ベクターさんの華麗なる日々~甘口~   作:鮪薙

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サブタイがメタってるって? まぁほら、ベクターさんだし


〝連続で出番無しは避けたいベクターさん〟

 言うなれば主役なのに出番がないのは駄目じゃないかしら、ベクターさんはその日唐突に思い至った。

 

 まぁ必ずしもそうじゃなければならないというわけでもないしエーアデントが主軸なのだから仕方がないのだけれどと、そこまで考えて彼女は一言。

 

「急に変な電波拾ったわね」

 

「それを唐突に聞かされる私の身にもなってほしいわ」

 

 エーアデント基地食堂にてゆったりとしていた上司が訳わからんこと言い出したんだがと言うのが今のネゲブさんの心情だろう。

 

 そんな事を言われても反応に困るし、出来ることはPPSh-41に丸投げするくらいだろう、彼女ならば嬉々としてベクターさんの不調の原因を探りそして匙を投げるに決まっている。

 

「それはそれで酷い扱いじゃないかしら」

 

「だったら理由のわからないことを突然口にしないで頂戴よ」

 

「仕方がないじゃない、ふと思っちゃったんだから」

 

 何がどう仕方がないんだよお前という言葉はコーヒーとともに喉に流し込む、過去の経験からネゲブさんはこれ以上なにかをツッコミを入れても意味がないと分かっているから。

 

「んなに暇なら指揮官でも誘って街に出ればいいじゃない、向こうだってどうせ暇なんだし」

 

「あら、デートしろってことかしら」

 

「はいはい、そうですよ、だからさっさと行け」

 

 今日も今日とて平和なエーアデント、特に何かがあるというわけでもなく基地も通常業務が終われば暇ですと断言できる状況となればネゲブさんはゆっくりしたい、したいのに目の前の上官が電波なこと言い出したから追い出すことにした。

 

 ベクターさんもこれには悪くない案だわと納得の様子を見せる。とどのつまり彼女も暇を持て余していたのだった。

 

 なおカラビーナは今日はエーアデントから離れて遊びに出ているため不在である、彼女は外にも友人が居るのだ。

 

「ってことなんだけど、どうかしら?」

 

「まぁ暇なのは確かだな、にしてもネゲブがそんな事言うとは意外な感じだ」

 

「それはそうだけど、一人でゆっくりしたかったんじゃないかしら?」

 

 御名答であるとベクターさん達が知る由もないが付き合いの長さから推測は出来るらしい。推測出来るのならば、あんな変な絡みを生まないで欲しいと言うネゲブさんの声が聞こえそうである。

 

「ところでVector、街に出るとしてなにか行きたいとかあるか?」

 

「決めてないのよね。なんたってさっき決めたことだから」

 

「なら適当に歩きながらで良いか」

 

 プランが無くとも貴方となら私は十分なのよと言わないベクターさん、何気に恥ずかしいと言う感情はあるらしいが指揮官には悟られているのは言うまでもないかもしれない。

 

 フラフラと当てもなくエーアデントの街並みを歩く二人、その二人を見ては相変わらずのオシドリ夫婦だと声を掛けてくる露天商や店前の客寄せ、時には遊んでいる子供たちとも交流をしながらふとベクターさんが足を止めた。

 

 はて、どうしたのかと指揮官も足を止め彼女の視線の先を見てみればそこには一件のお洒落な感じの店が。ティーカップやティーポット、湯呑や急須等などお茶にまつわる品物を扱っているのが見える範囲で分かる。

 

「茶器屋か、初めて見る店だが最近できた感じか?」

 

「私の記憶にもないから間違いなくそうね。でも悪くない感じ……ちょっと良い?」

 

「ちょっとと言わずに何時間でも付き合うさ」

 

 何が恐ろしいとすれば、指揮官のこの台詞が意識して出たわけじゃないという部分かもしれない。

 

 まぁ今更なのでそれは置いておき、2人が店内に入れば迎えたのは古今東西、あらゆる国の茶器が所狭しと棚などに並べられている光景。

 

「おぉ、こりゃ中々……」

 

「これだけの品揃えは見たことないわ、期待できそうね」

 

 口調に変化はない、だが指揮官にはと言うよりもある程度の付き合いがアレば誰でも分かるほどには声が浮かれているし自身では恐らく気付いていないだろうが動きにも楽しみだという物が含まれている。

 

 とどのつまり、此処は当たりな店なのだろうと浮かれ気味な妻を眺めながら指揮官も店内を物色していくことに。

 

 店員はカウンターに一人と品出しと整理をしている一人、もしかしたら時間的に昼休憩に出ているかもしれないが店内の広さを考えればこの二人だけしか居ないのだろう。

 

(或いはあの二人は雇われでオーナーは別に居るとかか? 我ながら人の出入りが激しすぎて把握しきれてないのはマズイよなぁ)

 

「あら、私を放って誰を観察してるのかしら?」

 

「おっと、悪い悪い。なにか良いのは見つかったか?」

 

「まだ全部を見たわけじゃないけど、どれも良い物なのは確かだわ。ティーカップとかは外にあるのだけかしら?」

 

「ティーカップですか? あ、ごめんなさい突然、聴こえちゃったもので」

 

 品出しをしていた店員が丁度良く声を掛けてきたのでベクターさんがティーカップやティーポットの棚を聞けば快く案内を始める。

 

 道中でこの店について尋ねるとやはり二人は雇われらしく、この店に並んでいる茶器の数々はオーナーが世界中を飛び回って集めたものを売りに出しているらしい。

 

「オーナーが言うには趣味でやってることだからで値段もギリギリ赤字じゃないって感じらしいです」

 

「どうりで質に対して値段が安いと思ったわ。機会があったら一度でいいから会ってみたいものね」

 

「是非と言いたいですけど、いつ帰ってくるかってレベルなんですよ。エーアデントに来たのも此処が自由な感じだからって理由ですし」

 

 風来坊、それ以外の言葉が見つからないオーナー何だなと思いつつベクターさんはティーカップを眺めていく。やはりと言うべきだろう、質はどれもよく折角だから新しいのでも買うのもありかもしれないと思わせる品々。

 

 また同時に最近、お茶会を開いた記憶もなかったなと思い出したベクターさんはティーカップのセットを指差しながら

 

「これを購入するわ。指揮官、明日にでもお茶会をしない?」

 

「お茶会か、確かに此処最近は全くしてなかったな。帰りにお菓子の材料も見ていくか」

 

「それもそうね、あぁそうだ。そろそろカラビーナに種明かしをするのも悪くないかもね」

 

 思い出して欲しい、カラビーナはベクターさんがお菓子作りは一流だということを知らない事実に。更に市販のチョコに擬態したそれを毎週のように美味しいですわと食べていることに。

 

「へくちっ!? むぅ、これは副官さんが私のことを噂しているクシャミですわ」

 

 後日、カラビーナは世の不条理を叫ぶことになるとはこの時まだ本人は知る由もないのであった。




悲報 ネタがもう無い
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