マブラヴ火葬戦記 作:ポンコツ資源採掘重機駆除業者
一話の地味な伏線をようやく回収できた……
西暦1991年。
国連軍総司令部より全ハイヴ同時制圧作戦――桜花作戦が発令された。
作戦第一段階として、衛星軌道上から戦略航空機動要塞凄乃皇による砲撃で着陸ユニットの反応炉を最深部まで下ろす際に掘られ、成長し続けるハイヴの巨大な縦坑――主縦抗を狙い撃ち、主縦坑の守りを固めている光線級を撃滅。
第二段階では、その後反撃してくるであろう超重光線級の極大照射や付近の光線属種による光線照射を凄乃皇のヤタノカガミで反射しなから軌道降下を行い、第三段階で突入部隊を主縦抗からハイヴ最深部へと突入させるというのが本作戦の概要だ。
『これより作戦第一段階を実行する』
作戦発動と同時に、対BETA諜報活動用非炭素擬似生命を乗せて軌道上で待機していた十機の凄乃皇が、現存する九つのハイヴへと一斉に主砲であるGNブラスターを解き放った。
橙色の極光はそのまま大気を貫いて地上へと降り注ぐ。空気そのものが灼かれ、地表では雷鳴にも似た衝撃波が幾重にも轟いた。
特にフェイズ七の規模を誇る喀什ハイヴに対しては、二機が共同で砲撃を行った。合流した二条の光は大気圏に突入する瞬間、爆発的に輝度を増した。
砲撃が直撃した瞬間、地表構造物は瞬く間に蒸発し、主縦坑を守っていた光線級の群れも反撃の暇なく焼き払われた。
やがて砲撃跡地には、主縦坑をぶち抜いた巨大な穴が出現した。
『地表構造物消滅を確認。通り道も開通した。これより作戦第二段階へと移る。凄乃皇及びハイヴ突入部隊は地上へと降下せよ』
司令部から新たな司令が下る。
砲撃を終えた凄乃皇が主砲の冷却と粒子の再チャージを行いながら突入部隊と共に軌道降下を開始した。
突入部隊は大量の擬似太陽炉搭載機や米国製戦略航空機動要塞デストロイ等で構成されている。
その直後だった。
各ハイヴ周辺の地面が内側から突き破られるようにして割れ、極光が天を貫いた。
『超重光線級出現! マシュハド、ウラリスク、ヴェリスク、エキバストゥズ、スルグート、ロヴァニエミ、アンバールにそれぞれ反応三、ボパールに反応一……』
そして
『喀什……反応五ッ!』
軌道上の凄乃皇を狙い撃った極大照射レーザーが光の柱となって天に昇る。
だがそのレーザーは、凄乃皇の機体表面に触れた瞬間、突如屈折し、そのまま角度を変えて地上へと撃ち返された。
ヤタノカガミ。凄乃皇の機体を覆うレーザー反射コーティングが、極大照射光線をそのまま跳ね返したのだ。
『反射光線が超重光線級を直撃……超重光線級の自滅を確認!』
自らが放ったレーザーに貫かれた超重光線級の巨体が、内側から膨れ上がるように青白い光を溜め込み――グロテスクに弾け飛んだ。爆散した肉塊が付近のBETA群へと降り注ぎ、地表の超重光線級の反応が次々と消えていく。
『残るは照射を行わなかった喀什の二体のみです』
唯一喀什では五体のうち三体が極大照射を行い自滅。照射を行わなかった残り二体はいまだ健在だった。
俺の獲物が残ってくれて良かった。
今回の作戦は暁の圧倒的性能でBETAを鏖殺できる最初で最後の機会だ。
事前に主砲や光線反射を生き延びた喀什のBETA相手に試作機で量子テレポート光線級吶喊する許可はとってある。
司令部のお偉方が「何言ってんだこいつ……?」みたいな困惑顔で承認してくれた。
「根尾ロアノーク、出る」
いつもの仮面を被り、俺は暁を出撃させた。
抗重力機関Gジェネレーターによる重力制御とGN粒子を各部補助スラスターから噴かせて飛行する黄金色の機体が母艦から発進する。
「脳量子波コントロールシステム正常。量子ゲート形成」
俺の脳波に反応し、機体背部に備え付けてあるソードビットが展開する。計十二基のビットがリング状に並び、光の環が完成した瞬間、その中心の空間そのものが歪むように揺らぎ量子ゲートが開いた。
ゲートを通り抜けた瞬間、眼前には超重光線級がいた。
地上への量子テレポート成功だ。
全高九十メートルを超える超重光線級の巨体は、間近で見上げるとまさに生きた要塞そのものだった。造形はキモイけど。皮膚の奥に脈打つ発光器官が禍々しい青白さで明滅し、照射膜を持ち上げて軌道上の凄乃皇へと狙いを定めている。まだこちらには気づいていない。
