そんな二人は年の瀬の終わりにいつもの喫茶店に行くのだが……
「おい、藤乃、なにしてる」
「す、すみません、大事な時にこんなことになってしまって……」
年の瀬ということで俺は藤乃と遊べる都合がついた、
浅上藤乃、いや藤と付き合って、やっと結果も出て、世間では今年一年を終わりを迎える
大晦日、もうあと一時間で新年という頃、まあ俺の野球選手にとってもオフってやつだ。
話を戻すと、その大晦日ってことで、久しぶりに藤と食事をしてそれからお参りにいくことになった。
もちろん藤と知り合ったあの場所でだ………
あの場所、あの場面、そしてあの光景……
すべてどれか一つでも欠けていて居合わせなかったら、果たして俺は今も俺のままかどうかそんな自信がない
だからこそこの場所にしたんだ
「ふふ、ちょうど去年でしたね、ここで会ったんですよね」
「そうだったな………お前あのときは………」
「ええ、そうだったのかもしれませんね………
でも今は違いますよ、宗一郎さんがいてくれているのですから」
「やめろ、そういうセリフは俺が言うもんだ。好きだよ藤」
「私もです宗一郎さん」
そうこうしているとついたです。
「すごいこともあるみたいですね、この店が混んでいるなんて」
「なんでだろうな………ずっと来てはいなかったんですけど………」
「きっと宗一郎さんのおかげでしょう、宗一郎さん今年は、凄い頑張っててそれが宣伝になったかと」
まあそうなってくれたらうれしいのはうれしいんだけど、藤と二人との空間が良い空気だったからなんか複雑だ
まあここ以上にいいところ、空気のいいところを知らない俺は、結局
「しょうがない、藤はそこで座ってまってて……どれくらいで空くか交渉してくるから」
「は、はい」
宗一郎さんはそう言い残して店の中に消え、私といえば
店の外に設置されている椅子に腰かけて待つことにした
「(あれだけ一人……できたのに、宗一郎さんと少しでも離れると本当さみしくなってしまったのですね)」
今でも思い出します。あの時のこと
そしてクリスマスでも私のことを変わらずに好きだといってくださったあの時のことを……
・・・・・・
【先輩、早く早く】
【おいおい、桜あわてんな】
あれから桜は俺のことをいろいろと甘えてきたり自分も大事にするようになっては来たが、
上下が激しすぎる。今回も大晦日、大掃除も終わり、そしてみんなにも食事作って時間ができたところで
【先輩、今から参拝ついでにいきたいところがあるんです】
そういわれて、カップルで行くところの喫茶店が話題になってて、そこに行こうってことでつられていったわけだ。
まあ、俺としては……
【(桜がこうして元気に、自分を大事に、そして俺のこと好きでいてくれる………十分だな)】
こうして、笑ってくれて、そうして楽しく俺と過ごしてくれるそれだけで十分だ
あんな桜はもう二度と見たくないしな、すべてに絶望して
自分を嫌になってしまうあんな姿
そうしてついてみると
【あら………なんだこりゃあ】
そこにはたくさんの客であふれかえっていて、どうやら俺のところのほうは待つことになりそうだ。
話題になってるんだし当たり前といえば当たり前なんだろうけど
【今活躍してる日髙選手が来たからなんだよな、そら多くなるよな】
【でも素敵ですよね、その時交際している相手って助けてそれが縁でこうなるって】
それいうと俺と桜もそんなに変わりないんだけどまあいいや
【桜、ちょっと交渉してくる、そんなには時間かからないとは思うんだけど】
【先輩ごめんなさい………私はしゃいでしまって………先輩に迷惑かけて】
【気にすんなって、俺も行きたかったんだから、じゃあちょっと行ってくる】
あわてるように先輩は私の元から離れて、交渉にというよりどれくらいで行けるかを聞いてきたようだ
【(でもこうしている何気ないことが幸せなんですよね………
でも先輩に負担ばっかりはいけませんよね、今度お返ししないと……)】
・・・・・
「宗一郎さんはまだ帰ってきませんね………無理していないければいいのですが………」
あれから宗一郎さんはいろいろとしてくれてるようですがうまくいってないようです、
宗一郎さんも複雑と言えば複雑でしょう。自分のおかげで繁盛してうれしい反面
こうして私との空間が阻害されたといっていましたし、気持ちは複雑のなのはよくわかりました
