だからお前はエースになれって言ってんだろうが!   作:Aっていうよりクローバーの2

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 評価感想ありがとうございます。意外と需要があってびっくりしました。
 元々女キャラ可愛いのに、出番少ねえなと思って書いたんですよ。高校野球の泥臭さとか大きいお姉さんへの配慮とか色々あったんでしょうけど。
 あと感想書いてくださる方に、書いてる人間より邪悪な方がいて笑っちゃうんすよね。
 高校野球ですから、もっと爽やかなの求められてると思っていたのですが。

 今回古いネタが入ります。あと実際の年代と微妙ズレてる気もします。


第3話

「次、明川かー」

 

 夜、ネットを調べると青道の次の対戦相手が表示されていた。明川戦は特異な経歴を持つ子がエースナンバーを背負っていることで、何となく漫画のエピソードを覚えている。

 楊舜臣、台湾からの語学留学生で卓越したコントロールとスタミナを誇るエースピッチャー。最大130キロ前半というストレートも、2年生ということを考えれば凄まじいと言っていい。成宮が外れ値過ぎて目立たないが、楊も高校生としては破格のプレーヤーだからね。そう考えると栄純も降谷はもちろん、丹波も川上も十分上澄みだ。ピッチャー出身の片岡監督がただ140キロ出るってだけで丹波をエースに指名するとは思えないし、卒業後野球で大学に行けるはずがない。恐らく、メンタル以外の部分は相当なのだと思う。川上も中継ぎ経験豊富で登板タイミングを選ばない、コントロールの良いサイドスローピッチャーという高校生にしては結構なオーバースペックである。困ったら川上と言われるのも納得だ。だから原作の夏大会にそのツケが来たのだろう。

 話を明川のエースに戻そう。その背景とキャラクター含め、好きな投手だが今のバッターとしての栄純とは相性はあまり良くない。アレはコースとか駆け引きとかあまり考えないバカだから。私もそうだけど、試合だとバッティングは出来るだけ身体が動くままに任せて、サインと野手の動きに意識を割くから読み合いまでいかないんだよね。変化球の網とストレートの網張りの確認を読み合いと言われれば、「まぁそうね」と言えるか?

 自分や栄純は考えて打ってる時点で準備不足なのである。バッターとピッチャーとしての勝負は打席に入る前に大体決まっている。その上で状況に応じて何を基準にするかは打席で決めたり、監督のサインと照らし合わせはするが。周りはイマイチ理解してくれなかったけど。

 そんなんだからリトル時代、御幸と対戦後、話して呆れられたのを覚えている。なんなら半ばキレていた。タイプの問題だから深読みするようなもんでもないのに。のび太のくせに考えすぎでしょ。私としては打席の中で、サインと野手やランナーの動きを見つつ、対戦相手の配球を読む方が凄いわ。それが出来なかったから、前世でレギュラーなんて取れなかったんだけど。バッティングを可能な限り機械化してやっと、周りの空気を読む余裕が出来た。

 成宮ともやったが……私はともかくチームは負けた。いつかもう一回なんて言ったが、私がシニアに行かなかったからね。所詮はちょっと珍しいだけの一プレーヤーだ。あっちは忘れているだろう。

 うだうだ考えてしまったが、多分明川には負けない。問題は次に当たる可能性の高い薬師だ。それこそ現状のピッチャー沢村と雷市の相性はかなり悪い。他の3人も、降谷の球ならまぁ、といった所か。

 雷市は突出したスイングスピードと空間認識能力、反射神経で打つタイプだと思われる。やたらマシンのボールに強いヤツ。マーク必須のボールが無ければ、全部見てから合せられるからね。非才の身としては羨ましい限りだ。

 一応その手のバッターは一定の球速を越えると、コースか球種にヤマを張らないといけなくなるから完全無欠という訳じゃないんだが。人間の処理能力の限界である。それこそ楊の球速が140キロに届けば、雷市の天敵になりうるかもしれない。コースと緩急で択を要求出来るから。そして択が出来ると迷いが生まれて、守備側から見ればより扱いやすくなる。個人的にはバッターを迷わせた時点で、バッテリーの勝ちだと思っている。

 そういう意味では、栄純や私は択が少ない分、迷い難いから負けにくいバッターか。一人で点を取れるわけじゃないから、セイバーメトリクスの観点だと大分ショボそうだが。

 

「ボタン掛け違えたら負けるよねー、薬師戦。……うん」

 

 

 

 

 明川戦を終えた夜、増子徹はバットを振る。素振りは毎日のルーティンだが、今日はそれ以外の理由があった。

 

