繋がる虚ろな人格戦争(セブンスヘイブン) および 神をも断ち切る白黒の剣(デュランダル)   作:茶鹿秀太

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ローラン聖剣NTR事件および2

ギルドの成り立ちは、聖女の立身出世物語とイコールと言ってもいい。

 

15年前、世界が滅んだ日から人間は人格が混ざり合い、無機物の大半が破損した。

 

そんな中、この街、オーギュスタから遠く離れた山奥で【大災害】と呼ばれる災害があったそうだ。

 

その災害は、あらゆる厄災を詰め込んだ台風のようだったと形容されている。

 

滅んだ最初の1か月で、教会は人を取りまとめることに成功した。

 

その理由が、【大災害】だった。死者数、約1万人。

 

たった1か月で、その災害が全てを滅ぼした。

 

その災害を攻略するために、訳の分からない増えた人格のことを……()()()()()()()()

 

「今は人が争うよりも、協力してあの災害を越えなければいけないじゃないですか!」

 

当時、齢17歳の彼女はそう言って、近辺にいた人類をまとめ上げた。

 

そして、教会関係者で構築された騎士団と、数多の民間人で【大災害】に挑んだ。

 

その結果、【大災害】は機能を停止。

 

一瞬の安寧を手に入れた。その時の数多の民間人に、聖女は告げた。

 

「これからも人類は苦境に立たされると思うんです。大事なのは衣食住、それは教会でなんとかできても……その後に大事なのは、仕事です。皆さんにお願いです。私たちと一緒に、街を作って、その街を守ってくれませんか?」

 

それがきっかけで生まれたのが、ギルドだ。

 

ギルド登録をすることで、得意な仕事を割り振って、報酬を誰でも得られるようにしたのだ。

 

それは時に治安部隊に、時に狩人に、時に街の清掃員に、どんな人間でも仕事がもらえて、報酬に食事や物を提供される。

 

貨幣の価値が消えたことで生まれた、新しい労働と物の交換を行う働き方改革だった。

 

ギルド創設から14年。

 

今もなおこのシステムは、街の中で息づいている。この街の名前はオーギュスタ。

 

聖女の名から取られた、白灰火教(はいかきょう)が生んだ街である。

 

 

 

「あの……お会いできて光栄なんですが……、聖女様がどうして俺たちなんかに会いに……」

 

聖女はぐびぐびと紅茶を飲んで、セバスに白い目で見られながら指をさした。

 

「そりゃあ、あなたたちお二人がムラサメ様のお子さんだからですよ。元気してます? あの人はかなり謙虚ですからね。中々こっちまで来てくれないんですよ」

 

「お、親父……?」

 

俺のことを尻目にロラ姉も聖女に倣ってスコーンという食べ物を一気飲みする。

 

いや絶対に飲み込めないだろ、と思っていたら、ごぎゅ、と変な音が彼女の喉から鳴った。

 

丸呑みに成功したらしい。化け物かな?

 

「はい。ムラサメ様です。あの、よくわかんない力で変身して、すごいキックしたりするムラサメ様です。懐かしいです。ムラサメ様、【大災害】以来全く会えてないんですもの。それでも名声はここまで届いているのですからすごい方ですよ」

 

「そ、そう……なんですね」

 

俺の頭がぐるぐると回る。

 

親父……、【大災害】とかかわりが……?

 

そんなの、俺聞いたことないぞ。

 

なんで、隠してたんだろう。

 

それを大っぴらに言ってくれたら、……尊敬できる父親だって、胸を張ってみんなに言えたのに。

 

「そして本命は、あなたですローランさん。あなたには本当に重要なお話があって」

 

「んごっぶ」

 

口に物を入れながら返事をするなロラ姉っ。

 

俺がやったら怒る癖に!

 

「昨日、オルランド騎士団長の所持する聖剣、デュランダルを手に取ったら音声が流れて、所有者に認められたのですよね? あれは不思議な聖剣。所有者をデュランダル自らが選ぶんです。【大災害】で発見された一品ですよ」

 

「んげっぷっ、そりゃあっ! あれよ、あんな変な男に使われたくないって剣が泣ていたのよ。私は悪くないわっ! どっちかっていうと剣が私に惚れちゃっただけだし……あぁ、Sexyなのも罪ね!」

 

すごい、人類言い訳選手権があったら間違いなく上位に食い込める言い訳だ。

 

聖女が「たはは」と笑いながら、何か薄い板を見せてきた。

 

「これ機密の道具ですから言わないでほしいんですが、教会では牢屋に監視カメラというものを設置しておりまして」

 

「か、亀……?」

 

「カメラです」

 

俺が困惑していると、突然薄い板から何やら人間が姿を現した。

 

すごいリアルな絵だ。しかも、動くっ!