「でも………」
宗一郎さんの気持ちもうれしいし、私もそうですが、でもそれ以上にみなさん楽しそう、それが本当によかった。
前からそうだったのかもしれません、私がそう見えていなかっただけなのかもしれません、でも幸せです
こんなにもうれしいことなんですね、人が笑いあえるなんて
「(こうして私のことを思い直してくれた宗一郎さんには頭が上がりませんね)」
そんなことを考えていたときでした
【あの………すみませんお隣よろしいですか?】
私に声をかけてきたのは私より年下でしょう
これから大人になっていく、と言ってもすごい落ち着いた子でした
「ええ、よろしいですよ、どうぞ」
物腰の柔らかい女性、そんな印象でした
そんな人だったから私も声をかけられた………のでしょう
「ええ、どうぞ隣に」
どことなく私に似ている………確信はないのですが
なんとなくそんな感じでした。昔の私、そして今の私になったみたいなそんな感じも
確信はないのですがそんな気がしてならなかったんです。
【失礼ですが、あなたもカップルとですか?】
「ええ、そんなところです、ここに来るということもあなたもですか?」
コクリとうなづく彼女。今になってみてわかるが、彼女も結構なことを経験しているのでしょう
表情がそれを物語るようにすごく大人の顔つきでした
【ええ、私、以前付き合う前すごく説教されて
でもそれで好きになって…………今、席確保してくるといって離れているんですけど………】
そういうことでしたか、境遇がすごく似ている………
「私もです。私も以前は狂ってて、すべてが信じられなかった
でも今の人がそれを変えてくれて………今ではすごく感謝してるんです」
なんで初対面の人にこんなこと言うんでしょうね、でも凄く親近感を感じていました
以前の私、狂って我慢してどうしようもなくて……すべてを壊そうとしていた私にとても似ていて………
きっと何かがあったんだと思います
【私もそうでした。でも今の人から………良くされて
だからここにきて、その人もそのために離れていて、今その人を待っているんですが、
こうも似ているとなんか私たち他人の気がしませんね】
彼女はもちろんでしょうけど
私も似たような感じを持っていた………きっとこの子もすごく大変な思いをしてきたんでしょう
「本当に他人の気がしませんね、私たち」
【ええ、もしよければ二人でお話ししたいですね】
「仲良くなれそうですね、今度二人の時ゆっくりお茶しませんか?
私ここの常連ですから、今度一緒に行きましょう。」
ああ、そうだ………こうしているこの瞬間が私はよかったんですよね
生きているってこんなにもいいことだったんですね
彼女も何か思うところがあるみたいに夜空を見ていました
「どうしました???」
【いえ、ついこの前までは私、本当に自分も嫌で、自分を見てくれないで幸せな周りがいやで
そんな考えの自分がいやだった…………ですけど、やっぱり私こんな暖かい世界が好きで、
それでそのことに気づかされるために怒られて……励まされて………】
双子なのではないかというくらい、私と同じ思いを抱えていたのですね…………
でもそんな人がうれしくなるような、いい人に巡り合ったんですね。
その嬉しい気持ちはすごくよくわかります
【ああ……ごめんなさい、私一人でこんなにしゃべってしまって】
「いいえ、私も似たような境遇だったからよくわかるんです。世界は素晴らしい、本当にそうですね
ダメだと思っても周りの人は私たちが思ってるほど絶望ではなかったのですから」
そんな話をしていると
【あっ………先輩だ】
「先輩???」
【ごめんなさい、もっと話したかったのに、どうやら来てって言われて】
そういうことですか、今まではなしていた好きな人、その人を先輩と呼んでいるんですか、敬意も込めて感謝も込めて、そういう意味で
私は笑顔で送り出した
「気になさらないでください、また会おうと思えば会えるのですから」
【会えますか?】
「ええ、必ず」
・・・・・
そういうと宗一郎さんもあわてるように帰ってきた
桜さんか………きっと彼女の彼もさぞ素晴らしい人なんだろうな……宗一郎さんには負けるでしょうけど
「藤すまない、やっと帰ってこれた」
いつものように思慮深い宗一郎さん、ああ、私はホント幸せだ泣いてしまいたい………
生きていればこうなるんですね、きっと彼女も今同じ気持ちなんでしょう
