願いが叶わなかった私は、お茶屋さんを営んでいます。   作:如月雪見

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前回、花枯らしというとても遠い所から可愛いお客様が来ました。
お客様は歌匡姉と時灘さんの紹介したお家に転居して、ご近所さんになりました。

干し柿のお裾分けだけでなく、時々お店の手伝いもしてくれてとても助かっています。





ーヒナタ(八咫烏)
=ミヅキ(鳳凰)
†メグミ(朱鷺)
Θアキラ(黒い小猿)
△ヒカル(金色の鷲)
▽トオル(青鷺)
ωミノリ(黒い小猫)
●ユタカ/豊←NEW(牝牛)
○カケル/駆←NEW(牡馬)
◎ツヅミ/包←NEW(雌鶏)

遂に10匹に到達しました。



五大貴族の方々

 

 

ある日、時灘さんを始めとする五大貴族の御当主様方から手紙が届いた。

何でも、此処第2区〈満珠利(まんじゅり)〉の大々的な区画整備を行う事が決定したとか。

 

…ちょっと前(数十年前)に、瀞霊廷の門から此処までの道路を整備したのに?

 

同封してあったその予定図を見て口が引き攣った。

 

「ちょ、何これ…?」

「如何したんだ、里央?」

「里央さん?」

「…満珠利の郊外に牧場を造るって…時灘さん達、五大貴族が」

「「…は?」」

 

牧場を造る理由が理由なだけに私達には止められなかった。

 

何せ、畑で採れる野菜や果物は兎も角、貴重な卵や牛乳は瀞霊廷から運ばれて来る物品に頼るしかない為、どうしても運送中に破損してしまう物が出てしまう。

そして破損した分、作れる商品の量も確実に減ってしまう訳で…。

それらの問題を解消する為だと言われればどうしようも無い。

 

 

 

 

あれから約5年、手紙通りの牧場が完成した。

 

…立ち退きを迫られた人達が心配だったけど

 

その辺、時灘さん達は抜かりがなかった。

何せ、満珠利の郊外は家を建てるのに余り向いていない土地だったので、元々人はそれ程住んでいなかった。

そして、数少ない先住者達は立ち退いた後の住居の斡旋を受けたり、牧場の従業員になるなら住み続けられると持ちかけられた。

勿論、転居に必要な物資等は全部五大貴族持ちで。

それぞれ禍根の残らない選択肢を与えられた為、先住者達の移動は上手く進んだらしい。

 

 

 

 

 

 

 

そして今日、歌匡姉達は泊まりに、他の五大貴族様方は完成した牧場の視察に来た。

 

「ふむ…」

「…流石だな、志波の一族」

「相変わらず、良い仕事をする」

「いやぁ~、こんな大掛かりのは久し振りだったからな。つい気合いが入っちまったぜ」

「…〈お茶屋・おはし〉の店主よ」

「は、はい」

「…これだけ居れば、前に言っておったぷりんなる物は十分に作れるか?」

 

…あの時の独り言、しっかり聞かれてた!?

…恥ずかしいよぉ~!

 

「え…えっと…漸く環境に慣れて来たところで、少しずつ取れる量は増えて来ているそうですよ。ね?」

●えぇ!

○の、様だな

◎私達もね!

※ユタカ、カケル、ツヅミは牧場に居る牛、馬、鶏達のリーダーで、彼等を統治している。何かあれば牧場の責任者ではなく、アキラを通して意思疎通が出来る里央に連絡してくる。なので、里央はほぼ毎日牧場に顔を出している。

「…そうか」

「はい」

 

〈お茶屋・おはし〉に戻って、双也君に頼んで井戸で冷やして貰ったプリンと薄荷茶(ミントティー)をお出しした。

 

「お待たせしました。プリンと薄荷茶です。薄荷茶にはお好みで蜂蜜をどうぞ」

「「「「「ほぅ…!」」」」」

「「「「いただきま~す!」」」」

「「「「「…美味しい…!」」」」」

「ふむ…見た目は茶碗蒸しに似ているが…不思議な食感だな」

「茶碗蒸しよりもちょっと硬くて…でも美味しいわ」

「あま~い!」

「この茶色いの何?苦いね」

「その茶色い液体はカラメルソースと言うそうですよ。お砂糖を煮詰めて作るんです。このプリンに欠かせないものだそうですよ」

「…確かに、プリンと共に食すとちょうど良い」

「あ~…こりゃ堪らねぇなぁ…」

「「「…美味」」」

「「「「「おかわり(!)(しても宜しいでしょうか)」」」」」

「こら、お前達」

「岩鷲に空鶴は兎も角、海燕、お前まで…」

「だって、美味ぇんだからしょうがねぇだろ」

「えっと…半分こして貰う事になりますが…」

「「「「「平気!(構いません)」」」」」

ー=△甘くて美味しい~!

