日曜日は、特に特筆すべき事はなかった。
ルナは、今日は特にやることがないので、勉強と、静養に充てることにした。
午前中はずっと布団に籠り、午後になって昼飯を食べると、勉強を開始した。
「えーと、この参考書は魔法学か……」
シャープペンをノートに走らせながら、ルナは参考書を読み解いていく。
「魔法を使う際に使う魔力は、感情によって増幅されること、そして、その増幅のされ方次第では未熟な魔法使いでも、強大な敵に立ち向かうことができ、勝つ事もできる、と。魔法は未解明な部分も多いから、最近になっての発見も多そうだ」
やはり魔法学は奥が深いなとルナが思っていると、スマホが震えて、茜からの通知が来た事を知らせた。
「ん、なんだろ?」
一旦シャープペンを置いて、スマホを確認する。内容としては、昨日のダンスゲームの動画がギャラリーの一部によって撮られていたこと、それが大バズリしていたこと。
既にSNSでは『顔がいいメイドさんのダンスゲームかっこいい!』というような内容で数千件の拡散がされている上、動画サイトでは10万を超える再生がされており、ルナは頭を抱えた。
「マジかよ……。これ明日学校行きづらいじゃあねぇか……」
落ち着いて動画を確認するとルナの顔が写っていたので、自身のアカウントから『顔は隠した方がいいのでは?』という内容の投稿と、SNSと動画サイトで通報を行って、ルナは茜に返信した。
『一応両方とも通報したけど、削除されるかは望み薄だな……。そういえば、月出里さんは何してるんだ?』
茜からの返信はこうだった。
『顔ガッツリ写ってたしねー。私は午前中家の手伝いして、これからスマホでゲームでもしようかなって』
(まぁ、学校の人達にバレてなきゃいいんだが……)と思いつつも、ルナはこの後どうするかと考えていると、今度は見知らぬ番号から電話がかかってきた。
ルナは恐る恐る電話に出ることにした。
「……もしもし?どなたですか?」
『私よ、クローネ、クローネ・アーカードよ』
「あ、クローネか。こんにちは、なんか用か?」
『いえ、特に用事はなかったのだけれど、魔界に帰って電話番号を登録したから、気になってかけてみちゃった。忙しかったかしら?』
「いや、丁度暇してたところだ。魔界からでも電話って繋がるのな」
『日本の中継局の技術はすごいわねぇ。魔界へのゲートさえ開いていれば、いつでも電話ができるんだもの』
「魔界へのゲートなんて割といつでも開いてるしなぁ。あ、そうだ。明日から5日間は学校だから昼間は電話に出れないと思っておいてくれ」
『わかったわ。私は明日から暇だから、またルナの所にでも行こうかしら』
「そんなに出歩いて大丈夫なのか?」
『もう油断はしないわよ。最悪、ルナの部屋に直接ゲートを開けばいいだけだし』
「それはやめてくれ……」
ルナはその後クローネと世間話をして電話を切り、それ以降も茜と数度やり取りをして日曜日は過ぎていった。
――
翌朝、いつも通りの朝食とコーヒーのルーティンを済ませたルナが登校していると、茜を見つけたので、声をかけた。
「おはよう、月出里さん」
すると、耳をぴょこんと立たせた茜がこちらに振り向いて挨拶を返した。
「あ、おはようルナ君!一昨日はありがとね、なんかバズってたけどその後大丈夫だった?」
「あー、動画も投稿も消えなかったよ。顔隠せって注意したら逆に『顔がいいのが見えないだろ』って注意食らったしなんなんだSNS……」
「ルナ君は間違ってないと思うよ?」
「俺、あんま目立ちたくないんだよな。コスプレしてる時といつもの俺は切り離したいんだ」
「そうなんだね?てっきり目立ちたいからコスプレしてるのかと」
ちがわい、と言いながら、ルナは茜を見る。
制服姿も似合っているな、とルナが思っていると、不意にまた、ルナを頭痛が襲った。
――お前が、悪いのに。
「ッ……。悪い、一旦立ち止まる」
