My Hero Grand Order   作:BLUE@

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服装ベストセンス決定戦と動き出す闇

「デク君。今暇?」

 

その連絡は突然だった。

夏休み中のある日、学校での自主練を終えて自室でのんびりしていたら突然麗日さんが電話してきた。

 

話を聞くと何でもクラスの女子皆で八百万さんの家に遊びに行く際、芦戸さんと葉隠さんが僕を誘って欲しいと頼まれたらしい。

 

何で僕を誘うのか分からなかったが特に断る理由は無いね。

 

「うん、良いよ。今すぐそっちに向かうよ」

「本当!良かった~。じゃあ皆に伝えるね!」

 

そう言って麗日さん嬉しそうな様子で電話を切る。

 

「そういえば芦戸さんと葉隠さん、僕を誘うなんて何かあるのかな?」

 

まあ、それは行けば分かるよね。

僕はとりあえず出かけるための準備をすることにする。

 

 

―――

 

 

そして数時間後、現在僕は。

 

「う~ん、どれが似合うかな~?」

「こっちなんて良いんじゃない?」

「これはどうでしょうか?」

 

クラスメイトの女子たちに女物の服を選んでもらっていた。

何故こうなっているのかというと何でも、夏休み中長期の外出を禁止された彼女達が少しでも楽しむために皆で女子会をすることを急遽決定。

 

最初は八百万さんの家でわいわい楽しく会話をしていたがその最中で僕の話題が出てきた。

様々な女性英霊の姿になる僕にどんな服が似合うのか色々議論し始め、その中で一緒に参加していたメリッサさんと渡我さんが実際に着せてみようと提案し全員が賛成。

 

彼女達の行動力によって瞬く間に準備をして、僕が来た瞬間に強制連行。今彼女達は僕の目の前で八百万さんが用意した色んな服を吟味していた。

 

「皆、楽しそうだなぁ」

 

僕は遠い目をしながら皆が僕に女物の服を着させようとする事実に目を逸らす。

そして遂にその時が来た。

 

「じゃあまずは、あたしだ!」

 

まず最初に来たのは芦戸さん。彼女が持ってきたのは何やら格好良い系の服装だった。

 

「緑谷!格好いい系の女性の英雄になって着てくれない?」

 

格好いい英霊か……あの人が良いかな?

 

「憑依召喚。ランサー【スカサハ】」

 

選んだのはケルト神話・アルスターサイクルにおける伝説の戦士。

 

異次元の国「影の国」の女王にして門番であり、槍術とルーン魔術の天才。

 

そんな彼女の力を憑依させた僕は芦戸さんに要望通りなのか確認する。

 

「えっと、これで良いかな?」

「おお~、緑谷。凄くセクシーな格好だね!うん、問題ないよ!」

 

セクシーって……まあこの英霊って体中のラインがくっきり浮き出た「全身タイツ」と表現される独特の衣装を身に纏っているからしょうがないけど。

 

「じゃあ早速着てみて!」

 

そう言って服を手渡してくる芦戸さんに僕は苦笑いしながら八百万さんが用意した試着室に入る。

 

そして着替えが終わり試着室から出ると皆は「おお~!」っと感嘆の声を上げる。

 

「良いじゃん良いじゃん!かっこいいよ緑谷!」

「すっご……スタイル抜群じゃん」

「凄く似合ってるよ!デク君!」

 

結構、好評のようだ。まあ、スカサハだからこの格好が似合うんだろうな。

 

「次は私だ!」

 

次に名乗りを上げたのは葉隠さんだ。その手にはとても可愛らしい服を持っていた。

 

「今度は可愛い姿に変身して!」

 

可愛い姿、かあ。それならあの英霊かな。

 

「憑依召喚。キャスター【ナーサリー・ライム】」

 

この英霊は実在する絵本・童話・昔話・童歌などの総称、おとぎ話の概念が、子供の夢を守る英雄としてサーヴァントになったという特殊な存在。

 

