
だからこそ僕はニッコリと笑う。すこしでも彼の心の暗雲が晴れるようにと。
「そうか、良かった。本当に良かった」
助手が無事だという情報にホッとして力が抜けてしまい博士はその場に座りこんだ。
「パパ!!」
屋上まで上がってきたメリッサさんがそんな博士を支えるように寄り添った。
「これにて解決。だね」
とオールマイトが場を収めるような発言をしたが僕はそうは思わない。
「どうやらまだみたいですよ」
突き上がった鉄柱、地面を破るように伸びてきた鉄のコードを魔術で破壊する。
「オールマイトの個性が減退してるから創り上げた研究だとほざいていたが、充分にトップレベルじゃねえか」
周囲の鉄がまるで筋肉組織のように蠢き、ヴィランを中心に一つの形と成していた。
「まあいい、オールマイトをぶち殺せばそれだけで釣りがでる。その功績だけで世界中のヴィランが俺を歓迎するだろうよ!!」
鉄を操る個性、その柔軟さと多様性と殺傷能力はセメントスすら凌駕する。
セントラルタワーを構築するあらゆる鉄がヴィランを中心に集まり巨大な異形の塔へとなっていく。
ヴィランの肉体そのもののように操れる武器であり防具であり砦だ。
「これがデイブの」
「パパの作った装置の力」
絶句するオールマイトに、呆然と呟くメリッサさん。巨大なものの存在感はそれだけで人を圧倒する。
「行きます」
だからこそ僕は足を踏み出した。
「「「?!」」」
いつだってその一歩があるから前を見られるのだと、希望を信じられるのだと知っているから。
闇の帝王が統べるヴィランの繁栄を我が身を削って終わらせた英雄を知っているから。
絶望の世界で歩みを止めなかった人の、その背中を見てきたから。
「緑谷少年、私も」
「オールマイト、見ていてください。貴方の次代、未来の平和の象徴の姿を」
僕は皆の前に立ち、彼らに新たな光を見せるに相応しいあの英霊を憑依させる。
「憑依召喚。セイバー【アルトリア・ペンドラゴン】」
選んだのは英雄譚の代名詞たる「アーサー王伝説」に登場するブリテンの伝説的君主。
マーリンの導きにより弱冠15歳で選定の剣を引き抜くことで、ブリテンの王として選定されて、人々の笑顔のために戦った騎士王。
「悪いですが、決着を付けます」
伝説の騎士王の力を憑依させた僕は目の前のヴィランに彼女の宝具を使う。
「束ねるは星の息吹、輝ける命の奔流。受けるが良い――【約束された勝利の剣】!!」
この宝具はアーサー王伝説でよく知られるかの有名な剣。
人々の「こうであって欲しい」という想念が星の内部で結晶・精製された神造兵装であり、最強の幻想。聖剣というカテゴリーの中において頂点に立つ最強の聖剣。
真名を解放することで所有者の魔力を光に変換し、集束・加速させることで運動量を増大させ、光の断層による”究極の斬撃”として放つ。
それは言うなれば指向性のエネルギー兵器。第三者からは巨大な光の帯に見えるが、本来攻撃判定があるのはその先端のみなのだが、あまりも膨大な魔力量ゆえに先端以外にも熱を持たせ、結果として放たれた一撃は地上を薙ぎ払う光の波となって射線上にある一切を消し飛ばす。
対城宝具に分類されるとあって、弱体化しても本気で放てば数km先から発動が確認でき、攻撃対象がどれほど強大な構造物や大群であっても瞬く間に消滅させ得る。
その光の奔流に襲い来る鉄柱と触手が如き鉄パイプを切り裂いていき、本体のヴィランに直撃すると巨大な光の柱が現れる。
「……凄い」
「……これが彼の力」
僕の後ろでメリッサさんとデヴィット博士の声が聞こえる。
そして光が収まるとその中心にヴィランが倒れていた。
「終わったかな?」
すっかり白みだす空を見上げ、次に後ろの三人に目を向ける
オールマイトは頼りになる後継者のその輝ける可能性に微笑み。
デヴィット・シールドは呆然としていて。
メリッサさんは頬を赤らめながら僕を見ていた。
それを見た僕は確かに示したのだ。
世界に希望は、闇を切り裂く光はあったのだと。
―――
そんな騒動を終えて翌日。
I・アイランドのなかにある湖のそばのテラスで、美味しそうな肉や野菜が鉄板グリルの上でジュージューと良い音を上げて焼かれていた。
「さぁ食べなさい!」
「いっただきま~す!!」
オールマイトの奢りでバーベキュー。
集まったA組の食いしん坊達が競うように飛びかかる中で、僕は一歩離れて見守っていた。
昨夜の騒動、雄英生達ととある一般人により解決した事件は様々な要因の結果、真実を隠して発表されることになった。
そして、彼らの活躍を労うためと延期したI・エキスポの代わりにI・アイランドに滞在している雄英高校生達のためオールマイトがバーベキューをご馳走することにしたのだ。
昨夜ヴィランと戦い無事撃退したかっちゃんと切島君、轟君と飯田君は消耗もあってか肉にがっつき、それをみて男子達は負けるかと肉に食い付く。
ついでに僕も焼けた肉を奪われない様に必死に食らいつく。
宴もたけなわ、盛り上がるバーベキュー会場から離れ、昨夜の激戦地であるセントラルタワーを見る。青空の下、崩れた上部が目立っていた。
「イズク」
声をした方に振り返るとデヴィット博士とメリッサさんが居た。僕の個性で彼らにできた傷は全て治してある。
「サムが全ての罪を背負ったよ」
デヴィット博士が告げたのは事の顛末。昨夜の個性増幅装置の奪取を目的としたI・アイランド襲撃事件は彼を主犯として決着してしまったのだ。あまりにも早いその決定には他にも理由があった。
「そして私もI・アイランドから追放だ」
ヴィランのリーダーであったウォルフラム。ヤツはAFOと繋がりがあり、AFOはデヴィット・シールド博士の個性増幅装置の存在を知っている。
その事実はI・アイランドを治める上層部を怯えさせ、狙われる要因である博士の追放に踏み切ったのだ。
「まあ多少の猶予はあるから近いうちにだね」
だがサムの叫びを聞いた博士はどこか納得したような気分で受け入れていた。
「そうだね、せっかくだし日本の雄英高校で働くのも悪くないな、彼処なら警備も万全だしね」
ハハハと笑う博士。
その知能故に狙われることに彼は慣れているのかも知れない。
「ありがとうミドリヤ君、僕は新しい輝きを見つけたよ」
そう言ってデヴィット博士はオールマイトの方に向かっていった。
「ねえイズク、気にしているの?」
「うん、サムさんの事で少しね」
サムさんは悪人では無かった。
ただままならない現実に出来ることをしようともがいていたのだ。
「マイトおじさまもそうだった。いつも哀しみを抱えて前へと進んでいた」
「だから眩しくて憧れるんだよね」
遠いその背中を。
「イズクはマイトおじさまの後継者なんだよね?」
「うん、あの人から平和の象徴を託されたんだ」
「だったら私も、私もね」
メリッサさんは何かを決意したかのようにその言葉を口にする。
「いつかパパとマイトおじさまの関係のように貴方を支えるパートナーになってみせるから」
彼女が新たに見つけた目標に僕は微笑み。
「うん、期待している」
儘ならぬ現実が人を闇に落とす。
だが歩き続ける限り、足を踏み出し続ける限り、人は何度でも光を見つけることができるのだろう。