どうも俺、博麗霊那だ。
今世の名前も博麗霊那だった。うれしい。
二度目の転生をした俺は、周りの状況を確認することにした。
どうやら父子家庭らしい。
そして俺の隣には、俺と瓜二つの赤ん坊が寝かされていた。
その赤子の瞳は妙に理性的だ。どう見ても自我があるようにしか見えない。
……まあ、今は確認のしようもない。ひとまず置いておこう。
さて、この世界だが、どうやら『僕のヒーローアカデミア』の世界らしい。
細かな流れは前世があったので忘れてしまっているが、大まかな流れは覚えている。
……とはいえ、そんな原作知識よりも今の俺にとって重要なのは一つ。
それは、この世界でも『程度の能力』と『霊力』が使えるか否かだ。
結論から言えば、その心配は杞憂だった。
どちらも問題なく扱えたのだ。
霊力は前世と変わらず身体の内を巡り、能力もきちんと反応する。
これなら、少なくとも力を失って右も左も分からない赤ん坊生活――なんてことにはならない。
前世で何十年も使い続けた力だ。今さら使い方を忘れるはずもない。
ついでだ。ここで俺の『程度の能力』について説明しておこう。
俺が持つのは、『軌道を操る程度の能力』。
文字通り、あらゆる"軌道"を自在に操る能力だ。
前世では、この能力に何度命を救われたかわからない。
例えば、飛来する弾幕の軌道を書き換えて紙一重で回避したり、御札の軌道を曲げて死角から敵を撃ち抜いたり。
自分の移動軌道を瞬時に変えて相手の懐へ潜り込むこともできるし、敵の攻撃そのものを明後日の方向へ逸らすことだってできる。
もちろん、何でもかんでも操れるわけじゃない。
軌道を持たないものには干渉できないし、規模が大きくなるほど霊力の消費も激しくなる。
それでも、この能力が単純にして極めて強力なのは間違いない。
そして何より――
霊夢と一緒に戦う時、この能力はさらに力を発揮する。
自由自在に空を飛び回る霊夢の札も針も陰陽玉も、そのすべての軌道を俺が操れるのだから。
正面から飛んできた札が背後から襲いかかり、避けたはずの陰陽玉が再び追いすがる。
博麗姉妹の弾幕は、一度放たれた時点で終わりではない。
そこからが、本番だった。
――なんて、前世の無敵の連携を思い出して、ひとり悦に浸ってしまった。
いけないいけない。今はまず、この動かない赤ん坊の身体をどうにかするのが先決だ。
隣で眠る理性の高そうな双子の姉(?)を眺めながら、俺は静かにこれからの作戦を練り始めた。
―――――――――
――っと、それから三年の月日が流れた。
幸いにも、俺は普通の子どもとして育った。
……いや、精神年齢だけで言えば、とっくに還暦を超えているから「普通」と言っていいのかは怪しいが。
霊力の鍛錬も、能力の練習も、人知れず続けている。
赤ん坊の頃は思うように動かなかった身体も、今ではだいぶ自由が利くようになった。
そんなある日だった。
「ねぇ。」
不意に、隣から声がした。
振り向くと、俺と瓜二つの双子の姉、‘’霊夢‘’が真っ直ぐこちらを見つめていた。
「霊那、あなた前世の記憶あるでしょ」
――心臓が一瞬だけ跳ねた。
まさか。
いや、普通ならそんなことを聞くはずがない。
……ということは。
「霊夢も?」
俺がそういうと霊夢は、うれしそうに笑った。
「やっぱりね。そうだと思ったのよ。私の勘はまだまだ現役ね」
「勘だけで当てるなんて、霊夢やっぱりすごいね」
「ふふん、伊達に六十年以上あんたの姉やってないわ」
思わず笑みがこぼれた。
その言い回しまで前世のまま。
……やっぱり、霊夢だ。
前世で別れたはずの姉と、まさかこんな形でまた会えるなんて。
もしかしたら、ほかのみんなとも、また会えるかもしれない。
俺は、この先の人生が少しだけ楽しみになった。
次回はおそらく一か月後とかになります。