降臨者と愉快な仲間たちの珍道中   作:空駆けるジンギスカン

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旅人(無知)と最高のガイド(自称)

 

 

 

 

 

朝早くの静かな森林。

葉の隙間から降り注ぐ爽やかな光を明るい金色の髪に浴びながら、一人の少女が獣道を軽やかに歩く。

釣竿を持った少女は整った顔で、至極真剣な表情で、ひとつの事を考えていた。

 

────お腹すいた……!

 

人間は三大欲求がひとつ、食欲に抗うことはできない。

それは彼女…降臨者である『旅人』蛍も同様だった。

この世界にたどり着いてから数日間。

地理もわからなければ言葉も分からない。

…お兄ちゃんもいない。

それでも、空腹だけはわかる。

 

「…………」

 

音と勘を頼りに川にたどり着いた蛍は、そっと釣り糸を垂らし水面を見つめる。

この川で何が釣れるかはわからないが、もう食べられたらなんでもいい。

だが、残念な事に魚釣りとは根気との勝負、そう簡単にほいほい捕まったりはしないだろう…

そんな考えとは裏腹に、釣り糸を垂らしてから僅か数分で何かが釣竿に引っ掛かる気配がした。嬉しい誤算だ。

 

(…よし!来た!)

 

ぐっと手に重みがかかる。

魚にしてはかなり重い、かなりの大物かもしれない。

蛍の目が、思わず輝いた。

 

(今夜はご馳走かも!)

 

精一杯の力を込めて、釣竿を強く引く。

次の瞬間…

 

「……!!!」

 

水飛沫と共に、大きな何かが川面から引きずり出された。一瞬、巨大魚かと思い目を輝かせる……が、次の瞬間その期待は儚く砕け散った。

勢いよく宙を舞ったのは、人影だったのだ。

 

「……?!?」

 

慌てて釣竿を放り出し、河原へ叩きつけられそうになったそれを受け止める。

川から飛び出してきたそれは、青緑の髪を持つ少年だった。

全身ずぶ濡れで、泥だらけの少年をそっと地面に置く。

小さくむせているから、息はあるようだ。

 

……これならばすぐに目を覚ますだろうから、まぁ介抱しなくても問題はないだろう。

よし、ならばそれより魚釣りだ。

早く食料を集めないと、私が飢え死んでしまう。

そう思い釣竿を拾い上げると、同時に少年が大きく咳をし、目を覚ました。

 

「…ゲホッ……ゴホッ…」

 

少年はしばらく咳きこんでいたが、やがて落ち着いたのか、ゆっくりと顔をあげる。

赤く鋭い、相手を射抜くような目。

その目に睨まれ、思わず釣竿を武器のように構えてしまう。

しばらく睨みあった後、少年がゆっくりと口を開いた。

 

「…■■■?」

 

……なんて?

 

この世界の言葉が分からない蛍に、少年がなんと言っているかは当然理解できない。

が、当然そんなことを知らない少年は眉をひそめて、また口を開く。

 

「……■■■■■■■■■■?」

 

全く何言っているか分からない。

…とりあえず、笑って誤魔化す…という、兄によく使っていた方法を試してみる。

お兄ちゃんには体感8割の確率でなんとかなったし、まぁ成功率は低くはないだろう。

そう結論付けて、蛍は笑顔を浮かべてみる。

 

「…えへへ?」

 

残念な事に蛍の兄程ちょろくない少年は、露骨に嫌そうな顔をし、分かりやすく深いため息を着いた。

 

……すっごい感じ悪いなこの人

 

まだふたりが会ってから、数分も経過していないが、蛍の中で少年への評価は順調に下がっていた。

ため息を吐きたいのはこっちだ。せっかくの魚釣りが…彼のせいで魚も逃げてしまっただろうし、新しい釣り場を探した方がいいかもしれない。

空腹もあって、少し腹が立った蛍は少年を軽く睨みつけてみる。すると、少年が目を細め、何かを思案するような顔つきになった。

 

「……待て」

 

今度は、蛍にも理解できる言葉だった。

思わず目を見開くと、その言葉が蛍に理解できた事が少年にも伝わったらしく、少年が濡れた前髪をかき上げて、嗤う。

 

「……ほぉ…降臨者、か」

 

言葉は伝わるようになったが、何を言っているかはイマイチ蛍には分からない。が、何となく「この人、ろくでもなさそうだな…」というのは直感で理解した。

 

(……なんか怖い!)

 

ジリジリと後ずさると、少年はゆっくりと立ち上がる。

 

思ったより背が高い。

先程キャッチした時はかなり軽く感じたが、こうして向き合ってみると随分大人びて見える。

しばらく睨み合っていると、少年…いや、青年と言った方がいいかもしれない。

その青年は、先程まで溺れていたとは思えない程堂々と言い放つ。

 

「面白い」

 

「先程助けてもらった恩もある。…僕が、キミのガイドをしてやろう」

 

言葉の意味は半分くらいしか分からないが、少なくともめちゃくちゃ偉そうなのは伝わった。

しかも、おそらく着いてくる気満々である。

げんなりした顔をすると、どう解釈したのか青年が腕を組み、愉快そうに口を開く。

 

「安心しろ、僕は有能だ。少なくとも、そこらの凡人よりはよっぽど役に立つだろう」

 

その自信が一体どこから来るのか、蛍には分からなかったし、もはや突っ込むのも諦めた。

……さて、どうするか。

知らない世界、知らない言葉、知らない場所。

正直に言ってひとりは不安だった。

そして、この人は…性格は……うんまぁ、多分良くないし、ちょっと、いやかなり変だけど。

こうやって私と話せている辺り、多分かなり頭がいい。

……蛍は小さくため息を着く。

 

「…じゃあ……よろしく?」

 

恐る恐る少年の顔を見ると、少年は心底楽しそうに笑った。

 

「いい返事だ」

 

……本当に私の言葉は伝わっているのだろうか…

 

(…凄まじく面倒な人を釣り上げた気がする……)

 

とりあえず今にも大量の質問を投げかけてきそうな少年から蛍は目を逸らし、魚釣りに戻っていいかな…なんて現実逃避を始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 





全体的に仲がいい様で全員(コイツやべーな…)ってなってるチームが好き。大好き。

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