願いが叶わなかった私は、お茶屋さんを営んでいます。   作:如月雪見

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前回、死んだ筈なのに、10歳児になって何処かに飛ばされた。
良く解らないけど、第2の人生?始まりました。
優しい歌匡姉とちょっと心配性な要兄の庇護の下、ずっと飼いたかった鳥を育て、とあるお茶屋さんを継いで、忙しくも充実した毎日を送っています。



家族が増えました。

 

 

歌匡姉の夫で綱彌代家の当主になった時灘さんの厚意で、お店に必要な物資がある程度安定して供給されるようになった。

 

その一環で近場に畑を得た。

今ではご近所さんと共有で野菜や果物を育てている。

 

「…ふ~、こんなものかな?此処ら辺のが後ちょっとで収穫出来そう。楽しみ~!」

「あぁ、そうだな…っと、そろそろ戻らないと開店に間に合わなくなるのでは?」

「…あ、ホントだ。道具仕舞わなきゃ…ん?」

「どうした?」

「…ダチョウの羽根だ…」

「…だちょう?とは何だ?羽根と言うからには鳥の名前か?」

「うん、ダチョウは世界で1番大きくて空を飛べない鳥で有名なの。砂漠とかに生息している鳥なんだけど…何で羽根が此処に…しかも1枚だけ…?」

「考えるのは後にしないか?今日は新作をお出しする予定だろう?」

「…あ、そうだった!」

 

要兄に促されて羽根を懐に入れてお店へと急いだ。

 

 

 

 

 

「お待たせしました。ずんだ餅です」

「「「おぉ~!」」」

「これが例の畑で採れた枝豆のかぁ~」

「「「うっま!」」」

「こっちのは豆の食感がしっかりしてて…堪らん!」

「こっちのしっかり裏漉ししてあるのも滑らかで美味いぞ。俺はこっちのが好みだな!」

「「「お代わり!」」」

「は~い!」

 

 

 

今日も大盛況だった。

 

 

 

「…あ~、疲れた~」

「お疲れ様。今日は新作のお披露目の日だったからな…それだけ皆が楽しみにしていたという事だろう」

「そうだね。さてと、夕飯作らなきゃ…あ!」

「どうした?」

「…忙しくて夕飯用の野菜、採って来てないや。畑行かなきゃだぁ…」

「あぁ…ならばついでに明日の分も採って来よう」

「うん」

 

畑に行ったら、何故か朱鷺の雛がウロウロしていた。

 

…何で朱鷺が此処に?

 

刺激しないよう、そっと遠回りして野菜畑に入った。

 

…何か探してる?

 

声が聞こえるだろう距離まで近付いて、そっと声をかけた。

 

「ねぇ、此処は私達の畑なんだけど…何してるの?」

†む?…貴女から私の探し物の気配がする

「…探し物?」

†羽根を探しているのだ

「…羽根?…もしかしてこれ?」

†おぉ!まさしく!

「ずっと探してたの?だったら持ってっちゃってゴメンね」

†否、私の探し物を汚れぬように保管していてくれた事、誠に感謝する

 

…雛なのに随分、話し方がしっかりしてるなぁ

 

†…如何した?

「うぅん、巣は何処かなぁって。戻らないと親が心配するよ?」

†む?あぁ、この見た目では誤解するのも致し方あるまい、もう私は既に成鳥だぞ

「…え?」

†そしてその羽根は試練なのだ

「…試練?」

†うむ

 

朱鷺の雛曰く、成鳥となった者は試練の羽根を飛ばされ、それを探す旅に出なければならない。

羽根を見付けた時に誰かがそれを拾っていたら、その対象を己のマアトとして、未来永劫共に過ごすのだと。

 

…て事は、拾った私はこの子のマアト?とやらになったって事になるのかな?

 

「如何したんだ、里央?」

「…ごめん要兄、この子連れて帰らなきゃダメっぽい」

「…は?」

 

目的の野菜を採りながら説明した。

頭を抱えながらも要兄は了承してくれた。

 

「ヒナタとミヅキと仲良く出来るならば、私からは言う事は無い…ん?里央、何かが罠にかかっているみたいだぞ」

「…へ?」

 

暗くて良く解らなかったが、確かに黒い何かが檻の中に居た。

 

「…子猿?」

 

ボロボロで気絶した黒い子猿も連れて帰った。

手当てをしてご飯をあげたら嬉々として食べた。

 

Θうっめ~!たすけてくれてありがとな!

