願いが叶った私は心のままに飛び続けたい。の連載を執筆中、ふと思い付いたのが切っ掛けです。
願いが叶わなかった場合はどうなるだろう?と。
オリ主の性格、だいぶ違うかも知れません。
オリ主の願いが叶わなかった場合はどうなるのでしょうか?
物語にどんな変化が現れるのか、思い付くままに書いてみました。
出だしは〈願いが叶った~〉と同じです。
同窓会の帰りだった。
中学を卒業してから10年振りの友人達との再会と、おしゃべりはとても楽しかった。
また明日から仕事だと思うとかなり憂鬱だが仕方ないと、都市バスに揺られながらスケジュールを確認していたところで凄まじい衝撃が私を含めた同乗者全員を襲った。
急カーブを曲がり切れなかった対向車(大型トラック)との接触事故。
場所は峠の下り始め、対向車に車道から押し出される形で崖へと転落。
私の死因は、棚から勢い良く落ちてきた誰かのアタッシュケースが直撃、その反動で落下の際に割れた窓ガラスが首に深く刺さった事によるものだった。
遠くなる意識の中、変な事を聞かれた気がした。
生まれ変わるなら、何になりたいですか?
私の答えは―――
結局、私の願いは叶わなかった。
…何だったんだろう、あの声は
私は動物、特に鳥が好きだったけど、家業がお菓子屋である以上、衛生面の問題から飼えなかったし、触れ合う事すら殆ど出来なかった。
だからいっその事、鳥になりたいと願ったのに。
エラーが発生しました
再試行します
エラーが発生しました
再試行します
エラーが発生しました
大変申し訳ありません
代替案を採用させていただきます
此方に確認する事なく、勝手に代替案とやらを使って私を何処かに移動させたらしい。
そして代替案が何なのか解らないまま、気付けば何故か10歳くらいに若返った姿で、1人で森?っぽい場所に佇んでいた。
「…何がエラーよ。訳分かんない」
…何なのよ本当に
…大体、何処よ此処は?
「ピィー…ピィー…」
「ピピッ…ピッ、ピチュ」
「…鳥の鳴き声?…何処から?」
弱々しい雛の鳴き声が聞こえて、発生源を探した。
「カラスの雛?と紅い…何の雛だろ?…巣は何処に…」
周囲を見回すが、鳥の巣らしい物は見当たらない。
「ピィー…ピィ…ピィー…」
「ピチュ…ピッ…ピピィ…」
「…どうしよう」
下手に干渉して、それぞれの親鳥の怒りを買いたくはない。
かと言って、このままではそう時間を置かずに力尽きるかも知れない。
…えぇい!
「なるようになれ、よ!」
雛達を懐に抱えてその場から逃げた。
結果、親鳥と遭遇する事無く人里まで来れた。
「…これで良い…筈…どうかな?」
「ピィー」
「ピチュ!」
雛の手当ては上手くいったらしい。
先程より鳴き声がしっかりしている。
「良かったぁ…君、3本足なんだね」
「ピッ!」
「八咫烏みたい」
ーそうだよ!
「…へ?今のは…?」
ーどうしたの?
「今の声…君の?」
ーわぁ~!ボクの声が解る人と会えるよ。ってお告げは本当だったんだぁ!
「…お告げ?」
=ちょっと!貴女ばっかりずるい!アタシともお話しようよ!
「え?えっと…君は何の雛なの?」
=鳳凰よ!
「…ほう、おう…鳳凰!?」
代替案、動物特に鳥との完全なる意思疎通が
可能になりました
…っ、あの声だ
前世の全能力及び経験値のインストール完了
異常なし
貴女だけの特殊能力を全て付与します
完了、正常に作動を確認しました
ご迷惑をお掛けして大変申し訳ありません
新たな生を謳歌いただけるよう
遠き地よりお祈り申し上げます
プッ…ツー…ツー…ツー
…最後まで意味が解らない
「手当ては出来たかしら?」
「…ぇ、あ、はい」
「そう、良かった」
「水を汲んで来た。空腹を満たすと良い」
「何から何まで…ありがとうございます」
「困った時はお互い様よ」
森を抜けた先で危うく衝突事故を起こしかけた男女2人は、とても親切な人達だった。
多分、18~20歳くらいの2人に保護されて、此処が何処なのかを教えて貰い、雛達の手当てもさせて貰った。
「自己紹介がまだだったわね。私は萬田歌匡よ」
「私は東仙要だ」
「萬田さんに東仙さんですね…私は橋浦里央といいます。この子達は…」
ー陽/ヒナタだよ!
