無能王女と最強勇者伯~ 無能で玉座に興味がない王女だけど、最強の勇者伯が勝手に味方宣言してきて困る~   作:たけすぃ

37 / 38
縁もたわけな2

 *

 

 俺はメフティアを両(・)手(・)で(・)抱きしめると、グルっと半回転する。

 メフティアの体は見た目通り、やわく、そして壊れそうだった。

 

 一瞬の空白。

 俺の背中にラドラリーの攻撃が直撃する。

 

 予想よりかは圧が強かった、足が浮き抱えたメフティアごと吹っ飛ばされる。

 しかしこれで狙っていた結果は得られた。

 

 メフティアの頭を手で庇い、両手が塞がっているので顔面から営庭に着地。

 

「ぐえ」

 

 痛くもないけど変な声が出る。

 俺はメフティアを抱えたまま草まみれになりながら営庭を転がりラドラリーから距離を取る。メフティアを抱えて避ける事もできそうだったのだが、そうすると加速でメフティアの首がパキりそうで嫌だったのだ。

 

 巻き上がった土煙で俺を見失ったのか、ラドラリーからの攻撃がやむ。

 

「い……生きてる! なぜか知らないけど私生きてる!」

 

 腕の中でメフティアが錯乱している。まあいつもの事か。

 

「怪我してないか?」

 

 土煙の中でそう呟いたのが悪かったのか、魔族特有の気持ちの悪い魔力を感じる。

 

「すまん!」

 

 伝わらないだろうなと思いつつメフティアに謝り、俺は仰向けの状態から背中と足を使って跳ね起きる。

 

「むぎゃ」

 

 無能とは言え王女が出していい声じゃないな。

 跳ね起きた俺を狙って追撃の結晶が飛んでくるのを、メフティアが怪我しないように気を付けて避けていく。

 

 そのたびにメフティアが、ふぎゃ、とか、もぎゃ、とか、ぐぎゃ、と面白い声を出す。

 楽しい奴だなお前はホント。

 

「しょ! ショウ君! 私を連れたまま! ぐえ! 無茶な! というかなんで私まで!?」

 

「大事な物は手元に置いておく主義なんだよ!」

 

 ちなみに本音は、できれば俺もさっさとメフティアを安全な所に置いて一人で戦いたい、だ。

 多少の怪我をさせてよいなら、その辺に、というか竜の爺さんの所にでも投げれば良いんだが。流石に俺も親兄弟の目の前で、メフティアを怪我上等で投げる気にはなれない。

 

 というか両親に知られたら現状でも説教二時間コースだ。

 

「私は! 大事な物は金庫にしまっておく派閥過激派なので! おわきゃ!」

 

 律儀に返事するメフティアがやっぱり面白い。

 上流階級ではオモシレー女は一定の魅力らしいので、もしかしたらメフティアは一部ではモテるのかもしれない。

 

 いやしかしどうするこれ?

 メフティアを抱えたままだと両手が使えない。

 

 魔族を殺すのは、それこそ雑に塵になるまでやれば良いだけだが、それだとラドラリーまで死んでしまう。

 ご先祖様ノートにも書いてあるが、助けられる人間を助けないと気分が悪くなるのが我が一族だ。そうするとただの一振り(聖剣)がいる。

 

 しかしその剣を持つための両手は塞がっており――。

 嗚呼、なる程? 発想の転換だな。

 

「メフティア! 両手を前に出せ!」

 

 俺の胸の中で、両腕をギュッとして身を縮めていたメフティアが「ぐええ」と呻きながら首を傾げる。

 

「なんでですか!? 何か非常に良くない気がするんですけど!」

 

「信じろ!」

 

「何をですか!?」

 

 メフティアが悲鳴を上げながら両手を前に出す。丁度よい感じに祈りの所作のように手が組まれている。

 えぇっと位置をイイ感じに調整して……。

 

 ここをこうして……、ああもう攻撃が邪魔だな、避けながらだと細かい調整が。

 お! ナイス竜の爺さん!

 

 俺がやろうとしている事を察してくれたのか、竜の爺さんがこれ見よがしに翼を大きく羽ばたいてくれた。ラドラリーの結晶攻撃が止まる。

 

「よし! メフティア手を動かすなよ!」

 

 そう伝えながら俺はメフティアの両手を収納魔法に突っ込んだ。

 

「手が消えたぁ! 私の!」

 

 倒置法で驚くメフティアが面白い。

 

「なんか! なんか握ってるんですけど!」

 

 これ下町のお笑い劇場で見たやつ!

 そう叫ぶメフティアに、お前はそんなもん見に行ってるのか今度俺も誘えと思う。

 

 そして引き抜かれる聖剣。

 

「なんで聖剣が私の手にぃい!?」

 

 メフティアの反応がいちいち面白くて、いまだ収納魔法にしまったままの竜の死骸を握らせたらどんなリアクションするのだろうかと、馬鹿な事を考えてしまう。

 メフティアが面白いのが悪い。

 

 そんな事よりも。

 

「メフティア危ないからしっかり持ってくれ」

 

 再開したラドラリーの攻撃を避けるたびに、聖剣がフラフラして危ない。

 

「無茶を! 無茶を言わないでください!」

 

 まあそれもそうか。

 俺はメフティアを抱える腕を変えて、フラフラするメフティアの腕を固定するよう自分の腕を回し、聖剣を握るメフティアの手に自分の右手を重ね強く抱きしめる。

 

 多分なんだけど、こういう時、普通の大衆芸術なんかだとお互いにドキドキするんだろうなと思う。青春ってやつに憧れている俺は、そういう小説とかが大好きで良く読んでいる。

 しかし俺達の場合だと、メフティアは「いだだだ!」と叫び、俺はそれがおかしくて笑ってしまう。

 

「なんでこんなガッチリ固定を!? 嫌な! 嫌な予感がします!」

 

 涙目のメフティアが面白くてつい揶揄ってしまう。

 

「正解だメフティア。俺は両手が塞がってるからな、こ(・)の(・)ま(・)ま(・)ラドラリーを斬るからしっかり握ってろよ?」

 

 お前を守りながらだと仕方がないんだ、ホント仕方がないんだよ。

 そう思っていたら腕の中のメフティアが何かに気が付いたみたいな顔をした。

 

「そういうのは! 私を安全な場所に空間転移させてからにしてください!」

 

 あ――、確かに。

 そう思ったのは既にラドラリーに向かって踏み出した後で、もう今更だしなぁ、という気持ちの方が勝った。

 

 俺はラドラリーを斬った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。