後に神野決戦と呼ばれる戦いが終わり、ヒーロー達に保護された僕とマシュは警察で事情聴取を受けた後、家に送られた。
母さんは僕が無事な事に涙を流して抱きしめてくれた。
その後、隣に居るマシュの事で簡単に説明した際、母さんは驚いたけど直ぐに受け入れられた。
「マシュさん、出久を守ってくれてありがとう。そしてこれからもよろしくね」
「はい、よろしくお願いします!お義母様」
何か、マシュの母さんの呼び名に違和感があったが、とりあえず受け入れて貰えて良かった。
二人の様子に安心していると突然脳内に誰かの声が響いた。
『マシュだけずるいですわ私も!』
『……私も出る』
『母として挨拶しないわけにはいきませんよね!』
『ちょ!?三人共、此処は堪えて』
『まずい!溶岩水泳部が出て来るぞ!』
突然、複数の声が響いたと思ったら僕の胸から召喚陣が現れ、そこから五人の人影が飛び出してきた。
現れたのは清姫、静謐のハサン、源頼光とそれに巻き込まれる形で出てきたアーチャー、エミヤとランサー、クー・フーリンだった。
「「「マスター!」」」
「「ぎゃああああああ!?」」
三人は頬を赤らめながらエミヤとクー・フーリンを踏みつけて僕に抱き着く。
突然の事でキャパオーバーとなり背後に宇宙猫を顕現させる母さんと目の前の惨状に頭を押さえるマシュ、僕は三人を何とか宥めて、踏みつけられた二人を起こす。
何故こんなに出てきたのか聞くとどうやら僕の個性が新たなステージに至ったらしい。内容を纏めると。
①召喚できる人数は平常時はマシュを入れて六人。戦闘時は三人まで。
②維持に必要な魔力は僕の体に蓄えられたエネルギーを消費する事で賄える。回復するには食事が必要。
③英霊を憑依する場合は中に居る英霊としか憑依できない。
④外に出ている英霊が倒された場合、24時間のインターバルが必要でその間は再召喚できない。
⑤僕の右手に現れた令呪は前世と同じ一日三回まで行使可能。
こんな感じで憑依召喚以外はほとんど前世と変わらない仕様に安堵した。
「い、出久?この人たちは一体……」
とりあえず、母さんに説明しないとなぁ。
こうして今日の緑谷家はサーヴァント達によってとても賑やかなものになった。
―――
翌日、本来なら林間合宿中だった夏休みの朝。僕達は母とエミヤお手製の朝食に舌鼓をうちながらテレビを見ていた。
朝一番に流れるのは神野区で行われた事件の(一部ぼかした)全貌とオールマイトの引退会見だ。
この会見に多くの人が驚愕していた。記者の一人が理由を問いただすとオールマイトは自身のこれまでをAFOの個性詳細を伏せながら話した。
若かりし頃に師を殺害され、AFO打倒の為にアメリカに行って研鑽を積み、平和の象徴へと至った裏にはAFO配下との戦いがあったことを告げた。
そして昨日、数十年に渡る長き因縁が決着したことが引退理由だとオールマイトは告げた。
続けて今後は雄英高校教師として後進育成に務めると発表。
まだカンペを手放せぬ新米だが精一杯頑張りますという発言には沈んだ会場に笑みを戻していた。
さらに翌日、オールマイトが雄英高校の全寮制の説明に家庭訪問してきた。
僕はすっかり馴れたけど、母さんは誰もが知る世界的有名人の来訪にマシュが心配になるほどガッチガチに固まっていた。
(流石に反対なんだろうな……)
オールマイトとテーブルを挟んで向かい合う母を見ながらそう思う。
僕がヴィランに攫われたと知って、かなりの心労を負わせてしまった。
いくら僕が無事だったからってどの面下げて家から出ることを相談できるのか。
僕の事を心配して必死に守ろうとする母さんの想いを無下にできない。
「よろしくお願いします」
予想に反して母さんはそう言って頭を下げた。それを見て僕とオールマイト、マシュは目を見開いた。
「この子の力は特殊です。一歩間違えれば何もかも壊してしまう程に」
母さんの言うことに一理ある。僕の中に居る英霊達は下手をすれば国を滅ぼすことすら出来るから。
「知ってますかオールマイト、出久は中三まで無個性だったんです。この子が無個性と知った私は自分を責めてました」
「っ!?」
母さんが言った衝撃の事実にオールマイトは目を見開いた。
「でも出久は自分が無個性である事を気にしていませんでした。この子が小学生になった時、私は気になって聞いてみたらこう答えました『個性が無くても人を助ける方法はあるよね?』って答えたんです」
そういえばそんなことがあったなぁ。あの頃は前世の記憶の断片が見え隠れしていた頃だから、自分が無個性だったことを気にしなかったんだよな。
「それから出久は色んな事をやりました勉強を頑張り、体を鍛え、ネットで調べたり。その姿を見て私は何してるんだろうって思いました。
この子は無個性である自分に何が出来るのかを必死に探しながら前に進もうとしている。対して私はただただ泣いているだけでこの子の力になってあげられなかった。
それに気づいた私はもうこの子が無個性であることを嘆くのは止めました」
母さんは自嘲気味に自身の心の内を話す。
「そしてこの子に個性が発現した時に私にヒーローになるって言いました。
最初は驚いたけど、この子の目を見た時、ヒーローに憧れてっていうより、これから来る何かに備えようとしている様子でした。
それを見て、この子に何か大きなことが起こると予感しました」
母さんは強い眼差しでオールマイトを真っ直ぐ見る。
「だから、お願いします。この子の事情を理解して支えてくれようとするのも、出来るのも雄英高校だけなんです」
「……その信頼に応えられるよう全力を尽くします。この命に代えましても」
オールマイトはそう言って深く頭を下げると母さんは首を横に振り始めた。
「オールマイト先生。命になんて代えないでください。師を失う辛さを知る貴方は生きて子供達を育てあげてください」
「……お約束します」
凄いな、母さんは。本当に強くて優しい人だ。
この時、僕は母さんの息子である事にとても感謝していた。
「ちゃんと生きて……かぁ。ヒーローをやってきてから、久しぶりに聞いたな……」
そして見送る際、オールマイトは感慨深そうに呟くと僕に微笑んできた。
「良いお母さんを持ったな。緑谷少年」
「……はい」
オールマイトに褒められて少し照れくさくしていると彼はさらに続けた。
「君のお母さん、どことなく先代と似ているよ。」
「え?母さんがですか?」
「うん、とても強い人だったよ」
オールマイトがそこまで言うって事は本当に強い人だったんだろう。
「じゃあ、緑谷少年、キリエライト少女、また学校でな」
「「はい!」」
母さんの許しを得た僕は、家を出て新生活を始める。
雄英敷地内校舎から徒歩五分、築三日の学生寮、ハイツアライアンス。
ここが僕達の、新たな家となった。