(情けない。最後の試合になるかもしれないというのに、チームが苦しい時に何も出来なかった)

 

 最後は勝ったが、途中までは明川のペース。特に打撃において、増子はエースの楊に途中まで完全に手玉に取られていた。

 空気を変えたのは同室の後輩、沢村だった。リリーフして三者凡退で抑えた後、バッティングで楊のリズムを崩した。

 西東京区屈指のコントロールを誇る楊が、沢村の初球に選んだのは内角高めのストレート。しかもストライク要求。外れればデッドボールの危険、とは言っても甘く入れば痛打というリスクの大きいコース。だが、決まればまず打たれない。加えてこれを印象付けられれば、バッターの身体は開き気味になる。そうなれば残りの一、二打席で修正することは不可能に近い。逃げ切りを狙う明川バッテリーは、楊のコントロール、特に最大の武器であるストレートを活かすという事で決断した。

 一見強気、攻撃的なリードに思える。だが、試合状況や両チームの戦力差を考えても、1年生相手にリスクを取っている時点で、明川バッテリーには明確な焦りがあった。

 センスの塊と言える降谷とは全く別のタイプ。前日の情報収集の際、4番に座る結城哲也の様な破壊力こそないが、穴らしい穴を見つけられなかったが故の苦し紛れ、半ば逃げに近いネガティブ要素の多い選択だった。

いくらストライクとは言っても、普通の打者なら初球は手を出さないコース。だが、沢村は手を出してファール。二球目もインコースの厳しい所に投げ込まれたボールをファール。

 ノーボールツーストライク。バッテリーにとってはかなり理想に近い追い込み方。三球目は手を出してくれれば儲けものと言わんばかりのボールになるカーブ。これを沢村はピクリともせず見送る。

 ならばと決めに来た、外角低めのストレートには反応してファール。

 カウントはワンボールツーストライク。未だにバッテリー有利だったが、実際にはバッターが土俵際からじりじりと押し返していた。五球目、六球目と楊は負けじと際どい所に投げ込むが、完全に外した一球を除いて、キッチリ振ってファールにする。こうなると審判も何となくバッターよりの目線に傾いてしまう。

 八球目の際どい所をボール。今までピッチャー寄りだった審判が、僅かにバッター側に傾いた。カウントはフルカウント。ノーツーからこの重いカウントまで持ち込まれると、苦しいのはバッテリー。

 九球目。バッテリーが選んだのは、2年間で最も時間を費やしてきた、最大の武器にして生命線である外角低めのストレート。どれ程苦しくても、身体に刻み付けてきたリリースポイントが一直線にミットを射抜く。

 10球投げたら10球同じ所に投げ込む。慣れない異国の環境、肩の消耗、様々な制約を強靭な意思と理性、そして周囲の支えを以てねじ伏せて、ひたすら投げ込んできた。

 沢村はフルカウントとは思えない程、するりとバットを振って左中間に返した。

 100回振って100回同じスイングをする。そんな馬鹿みたいな理論を、愚直な実践と幼馴染の無念を背負って貫いた結果(バッティング)だった。

 二塁上の沢村と目が合った時、マウンドの楊は自然と笑みが零れていた。

 

 繰り返すが青道は勝った。増子も後半には長打が出て打点もあげた。けれど悔しかった。劣勢の時、変に力んで振り回した結果、内野フライに終わってしまった自分が情けなかった。あまりにお粗末なアウト。

 このままでは何も出来ずに夏が終わってしまう。そう思うと居ても立っても居られない。夕飯後、試合の疲れもあるだろうにバットを振り続ける増子を見かねて、倉持と沢村は声をかけた。

 

「増子先輩、次の試合もありますし、そろそろ切り上げましょうよ」

「倉持……、もう少し振らせてくれ」

「スイングは良いと思うんで、あとはいかに集中して打席に立つかじゃないですか? だったらベストな体調で臨めるように休むのもレギュラーの役目っすよ」

「沢村ちゃん……。バッティングはともかく、投げ込み過ぎを注意された人間に言われたくはないぞ」

「うぐっ! いや、だからこそっすよ! 今の増子さん背番号貰った時の俺みたいで……」

 

 慌てる沢村と、静かに問いかけてくる倉持を見て、増子は自分のことを振り返る。確かにルーティンは大事だが、今更新しいことに取り組めるはずもない。次の試合の準備と考えても、今夜の自分は少しばかりやり過ぎかと。

 入れ込み過ぎて自主練まで力んでいる。

 

