願いが叶わなかった私は、お茶屋さんを営んでいます。 作:如月雪見
前回、ギン君と乱菊ちゃんがアキラの旧友を連れて来てくれました。
卯ノ花様がプリンとタンポポコーヒーを求めてご来店しました。
ーヒナタ(八咫烏)
=ミヅキ(鳳凰)
†メグミ(朱鷺)
Θアキラ(黒い小猿)
△ヒカル(金色の鷲)
▽トオル(青鷺)
ωミノリ(黒い小猫)
●ユタカ(牝牛)
○カケル(牡馬)
◎ツヅミ(雌鶏)
♪サユル(鷦鷯/ミソサザイ)
⊗ツムギ(狸)
今回、家族は増えません。
昼食がてらの昼休憩が終わり、午後からの開店準備中、大粒の雨が降り出した。
「あっちゃぁ~…ヒナタの言った通り、降って来ちゃったかぁ…あれ?何か雷鳴ってない?嫌だなぁ…」
「…このままだと、午後からのお客様の入りが悪くなるかも知れませんね」
「まぁ、天気はどうする事も出来ないからな。仕方あるまい」
ガラガラガラッ
「「「いらっしゃいませ」」」
「おぅ、すまねぇな。雨宿りがてら邪魔させて貰いたいんだが…俺を含めて8人居るんだが良いか?」
「これは刳屋敷様、お久し振りです」
「ご覧の通り空いていますよ。なのでお好きな席へどうぞ」
「だとよ。お前達、早く中に入れ」
「「「「「「「お邪魔しやす!」」」」」」」
今日の午後は閑古鳥が鳴くかと思っていたが、任務帰りに降られて雨宿りをしに刳屋敷様率いる11番隊の方々がいらっしゃった。
「満珠利に来た途端、いきなりだもんなぁ」
「本当、参りやしたよ」
「手拭いをどうぞ」
「「「「あ、すんません」」」」
「「「「ありがとうな(ございます)」」」」
濡れた服や髪を粗方拭って席に座り、刳屋敷様は焙じ茶と好物の豆大福を、他の方々は緑茶に蓬団子を注文した。
「お待たせしました」
「「「おぉ!」」」
「「「「「待ってました!」」」」」
もぐもぐ…ずず~…
「「「「「はぁ~…」」」」」
「「「疲れた身体に染みる~…」」」
今回の任務はまる3年はかかったとの事。
なので、真面な食事が殆ど食べられなかった分、喜びも一入なんだとか。
「いやぁ~、今回も隊長のおかげで誰1人大きな怪我も無く戻って来れたんですよ」
「「「「そうそう!」」」」
「奇妙な虚の情報が挙がって早3年…兎に角逃げ足の速い奴で…」
「何が悲しくてあんなのと鬼ごっこやらなきゃならねぇんだって何度嘆いた事か…」
「「だよなぁ~」」
「お前達、気を抜き過ぎだ。軽々しく任務内容を喋るんじゃねぇ」
「「「「あっ…」」」」
「ご苦労様です。皆様のおかげで私達は安心してお店を続けられるのですから」
「「「里央さん…!」」」
「店主、此奴等を余り甘やかさねぇでくれ」
「まぁまぁ、《餓樂》君が呼んでいらっしゃいますよ?」
「…あ~、起きたのか」
品をお出ししてから、刳屋敷様の刀がカタカタと独りでに動き出した。
_イイナァ、ホシイナァ_
そんな声も聞こえ始めた。
「豆大福はまだありますけど」
_タベタイ!_
「ちょ、店主。此奴まで甘やかさねぇでくれねぇか」
_アルジバカリズルイ!ホシイ!チョウダイ!_
「まぁまぁ、久し振りですし、私も挨拶したいので…〈いつもの大きさ〉になれますか?」
_ウン!_
ぽひゅっ…ふよふよ…
刳屋敷様の刀から、蹴鞠くらいの大きさの球体が口をパクパクさせながら出て来た。
「あ~…ったく」
「お久し振りですね」
_ヒサシブリ、テンシュ!マメダイフク!_
「はい、どうぞ」
_ワ~イ!イタダキマ~ス!_
ぱくっ…もきゅもきゅ…
_オイシ~!_
ぽひゅっ、ぽひゅぽひゅっ…ぽひゅっ
_オマエバカリズルイ!_
_ボクモホシイ!_
_オイラモ!_
「あら、あららら」
「…だから甘やかさねぇでくれって言ったのに…」
次から次へと彼等が出て来た。
…後で要兄にお説教されるの決定だなぁ
背後で「何をやっているんだ、里央」というオーラを放つ要兄に冷や汗を流しながら、追加の豆大福をお出しした。
…だって、可愛いんだもん
…良いじゃん、何年かに一度の事なんだからさ
※本当のサイズ(本性)を知らないから言える台詞
他のお客様が余り来ないまま、それなりの時間が過ぎた。
「…っと、長居し過ぎたな。そろそろ戻るぞ」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
_エ、モウ?_
_マダアソビタイ_
「駄目だ。もう十分遊んで貰っただろう?ほら、戻れ」
_ハ~イ_
「また遊んで下さいね」