Θ美味ぇ~

†▽ω初めて食べる食感…癖になりそうだ(わ)

ー=Θでも…何で薄荷茶はくれない(の/んだ)?

†△▽その茶は我等が口にしても問題無いぞ?

ω私は苦手だから良いけど

「う、う~んと、流石に薄荷はちょっと…万が一でも何かあったら怖いから…ゴメンね?」

ー=†Θ△▽むぅ…

 

…後でパンケーキ作ってご機嫌取ろう。うん

 

ガラララッ!!

 

「たのもぉ~~~っ!!」

「この声は…」

「…っ」

「「「あ、夜一姉様」」」

「お先にいただいてました姉様!とても美味しいですよ」

「すみません、夜一サン、ボクもいただいてます」

「夕四郎、お主という奴は…!喜助、何処にも居らんと思ったらお主まで…!」

「ボクの立場では、先代のお誘いを断れませんよ」

「おぉ、遅かったな娘よ(もぐもぐ)」

「っ!酷いですぞ父上!儂にさっさと当主の座を押し付けたと思いきや楽隠居を!しかもこうも堂々と此処に入り浸って!羨ましい!」

「優秀な子を持つ親の特権、使って何が悪い?」

「ぐぬぬぬぬ…!」

「いらっしゃいませ、夜一様。どうぞお席へ」

「里央姉!儂の、儂の分はちゃんと残してあるよのぅ!?のぅ!?」

「はい、此方に」

「おぉ~!!」

「それと、お疲れのようですので、温めた牛乳に蜂蜜を入れたものを用意しました。どうぞ」

「おぉ~!流石は里央姉!では早速…」

 

ごっくごっく…ぷはぁ~!

 

「くぅ~、程良い甘さが堪らん!効くぅ~!」

「オッサンくさいッスよ夜一サン」

「ふん!何とでも言えば良いわ!置いてけぼりを食らった儂の気持ちを里央姉は解ってくれておる!のぅ?里央姉」

「ふふっ、そうですね。如何に必死だったかは解りますよ。何せ、顔に墨を付けっ放しで来たのですから」

「…ん?顔?」

 

ゴシゴシ…

 

「はい、取れましたよ」

「う、うむ…」

 

流石に恥ずかしいのか、顔を赤らめてそっぽを向いた。

 

「さて、主等の顔も見た事だし…我等は先にお暇するとしよう」

「なんじゃ、もう帰るのか?」

「皆の健勝を確認出来たからな…それに、そろそろ戻らぬと彼奴が臍を曲げる」

「「「「あぁ…」」」」

「ではな」

「うむ」

「「また」」

「何時もお力添えいただき、誠にありがとう存じます。此方、何時ものお菓子にございます。どうぞ皆様でお召し上がり下さい」

「此方こそ何時もすまないな…では、貴殿等も健勝でな」

「「「ありがとう存じます。またのお越しをお待ち申し上げております」」」

 

…こうやって集まった時は、いつも1番早くにお帰りになられるのよね

…次に朽木様が四楓院様を引っ張ってお帰りになられて、その後少ししてから志波様がお帰りになられるのよね

…で、時灘さん達はそのまま泊まるのよね

 

 

 

その後、予想通りの順番で彼等は帰路に着いた。

 

…何だか白哉君が前来た時よりも静かだったけど、夜ちゃん(夜一の事)が来たら元気になってたから大丈夫だよね

…黒羽ちゃんと希墨(きすみ)ちゃん、空鶴ちゃんに岩鷲君も大きくなったなぁ

…海燕君は3席になったんだって

…副隊長ももう目の前とか

…取り敢えず、お祝いに海燕君の好きなお煎餅とお饅頭を贈ろうかな

…今夜は歌匡姉達が泊まるから、みんなの好物の出汁巻き玉子と焼きつくねの紫蘇巻きにしよう

…あ、忘れちゃいけない

…パンケーキの用意もしなきゃね

 

鼻唄を歌いながら厨房へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

五大貴族の方々視点。

 

白哉の場合。

久し振りに爺様に連れられて〈お茶屋・おはし〉へと参じた。

次期当主として、他の五大貴族との挨拶はきちんとしておくべきという爺様のお考えは良く解る。

…あの化け猫には会いたくないが

里央殿は何時もの暖かな笑顔で出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ、お待ち申し上げておりました」