「沢村ちゃん。あのツーベースの時、何を考えて打席に立ってた?」

「自分ですか? いいピッチャーだなと思ったので、ファーストストライクは絶対振るって思いました。あとは付いていくのに必死で何も考えてませんでした」

「お前、よくそれで打てるな……。狙い球とかねぇのか?」

 

 本気なのは分かるが、どことなく呑気な感想を言う沢村に呆れる倉持。

 

「俺だって網の張り方は変えますよ! ……ただ打席で相手の配球読むほど、頭が良くないのは事実っす。あまり考えると自分のスイングが出来なくなるんで。そう言えば増子先輩、一打席目は全然振れてなかったっすね?」

「あれだけコントロールが良いと、何を狙えば良いか分からなくてな。仮に狙っても、全部ピッチャーに読まれている気もして」

 

 増子が思い浮かべるのはマウンド上の楊の鋭い視線。コントロールが良いからと、初球からいこうとするとボール球を振らされ、一球見るかと思えば簡単にストライクを取ってくる。

 後半、崩れるまで弄ばれているようにも思えた。

 

「別に読まれてて良くないっすか?」

 

 あまりにあっけらかんとした沢村の答え。咄嗟に返答できなかった。増子の心情を知ってか知らずか、沢村は続けて

 

「だって仮にひたすらストレートを待っているバッターに対して、ピッチャーが全球変化球投げるかって話なんすよ。自分はストレートしかないっすけど。キャッチャーはともかく、ピッチャー側はやりたくない配球じゃないですかね? そりゃバッターは自分の読みが当たったら、気持ちいいです。でも「打てるなら良いけど、馬券じゃあるまいし、読みを当てても打てなきゃただの自己満足。だったら余計なことを考えないで、多少のボール球でも打てるくらい集中した方がやりやすくない?」」

 

 「難しく考えても打てるわけじゃない」って若菜に言われました。

 心当たりはあった。たしかにこれでは打たされるだけか。らしくなかった。自分はもっと気持ちで打つタイプだった。

 増子の内面の変化を感じ取った倉持の眉尻が下がった。

 

「やっと笑ってくれましたね。増子先輩」

「気持ちの整理が付いた。心配かけたな」

 

 増子は袖で汗を拭おうとして、Tシャツとジャージが汗で張り付いていることに気が付いた。夏とは言え、あまり身体に良いものではない。

 

「……風呂に入ったら久しぶりにゲームでもするか?」

「おっ、いいっすね。試合前だからって手加減しませんよ」

「じゃあ偶には任〇堂以外もやりましょうよ! モン〇ン2nd Gとかどうです?」

「久しぶりだな。俺はG級前で止まってるが」

「あ~俺、めんどくさくて悪魔ネコ拾ったからちゃんとやってねえんだよな……」

「あれ? もしかしてちゃんとやってたの自分だけっすか? でも久しぶりだしキャリー出来るかな……」

「沢村、装備は?」

「尻尾切る必要がなければ、大体G級ナ〇ガ一式にナル〇ヘビィっす。死ななくてそれなりに火力出るんで。一応、単体クエは一通りソロ討伐できますけど。最初、若菜にキャリーされて作ったんでまぁ。装備も武器もアイツとほとんど同じっすね。キャリーしてた時は若菜はラオート使ってましたけど」

「……意外とゲーマーなんだな。蒼月さんは」

「……ラオートに〇ルガ装備の女師匠と弟子……? どっかで見たような……。あっ」

 

 倉持は何かに気付いたようだった。ちなみに完全な事故である。

 

「モッチー先輩?」

「何でもねえ。久しぶりだから慣らしておくか。沢村、リハビリがてら一狩りしようぜ。……『もんほんの〇ろほん』かよ

 

 

 

 

 

 ~翌日 昼休みの食堂~

 

「栄純くん。蒼月さんにナ〇ガ装備のコスプレさせたって本当?」

「何がどうしてそうなる!?」

 

 真顔で聞いてきた小湊春市に対して、「アイツが着てきたのはド〇キで買ってきたバニースーツだ!」と思わず答えてしまい、食堂の空気が死んだ。

 夜、上級生の前で正座で事情聴取される羽目になった。

 




「あれは失敗だった。ウケ狙いでクリパで着てみたけど、盛り上がるどころか、みんな黙っちゃった」


 個人的にはナ◯ガ装備の方がエ◯いと思ってます。
 今でも新作待ってるんですよ。エ◯装備も増えましたし。
 好きなんです。

 ア◯ムの兄貴が。
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