「ディスラプター起動。出力八十パーセント」
奇襲を成功させるべく、俺は二体の超重光線級へと照準を合わせ、Gジェネレーターによる重力制御を行っている際に発生した余剰電力を用いて放つ試作武装の引き金を引く。
「発射」
頭部収束重核子ビーム砲――ディスラプター。
暁の眉間から放たれた次元そのものを斬り裂くかと錯覚させる光の刃が、超重光線級二体の巨体を瞬時に両断した。焼き切れた胴が青白い光を放ちながらずれ落ち――大気を震わせる爆音とともに爆散した。
だが次の瞬間、周囲に潜んでいた光線級と重光線級が一斉にこちらへと照準を合わせた。操縦席で光線照射警報が鳴り響く。
照射を遮るために有効活用できる他のBETAは付近にいない。
通常の戦術機なら絶体絶命の状況だ。
しかし、この暁であれば話は別だ。
「短距離テレポート」
俺がそう呟いた瞬間、暁は緑色の粒子となって霧散し、少し離れた座標で再構成された。
標的を見失った光条が虚空を奔る。
短距離テレポートなら、量子ゲートをくぐる必要もない。
流石の光線級もテレポートする敵を迎撃する対空能力はまだ持っていないようで、テレポートを駆使して回避機動を行う暁に対しては、これまで必中の精度を誇っていた索敵も完全に後手に回り続けている。
その間に、俺は発見した光線級の群れを片っ端から収束重核子ビーム砲で薙ぎ払った。
光の刃が地を這うように走り、ロックオンした光線級と重光線級を障害物や周囲の有象無象ごと纏めて焼き切る。
それでも全滅させることは叶わず、生き残った複数体から一斉に光線が照射されるが……
「ラザフォート場一時解除。ほい、反射」
照射された光線は暁の全身を覆うヤタノカガミによって反射され、照射した個体を自滅させた。四方八方から放たれた光条が、まるでブーメランのように放った本体へと還りその身を貫いていく。
ようやく当たった光線を跳ね返された残存光線級たちの肉片が大地に虚しく飛び散った。
『本作戦はいよいよ第三段階へと移行する』
かつてBETAが埋め尽くしていた喀什の地表は、今や沈黙が支配していた。
暁との戦闘で光線属種がほぼ壊滅したハイヴ周辺のBETA群は、その後降下してきた凄乃皇二機と突入部隊によって掃討された。
地表にはBETAの死骸の山と、GNブラスターが主縦坑を穿ち拡張した底が見えない巨大な大穴。
『諸君の健闘を祈る。全機突入!』
凄乃皇二機と突入部隊の後から、俺が駆る暁も大穴の中へと降下した。道中のBETAはすでに大半が焼かれており、残ったごく僅かな数の個体も、突入部隊が楽々と片付けながら進んでいく。
やがてハイヴ中枢に到達した。
瓦礫が散乱する地中深くの広大な空間にそれはいた。
男性器に似た卑猥な形状の巨大な構造物。その頂上に、六つの目と無数の触手を持つ、イカに似た輪郭をした異形のBETAが鎮座している。
重頭脳級。あるいは「あ号標的」と呼称される、地球侵略を行っているBETAの統括個体。
六つの目が、ぎょろりと一斉にこちらへと向いた。
『ハイヴ最深部に到達。主大広間制圧成功です』
『よくやった。これで地球上の全ハイヴの主広間と反応炉の制圧が完了したことになる』
通信は良好だ。
ハイヴ内では通常の通信は阻害されるが、最近確率された量子通信システムのおかげで司令部との通信も問題なく維持できている。
どうやら他のハイヴはここよりも一足早く制圧が完了していたらしい。
『00ユニットに告ぐ。ただちに、BETAに対するリーディングを実行せよ』
司令部からの指示で、全ハイヴ同時に対BETA諜報活動用非炭素擬似生命による諜報活動が開始された。
対BETA諜報活動用非炭素擬似生命は、ミンスクハイヴで回収された脳と脊髄以外が削ぎ落とされていたBETAサンプルにESP能力と優れた処理能力を持つ機械の体を与えて蘇生させた機械の体に人間の魂が宿った存在だ。
BETAとの接触経験があり、炭素生命でもないためBETAとの再接触及び対話を円滑に行える存在として期待されている。
司令部はこの「生物的根拠0」「生体反応0」の非炭素擬似生命を『00ユニット』と呼んでいる。