 

どうやら、子猿は治安の悪い地区から命からがら逃げて来たところで罠に掛かったらしい。

留守番をしていたヒナタとミヅキにも紹介した。

名前を聞いたら、朱鷺は慧/メグミ、子猿は覚/アキラというらしい。

 

†宜しくお頼み申す

Θよろしくな!

ーうん、よろしくね!

=同類同士、仲良くしましょ!

 

3羽と1匹は直ぐに意気投合したらしい。

 

…それにしても、マアトって何だっけ?

…何処かで聞いたような気がするんだけど

 

 

 

 

 

メグミとアキラを家族に迎えて数年が経った。

 

「いらっしゃいませ」

「こんにちは」

「お待ちしておりました朽木様…旦那様は?」

「…じ、実は、此処で待ち合わせを…一度、やってみたかったのです。待ち合わせの逢瀬を」

「まぁ…」

 

…奥方様ってば、可愛い~

…でも、何だかそれだけじゃないっぽい?

 

席に案内して、旦那様がお越しになるまでの話し相手を承った。

待ち合わせをしてみたかったのは本当だが、不安な胸の内を誰かに聞いて欲しかったらしい。

 

「ご当主様と旦那様の関係…ですか」

「えぇ…」

 

…義理の親子関係かぁ

…中々複雑だよね

…しかも家庭内なら兎も角、仕事上のアレコレに彼女は口を挟めないみたいだし

 

「…父の口下手を母が的確に補助していたのですが…それに甘え過ぎたのでしょうね…母亡き後も父は相変わらず、相手に一番伝えたい事を口にしなくて…」

 

…沈黙は金とは言うけど、この場合は違うよね

…肝心の相手に何も伝わって無いんだもの

…下手したら、誤解が誤解を生んだ挙げ句、更に仲が拗れて確執だけが残るよ

 

†思考する為の糸口も与えずに、ただ自分で考えろとしか言わないのは、導き手としては未熟も良いところだな

「ちょ」

「いらっしゃいませ、朽木様」

「あぁ…妻は?」

「先に奥で妹と話をしております」

「そうか」

 

メグミのご当主様への駄目出しに慌てたところに旦那様がいらしたので、これ幸いと厨房に引っ込んだ。

 

…幾ら本人が居ない上に、私しか言葉が解らないとはいえ、何て事を言うのよ

 

 

 

「お待たせしました。3色御萩です」

「ほぉ…」

「まぁ…」

 

もぐもぐ…

 

「「美味しい」」

「胡麻の風味がしっかりしてて…中には甘さ控えめのこしあんが入っているのか…いや、本当に美味しいな」

「黄粉の中は粒あんなのですね…小豆の食感が堪りません」

「うむ…ん?俺のは全てこしあんで妻のは粒あんなのは一体?」

「あ、それは…」

「奥方様からのご要望です」

「…何故?」

「は、半分こをあ、あ~んしてみたくて…」

「な…」

「何かあれば申し付け下さい。では、ごゆっくり」

「あ、あぁ…」

 

恥じらう奥方様に釣られて顔を赤らめる旦那様を、微笑ましく思いながら(内心はめっちゃニヨニヨ状態)部屋から出た。

 

 

 

…今回も、満足していただけたみたい

 

お2人を見送って店に戻るとアキラが居ない。

 

「…あれ?アキラは?」

†少し頼み事をな

ー明日には戻って来るよ

=心配しなくても大丈夫よ!

 

「ヒナタ達がそう言うなら…」

 

…頼み事って、何だろう?

 

 

 

翌日の夕方、みんなの言う通りにアキラは戻って来た。

朽木の旦那様に送っていただく形で。

どういう訳か、朽木の旦那様に付いて行っていたらしい。

 

…何を頼んだのよメグミ!?

…粗相なんてしてないでしょうね、アキラ!?