_ウン!_
刳屋敷様は流石に戻らないとならない時間だと、私を囲んでクルクル回っていた《餓樂》君達を刀に戻した。
「お勘定を頼む。全員纏めて貰えるか?」
「あ、はい、お茶に豆大福、蓬団子…合わせて3,190環になります」
「はいよ」
ジャラジャラジャラ…
「え、あの」
「《餓樂廻廊》の分を忘れてるぜ、店主?」
「…確かにいただきました」(苦笑い)
相変わらず、こういうところは凄くキッチリしている御方だ。
「此方、お土産としてどうぞ。隊の皆様とお楽しみ下さい」
「いや、いきなり来て長居した上に、事前連絡もないのに貰えねぇよ」
「では、私達を助けると思って受け取って下さい」
「え?」
「ご覧の通り、漸く雨の勢いが弱まって来ましたけど…ヒナタの見立てだと、今日は夕方までずっとこの天気らしいのです。なので、お客様はもう来ないのでは無いかと予測しています。となると、予想以上に商品が余ってしまって…我々だけでは食べ切れないですし、後は畑の肥やしにするしかないので…」
「あ~…なら有難くいただいて行こうか」
「ありがとうございます!」
刳屋敷様方を見送った後、やっぱりお客様は殆ど来ないからと早めに閉店し、しっかり要兄からのお説教を受けた。
刳屋敷視点。
とある虚が発見されて早3年、やっと討伐が出来た。
その虚は手足を斬り落としても超速再生するだけでなく、斬り落とした手足からも胴や頭といった、足りない肉体が復活しては逃亡し、同じ事をすればまた斬り落とした部位の数だけ超速再生して逃亡するという中々厄介な奴だった。
※因みに、頭を斬り落としても変わらなかった。
切り落として直ぐに断面を黒焦げになるまで焼けばどうにかなる事に気付き、討伐部隊を再編成して挑んだ。
それでも逃げ足が速い虚を全て捕縛して細切れにして、超速再生をする前に炎熱系の斬魄刀持ち達が焼却するのに随分手間取らされた。
…やっと、最後の1体を討伐出来た
「…もう取りこぼしは無いな?」
「はい!間違いなく16体全て討伐完了しました!」
書記が手元の資料を照らし合わせて、漏れが無い事を確認した。
「…良し、瀞霊廷に帰還する!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
瀞霊廷に向かう最中、満珠利に入った途端、雷雨に見舞われた。
「「た、隊長!この雨の中、瀞霊廷までは少し厳しいかと!」」
「それに…この雷雨、瀞霊廷の方から流れて来ているものでは無いでしょうか?」
空を見上げれば、部下達の言う通り瀞霊廷の方が勢いが強そうだ。
「…仕方ない…〈お茶屋・おはし〉に向かう!」
「「「「「「「はっ!」」」」」」」
幸いにも、店は開けたばかりで客は全然居なかった。
大部屋を使わせて貰い、それぞれ食べたい茶と菓子を注文した。
…蓬団子も美味いが、やっぱり豆大福が1番なんだよなぁ
杵で丹念に搗かれたきめ細やかな餅に赤えんどう豆の食感、中の漉し餡は餅と豆の引き立て役でありながらしっかりとその存在をその甘味で主張していて、兎に角旨い。
…3年振りの豆大福だが、変わらぬ味でホッとする
ひと仕事の後、これを食べに来ると「終わった」実感を得られる。
…本来ならば、報告書を出した後に休みを取って来るのだが、今回は天気に降られたのだから仕方ない
誰に言うでもない言い訳をしながら、豆大福を堪能していたら、《餓樂廻廊》が騒ぎ出した。
_アルジ!アルジ!_
_ボクタチモタベタイ!_
_ネェ、チョウダイ!_
…駄目だ
_ナンデ!?_
…持ち合わせがギリギリなんだよ
…本当なら休みを取って来る予定だったんだから
_ウ~!_
…唸るな、店主が気付くだろうが
「まぁまぁ、《餓樂》君が呼んでいらっしゃいますよ?」
…気付かれたか
店主は蹴鞠くらいの大きさに縮小した《餓樂廻廊》を気に入り、《餓樂》君と呼んで可愛がってくれている。
《餓樂廻廊》もそんな店主に懐いて甘えている。
結局、店主は出て来た《餓樂廻廊》全てに豆大福を振る舞ってしまった。
…十中八九、店主としては久し振りに遊んでくれたお礼でしか無いだろうな
これでは、商売上がったりだろうに。
このお人好しで、お茶目な店主はどの斬魄刀からも好かれている。
本来ならば、飲食の必要が無い斬魄刀がこうやって食べるようになったのは、数年に一度此処に集う五大貴族のお茶会での一幕から始まったらしい。