もっとも、生物的根拠0というのは生物イコール炭素生命体という地球人類の常識に基づいた判定に過ぎない。
この宇宙にはBETAの創造主である珪素生命体が存在していたり、暁の機体内骨格に採用している脳波増幅能力を持つ金属粒子サイズのコンピュータチップを金属フレームに無数に鋳込んだ
人間の魂が宿っている00ユニットは、機械生命体という位置付けの方が個人的にはしっくりくる。
まあ、そのあたりの定義や解釈は戦後にじっくり議論してもらえばいいか。
『あ号標的から触手状の物体が接近』
『リーディングの邪魔をさせるな。迎撃せよ』
リーディング中の00ユニットが乗る凄乃皇に向けて、あ号標的から複数の触手状の物体が伸びてくる。
だが迫る触手は凄乃皇二機がそれぞれ周囲に展開している百五十機超のファングと、一撃一撃が擬似太陽炉搭載機三機がかりでようやく放てる出力のビームをグミ撃ちできるGNビームガンの迎撃弾幕によってすべて迎撃され、焼き払われた。
『情報奪取成功。照合、分析を開始します』
リーディングが無事完了し、全ハイヴの反応炉から情報を抜き取ることに成功した。あとは、BETAとの対話を可能性を探るだけだ。00ユニットを利用して、各ハイヴの反応炉へと呼びかける。
すると、
『マシュハド、ウラリスク、ヴェリスク、エキバストゥズ、スルグート、ロヴァニエミ、アンバール、ボパールの反応炉からの応答未だ無し……』
八つのハイヴの反応炉はこちらからの呼びかけに応じなかったが、
『喀什のあ号標的から応答有り!』
唯一ここ喀什のあ号標的からは応答があった。
『……信号、受信。存在、認識、照合、情報、転送』
読み取ったBETAの情報が、00ユニットを通じて声になる。
『存在を認識した。記録、正しい形式を照合。情報を転送する……』
人類はついにBETAとの接触、対話に成功した。
あ号標的との対話は、司令部で待機していた国連が選出した全権大使との間で量子通信越しに行われることになった。
あ号標的に対しては、念のために凄乃皇二機と突入部隊が全砲口の照準を合わせている。
『地球人類を代表して貴様等BETAに問う。何故、貴様等は地球を侵略し、我々人類を虐殺した?』
『地球……該当ない。我々……該当ない』
大使の質問への応答として00ユニットの口から出力された声には、感情が欠片もこもっていなかった。怒りも、釈明の意思も、怯えも、そして敵意さえも。
『地球はこの惑星のことだ!』
『地球……認識。侵略……該当ない。人類……やはり該当ない』
『該当ない……だと? 我々人類に攻撃を仕掛け、多くの罪なき地球市民を虐殺し、さらにはユーラシア各地に無許可でハイヴを建設した貴様等の行いを侵略と言わずしてなんと言うのだ!』
まるでポンコツAIのようなあ号標的からの返答を聞いて、大使の声に抑えきれない怒気が滲み始める。
すると、
『攻撃……該当ない。戦っている……暫定認識』
あ号標的は、わずかな間を置いて言葉を続けた。
『戦闘……暫定認識。殺す……該当ない。上位存在は存在に対して重大災害の防止策を実施したにすぎない』
その返答を聞いた瞬間、映像に映し出された大使が衝撃を受けたように固まっていた。
『災害……ッ!? まさか、これまでの人類との戦いを戦争と……いや、そもそも我々地球人類のことを生命体とさえ……』
そもそもあ号標的が、端から人類を戦争相手だと認識していなかったことに気付いてしまったのだ。
人類が土砂災害を防ぐためにコンクリートの壁を作るように、あるいはパンデミックを防ぐために媒介感染を引き起こす虫や動物を駆除するように。
BETAにとってこれまでの戦いは戦争ではなくあくまで災害対策をしている感覚で行っていたものだった。
『……貴様等BETAは、我々地球人類のことをどのように認識している?』
『上位存在と同等の被創造物であり、再利用すべき資源』
その後も対話を通じて衝撃的な事実が次々と明らかになっていく。
『被創造物とは?』
『他星系からの資源回収を目的に設定された存在の一部』
『資源回収……では、BETAがこの星に来た目的も……』
