無能王女と最強勇者伯~ 無能で玉座に興味がない王女だけど、最強の勇者伯が勝手に味方宣言してきて困る~   作:たけすぃ

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私だって友達が欲しい5

 頭を抱えたい。真面目に頭を抱えたい。

 何なのだ。この世は一体なんの計画性があって、無能極まる私にこんなにも試練を与えようとしてくるのか?

 

「えっと……すいません、本当にすいません先輩」

 

 どれだけ頭を抱えたくても、これでも王女だ。

 他人の目がある所でそんな事はできない。

 

「学園の敷地内で魔物を召喚する道具を作ってたんですか?」

 

 この人、死刑になりたいのかな?

 私はケミカ先輩から説明された事を、間抜けな事にそのまま問い直した。

 

 だって信じられなかったから。

 

「しかもその魔物を召喚する道具を盗まれた、と?」

 

「そうなんです。酷いと思いませんか? 魔物召喚の魔法という高度な魔法を、誰でも使えるようにと苦労して作ったんです」

 

 そんな物を! 誰でも使えるようにしようとするな!

 国家転覆でも狙ってるのかこの人は? 私は今すぐにでも然るべき所に先輩を突き出すか悩んだ。駄目だ逆に私が捕まりそう。

 

 己の無能から天才であるケミカ先輩を逆恨みし、濡れ衣を着せようとしている。そんな風に思われる危険性がある。私の無能っぷりを舐めてはいけない。

 

「しかも影犬ちゃんは他の魔物と違って、少しだけですが私の言う事も聞いてくれる良い子だったんです!」

 

 魔物をちゃん付けで呼ぶな。あと、その良い子は私を躊躇なく噛み殺そうとしてきたからな? めっちゃ怖かったですよ?

 

「他の魔物と違って?」

 

 内心のツッコミの連打で流しそうになったが、どうやっても流せない単語があった。

 

「はい! 他にも色々と召喚できるようにしたんですよ!」

 

 自慢げに語るケミカ先輩の顔は、完全に駄目な研究者のそれだった。

 やりたいからやった、そして出来た。その事だけに満足していて自分がやらかした事の重大性に気が付いていない。

 

 まずもって、学園内で魔物召喚という禁忌の研究をしている時点で相当だが。それ以上にその魔法を誰でも使えるように道具化したというのが、もう洒落になってない。

 何一つ洒落になってない。しかもそれを色々な魔物に使えると?

 

 先日、自分が影犬に殺されそうになった時は、魔物召喚魔法だなんて大仰な魔法を使ってくる物だと、私の命を狙ってくる相手の本気さに驚いたものだが……。

 そんな誰にでも使える道具があるなら、悪戯感覚で出来てしまう。

 

 勘弁してくれ。

 私は出来る事なら全て忘れて家に帰りたくなった。

 

 どう考えても自分の手には余る案件だ。

 軍事的にも政治的にも、そんな危なっかしい道具、それこそ兄上達が扱う範疇の物だ。

 

 私のような無能に、それを説明されても何もできない。

 

「えぇっとそれで、ケミカ先輩は、自分の魔物を召喚する道具が盗まれて、それが私に使われたという事を知ったので謝りに来たと?」

 

 私の問いにケミカ先輩が「はい! ごめんなさい!」と実に素直な様子で謝る。

 そしてケミカ先輩は、事の重大さに気が付いていない。

 

 ケミカ先輩の作った、魔物を召喚する道具が私の暗殺に使われた、というのはこの際どうでも良い。おそらく王家《家族》も問題にしないでしょう。

 問題はそれが複数あって、そして盗まれたという事だ。

 

 溜息を吐きたい、その衝動が喉をガンガンと突き上げるが、それを指で眉間を揉む事で誤魔化す。

 

「ケミカ先輩、この事を私達以外の誰かに言いましたか?」

 

 ケミカ先輩が〝なんでそんな事を訊くんだろう?〟みたいな顔をして首を傾げる。

 気弱に見える垂れ目も、こうなると煽られているように見える。

 

 ワザとか? 違うと分かっていて、そう疑ってしまう。

 

「言ってませんが……その……何かマズかったですか? 盗まれたと言っても試作品で魔物召喚魔法のように群れを一つ召喚するとかは無理ですし……」

 

 そりゃ魔物召喚魔法の方は、普通は数人がかりでおこなう大規模魔法ですからね。

 道具一つで完全再現は流石にヤバすぎる。

 

「盗まれた道具は幾つなんですか?」

 

「影犬ちゃんのは使われてしまったので、実質的には三つですね」

 

 なるほど、道具は使い切りか。新たな情報をしっかりと無能な頭に叩き込む。

 よし! 整理しよう。

 

 ケミカ先輩は魔物召喚魔法を誰でも使える道具を開発した。

 それは四つあり、その内の一つは私の暗殺に使われて、残りはあと三つ。

 

 そして先輩はこの事をまだ私達以外の誰にも言っていない。

 私にどうにか出来るのだろうか? 真剣に悩む。

 

 このままではケミカ先輩が捕まり、最悪は処刑されてもおかしくない。

 理由は当然ながら、そんな危険な道具を作った事だ。当たり前だが、それが私の暗殺に使われた事は問題にもならない。

 

 魔物を召喚する道具なんてのは、学園で勝手に作られて良い物じゃない。これが公になればケミカ先輩であれどタダでは済まないだろう。

 

「ケミカ先輩」

 

 私は、気が付けばショウ君に引っ張られて先輩呼びが自然に出ている事に気が付きながら、深刻さが伝わるように出来るだけ真剣な顔をする。

 ――いや違う。したんじゃない、なってしまったんだ、私は。

 

「誰にも言っては駄目です。私がなんとかします」

 

 思ってもいない言葉が出た事に、私は驚いた。

 

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