=瑞/ミズキよ!
「3本足の子がヒナタ、紅い子がミズキです」
ーよろしくね!
=よろしく!
こうして、私のこのる、流魂街?とやらでの生活が始まった。
此処での生活に慣れた頃、近所で唯一お茶屋さんを営んでいるお婆ちゃんが足を悪くしてお店を畳むと聞いた。
私は居ても立ってもいられず、お婆ちゃんのお店を継ぎたいと歌匡姉と要兄に直談判した。
「里央の腕前は知っているが…」
「お婆ちゃんのお手伝いとは訳が違うのよ?」
「勿論、私だってお店を切り盛りしていく大変さは知っているよ」
…前世でそれなりに経験したもの
…クレーマーとかドタキャンとか
…ちょっとしたトラブルがとんでもない事になる事とか
「それでも、お婆ちゃんのお店がこのまま無くなっちゃうのは嫌なの」
滅多に無い私の必死な説得に思うところがあったのか、2人は了承してくれた。
お婆ちゃんは、お店を私が継ぐ事を心配しつつも喜んでくれた。
ただ、これを機にお店の名前を変える事になった。
色々と話し合った結果、お婆ちゃんの名字が〈高橋〉で私は〈橋浦〉だからと、共通の橋を使って〈お茶屋・おはし〉に改名した。
…良し、頑張るぞ!
ーリオ、頑張れ!
=応援してるわ!
代替わりしたと聞いた常連客が、新しい店主の私をひと目見に連日訪ねて来た。
「お待たせしました。蓬団子です」
「「うっっっめぇ!」」
「「「婆さんの団子だ~!」」」
「話には聞いてたけど、こりゃ凄ぇ!」
「良かったなぁ、婆さん!」
「えぇ、里央ちゃんの腕は勿論だけど、舌も凄いよ。何せ、一度食べただけでアタシの味を殆ど覚えちゃったんだからさ」
私の特殊能力は、味覚と嗅覚の分析と完全記憶、そしてありとあらゆる飲食物の完全再現に応用(アレンジ)力、毒等の状態異常の完全無効化に危機察知能力らしい。
…代替案って、前世の感覚と調理スキルを限界まで引き上げる事だったのかな?
…状態異常の無効化と、危機察知能力は凄くありがたいけど
死神を目指して死神統学院に入学、無事卒業した歌匡姉が同期とは言え貴族を3人も連れて来た。
「お帰りなさい歌匡姉!…其方の方々は?」
「私の同期で友人達よ。此方が婚約者の綱彌代時灘さんで、白髪の方が浮竹十四郎さん、黒髪の方が京楽春水さんよ」
「っ…お初にお目に掛かります。歌匡姉さんの妹の橋浦里央と申します。以後お見知りおきの程、宜しくお願いします」
…浮竹さん、凄く顔色悪いけど大丈夫なの?
…今にも倒れそうなんだけど?
店の奥でお菓子を用意するまでの間、横になっていて貰う事にした。
ある程度、安定供給出来た前世とは違い、此処ではその日入手した材料によって作れるお菓子は変わる。
今回は、蒸し南瓜の茹で小豆掛けを出した。
「もぐもぐ…っ!君の言っていた通りだね。凄く美味しいよ」
「…ふむ、確かに…敢えて塩気を利かせた茹で小豆が南瓜の甘味をしっかりと引き立てて…美味しい」
「でしょう?」
「うんうん、とても美味いぞ!何皿でも食べられそうだ!」
「ありがとう存じます」
来店した時は凄く顔色が悪かった浮竹さんだったが、帰る時には嘘のように元気になっていた。
そしてもう1人、お近付きにはなりたくないと感じた歌匡姉の婚約者とかいう男…綱彌代時灘の雰囲気もかなり変わっていた。
…気の所為かな?
…マムシとかハブだけじゃない、世界中の色んな猛毒を煮詰めて人の形にしたような、得体の知れない何かだったのに
…毒気がかなり薄らいだような気がする
翌年、歌匡姉は綱彌代時灘と結婚した。
私達も親族として正式に招待された。
その頃には、この男から感じていたありとあらゆる毒はだいぶ無くなり、私の苦手意識もかなり薄らいだ。
更に3年が経った頃、歌匡姉の昇進を知らされたのとほぼ同時期に綱彌代家で大火災が起こり、偶々死神の仕事で家に居なかった歌匡姉と時灘さん以外の血縁者達が死傷、急遽時灘さんが当主に祭り上げられた。
…とんでもない棚ぼたじゃない?