…是非とも黒羽と希墨にはあの化け猫ではなく、里央殿のような女性を見習って欲しいものだ

今回、ぷりんなる甘味をいただいた。

…甘いのは苦手だが、此処〈お茶屋・おはし〉のお菓子は難無く入る

私のぷりんにかかっているからめるそうす?なるものは皆よりも量が多く、おかげでとても食べやすかった。

…私の好みに合わせて下さる心遣いが嬉しい

薄荷茶も口の中がすっきりとして、実に私好みであった。

…夏限定の予定らしいが、季節問わずでいただきたいものだ

帰りの馬車の中、里央殿との少ない遣り取りを思い出して、頬に熱が集まるのを感じた。

「…白哉兄様、熱があるのですか?」

「おかお、まっかですよ?」

「む…き、気の所為であろう」

「「えぇ~?」」

…あの化け猫が同じ馬車でなくて良かった

爺様と現当主である伯父上、そして伯母上の意味有り気な笑みは見ない振りをした。

 

 

夜一、夕四郎、喜助の場合。

「はぁ~、どれも美味じゃったなぁ~…ふぅ~」

「〈お茶屋・おはし〉のお菓子はいつ食べても最高ですね、姉様」

「うむ!土産も今から楽しみじゃ!」

「…喜助、娘が独り占めせぬよう、儂に「それこそ駄目じゃ!/そうは行きませんよ、先代/父上こそ独り占めする気でしょう!?」…ちっ」

「全く…油断も隙も無い」

「流石に里央サンのお菓子は平等にしないと、万が一にでも里央サンの耳に入ったら、二度とお土産を貰えなくなりますよ?」

「僕も、里央さんの悲しむ姿は見たくありません!」

「くぅっ…!」

先代は大人しく引き下がった。

車内の親子+αの口論を聞いていた御者は、

「相変わらずですなぁ、皆様…里央殿のお土産は其程魅力的なのは良く解りますが、毎回全く同じ遣り取りをなさっておいでで…」

と、呆れ半分で苦笑していた。

 

 

海燕、空鶴、岩鷲の場合。

「くぁ~…くぁ~…ぐぅ~…」

「岩鷲の奴、気持ち良さそうに寝てやがるぜ」

「相変わらずだな。行く前はめちゃくちゃ愚図って、帰りは満足して眠っちまうのは」

「あぁ…なぁ、兄貴」

「ん?」

「里央姉ちゃんの事なんだけど「空鶴」…っ」

「〈お茶屋・おはし〉はみんなの希望そのものだ。彼処にあってこそのものだ。失くしちゃなんねぇし、あの3人の誰か1人でも欠かしちゃなんねぇ。だろ?」

「…はぁ~ぁ…言うと思った!」

空鶴は複雑そうな表情で笑った。

…その気持ちは良く解るぜ

…でもな、あの店で出迎えてくれるあの笑顔じゃねぇと意味が無ぇんだ

…それに、あの人は既に自分の終の場所を決めているんだ

…その意志は何よりも強い

…俺はそれを守り通したい

…だから、すまねぇな空鶴

妹の気持ちを汲んでやれない申し訳なさを感じつつ、空鶴の頭を撫でて笑った。

 

 

???の場合。

「…久し振りの里央殿の菓子、彼奴も喜ぶであろう」

「はい」

「…先代のように、私も早く引退して倅に継がせたいものだ」

「まだ早うございますよ、御当主」

「…はぁ~…解っておる…帰宅までの愚痴くらい聞き流せ」

「…はっ」

「…綱彌代が羨ましい」

「「………」」

無い物ねだりな当主に、何とも言えない表情を浮かべる従者達だった。

 

 

