無能王女と最強勇者伯~ 無能で玉座に興味がない王女だけど、最強の勇者伯が勝手に味方宣言してきて困る~ 作:たけすぃ
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どうやら俺は失敗したらしい。
さすがにメフティアがあれだけ怒っていたら、俺だって分かる。
貴族社会って本当に難しい。
一番怪しそうな奴から順番に捻り上げていったら、いつかは正解に辿り着くだろうと、〝とりま〟で入学祝賀の日にメフティアに絡んでいた貴族から始めたのだが。
どうも、それは駄目だったらしい。
「さてどうしようか?」
俺は授業をサボり、学園の上空であぐらを組みながら、無意味にグルングルン回りながら考える。
長距離を移動するには不向きな空を飛ぶ魔法だが、滞空してその場でグルングルンする分には特に問題はない。
ちなみに初代勇者が残した書物によると、考え事をする時は縦に回転するのが良いらしい。本当かどうかは知らん。
俺は考える。最初のメフティア暗殺事件は学園で起きた。
そうであるなら、犯人は学生か学園内部の人間である可能性が高い。
特別な日でもない限り、外部の人間が学園に忍び込むのは想像以上に難しかったりする。この辺りは貴族が通う学園だなと思う。
俺はいったん落ち着いて良く考える。危険な魔物を殺す時も、落ち着いて考えてから行動した方が上手くいく事が多い。
メフティアの目的は、ケミカ先輩の作った道具を回収する事である。それも
となれば、問題はその場所だ。
誰が盗んだか? に関しては、メフティアが私に任せてくれと言ったので保留する。
ケミカ先輩が作った魔物召喚の道具はいわゆる魔道具という物で、その動作には魔力を必要とする。
その手の魔道具は学園への持ち込みが禁止されているので、学園には二重三重の処置がこうじられている。
つまり学園に持ち込むのも、そして持ち出すのも難しい代物だ。
学園に魔道具の類を持ち込むには、ケミカ先輩のように学園内で作る必要がある。
盗んだ犯人には学園外に持ち出す手段があるのかもしれないが……。
直感としてはまだ学園内にあるような気がする。
なぜなら標的であるメフティアはまだ〝生きてる〟からだ。
「俺なら一度で諦めるだろうか?」
口に出してみたが結論は変わらなかった。
簡単に諦めるにはメフティアが無能すぎる。
いかにも簡単に殺せそうなのだ、あの女。俺が友達になる前に死にそうで心配になる。
それは困るし……そしてなんか嫌だ。
んーー、どうするかなぁ。探し物の場所が分かる魔法とかあるかな?
ご先祖様の残したノートでも見たら書いてあるかも。
今度ノートでも見直して……お?
念の為にと、メフティア周辺に展開させていた魔力探知の魔法が反応した。
「おっとマズい」
俺は空を蹴って加速した。
*
気が付けばショウ君が消えていた。
一限の時には確かにいたので、消えたの二限からだ。
誰がケミカ先輩の魔道具を盗んだか? に関しては私が調べるので任せて欲しいと、ショウ君の暴走を止める為とはいえ、宣言してしまったので、落ち着いて考える時間が欲しかったので丁度良いともいえる。
ふと、どこに行ったのだろう? と思ったが、彼の事だからドコでもありなので私は考えるのをやめた。
入学してから学園では四六時中ショウ君と一緒だったので、久方ぶりの一人である。
私にも弱小ではあるが派閥があるので、本来なら教室で一人になるはずなんて無いのだけど、私の周辺には見事に誰もいない。
無能な上にボッチは王女としての最低ラインを下回っているような気がする。
前後左右を空席に(しかも三席も!)囲まれた私は、教室の窓から空を見上げる。良い天気だ。
誰だろうなー、私を暗殺する為にあんな危ない魔道具を盗んだ馬鹿はー。
王国の歴史について語る教師の言葉は心地よき背景音楽で、足りない頭を働かせるにはちょうど良い。
それでも教師の話が耳に入るのは、その内容を何度も暗唱させられたからだろう。かなり脚色されているが概ね真実、というのが王家が敬意を獲得する為の秘訣らしい。
私には無縁の物だけど。
熱っぽく初代国王であるヴァン・アブ・トゥロウサンの偉業を語る教師は、案外本当に王家に敬意を持っているのかもしれない。
初代国王と実際に一緒に戦った勇者の子孫であるショウ君がこの授業を聞いたら何と思うだろうか?
ふと疑問が浮かんだ私は、久しぶりに一人になれたというのに厄介の種でしかないショウ君の事を考えている自分に気づいてゲンナリした。
まさかと思うが、私は今さびしいと感じているのだろうか?
喉から変な声が出そうになる。
確かに、なんというか祭りの後の寂しさというか、急に静かになった部屋みたいな寂しさがある。
だが勘違いしてはいけない。これは対比による寂しさである、急に騒がしさが無くなったから脳が勘違いしているだけだ。
落ち着け私、落ち着くんだ。
教師の熱っぽく語る、初代国王が行ったとされる演説を右から左に聞き流しながら、私は大きく深呼吸する。
深呼吸をすると、一瞬だけど心のガードって外れるよね?
だから、つまり、次に私が発した言葉は心からの本音だった。
「二度と寂しいなんて思いません」
教室の窓が吹っ飛び、ショウ君が教室に突っ込んで来た。