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、とても晴れやかな表情を浮かべた旦那様と奥方様が、以前よりも解りやすいくらい仲睦まじく寄り添いながらお店にやって来た。

 

「…え?ご懐妊?おめでとうございます」

「「ありがとう」」

Θ上手くいったんだな!良かった!

「…君のおかげだ。本当に感謝している」

「…?」

 

…何だか、私の知らない間にアキラと旦那様が仲良くなってる?

…そう言えば、前にアキラが旦那様に勝手に付いてった事があったっけ

…その時に仲良くなる切っ掛けでもあったのかな?

…何にせよ、赤ちゃんに会える日が楽しみだなぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響河視点。

 

〈お茶屋・おはし〉で妻と息抜きをして来た。

妻の可愛いおねだりに癒され、旧友とも再会して昔話に花を咲かせ、良い気分転換になったと思う。

しかし、明日からがまた憂鬱である。

…未だに銀嶺殿が俺に何を求めているのか、皆目見当も付かない

…「己の力を過信するな」はまだ解る

旧友との会話で、幼少から俺は優秀だと、才能が抜きん出ていると持て囃され、それを誇示しては周りを置いてけぼりにしてしまう(所謂独断専行)という悪癖があった事を思い出した。

その度に親や大人に叱られた事も。

…恐らく、銀嶺殿はその事を指摘したのだろう

…組織に属する者としてそれでは駄目だと

…しかし、「良く考えて行動しろ」はそれ以外の事を示唆しているだろう事は想像出来るのだが

…肝心の、何に対して言っているのかが解らない

「…はぁ」

「失礼します…夕餉の用意が整いました」

「…今行く」

…銀嶺殿と会うのが憂鬱だ

モフッ

「…ん?」

足に何かが当たった。

「キキッ」

「…〈お茶屋・おはし〉の…あきら…だったか?何故此処に…?」

Θダンナの悩みを解決する助っ人参上!

「っ!?何処から声が…!?」

Θ目の前のオイラだよ

子猿が喋った事に衝撃を受けたが、あきらはお構いなしで話を続けた。

何でも、俺と銀嶺殿の仲が上手くいっていないと、妻が不安がっていると知ったあの女主人も気にしているらしく、2人の不安をどうにかしたくて付いて来たらしい。

Θご当主様の本音が知りたくないかい?

「…は?」

Θオイラなら出来るよ!

…こんな子猿に銀嶺殿の心の内が解る訳が無い

自信満々なあきらに対し、不可能だと思いながら村正に確認を取った。

村正も困惑しながらも、『本気で言っている、少なくとも我々に対する害意は全く無い』と答えた。

どの道そのまま放置は出来ず、あきらを連れて夕餉に向かった。

結果…

…アレが本当に銀嶺殿の本音、心の内だと言うのか!?

表面上はいつも通り、寡黙で厳格だったのだが…

心の内はかなり荒れ狂っていた。

   ~銀嶺殿の心の内~

…我が家に覚君が来るとは何と喜ばしい事か

…口に合うと良いのだが

…おぉ!良い食べっぷりよのぅ!

…口に合って良かった良かった

…それはそうと、今日は2人で〈お茶屋・おはし〉に行ったのだったな

…娘の様子から、また少し距離が縮まったようで何よりじゃ

…しかし

…あぁ、早く孫の顔が見たい!

…男の子はもう白哉が居るから、次は女の子が良いのだがなぁ

…恐らく、まだ先であろうな

…派閥争いのゴタゴタが解決しないうちは難しいだろうなぁ

…あの恥知らず共めが

…そんなに元柳斎殿のやり方が気に入らないのならば、とっとと死神を辞して護廷十三隊から出て行けば良いものを

…甘い汁は吸いたいが、義務は果たしたくない碌でなし共が(以下略)

