【―外伝―メイド イン ロンドンまで完結!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~   作:初雪空

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指名手配となった室矢重遠は、どこへ!?
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第23話 姫騎士にしてメイドの王女殿下と新たな旅立ち!

 瞬く間に、ウィットブレッド公爵家の敵が滅ぼされた。

 

 フローラ・テレサ・バーンズは、成り行きで見届けたが――

 

(訳が分からない! メイドが理解する必要はないけど……)

 

 公爵家の本邸に戻り、お茶会の準備をする面々に交ざったフローラは、他のメイドとムダ話をしているゼフィ・デ・メイソンを見る。

 

 そのメイドは、上機嫌だ。

 

「さっきの重遠、凄かったですね!」

「うん! ぶわーっと、全部吸い込まれていったし……」

 

 ゼフィも、久々の話し相手に嬉しそう。

 

「地元と違って、ロンドンやサリーの人は魚料理をあまり食べないから……」

「そーですねー! 魚料理といえば、私、お刺身にびっくりしました」

 

「刺身? 生で食べるってこと? ピーターヘッドでも、流石にそれは……」

 

 話しているメイドは、茶色がかった金髪ロングに、青の瞳。

 

 見慣れないメイド服で周りと連携している様子はなく、忙しく動いている執事やメイドは横目で見るだけ。

 

(純粋なユニオン人のようだけど、慣れていない……。どこかの貴族か、上流の行儀見習いかしら?)

 

 メイドと言えど、ランクがある。

 

 別邸から応援に来たフローラとゼフィの服も、本邸とは微妙に違う。

 

「それにしても、奇遇! 同じウェストミンスターとは!」

「ウフフ……。ガーデンには、あなたも来たことがあるのでは?」

 

 息を吐いたフローラは、ツカツカと歩み寄った。

 

「そろそろ、仕事に戻りなさい! あなたは?」

 

 ゼフィと同年代らしきメイドは、両手でスカートの端をつまみ、優雅にカーテシーをするも、あっ! と気づいたように固まる。

 

 それを見たフローラが、息を吐く。

 

「見事なカーテシーだけど、仕事をしてください」

 

「ハーイ! 私、担当がありません。ゼフィについても?」

 

 妙に元気なメイドに、困惑するフローラ。

 

 周りを見るも、上司らしき人物はいない。

 

「あなたの名前は?」

 

「アドラス……ゴホンゴホン! アドです!」

 

 この様子を見る限り、メイド体験をしている裕福な層かな?

 

 自己完結したフローラは、指示を出す。

 

「分かりました……。ゼフィ! アドさんの面倒を見てあげて」

 

「ハイッ!」

 

 厨房でワゴンに軽食などを詰め込み、お茶会の準備をしつつも、別棟の客室で休んでいる室矢重遠たちを呼びに行く。

 

 今のゼフィやアドに任せたら、盛り上がってパンパンしている最中に、失礼しまーす! と、ドアを全開にしそうな怖さがある。

 

 彼女たちの様子を窺いつつ、重遠たちへ報告。

 

 幸いにも、重遠たちは普通に休んでいた。

 

「ウィットブレッド公爵がお茶会をしたいと、(おっしゃ)っています。恐れ入りますが、ご出席いただきたく存じます」

 

 

 お茶会は、いきなり終わった。

 

 公爵は、王女殿下が訪ねてきたことで、慌てて出迎え。

 

(王族が来ても、おかしくはないけど……)

 

 何も、このタイミングで来なくても。

 

 カレナの後ろに立っているフローラは、息を吐いた。

 

 ゼフィを見ると、その後ろの壁と一体化するようにアドが立っている。

 

(良かった……。場の空気を読むぐらいの常識はあったと!)

 

 しかし、そのアドが、そーっと、前へ歩き出した。

 

 ゼフィと入れ替わるように立って、その気配に気づいた室矢重遠が座ったままで振り向いた瞬間にキスをする。

 

(ふわっ! い、いきなり、何してんの!?)

 

 立ったままで飛び上がりかけたフローラは、突然アドが消えたことに、頭がついていかない。

 

 

 ――本邸 ハウスキーパーの執務室

 

 窓をバックにした役員机にいる中年女性は、微笑んでいる。

 

 穏やかに、切り出す。

 

「ミス・バーンズ……。あなたはどうして、見知らぬメイドがいると報告しなかったのですか?」

 

「そそそそ、それは、ですね? てっきり、ここのメイドだと思いまして!」

 

 見知らぬメイドが、アドラステア・リーディ・シェラフィール王女と知ったフローラは、全身から冷や汗。

 

 いっぽう、笑顔のハウスキーパーは、少し困った表情に。

 

「残念です……。あなたには期待していたのですが――」

 コンコンコン

 

『失礼します! 緊急の書状です!』

 

 切羽詰まった声に、ハウスキーパーは息を吐く。

 

「入りなさい」

 

 ドアが開き、断りを入れたメイドが足早に奥へ。

 

 両手で差し出したのは、立派なトレイにのせられた封筒。

 

 それを見下ろしたハウスキーパーが、初めて眉をひそめた。

 

 恭しく、両手で持ち上げてから、ペーパーナイフで上を切り裂く。

 

 眼鏡をかけて、読み始めた。

 

 速読と思えるスピードで、顔を上げる。

 

「ご苦労様でした」

「……失礼します!」

 

 会釈したメイドは、退室。

 

 手紙を置いたハウスキーパーは、ドアが閉められた後で、説明する。

 

「アドラステア王女殿下は、あなたの部下であるゼフィを侍女にしたいと仰っています。構いませんね?」

 

「えっ? あ、はい! 本人が良ければ……」

 

 話についていけないフローラだが、何とか答えた。

 

 笑顔で頷いたハウスキーパーは、正反対の発言。

 

「公爵家から王族の侍女を出す……。よくやりました! やはり、あなたはウチに必要な人材ですね!」

 

 何で、やった?

 

 王女殿下が認めました。

 

 よくやった!

 

 フローラは、虐待とも言える幼児期からのメイド訓練がこの瞬間のためにあったと実感する。

 

 そうでなければ、目を見開いて口を尖らせたまま、思いつく限りの罵詈雑言をガトリング砲のように浴びせていただろう。

 

 感情を挟まないまま、フローラは頭を下げた。

 

「恐縮です、ミス・ハウスキーパー」

 

 これをもって、最終試験に合格。

 

 フローラは、別邸のハウスキーパー候補としての扱いへ。

 

 

 ――サリーの別邸

 

 窓から田園風景を眺めつつ、フローラは思う。

 

(終わったわよ、ゼフィ!)

 

 青空に浮かぶ、彼女の笑顔。

 

 

 窓に背を向けたフローラは、自分の執務机を見下ろす。

 

 そこには、埋め尽くすような履歴書の山。

 

「次の新人は、長く働いてくれるといいな……」

 

 切実な願いである。

 

 ともあれ、室矢重遠の伝説を目にしつつ、可愛がっていた部下を送り出した。

 

 フローラは、いつもの日常へ戻るだけ。




過去作は、こちらです!
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