月の王とかぐや姫   作:名無しのマスター

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一応、念のために警告した結果、感想欄に溢れる神父に笑いました。
でも、大げさなことを言いましたが愉悦かどうか微妙というか。
本当にもしかしたらそう感じる人もいるかも、程度なのでご了承ください。
もし、神父案件じゃねぇか!ということなら私の愉悦度が高いだけですので存分に罵ってください。

因みに私は愉悦が好きなわけじゃありません。
めっちゃ苦しんで、苦しんで、苦しんで、それでも諦めずに幸せを掴む、そんなハッピーエンドが好きなだけです。
道中苦しめば苦しむほど最後のハッピーエンドが嬉しいんですよね。
だから、今は苦しんでね。(無慈悲)

因みに次話で早速、一番可哀そうなキャラが出てきます。覚悟してください。


第30話 Cooking

 彩葉からの電話から数十分後、私も重たい足を引きずって帰宅。私の部屋へ寄り、制服を着替えてから彩葉の家に入った。

 

「あー、白野! どこ行ってたの!」

 

 そこには元気いっぱいといった様子で彩葉の服を着たかぐやがいた。見るからにご立腹です、と言わんばかりに頬を膨らませている。とりあえず、無事なようで何よりだ。

 

「白野はあんたのこと探し回ってたんだよ」

「え? そうなの?」

「まぁね」

「これからは家を出る前にちゃんと誰かに伝えること……いや、勝手に出かけられると困るんだけど」

「うっ、はーい……白野、ごめんね」

 

 一応、電話でかぐやのことを探していたことを伝えていたが彩葉はそれなりに重く受け止めていたらしい。今までのように勢いで怒鳴るのではなく、しっかりとかぐやの目を見て叱った。さすがに真剣に叱られたかぐやも素直に頷き、謝罪の言葉を口にする。

 

「ううん、大丈夫。かぐやが無事でよかった」

「お、おう……ねぇ、彩葉、白野っていつもこんな感じ?」

「うん、あんたも気を付けてね」

「うっはー、こりゃやべぇぜ!」

 

 安堵のため息を吐くと二人は堂々と私の前で内緒話をし始める。距離が近いので全然聞こえるのだが、何を気を付けるのか、何がやばいのかよくわからず、首を傾げた。

 

「あ、そうそう! かぐや、料理作ってみた! 二人に食べてほしいな!」

「……おい、その材料費、どこから出した」

「え? あー……ウォレット?」

 

 家に帰ってきた時にいい匂いがしたのはそのせいか、などと思っていると低い声で彩葉が問いただし、目を逸らして答えるかぐや。その瞬間、ガクリと彩葉が崩れ落ちた。

 

「……まさか」

「そう、こいつ、私のお金、使い込んだの! スマコンまで買って!!」

「うわぁ……」

 

 それはお気の毒に、としかいいようがない。祖父母からの仕送りがあるからといって学費や生活費を自分でやりくりしなければならない彩葉は必死に節約してお金を貯めていた。その貯金を一瞬で使われてしまったのだ。散々、怒られたのだろう。かぐやも気まずそうにしていた。

 

「うぅ、私のお金……」

「ほ、ほら! ご飯! ご飯食べよ! それで元気もりもり!」

「すごいマッチポンプを見た」

 

 人のお金を勝手に使って料理して、その料理で元気づけるとか外道か? でも、私がお金を渡そうとしても彩葉は受け取らないだろう。ここはグッと我慢して――あ、食費は半分出してもいいか。私も食べるし。

 

「美味しいごはーん♪ 温めましょー♪」

 

 今にも死にそうになっている彩葉を尻目にかぐやがルンルンと歌いながら冷蔵庫から作っておいた料理を取り出して温め始める。その手際は初めてとは思えないほど良く、かぐやの出生を知らなければ素人だとは思わないだろう。

 

(片づけは苦手そうだけど)

 

 そんな彼女から目を離し、流しを見ればドロドロになった食器や調理器具が散乱していた。水にも浸けていないまま、長時間放置されているので油が固まり、洗い流すのは大変そうだ。仕方なく、かぐやの準備が終わるまで食器類を洗い始める。

 