ルナが足を止めたのを見て、茜も立ち止まり、心配そうにルナに聞く。
「大丈夫?立ってられないなら、学校休んだ方が……」
「……いや、金曜日の時程は酷くない。大丈夫だ」
「そう……?私、頭痛薬持ってるけど、1つ飲む?」
茜が鞄を漁っているうちに、頭痛が引いたので、ルナは言う。
「ほら、頭痛が引いてきた。ありがとな、一応、貰っておこうかな」
「本当に?無理しないでね。ほら、薬」
そういって受け取ると、お互いの手が触れる。
「「あっ……」」
思わず、二人の口から声が漏れる。
「……、っとすまん、ありがとな」
「う、うん、んじゃ、行こうか」
茜が顔を赤くして、顔をそむけながら言う。
「……ああ、そうだな」
(……俺、茜のこと、やっぱり意識してるな……。でも、だとすると、いつかアレを話さなきゃいけない)
ルナと茜の二人で道を歩きながら、ルナは思う。
過去のルナの一件。それを茜に話せば、きっと、俺達は――。
そう物思いにルナがふけっているうちに、二人は学校に到着した。
「ルナ君、私は別のクラスだからここで一旦お別れだね。ルナ君がよければ、また昼休み屋上でご飯を食べない?」
「……っと、ああ、そうだな。また昼休み、屋上で」
そう言って、ルナは下駄箱に靴を入れ上履きを履き、教室へと向かった。
――
教室にルナが到着すると、周りの生徒たちがざわざわとし始めたが、ルナが席に着くと、それも止んだ。
(……流石に、俺に話しかけるような奴はいない、か……)
ルナが内心ほっとしていると、担任の女教師が来た。
「おはようございます、今日は五月さんはお休みです。では出席を取ります」
(……五月さんは休み、か……)
ルナはまた思考を巡らせる。先週の茜への暴行と、それへの謝罪、ルナの記憶。
(何か、ひっかかるな――)
――
――時間は経過し、お昼休み。
ルナは、茜購買で買ったパン(今日はメロンパンが売り切れていたので、フィッシュバーガーとあんパンを買った)と牛乳を持って、屋上のドアを開けた。
きぃ、と音を立てて開いたドアの先では、茜が手を振っていた。
「すまん、待たせたな」
「ううん、私も来たばっかりだし、大丈夫。んじゃ、一緒に食べよっか」
「おう」
フェンスに背を預けて、二人で座り、茜は弁当のスカーフを開け、ルナはビニール袋を開けて言う。
「んじゃ、いただきます」
「いただきます。……ルナ君、また買い食いなんだ?」
「ああ、毎朝早起きしてまで弁当作るのがだるいんだ。その点で言えば、月出里さんのお母さんはすごいな」
今日の茜の弁当は、たまごサンドにわかめサラダだった。
ゆで卵は大ぶりにカットされて、サラダもみずみずしいレタスと、濃い緑色をしたわかめが健康的なおいしさをルナに想像させた。
「まぁ、ね。弁当といえば、うちのお母さんが、『ルナ君さえよければ、ルナ君の分も作ろうか?』だってさ」
その言葉に、フィッシュバーガーを食べるルナの手が止まる。
「……流石に、そこまでしてもらうのは悪いから断っておいてくれ。もしそうするんだったら、賽銭をまた増やすぞって脅しも込みだ」
「前回来た時、ルナ君賽銭入れていったって聞いたけど、いくら入れたの?」
「5000円」
その言葉を聞いて、今度は茜の手が止まる。
「……ほんとにルナ君、お金大丈夫なの?」
「ああ。計算上、毎日10万円生活を干支が一周するまで続けなければ大丈夫だ」
「神社経営してる私のとこより金持ってるじゃん……」
「収入はほぼ年金だけだから、その点は負けてるけどな」
そんな他愛もない会話をしているうちに、二人は食べ終わった。
「ふぅ、ご馳走様」
「ご馳走様でした。ふぁぁ……私眠いや……」
茜がごしごしと目をこするので、ルナは少し考えた後、ぽん、と自分の太ももを叩いた。
「ここ、空いてるぞ」
「ん……。ありがと……。んじゃおやすみ……」
寝ぼけている茜は、そのまますんなりとルナの太ももをまくらにして、すやすやと寝息を立てはじめた。