朽木家当主となって久しい響河殿の斬魄刀、《村正》との波長が偶然合った要殿がその存在に気付いた。
お客様の人数を数え間違えたと思い込んだ彼が追加で《村正》にお茶を出した。
「《村正》が見えるのか…?」
全盲故に、他者には感知出来ない何かに気付きやすい要殿の反応に店主が「私も《村正》様と会ってみたいです」と言い出し、卍解して彼を紹介した。
興味はあるが飲食は不要だからと断ったが、店主が引かず、根負けした形で茶菓子を口にした。
それを見ていた歌匡殿の斬魄刀《清虫》も騒ぎ出した。
「私を差し置いて、貴方が先に食べただなんて!許せない~!」
怒り心頭の《清虫》を宥める為に、此方にも茶菓子を提供した。
飲食不要の斬魄刀が実体化して物を食べた事実はこの場だけの秘密とした。
しかし、斬魄刀同士の連絡網の中で〈お茶屋・おはし〉の茶菓子の話が出た際、うっかり《村正》と《清虫》が「美味しかった」と口を滑らせた。
斬魄刀の間でも揉めに揉めた末、それぞれが持ち主に直談判した。
それは《餓樂廻廊》も例外では無い。
…念話をしようと座禅した途端、いきなり引っ張られたもんなぁ
「いきなりどうした?」と聞くまでも無く、「〈お茶屋・おはし〉の菓子が食べたいから連れて行け!」と、それはもう物凄い駄々をこねられた。
お前等は大き過ぎて無理だと説得したら、此方の呼びかけを無視して謎の特訓を始めた。
最終的には蹴鞠くらいの大きさにまで縮小した。
…我が刀ながら、食い意地が張っているというか何というか
この大きさならば実体化しても問題無いと理解し、〈お茶屋・おはし〉と店主達の気配を覚えてからは、来店する度に刀を振るわせて自己主張しては菓子を強請るという知恵まで付けた。
他の死神に聞いたら、どうやら卍解まで至った斬魄刀の殆どが実体化しても問題の無い状態になって、持ち主に同行しては茶と菓子を強請っているらしい。
この任務に付く少し前に噂で聞いたが、山本総隊長の《流刃若火》は未だに同行出来ておらず、雀部副隊長の《厳霊丸》は感極まって店に雷を落としてしまい、屋根を壊して出禁を食らったらしい。
…今は解消されているのだろうか?
「…っと、長居し過ぎたな。そろそろ戻るぞ」
報告書等の処理にかかる時間を考えれば、流石にそろそろ戻らないと拙い。
予想通り店主は《餓樂廻廊》が食べた豆大福代を省いた金額を請求して来た。
…確か豆大福は1個につき200環いかなかった筈
…良し、本当にギリギリ払えるな
「え、あの」
「《餓樂廻廊》の分を忘れてるぜ、店主?」
「…確かにいただきました」(苦笑い)
内心、心の臓をバクバク言わせながらもそれを悟られないように快活に笑って見せた。
直後に十分過ぎる程の土産を貰ってしまったが。
「瀞霊廷の方も…いえ、瀞霊廷の方が酷いようですので、傘と雨合羽をどうぞお使い下さい」
〈お茶屋・おはし〉で貸し出ししている番傘と雨合羽を貸して貰った。
「本日はありがとうございました。お気をつけてお帰りくださいませ」
「お宅等も元気でな。あぁ、傘と合羽は近日中に必ず返却するから。じゃあな」
「またのお越しをお待ちしております!」
…お品書きの内容は変わっても、店主達は何ひとつ変わっちゃ居なかったなぁ
_ネェアルジ_
_ツギハイツイクノ?_
…借りた物を返しに行く日だ
…それまで良い子にしてれば連れてってやる
_ホント?_
_ヤクソクダヨ!_
3年がかりの任務後、予定外の寄り道だったが、まだ大雨が降っているというのに、身体はずっと軽くなっていた。
剣八繋がりで刳屋敷さんに部下達を連れてお越しいただきました。
この【世界線】だと双也君が死神にすらなっていないので、彼が剣八を続けているのでは?と思いまして。
強くて人格者の彼が〈お茶屋・おはし〉に来たらどんなだろう?と只管想像しては執筆、消してはまた想像して執筆の繰り返しで中々納得のいく刳屋敷剣八が書けず、少々苦労しました。
あと、折角だから《餓樂廻廊》を魔改造してみました。
確か斬魄刀異聞編で、誰かの斬魄刀が実体化している間に飲食しているシーンがあったよなぁ…と思い出しまして。
朽木響河の《村正》と歌匡さんの《清虫》経由で〈お茶屋・おはし〉のお菓子への興味を深めた斬魄刀達が、卍解に至った刀(一部を除く)だけですが、実体化に成功して主と一緒に食べる光景は中々可愛いのでは?と。
上手く書けているか解らないのですが、取り敢えず投稿しました。
さて、次のお客様は誰でしょう?