 なお、その間、彩葉はタブレットでヤチヨの配信を見て心を癒していた。ヤチヨの配信に感動しているのか、お金を使い込まれたことが悲しいのかずっと泣いている。おいたわしや。

 

「お待たせ~、準備できたよー!」

 

 ガチャガチャと洗い物をしているとかぐやの準備が整ったらしい。料理は初めてのはずだが、振り返るとそこにはレストランに出てきてもおかしくないほどクオリティーの高い料理が並べられていた。

 

「まずは生のトウモロコシから作ったポタージュ! こっちは新ゴボウとアスパラのカリカリサラダ温卵付き。メインはトマト煮込みハンバーグ。ズッキーニのソテーをそ・え・て♪」

「うわぁ……美味しそう」

「これ、ほんとにあんたが作ったの?」

「もち! オムライスとかタコライス食べて料理したくなったんだぁ! やっぱ、手料理が一番! ささ、ご賞味あれ~♪」

「うぐっ」

 

 かぐやがコーンポタージュをスプーンで掬い、彩葉の口へ突っ込む。いきなり口に料理を突っ込まれ、目を白黒させた彼女だったが次第に顔が綻び――この料理たちが自分のお金で作られたものだと思いだしてボロボロと泣き出した。

 

「うぅ……最近、レトルトとかばっかだったから久しぶりの手の込んだ料理なのよ。こんなのずるいのよ。美味しいじゃないのよ。もう嬉しいんだか、悲しいんだか訳がわからないじゃないのよ。何なのよ、あんた。この悪魔」

「悪魔じゃないよ、かぐやだよ」

 

 文句を言いながらもご飯を食べ始める彩葉を見てかぐやはこちらにピースサインを送った。うん、料理が美味しいのはわかったし、彩葉も少し元気になったのはよかったけど反省はしなきゃ駄目だよ。

 

「あ、はい。ごめんなさい」

「ねぇ、やっぱり白野の言うことは素直に聞くの納得できないんだけど」

 

 めっ、と叱るとかぐやは肩を落として謝った。そんな私たちに彩葉はジト目を向ける。とにかく、せっかくかぐやが作ってくれたご飯だ。温かいうちに食べよう。

 

「じゃあ、いただきます」

「いただきまーす!」

「あ、いただきます」

 

 すでに食べ始めていた彩葉も慌てて食前の挨拶をして三人でご飯を食べる。なるほど、これは確かに美味しい。初めて料理したとは思えない腕前だ。

 

「でっしょ~? やっぱ、かぐやちゃん、天才!!」

 

 素直に褒めるとかぐやは腕を組んで胸を張った。これだけ美人だとドヤ顔も様になっている。

 

「後は片付けもできると完璧だね」

「えー、片付けめんどーい……あ、いえ、やります。やらせていただきます」

「マジでなんで白野の前だとそんないい子なの? ねぇってば」

「別に怒ってるわけじゃないよ。ただ、その方がいいかなってだけ。この料理、美味しいよ。今度、料理教えてほしいな」

「お姉ちゃん……」

「あんたのお姉ちゃんじゃないんだが!?」

 

 たまに彩葉にやっているみたいによしよしとかぐやの頭を撫でてあげると何故か目を輝かせる。そこへ彩葉が鬼の形相で割って入り、私たちを物理的に引き離した。

 

「あっれぇ? 彩葉、やきもちぃ? そんなにかぐやのこと好きなの?」

「違うけど」

「そこはシュンってしないでよぉ!! 白野~、彩葉がいじめるぅ」

「はいはい、ご飯の時はもう少し落ち着いてね」

 

 抱き着いてこようとするかぐやの肩を押さえる。せっかくこんなに美味しい料理なのだから味わって食べたい。

 

「あれ、白野はかぐや甘やかし担当なのでは?」

「多分、白野の方が躾に厳しいと思う。しっかり叱って、しっかり褒めるタイプ」

「じゃあ、誰がかぐやを甘やかしてくれるの?」

「甘やかさないから。てか、帰る方法は思い出したの?」

「あー、美味いなー! やっぱ、かぐやちゃん、料理の天才だなー!」

 

 彩葉の質問に知らぬ存ぜぬと言わんばかりに料理を食べるかぐや。そんな二人のやり取りを見て私は思わず顔を綻ばせるのだった。

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