『上位存在の目的は資源の回収。回収した資源は上位存在を送り出した惑星に送っている』
『これまでの侵略はただの資源採掘作業だったと。そう言いたいのか』
『肯定する』
『地球に来た目的は本当にそれだけか?』
『肯定する』
『BETAは生命体ではなく、ただの作業機械……そういうことだな』
『肯定する。固有の上位存在であり、個ではない』
BETAは生命体ではなく、ただの資源採掘機械のような存在にすぎないこと。地球に来たのは、資源採掘目的であったこと。
『貴様等の創造主は?』
『生命体』
『生命体? 貴様等が生命体と定義している存在は一体何者なんだ?』
『珪素を基質とし、自己形成、自己増殖する散逸構造』
『珪素……シリコンか。ということはつまり、創造主であるシリコニアンと同じ珪素生命体でなければ、生命体ではない。貴様等はそう判断しているのか』
『肯定する』
BETAの創造主が珪素生命体――シリコニアンであること。
『確かに、我々地球人類は珪素生命体ではない。だが、我々は君たちが定義している被創造物――機械ではない。炭素生命体だ』
『否定する。炭素を基質とした生命体は宇宙に存在し得ない』
『理由を聞こう』
『炭素は安易に化合し変化する。知的生命体まで進化することはあり得ない』
『な、何だとッ!……実際に我々は――』
『最大根拠。上位存在の目的遂行は生命体が存在しない惑星に限定。上位存在は創造主の絶対則に違反不可能。従って、上位存在が活動可能な地球に生命体は存在しない』
そして、BETAは珪素生命体ではない地球人類のことを生命体だと認識できていないことが判明した。
いくら対話を重ねても、あ号標的は頑なに人類のことを生命体だと認めなかった。炭素を基質とした存在である地球人類は自分たちと同じ被創造物――機械のような存在であると端から決めつけていたからだ。
『上位存在は人類に問う』
今度は、あ号標的から人類へと問いが投げかけられた。
『生命体であると主張するのであれば、人類が自然発生した生命体であるという根拠の提示を求む』
あ号標的からの要求に対して、大使は人類がこれまで歩んできた歴史。合理的な判断だけでは説明できない非合理な選択の数々。繰り返してきた過ちと、それでも前へ進もうとしてきた軌跡。他にも人類の生態情報等を提示した。機械とは根本的に異なり、生殖行為によって次の世代を生み出す点を明確に指摘したのだ。
しかし、
『提示された根拠から、やはり存在は生命体である可能性は限りなく低いと判断した』
結局あ号標的は、最後まで人類を生命体であると認めることはなかった。
『……残念だが対話はこれまでだ』
あ号標的の答えを聞き、大使は失望した声で対話の打ち切りを宣言した。もはや対話による相互理解及び停戦の可能性は潰えたと判断したのだろう。
『既に情報は奪取してある。照合、解析も完了した。これ以上の対話継続は不要である』
大使は、改めてあ号標的に対して、
『地球人類を代表して上位存在に通達する。降伏せよ。速やかに戦闘行為を停止し、以降こちらの指示に従いたまえ』
非情な最後通告を行なった。
『否定する。上位存在は重大災害への対処を継続する』
あ号標的はこれを拒否。
『……作戦最終段階を承認する。速やかに全反応炉及びあ号標的を破壊したまえ』
交渉は決裂した。
突入部隊があ号標的に突きつけていた砲口への粒子供給が開始される。
あ号標的も、先程攻撃に使用していた触手をいつの間にか再生させていた。
やはり、言葉による対話は上手くいかなかった。
作者インタビューか何かでも、BETAとの対話は不可能だと断言されていた。その通りだった。
ただ、個人的にもう少し確かめておきたい。
「待ってください」
俺は司令部に秘匿通信を繋いだ。
「個人的にあ号標的に聞きたいことがあるので、破壊はその後でお願いします」
「貴方は……わかりました。攻撃は一時中断。ただし、あ号標的に異変があれば即時発砲したまえ」
俺の正体を知っている大使が承認した。
暁をあ号標的の前に出す。あ号標的の触手が暁へと狙いを変えたが、構わず俺は暁が溜め込んでいたGN粒子を解放し、高濃度粒子領域を展開。さらに、機体に組み込んであるサイコフレームを共鳴させてサイコフィールドを生み出した。