「……。寝顔も、やっぱかわいいんだよな……」
茜の、無防備な年相応の少女の寝顔を見て、ルナはつぶやく。
ルナの右手は、思わず彼女の頭へと伸びていた。
(あの時は、感触とか考えてる暇なかったけど、今ならゆっくり堪能できるな……。2度も撫でさせて貰って申し訳ない気持ちはあるが、ま、これも友人の特権ということで)
彼女の髪へと手を通す。
短めのウルフカットに揃えられた彼女の黒髪はよく手入れされていて、手の間をさらさらと抜ける感触が心地良い。
そのままゆっくりと、起こさぬように、彼女の頭頂部を撫でる。
髪が指を抜ける感覚と、時折茜の狐耳の感触を感じて、ルナはどこからか多幸感を感じていた。
それがくすぐったかったのか、茜が「ふふ……」と微笑みを見せたので、ルナもまた笑みが漏れる。
――しかし。
「ッ……!またか……!」
ルナをまた、登校時のような頭痛が襲う。
――許せない、許せない。
努めて冷静に、ルナは朝にもらった頭痛薬を口に含み、残しておいた牛乳で流し込む。
薬に即効性があるのか、すぐに頭痛は引いていった。
(……。朝も考えてたけど、やっぱり、この微妙な関係を保っといたほうが、お互いに幸せなんじゃあないか……?)
――そんなこんなで時間は過ぎ、お昼休みが終わろうか、という時間になったので、ルナは茜の肩をちょんちょん、と突いて起こす。
「月出里さん、もうそろそろ時間だ」
「ん……。あと10分……いや5分……」
「寝すぎだよ、そんな時間無いぞ」
「……んぇ!?私、ルナ君の膝借りて寝てた!?」
茜が飛び起きる。
「前そうしてもらったからお返しだ。んじゃ、教室戻ろうぜ」
「う、うん……。ありがとね……。」
茜が顔を真っ赤にして手を振るので、ルナは手を振り返して、屋上を後にした。
――
6時間目が終わり、下校の準備を済ませたルナは、下校口で茜と再会した。
「おつかれ、月出里さん。今日は一緒に帰るか?」
「おつかれー。途中まででよければいいよ。……って、五月さん?」
二人が会話をしていると、茜が不意に下校口の先で、晴女がこちらに来るのを見つけた。
「……五月さん、なんの用だ?今日は学校休みだったんじゃあないのか?」
茜の前にルナが立って言うと、晴女はふふ、と微笑みながら言った。
「……仲良さそうね、二人とも。……来て、くれる?」
そう言いながら、晴女は土足のまま校内へと上がり、階段を登りはじめた。
「なんだろ?」
「……少しだが、嫌な予感がする。ついていくぞ」
ルナが言うと、茜は頷き、二人で後を追うこととなった。
――そうして、たどり着いたのはいつもルナと茜が昼休みを過ごす、屋上だった。
茜が後ろ手でドアを閉めたのを確認すると、ルナは晴女に聞いた。
「で、なんでここに呼び出したんだ、五月さん?」
晴女はルナの3m程前に立つと、こう言い放った。
「……あんなにも、仲良さそうにしていたの見たら、邪魔したくなっちゃって。――私の両親を殺した犯人がそうしてるんだもの、当然でしょ?」
「……なんだと?」
ルナの眉間にシワが寄る。ルナは晴女の両親について思い出そうとするが、思い出せない。
「どういうこと?ルナ、何か知ってるの?」
茜がルナに話しかけると、それを遮るように、煽るように晴女が続ける。
「ああ、それだけじゃなかったわね。――何十人も殺してるから、埋もれて忘れちゃったのかもね?」
「ッ!!――茜の前で、なんてこと言うんだ、晴女ェ!!」
それを聞いて激昂したルナが、歯を食いしばりながら右手を上に掲げ、魔法陣を形成する。
「鉄(くろがね)、朱(あか)、剣(つるぎ)……我が前に現出せよ!」
詠唱が終わると同時に、魔法陣から赤黒い、魔力でできた、刀身が70cm程の片手剣のようなものが出現すると、ルナの右手に収まった。
ルナが唱えたのは低級の、簡単に言えば『武器を出す魔法』だ。
それをくるくるとルナが器用に回すと、顔の横に構えた。