綱彌代一家の場合。

夕食後、風呂が沸いたと双也が告げたら悝歌が

「里央姉とお風呂入る~!」

と言い出し、匡輔も

「じゃあ僕は要兄と!この前は双也兄とだったから!」

と主張した。

「布団は敷いておくから、先に入ると良い」

「じゃあお先に」

「わ~い!」

「手伝うよ、要兄」

「そうか、ありがとう」

悝歌は大喜びで里央の手を引いて風呂に行き、匡輔は嬉々として要に付いて行った。

「…不備は無いようだな」

「はい、お陰様で。時々、困ったお客様もいますが…他のお客様が仲裁に入って下さるので」

「そう、変わりなくて安心したわ」

「…また腕を上げたな。ちょうど良い濃さだ」

「ありがとうございます」

双也の淹れた焙じ茶を満足気に啜る時灘に、彼は頭を深く下げた。

翌日、悝歌と匡輔の強い要望でパンケーキを焼いた。

「甘~い」

「美味し~」

「…ねぇ里央。この黄色いのは何かしら?」

「あぁ、この後卵白でマシュマロを作ろうと思ってね。でも、そうしたらどうしても卵黄が残っちゃうんだ。だからカスタードクリームにしたの」

「ましゅ…まろ?かす…たぁど…くりぃむ?」

「食後のお茶のお供にと思って」

「どういうの?」

「甘いの?」

「それは出来てからのお楽しみ。さ、今はパンケーキ食べよう!」

そしておやつの時間。

「お待たせしました~」

「「うわぁぁ…」」

「…この白いふわふわした物がましゅまろか?」

「はい、このまま食べても美味しいですが、火で少し炙っても美味しいんですよ」

「ほぅ…?」

みんなが興味を示したので、実際に串に刺して炙ったのも食べて貰った。

「「「「「「…っ!」」」」」」

「すご~い!甘くて美味し~」

「ふわっ、もちっがもちっ、とろっに変わった…」

「これは…」

「面白いわね。火で炙るとこんなに食感が変わるだなんて」

「…うん。どちらも美味しいな…こぉひぃにも合いそうだ」

「ですね。流石は里央さん…教えて欲しいお菓子がどんどん増えていきます」

ー=甘くて美味し~!

Θ△もう1個食べたい!

†▽ωこれは危険だ(ね)…幾らでも食べられる(わ)

「でしょ?」

月に一度のお泊まりは今回も和やかに過ぎた。

 





原作の過去編を改めて読んで、誰から書こうか迷ったものの、〈お茶屋・おはし〉の最大のパトロンは五大貴族である事、時代背景はまだ明治時代な事、貴重な卵、牛乳は瀞霊廷から入手するしか方法はまだ無いのではと推測し、考慮した結果、それならいっそ五大貴族全員集合でプリンとミントティーの試食会をして貰いました。
未だに最後の一族の事は解らないので、名字すら出せませんでしたが。

彼等の関係は、〈お茶屋・おはし〉の存在によってかなり良好かと。

綱彌代一家は先んじてマシュマロ(焼きマシュマロ)とカスタードクリームをいただきました。
知ったらまた騒がしくなる方々が大勢居るでしょうね。






里央は外見年齢は20歳くらいですが、夜一よりもずっと年上です。
何せ、歌匡さんが真央霊術院に通う前に遭遇していますし。
なので、夜一も里央には甘えん坊になるし、頭が上がりません。
因みに里央は白哉の初恋の相手でもあります。
彼にとって他の身近な女性と言えば、夜一と従姉妹の黒羽と希墨くらいですし。
もしかしたら、海燕の初恋も…?
空鶴、岩鷲も里央に懐いていますし。
年下の子達にモテモテですね、里央は。

何気に、銀嶺氏は死神(ご意見番として)は続けていますが、朽木家当主の座は義息子の響河に譲って孫達との時間をちゃっかり確保しています。
そして響河氏は、家族との時間を作るのに結構苦労している模様。



〈満珠利(まんじゅり)〉
里央達が住む区画の名前。
勿論、捏造です。
原作等を調べても、東仙と歌匡さんが住んでいた区画の名前が解らないので、瀞霊廷との行き来に困らない場所で、縁起の良さそうな名前を付ける事にしました。





〈オリキャラ〉
黒羽(くれは)ちゃん。
朽木響河の長女。
しっかり者だが、少々夜一の影響を受けている部分もあり、特に里央に甘える姿がそっくりだと言われている。
これ以上、夜一には似て欲しく無いと白哉は思っている。

希墨(きすみ)ちゃん。
朽木響河の次女。
甘えん坊で〈お茶屋・おはし〉のお菓子が好物。
姉妹仲は極めて良好。
姉に負けず劣らずの里央大好きっ子に育っている。

匡輔(きょうすけ)君。
時灘と歌匡の長男。
外見は時灘似、性格は歌匡似で、里央と要の影響を受けて育ったので、貴族にしてはかなりの庶民派。

悝歌(りか)ちゃん。
時灘と歌匡の長女。
外見は時灘と歌匡を足して2で割った感じ。特に目元は歌匡似である。
性格はやや時灘似の理屈屋だが、里央と要、双也には素直で甘えん坊。

折角なので、名前を固定しました。
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