言ってしまえばおとぎ話の化身。サーヴァントが固有結界を作るのではなく、固有結界そのものがサーヴァント。固有の姿を持たず、マスターによってビジュアル・能力を自由に変化させることが出来る。

 

そして彼女に憑依させた僕は直ぐに着替えて皆に見せる。

 

「きゃー!かわいい!」

 

の姿に何か刺さったのか急激にテンションが上がって抱き着く葉隠さん。そんな彼女に触発されたのか皆も楽しそうに服を選ぶ。

 

「次は私ですわ!」

 

今度は八百万さんか。彼女の手にはドレスを持っていた。それならこの英霊かな。

 

「憑依召喚。ライダー【マリー・アントワネット】」

 

今度の憑依はハプスブルク家の系譜にあたるフランス王妃。

 

十八世紀、ルイ16世の妃。儚き貴婦人。欧州世界の「高貴による支配」を象徴する存在だ。

 

僕が憑依させた英霊の名に八百万さんは戸惑ったが、直ぐに持ち直しドレスを渡した。

 

その後、僕は次々と英霊を憑依させながら色んな服を着せられた。

 

アタランテでレースクイーン、

ドブルイニャ・ニキチッチで白いワンピース、

ブーディカで縦セーター(耳郎さんがバグった)、

マルタでロックな服装、

シャルロット・コルデーでメイド服(耳郎さんが血涙を流した)、

ジャンヌ・ダルクで和服、

源頼光でスーツ姿(耳郎さんが皆に羽交い締めされていた)

 

などなど様々な格好をさせられた。

 

こうして、僕を着せ替え人形にした服装ベストセンス決定戦(いつの間にか大会になっていた)は夕方まで続いた。

 

(まあ皆楽しそうだし、たまには良いよね)

 

僕は次々と服を持ってくる皆に応えて、着続けた。

 

因みに優勝者は爆乳の見過ぎでヤバイ状態になっていた耳郎さんに決まった。

 

 

―――

 

 

「ふむ……」

 

裏路地にある看板すら出さぬバー。

 

そこに在ると知らなければ誰も立ち寄らないそんな場所に一人の青年がいた。

 

彼の名は死柄木弔。 

 

自身を救わなかった世界を、平和の象徴オールマイトを心の底より嫌悪し、台無しにしてやりたいと誓う破綻者。

 

彼は現在、あるリストを見て唸っていた。

 

「それで、大物ブローカーに紹介された奴はこれで全部か?」

「はい、殺人犯であるマグネ、快楽殺人のマスキュラー、脱獄死刑囚のムーンフィッシュ、強盗犯のトゥワイスと怪盗のコンプレス、あとはガス使いのマスタード、他数名のヴィランですね」

「宣伝効果としては十分か。雄英高校襲撃のチンピラとは違う選りすぐり共だ」

 

弔はそう言ってリストを置くと黒霧がさらに続ける。

 

「彼らと脳無による林間合宿襲撃。用心のため今までの合宿場所は使われないようですが内通者のおかげで筒抜けですね」

「雄英高校の敷地内ですらお前はゲートを開けるんだ、御用達の合宿所なんか使用できねえよ」

 

転移個性は基本的に使用者の知らない場所には使用できない。ゆえに合宿所はヴィランが訪れない場所、即ちヒーローの私有地は最適解である。だがそれもあらかじめ場所を知っていれば話は別、行動や活躍が広く拡散されるヒーローの不在時を狙い事前に下準備するなど容易いことだった。

 

「ま、林間合宿を襲撃しただけで雄英高校の信頼は失墜するからこちらの勝ち。おまけに犠牲者を出せばそれで大勝利だ」

「確か先生からはラグドールのサーチが欲しいと言われてますね」

「ソレと生徒も適当なのを拉致るか。緑谷の個性はどうだ?あいつの個性は規格外だ。それを手に入れられればこっちの勝ちは確実になるぞ?」

 

U〇J襲撃時での活躍はムカつくものがあるが、それがきっかけで闇の帝王に目をつけられたなら溜飲も下がるというものだ。

 