「ちょっと、ルナ君!?」
茜が驚くのと同時に、晴女も右手を横に突き出し、魔法陣を出現させる。
「またここでキルスコアでも稼ぐつもりなの?いいわ、遊んであげる、ルナ!――鉄(くろがね)、碧(あお)、御杖(みつえ)……我が前に現出せよ!」
晴女も似たような詠唱をすると、今度は青黒い1mを超える長さの棒状の物質が、彼女の右手に収まる。
彼女はぶんぶんと両手でそれを持って力強く回すと、下段に構えた。
「やめなよ二人とも!校内での決闘は校則で禁止のはずだよ!やめて――」
――茜が言い終わる前に、校庭でホイッスルが鳴った。
それを合図に、ルナは一歩を踏み出しながら叫ぶ。
「強化(レイズ)!!」
瞬間、ルナの体内を血液のように巡る魔力が、踏み込んだ自身の足へと集まり――
――次の瞬間には、ルナは晴女の目の前で大上段に魔力の剣を振り下ろさんと、空中で構えていた。
しかし。
「甘いッ!」
晴女は後ろへとステップを踏むと、ルナの一撃を紙一重で躱した。ルナの剣は宙を空振ると、屋上のコンクリートに裂傷を発生させた。
晴女も反撃へと転じる。振り下ろされた剣を上へと弾くと、そのまま突きでルナの額を狙う。
それを、ルナは剣を弾かれた勢いを利用して後ろにのけぞり回避する。
そのまま横へとルナは転がり、立ち上がって晴女に斬りかかるが、晴女も負けじと棒を振るう。
一合、二合、三合と、剣と棒がぶつかり合い、赤と青の火花が散り、甲高い金属音が、屋上に響き渡る。
「ぐッ……!」
力では魔力で身体能力を強化しているルナが有利なはずだったが、それを晴女は的確に捌いている。
ルナはその事実に焦る。なにせ、相手は同年代の女性だ。男性で魔力体質の俺には圧倒的な有利があるはずなのに。
そして鍔迫り合いが起こり、晴女は嘲るように笑いながら言う。
「……本気、出せないのね。かわいそうなルナ」
「ッ!」
その言葉を聞いて、ルナの身体が強張る。
頭の中で、再び母親の言葉が響く。
――お前が、死ねばよかったのに。
(……クソッ、本気なんか出したら、お前や茜、無関係な生徒や先生皆を巻き込んでしまう。また、あの悲劇が――)
「――強化(レイズ)」
その様子を見て晴女が宣言した瞬間、拮抗していた鍔迫り合いが、一気に彼女によって押し返される。
ルナはよろめき、すぐに立て直そうとするが――
「ッ!?」
――晴女が、視界から消えていた。
次の瞬間。
「……後ろよ、おばかさん♡」
「!?」
晴女による強烈な蹴りが、ルナの背中に突き刺さった。
「ぐァあッ!?」
ルナは数m前へと吹き飛ばされ、屋上の床へと倒れ伏した。
背中全体が、猛烈に痛い。
ただ、痛いで済んでいるのは、俺が魔力で身体強化を行っているからで、それがなければ、背骨を折られていただろう。
ルナが起き上がろうとした所を、晴女によって頭を踏みつけられる。
「ぐッ!離せ……!」
「強がっても無駄よ、ルナ。本気を出せないんじゃ、100回やっても私には勝てない」
「そんな、ルナ君……!」
茜が声を上げる。
「この際だから教えてあげるわ、月出里さん。ルナが10年前、何をしたのかを。――10年前、富士樹海で大規模な魔力暴走事故があったのは知ってる?」
晴女が、語り始める。
「やめ、ろ……晴女……!」
「あの事故で何十人も死んで、生き残りはたった1人だけで、それがルナ。でも、それは正しい情報じゃない」
その発言に、茜は何かを感づいたようで、呟いた。
「……まさか」
「それ以上、言うな……!」
ルナは震える声で静止するが、その声は茜にも、晴女にも届かない。
「――あの事故の真相は、ルナが自身の魔力体質によりため込んだ魔力を暴走させた結果。……その犠牲者の中には、私の両親もいたのよ!」
「!?!?」
「ッ……!!」
茜は混乱したようにその場に立ち尽くし、ルナは絶句した。
(……クソッ、言われてしまった……!)