…これじゃぁ、死神引退するのも仕方ないよね
…名実共に大貴族筆頭になるんだもの
…歌匡姉、大丈夫かなぁ?
時灘視点。
本家からの命令で、現在婚約中の歌匡が実家に帰省する際、私を家族に紹介したいと言って来た。
…何故私が流魂街の貧民共に会わねばならない
適当な理由を付けて断ろうとしたが、何処からか話を聞き付けた浮竹と京楽が自分達も会ってみたいと言い出した。
善人を演じている最中なのに、私の本性を知っているだろう京楽を放置出来ず、渋々会いに行く事になった。
貧民故に礼儀作法も品位も無いだろうという私の予想に反して2人共、特に妹だと言う小娘…橋浦里央は服装は貧民のそれだが、本当に流魂街の者かと疑う程、洗練された立ち振る舞いに、言葉少ないながらも己の立場を理解した品格のある受け答えをして来た。
…此処に来るまでの道程にも茶店はあったが、何処も彼処も貧相で内心うんざりしていたが
高貴な身分と接する機会が無ければ出来ない対応をそつなく熟す彼女は、歌匡が「現世からやって来た」と以前言っていたのを思い出した。
…成程、生前は高貴なる者に仕え、厨に携わる役目を負っていたと言う事か
疑問が晴れ、目の前の菓子を口にした。
…美味い
歌匡の家族は彼女を甚振るのにちょうど良い玩具になるだろうと思い、どんな者達かと品定めに来た筈だったのだが…。
…止めた
…我が家でも此処まで美味い菓子を食べた事は無い
…我が家に囲い込みたい程の見事な腕の持ち主だ
…が、何故だろうか
…此処から連れ出す気には全くならない
自身の身分を振り翳せばこんな店何軒でも好きに出来るのに、何故かしたくないという気持ちが強い。
そんな自分に戸惑いながらも、また歌匡と来る約束をして帰宅した。
その際、渡された手土産を自室で1人口にした。
美味いのだが、出来立てでは無くなったからなのか、他に理由があるのか解らないが、物足りなさを感じた。
その後再び歌匡とどもに店に赴き、また違う菓子を口にして確信した。
この店で食べるからこその味だと。
以降、必ず月に一度歌匡とこの店に来るのが数少ない楽しみになった。
結婚してからもこの習慣は続いた。
私が足繁く通うこの店の事を本家や分家が探っているのには気付いていた。
だが、この店に直接来れば納得するだろうと思い、放置していた。
だが、彼等がわざわざ流魂街に赴く筈が無く、配下に調査させていた。
ある日、本家に呼び出された。
あの店の娘を囲い込むから協力しろと。
あの店で食べるからこそ意味がある事を知らない本家、分家に一応止めるよう進言したが、全く取り合わなかった。
その数日後、私達が不在中に大火災が起きたのには流石に驚いた。
騒動がひと段落着いた頃にあの店に赴き、何があったのか簡易的にだが伝えた。
その時に確信した。
…間違い無い、この鳥達だ
火災現場には自分も立ち会ったから覚えている。
この2羽が放つ明らかに異質な力は、あの場に蔓延していたものと全く同じだと。
橋浦里央の願いは、〈この店を自分の命が続く限り存続させる事〉らしい。
その邪魔をする者は例外無く排除される。
…一歩間違えれば、私も奴等の仲間入りだったのか
私をジッと見つめる陽と瑞の主、橋浦里央の怒りを買わぬよう、歌匡をぞんざいに扱うのは改めて止める事を誓った。
綱彌代時灘、本家と分家の連中とは違う行動を取った結果、命拾いしました。
オマケに綱彌代家の当主の座までゲット。
何という棚ぼたラッキー。
そして歌匡さん生存、東仙要の闇落ち回避。
復讐の為に死神になる道もほぼ消失。
※歌匡さんの名字が解らなかったので捏造しました。
※里央は自分だけの特殊能力を勘違いしています。
ってか、全く気付いていません。
気付く日が来るのかどうかも怪しいです。