まだモチベーションは続いてます。
もうすぐブルフェスだー…
「この辺りだよね、音が鳴ってたのは。…やっと見つけた…。」
一歌達を探すべく、音の鳴る方向へ歩き続けて暫く歩き続けた私はようやく扉の開いた教室を見つけた。にしても案外広いんだな、セカイって。生で見ると思ってたより全然広いや。
「ミクちゃん、ルカさんこんにちはーっ♪」
「今日はいつも以上に元気ね、咲希。」
「この声って…咲希とルカだよね。」
扉からこっそり教室を覗き込んでみると、そこには前世でよく見たあの子達が揃っていた。…なんていうか、感動するなぁ。劇場版を見た時も似たような事を思ったけど、普段画面越しに見るキャラクター達が動いて、喋ってるのを直に見れるなんて思いもしなかったや。
「何かいいことでもあったの?」
「ここに来る前に、プロになる為には具体的に何をすれば良いか話してたんです。それで、まずは経験を積むために私のバイト先でライブをするって事になって。」
「ライブ?へぇ、面白そうじゃん!」
「でしょでしょ〜!ついにアタシ達Leo/needが、世界に羽ばたくんだよ!もう、今からドキドキしちゃって!」
やはり想像通り、これはレオニリンが初登場するイベストだ。確か記憶通りならこの少し後に、『やばばっ!皆もう来てるっ!?』的な事を言って、皆と初めましてするんだよね。…いや〜、うん。私には無理だ。やっぱり私らしく行こう。
…って言っても、どんなふうに?『皆さん、初めまして!鏡音リンです!』…いや、これはちょっと硬すぎるな。
『やぁ皆、初めましてだね。私は鏡音リン、これから宜しく。』…これも違うな、クールキャラをこの先貫き通せる気がしない。それこそ変な事言ってミクみたいに顔赤くしてそうだし。じゃあ他には─
「世界って…咲希、大げさ。」
「大げさじゃないよ、一歌。」
私は本能的に、一歌の言葉にNoを突きつけた。
大げさな訳が無いじゃないか。だって、君達は─
…そこでふと皆の方を見ると、『えっ』という顔で私を見ていた。しまった、何も計画出来てない。このままだと沈黙で気まずい空気が流れて私が終わる。…何か、何か言わないと…あっ、そうだ挨拶!社交儀礼の基礎の基礎をまだしてないじゃん!えーと、うー…
「想いの持ち主さん達、始めまして。鏡音リンだよ!」
「リ…リン!?」
「あら、来ていたのね、リン。呼んでくれれば出迎えたわよ?」
「ふふ。気持ちは嬉しいよ、メイコ。でもね、始めましては自分からやってみたくって。」
そんな事は断じてない。メイコさんに出迎えられてあわよくば紹介までして欲しかった。…うわ、手汗がとんでもない事になってる…。
「わー、リンちゃんだー♪ねぇねぇ、リンちゃんも一緒にバンドとか、してくれるの!?」
「わっ!?」
咲希が凄い勢いで近づいて来たもんだから、油断して素っ頓狂な声を上げてしまった。嗚呼、黒歴史確定、オワタ…。
「あはは…うん。私もミク達と一緒に、ここでバンド演奏しようって思ってるよ!」
「やったー!リンちゃんが来てくれたから、これでもっと楽しくなるね♪」
天使かよ、いや天使だったわ。この子素直すぎるよ。惚れちゃうから…ほら、そんなに顔が近いと困るから離れてくれる?ね?…ちょっ、抱きつこうとしないで!?誰か助けて!可愛すぎて死んじゃう!さっき死んだばっかなのに!
そこで、穂波が口を開いた。
「ね、ねぇ…リンちゃん。大げさじゃないって、どういうこと?」
その質問は、私の心の中の何かを的確に貫いた。
夢に全力で立ち向かえる人は、とっても煌めいて見える。それは二次元でも三次元でも変わらない。私は、そう思っているから。それが、君達を好きになった理由なんだから。
「だって、本気で目指そうって決めた人の夢を、大げさなんて思いたくないから。世界ってね、最初はすごく遠く見えるんだ。でも、一歩ずつ進んでたら、気づいた時には思ってたより近くにあることもあるんだよ。」
途切れ途切れに聞こえたかもしれない。けれど、これはちゃんと答えないといけない問いだと、不思議と確信していた。
…私は、諦めてしまったけれど…。
私の答えをどう受け取ったのかは分からないが、穂波達は何かを考えるような表情をした後、再び口を開いた。
「そういえば、メイコさんが来てくれた時は、『わたし達の想いが一歩先に進んだから』って言ってたよね。もしかしてリンちゃんも、同じ理由でセカイに呼ばれたのかな?」
「理由?…理由、かぁ。」
理由。……分かるはずがない。てっきり死んだものと思っていたし、実際死んでいるのかもしれない。それにこれが現実か、夢か、走馬灯か。はたまた死ぬ間際に脳が作り出した幻覚かどうかも、私には知る術が無い。
「…分かんないな。何もかも、ぜーんぶ。でもね?」
もし、もう一度生きることが許されるなら。もし、私が『鏡音リン』として、この子達と共に過ごせるのなら。
「私は、いや私も、皆と一緒に過ごしたいなって、思ってる。皆の力になりたいな。」
ベタで、誰でも考えつくような答え。でも、今の私の正直な想いは、この言葉に詰まっていた。
一瞬の静寂が場に流れた後、今度は志保が私のそばに近づいて来てくれた。
「…もし、リンが力を貸してくれるなら。私達、今はライブの準備をしてるんだ。良かったら、一緒にやらない?」
「ライブの準備…。曲作りとか、練習とか?」
「うん。まだそのあたりは決まってないけど、やりたい事は決まってるよ。4人で、聴いてくれた人の心に残るような演奏をしたい。その想いは、皆同じ。」
一歌、咲希、穂波、志保。それにミク達も、皆真剣な目で頷いたり、微笑んだりしていた。…あぁ。
やっぱりこの子達は、私が憧れた主人公だ。私には出来ない、『誰かの心に届く事』を成し得る人間。
「…いいね。凄く、良いや。その絆、その想い。きっと、皆なら大丈夫だよ。」
言い切った後、少しだけ寂しさが心の奥深くから湧き出てきたが、知らないふりをした。
「もちろん!よーし皆!早速練習しようよ!アタシ、居ても立ってもいられなくなっちゃった♪」
「あはは…。でも、咲希ちゃんの気持ち分かるよ。」
「よし、それじゃあ皆。それぞれ準備して練習しようか。」
「「はーい!」」
「皆、困った事があったら教えてね。出来る限り、力になるから。」
私はこの子達のような人物にはなれない。人には人の生き方がある。それはどんな世界でも同じ。でも。
せっかく『2回目』のやり方を選ばせてくれるなら。
誰かを救えるような人に、なりたいな。
そんな事を考えながら、私は教室を出た。もう少し落ち着いて整理したい。その為にはまず─
「─リン、待って!」
「え?」
一歌が、私を呼び止めた。その目はいつになく、好奇心と疑問に溢れていたような気がする。
……え。
なんか私、やっちゃいました?
次話も4割出来上がってます。