ルナが、墓まで持っていこうとしていた、血塗られた過去。その一端が、茜に知られてしまった。
「……それは、本当なの?なんで、それを知ってるの?」
茜が、ルナと晴女に問う。
もっともなことだろう。なにせ、衝撃的なことだ。無理はないことだろう。
それに先に答えたのは晴女だった。
「ええ、本当よ。私は事件関係者だから、事件の当時に警察から――誰!?」
唐突に、晴女が校舎のさらに上、時計のある校舎の、一番上を見た。
そこをルナが見ると、かすかにだが、人影が見える。
「……ルナを茜の目の前で、と思ったけど、見られてるんじゃ話が違う。今日は帰るわ」
晴女が、ゆっくりとルナの頭から足を離し、フェンスに向かって歩き始める。
「ま、て……!」
ルナは立ち上がろうとするが、力が入らない。
晴女がフェンスに到達すると、それに登って、別れを告げた。
「それじゃ――また会いましょう、月出里さん、ルナ。……強化(レイズ)」
そう言って、彼女はフェンスから飛び降りた。
「……ルナ、大丈夫!?」
茜がルナへと駆け寄る。
「……痛いが、折れてる感触は無い。大丈夫だ」
「大丈夫じゃないよ!?現に起き上がれてないじゃん!」
茜がルナに手を差し伸べる。その手を借りて、ようやくルナは起き上がることができた。
「いてて……」
「……傍から見てたら、どうしたのよ、ルナ」
そこに、知っている声が投げかけられる。
――そこにいたのは、他でもない、クローネ・アーカードだった。
「クローネ……。なんでここに……?」
「魔界にいても暇だったし、ルナのいる学校に興味を持ってたから、時計のある校舎の上でルナがいないか観察してたのよ」
茜さんと連絡先交換したかったしね、と茜にも言う。
「は、初めましてクローネさん。私が月出里 茜です」
茜がぺこりと礼をすると、クローネはカーテシーをして、自己紹介をした。
「私はクローネ・アーカード。吸血鬼の真祖よ。よろしくね、茜さん。……話は聞いてたわ、ルナ。何があったか、聞かせて頂戴」
(……クローネにまで聞かれてたのか。こりゃ隠してるのも無駄だな……)
「……ああ。その前に、一服いいか?」
二人が頷いたのを見て、ルナはフェンスを背に座る。ポケットから潰れたタバコの箱を取り出し、中から曲がったタバコを1本取り出すと、同じくポケットからライターを取り出した。
空はきれいな夕日で、東の空はもう既に軽く暗くなって、西に向かう毎にグラデーションのような虹色になっていた。
そんな風景の中で語るのが、己の血塗られた過去なのは、なんの悪い夢なのか?
ルナはそう思いながら、タバコに火を付けた。
吸い込むと、紅茶のような心地よい苦みが、口の中と肺を満たす。
「ふぅ……。……全部、話すから、少し待っててくれ」
戦闘シーンはどうしても苦手です。
この内容自体はある程度旧2話に準じていますが、そっちと比べてクローネと先に出会っているので、展開が変わっています。
7話もご期待下さい。