 

「えーとですね、人間の目で見たものが、この板にも写されていると思ってください。そっか、市井にまではまだこの技術下りていないですよね。今後10年で皆さん使えるようになりますよ」

 

「ほえー」

 

そう言いながら、聖女は薄い板を触ると、突然声がその板から流れてきた。

 

〈おぎゃあああああああああっ、おぎゃあああっ、デュランダルが、あ、ああああああああ、デュランダぁああああああああルっ、がべっでぎでぼぉ、おぎゃあああああっおぎゃあああああああっ、ママぁあああああああああっ! おぎゃああああああああっ!〉

 

「うわぁ」

 

昨日姿を見た騎士団団長のオルランドが、すっぽんぽんのまま牢屋の中でのたうち回っている。

 

ひどい姿だ。あまりに見られたものではない。

 

大の大人があんな姿になるなんて ……。

 

ちゃんと服は畳んでいるのが余計むかつくなこれ。

 

「実は騎士団長、デュランダルが取られたって壊れてしまって……。ローランさんが所有者に選ばれてしまったのは分かっているんですが、一応教会の大事な品なので……レンタルという形でお渡しするので……。体裁とか保つために、契約書とか書いてほしかったり?」

 

「え? 私持ってないわよ?」

 

ローランが首をかしげると、聖女が頭をぽりぽりと掻いた。

 

「えーと、聖剣が手のひらに急に収まるイメージしてみてもらえませんか?」

 

「はい」

 

突然、俺の頬に触れるか触れないかの距離で、あの白と黒の剣が刃先を向けられた状態でロラ姉の手のひらに現れた。

 

「ぴっ」

 

俺は変な声が出た。

 

『すごい、これ本物の聖遺物だよ。私が知る限り、所有者以外はこの武器は触れない。触ったら指持ってかれると思う』

 

そう言ってパト姉が剣をジロジロと見つめる。

 

パト姉はこういうの結構見たことあるっぽいな。

 

俺にとっては心臓に悪いクソ武器なんだけど。

 

「な、なによこれ気持ち悪い。急に出てこないでほしいわっ! 返す返す!」

 

ロラ姉は聖女に剣を渡そうとするも、聖女が首を振る。

 

「私には触れられなくて……。オルランド団長に直接渡す必要が……」

 

「はっ? 嫌よっ! あんなすっぽんぽんで暴れまわる男に会うなんて! うら若き乙女に男の汚い部分を見ろって言うのっ!? 汚らわしいっ! これだから男って嫌なのよっ!」

 

「あれ? ロラ姉、この前お酒飲んですっぽんぽんで暴れまわっ」

 

「あ、手が滑った」

 

「ぴっ」

 

剣が突然ぐいっと俺の首に向けられた。

 

こわい。その剣の黒い部分、触ったらすごく痛そうでこわい。

 

なんかわかんないけどこわい。

 

「ろ、ローランさんダメです! デュランダルは、えーと、その黒い部分、あらゆるものを断ち切る能力があるのでヤバいです! 仕舞って! 仕舞って!」

 

「ぎゃああああああああああああっ! ロラ姉今すぐ仕舞ってくれ! 死ぬぅっ! 死んじまうぅぅっ!」

俺の反応を見て、ロラ姉は余計にニヤニヤし始めた。

 

「えー? 仕舞い方わかんないしー? なんか余計な口が回る舌って切った方がいいと思うしー。ちょうどいいじゃない」

 

「ぴぃ、ぴぃぃ」

 

俺の喉から変な声が出る程度には、俺は元気らしい。

 

助けて世界。助けて、誰か。

 

しかし、無常にも時間というのは、姦しい一人の姉によって蹂躙されていくのであった。

 

でも、それでよかったのかもしれない。

 

もし少しでも一人で悩む時間があったら、「あぁ、また姉がすごいって話ですか」と、心が荒んでいたかもしれないから。

 

そして、俺は申し訳なく思いながら、紅茶を置いた。

 

「はぁ。……すいません聖女様。この紅茶……? ってお茶、こぼしそうで怖いです……。普段飲みなれてないもので……、緊張しちゃって」

 

「まぁ。普段は何をお飲みに?」

 

「やっぱあれですかねぇ! 回復エナドリですかね! 知ってます?」

 

「あー……。あはは。はい。知ってますよ。そうですよね、ギルドの方はよくお飲みになっているとか。在庫あったかな? たまに冷蔵庫に頼んでもないのに入れる人がいるので、もしかしたらあるかもしれません。飲みますか?」

 

「えっ! 良いんですか?」

 

「セバス。ついでに……お願いしていい? そろそろ時間だから」

 

「かしこまりました」

 

そう言って、セバスはすっと部屋から退出した。

 

俺はそんなことよりも、この聖女の部屋という物珍しい場所で大好きな回復エナドリを飲めることに、喜びを得ていた。

 

『アラタ…………本当に太るよ? 虫歯にもなっちゃうよ?』

 

その何度目かの説教も耳に入らない程度には、上機嫌だった。

 

 

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