暁が桜色の輝きに包まれ、機体から溢れ出た暖かくも眩い光が一帯の空間を埋め尽くした。
言葉を交わしてもポンコツAIのような返答が返ってくるだけだろう。だから、より直接的な方法で対話を試みることにした。
「個人的に気になっていたんだ。別世界から転生した人間であり、未知の金属生命体と融合している俺のことを、BETAであるお前はどのように判定するのか」
俺は高濃度粒子領域とサイコフィールドを介した脳量子波コミュニケーションであ号標的に聞いてみた。
『くぁwせdrftgyふじこlpッ……』
一瞬だけ、出力が乱れた。だがすぐに繋がった。
『存在を認識した。存在の疑問に返答する。存在は炭素を基質とした被創造物と未知の金属で構成された被創造物との融合存在と判断。存在は珍しい被創造物ではあるが、生命体ではない』
「そうか、やはり珪素生命体以外は生命体と判定されないか」
返答を聞いて、俺は静かに頷いた。
これで確信が持てた。
BETAは判定基準そのものが、珪素生命体以外を生命と認識しない前提で組まれている。
言語による対話でも、脳量子波による直接通話でも、俺たちが珪素生命体でない以上結果は変わらない
「やはりBETAとの対話による相互理解は不可能だ。今度は、お前たちの創造主と直接言葉を交わすことにするよ」
高濃度粒子領域とサイコフィールドを解除する。光が静かに収束し、喀什の地下に元の薄暗さが戻った。
俺そのまま司令部へ通信を繋いだ。
「話は終わりました。破壊してもらって結構です」
『……後程、詳しい説明を求めます。ただちに、全破壊目標の破壊を実行せよ』
あ号標的が触手を放ったのと、二機の凄乃皇と突入部隊が発砲したのは同時だった。
光の奔流がハイヴの中枢を満たし、あ号標的は消滅した。同時刻、他のハイヴの反応炉もすべて破壊された。
地球上のすべてのハイヴが、その日、死んだ。
☆☆☆
地球人類は初の異星起源種との戦争に勝利した。
地球上に建設されたすべてのハイヴを制圧し、翌年1992年には地上から全BETAを駆除し終えた。
その後人類は、国連軍の戦力を拡大し地球統合軍を設立。
太陽系内のBETA駆逐とBETAの創造主であるシリコニアンとの星間戦争を見据えた大軍拡を開始した。
西暦1998年には、第二次月面戦争が発生。
統合軍は量産した百機以上の改良型凄乃皇を実戦投入し、月をBETAから奪還した。
そして、西暦2001年。
統合軍は火星のハイヴ攻略を見据え、小惑星を改造した中間補給基地を整備。
空間跳躍を行えるシリウス級跳躍航宙艦を建造し、アクシズと名付けられた中間補給基地へと、多数の人員と戦力を送り込んでいた。
だが、同年十月二十四日。
アクシズを目指して跳躍したシリウス級三番艦『みらい』が跳躍事故を起こして消息を絶った……。
メカニック紹介
凄乃皇
改良型ML機関Gリアクターと計二十一基の擬似太陽炉を搭載している超兵器。
通常飛行はGリアクターによる重力制御を用いているが、非常時にはトランザムも可能。
全身がレーザー反射コーティング『ヤタノカガミ』に覆われている上、レーザー以外の攻撃はラザフォート場とGNフィールドで防御可能という異常な防御性能を誇っている。
主砲のGNブラスターは軌道上から主縦坑最深部まで貫通する威力を持ち、計百五十機超のファングを展開できる。
統合軍の主力機として2001年までの間に二百機以上量産された。
暁
転生チートオリ主が趣味と実益と浪漫を込めて作った試作機。
内骨格の特殊構造材を作る際に別世界と繋がる門を開いて金属生命体を呼び寄せてしまったりもしたが、どうにか作ることができた。
機体には凄乃皇に搭載されているGリアクターをさらに小型化させたGジェネレーターとオリジナルの太陽炉を搭載しており、その全身がレーザー反射コーティング『ヤタノカガミ』で覆われている。
武装としては、ソードビットや重核子収束ビーム砲等を搭載。量子テレポートも可能。
跳躍事故で消息を絶ったシリウス級三番艦『みらい』は、この暁の改良型二号機も運んでいたらしい……
次回からはオルタネイティブ火葬戦記編!