「ええ、大変興味がお有りの様ですよ」

「お、そうなのか?」

 

すると黒霧は、件の個性を持つ学生、緑谷出久の情報をまとめた調査結果を死柄木弔に差し出す。

 

「へー、無個性だったいじめられっ子か。愉快な人生歩んでいたんだな」

 

その愉快は当人ではなく見ている側の感想であるが、人の不幸は蜜の味を地で行くヴィランならば当然の感想である。愉しげに緑谷出久の来歴を読んでいると、中学三年になってからの例の日の辺りで目が止まった。

 

「……謎の高熱で四日間生死の境を彷徨い、目覚めたら個性が発現ねぇ。発現条件が珍しかっただけじゃねえか?」

「先生が言うにはこういう事例は何回かあるようです。それで何としてでも手に入れろとのお達しです」

「災難だなぁ。先生に目を付けられるなんて。まあ、同情はしないけどな」

 

そう言って、手に持った緑谷の調査結果を個性【崩壊】で塵に変える。

 

「ああ楽しみだなあ。緑谷はお友達に被害がでたら悔しがるだろうな」

 

林間合宿イベントの肝試し、そこにマスタードの毒ガスと精鋭ヴィランに脳無。

とても愉快なことになるだろう。

 

死柄木弔は遠足前のようなウキウキ気分を存分に味わっていた。

 

「死柄木弔。そろそろ時間ですよ」

「お?もうそんな時間か、じゃあ行ってくる」

 

弔は愛用の黒いパーカーを着るとバーから出る。

向かった先はゲーセン、此処で弔は入り口前で立っているとリザードマンを彷彿とさせるトカゲじみた緑色の肌に紫の髪をした男が弔に話しかけてきた。

 

「あの……あんたがTOMURAさん……か?」

 

男は弔の名前を言い当てると弔は笑顔で答える。

 

「ああ、俺がTOMURAだ。初めましてかなスピナーさん?」

 

弔は目の前の男の名を言うとスピナーと呼ばれた男は安堵する。

 

「良かった……人違いだったらどうしようかと」

「まあ、お互いリアルで会うのは初めてだからな」

 

二人はしばらく笑い合うと改めて自己紹介を始める。

 

「改めて、俺は死柄木弔、プレイヤーネームはTOMURAで通してる。よろしくな」

「俺は伊口秀一、プレイヤーネームはスピナー、よろしく」

 

自己紹介を終えた二人は早速、ゲームセンターに入っていく。

 

それから二人は格闘、レース、シューティングなど様々なゲームをやった。

 

「なあ、スピナー。お前、今の世の中をどう思っている?」

「どうって?」

「今、生きやすいか?」

 

弔の問にスピナーは俯く。

 

「生き辛いな。何もかもが……」

 

スピナーは弔にぽつりぽつりと自身の事について話始める。

 

彼は未だに異形型の個性に対する差別・偏見が根強い田舎町の出身で、その個性故に「トカゲ野郎」と蔑まれて外を出歩くだけで殺虫剤を掛けられる等、酷くいじめられ、引きこもりになっていたとのこと。

 

「本当。こんな世界、壊れちまえばいいのに……」

 

そう締めくくるスピナーに対し、弔は笑った。

 

「なら、一緒にぶっ壊さないか?」

「え?」

「個性に対する差別や偏見、くそったれな秩序、俺もこれらを全てまっさらにしたいんだ」

 

そう言って弔は顔を搔きながら自分のやりたいことをスピナーに伝える。

スピナーは弔が言った全てをまっさらにするという言葉に魅力を感じていた。

 

「なあ、スピナー。見て見たくないか?まっさらな地平線を」

 

それは悪魔の囁きか。弔の言葉にスピナーは彼の手を取った。

 

「ああ、見て見たい。あんたの目指す場所を」




さて、林間合宿で緑谷をどういった訓練にするか考えないと。
……どんな訓練にしようかな。
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