「藤?どした………さっきの子のことか」
「いえ、私って幸せだなって思って、きっとあの子も
幸せだと思います。どことなくですけど、私と同じ空気というか魔術を感じましたから」
「空気ってまさか………」
私と形は違えど同じ力を感じました
彼女もいろいろあったのでしょう。そして私のように、自分の感情に任せて絶望して……
今は罪を感じていて、償って、そしてそんな中、私のように、宗一郎さんみたいな人に会って………
「まあ、藤が認めるようなやつならさぞいい子だったんだろうな
ちょうど俺もさ、俺と似たようなやつと話してて、結局それで遅くなった……ごめん」
ちょうど待っていたのは私と彼女だけということですから………そういうことですか
「いえ、気にしないでください、私だって似たようなものです
私も隣で一緒に待っていた人と楽しく話していましたしおあいこです」
「そっか………ありがと藤。俺はほんと幸せだよ
こうして結果残してこうして有名になってこうして藤と一緒の幸せな空間にいるなんて、ホント幸せだ」
それは私のいいたいことです、宗一郎さんが、私の幸せを与えて
そして一緒にいてくれるのですから
・・・・・
【桜、悪い遅れた】
【いえ、先輩こそ大丈夫だったんですか?】
【ああ、ちょっと、交渉してるとき一緒に待っていた男と意気投合してしまって
まさかプロ野球選手があんなにも気さくな人なんてな……
ごめん遅くなって、桜には悪いことしちゃったな】
ということは先輩は先輩でさっきの彼女の彼氏に会っていたということになるのかな
先輩が投合するくらいだからきっとうらやましいくらいにいい人だったんだろうな
先輩には負けちゃうでしょうけど
【いえ、私もちょうど待っているときに話してたんです。たぶん先輩が話していた彼女だと思います。
私と同じ空気を感じました。】
【桜と同じっていうと………】
世の中にはこういうこともある。
私に似たような人、そして境遇、幸せになる過程
【ええ、きっと私と同じでひょっとしたことでいやひょっとしたもっと深いところで絶望し、
そして先輩みたいな人に助けてもらった人だと思います、その空気がありました」】
【会ってみたかったな………どんな人なのか興味ある】
【会えますよ、定期的に来てるみたいですし、私、番号ももらいましたし、その時先輩も紹介します】
【男の人はあったぞ、ってさっき言ったか】
【逆に私が知りたいですよ。どんな人か、浅上さんが言うようなら、きっと素敵な人だと思います】
二人は思っていた
きっと人それぞれ行き違い、苦しみはあれどきっと幸せになれる。そう信じています。
だから悲観はしない、悲観したところで苦しみはとかれない、そして私はそんなこと言ってはいられないくらいのことを
償わないといけないのだから
・・・・・
「まあなんかなあ、人が多いな、去年なんて藤と俺だけであとは探すのも大変だってえのに」
「結構なことじゃないですか、宗一郎さん」
「なんかなあ活躍したって言っても、一年間だけでこうも集まってな……藤との共有がなんか……」
「いいことじゃないですか、みなさん幸せになって
そしてその場に居合わせて、そして宗一郎さんといる素晴らしいことだと思いますよ」
「そっか………」
雪が舞い始めました。去年はなかった光景、むしろこういうことを気にもしていませんでしたが
それくらい追い込まれていたのでしょうか、でも今は違う
「今年ももう終わるんだな………」
ふいに宗一郎さんがつぶやく
一年の終わりそして、カップル同士が幸せを分かち合い、そして飛躍を誓い合うそんな元旦が来ます
そして
「みなさん幸せですね、だからこそ私はこれから皆様の笑顔をなくさないためにも償わないといけません
私のせいで、私の痛みを知りたいという身勝手な理由でたくさん」
「だからこそ、今度はわかってるな」
「はい」
「その前に藤、ありがとう、お前のおかげで今の俺がある」
「いいえ、宗一郎さんこそ」
色々あった、償いもしなければいけない
でも目の前のことも大事だ、きっと桜さんもそう思っているはずですよね
世界は本当にこんなにも素晴らしいです。それを実感して、宗一郎さん問い合わせているという幸せを感じています
一秒でも長くこんな幸せなことが続くようにそう願いながら、私は大好きな紅茶を味わいあいながら飲みました