   ~一旦終了~

只管、俺達夫婦の仲を案じる気持ちと切実に孫を嘱望している事、敵対派閥への凄まじい罵詈雑言の嵐に圧倒された。

そして…

   ~銀嶺殿の心の内再び ~

…死神としての才能も実力も既に認めておる

…が、それを伝えれば増長させてしまうやも知れんと思うと、口にするのは憚られる

…それに、どう言えば娘婿に伝わるのだろうか

…1人の死神から朽木家の一員になった事の意味を

…周りからどう思われているのかを

…何よりも、如何すればこの下らない派閥争いを収束出来るかを共に考えたいものなのだが

…難しいのぅ

   ~今度こそ終了~

銀嶺殿の心の内を一度に聞いて混乱したものの、ひとつ解った事がある。

銀嶺殿は既に死神としての俺を認めていた。

…その言葉が欲しかった

…出来るならば、銀嶺殿の口から直接聞きたい

…その為にも、銀嶺殿が俺に求めている物を見つけ出さねば

あきらの協力という反則をしている自覚はあるが、銀嶺殿の想いを知った以上、形振り構ってなどいられない。

先ずは朽木家の響河は他者からどう見られているのかを彼の能力を借りて探った。

…朽木家の威光など考えた事も無かった

敵対派閥には貴族が圧倒的に多い。

俺も貴族出身だが、奴等よりも地位は低い。

それが気に入らない連中の嫉妬心は、かなり醜いものだった。

そして、俺と銀嶺殿の不仲を悪化させる為に画策している事も掴んだ。

…銀嶺殿に認められる事しか頭に無かった

…このままでは本当に駄目だ

…俺はもっと知らねばならない

Θ…もう大丈夫そうだな。頑張れよ、ダンナ!

…あぁ、世話になった。感謝する

夕方、〈お茶屋・おはし〉にあきらを返し、自身を取り巻く現状を正しく把握する為の情報収集を始めた。

その結果…

…俺は銀嶺殿にどれだけ守られていたのだ

知れば知る程、己の浅はかさを痛感した。

善かれと思ってした行動の結果、銀嶺殿の負担を増やしていた事を知った。

今も俺を監視している者達は、俺の独断専行の尻拭いを円滑にする為の存在である事も。

…何が朽木家次期当主だ

死神としての朽木響河だけではなく、五大貴族の朽木響河としての立ち振る舞いを身に付けなけれぱならない。

数日後、十中八九、監視からの報告があったのだろう。

銀嶺殿に呼び出された。

俺は銀嶺殿から何度も聞かされた言葉の意味を考え続けた結果、自分は朽木家の響河として未熟であり、危うい立場にいる事に行き着いたと答えた。

銀嶺殿が満足するような返答では無かったかも知れないが、この日以降、銀嶺殿の態度が軟化した気がした。

俺と銀嶺殿の仲違いを利用しようとしていた敵対派閥は、当てが外れた焦りから足並みが乱れ、最期は自滅した。

敵対派閥の中枢部が処刑され、長らく続いた派閥争いが漸く終結した。

「…良くやった。此度の事、しかと胸に刻んでおけ」

「…はい!」

漸く俺は朽木家の響河として認められた。

…あきらには感謝しかない

…もう、〈お茶屋・おはし〉に足を向けて眠れないな

胸の支えが取れた事で精神的に余裕が出来、妻への配慮も円滑に出来るようになった結果、銀嶺殿が切望した娘が生まれた。

「娘の顔を見て、真っ先に思い浮かんだ名です。如何でしょうか?」

「…ふむ、黒羽(くれは)…まぁ、良かろう」

「ありがとう存じます!」

…折を見て、〈お茶屋・おはし〉に顔を見せに行こう

…その日が今からとても楽しみだ

妻の腕で眠る我が子を見ながらそう思った。

 

 





アニメオリジナル、朽木家のお家騒動のネタが下りて来たので書いてみました。

〈お茶屋・おはし〉の存在による変更点。
朽木家と6番隊(職場)を行き来するだけの日々ではなく、それ以外との人間との関わりが持てる〈お茶屋・おはし〉で息抜きもしくは気分転換が出来る環境により、響河の視野狭窄はそこまで悪化していない。
そして、里央が奥方様を気に入っている事から、居なくなっては困る存在としてマークしていた3羽と1匹。
本来ならもっと時間をかけて理解して貰うのが最適なのでしょうが、色々と面倒くさいので手っ取り早くアキラに動いて貰いました。

結果、敵対派閥を壊滅させる事に成功。
響河は犯罪者にならないので封印される事も無い。
無事に夫婦仲も深まり、銀嶺が望む女の子を授かりました。

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