夜食に薔薇の毒はいかが? 作:キャンディマン
「ただいま」
「おかえり」
「!?」
クレオが所持するセーフティハウスの一つ。独蜘蛛として稼いだ金はマフィアの監視があるので別手段で手に入れたらしい家にポンズはレツと共に向かった。知らない男がいた。あ、いや、知ってた。
「イルミ・ゾルディック!」
「し、知り合い………?」
シャワー室から髪を拭きながら現れた長髪の男、イルミ・ゾルディック。はい、と通信機を渡してくる。
「……なんで、ここに」
「この辺りで仕事があったんだけど、拠点があるって紹介されてね。そのついでに、君が戻るように言ってる場所だから来たら連絡手段を渡しておけって」
独蜘蛛として使う通信機はマフィアの盗聴器が仕込まれている。新しく通信機を買うにも、クレオは流星街の人間。存在しない筈の人間なのだ。ハンターライセンスを取った今通信機器などいくらでも買えるだろうがちょっと忙しいとか言ってた。主に陰獣の座を狙う者達の相手で。
まあ2度目は収束も早い。「ごめん、やっぱ強ぇわ、彼奴」と理解が早いのと、めぼしい実力者は第一次騒動で粗方死んだのだから。とはいえ金と暴力に溢れる裏社会。まあまあの使い手は時折現れる。
「………………」
そんなまあまあの使い手を下し続けている男の弟子が、この女達の訳だが…………キルアよりも才能で劣るのは当然として、そこまで才能があるようにも思えない。クレオの裏技で力に目覚めているのだから成長は早いだけ。よくこの短期間で天空闘技場から戻ってこれたものだと感心してしまう。
「そういえば天空闘技場、キルもいたけど、あった?」
「キル……? あ、ゾルディックって、キルアのお兄さん?」
「そうだよ。君は? キルの新しい友達?」
「うん! あ、はい。友達って、言ってくれました」
「ふ〜ん」
イルミがスッとタオルの隙間から針を出したのをポンズもレツも気付かない。
「キルア、すっごく強くって。念を習ったのもわた……俺より後なのに、凄いですね」
「まあね…………キルは、俺の自慢の弟だからね」
未だ未熟なれど才能はゾルディック家でも最高。イルミやミルキが得られなかったゾルディック家の証たる銀の髪を持つ、天才児。
「………………弟と仲がいいんですか」
「当たり前でしょ」
「うわ」
若干食い気味なイルミに引くポンズ。
イルミは針を気づかれぬ内に隠す。
「イルミさんはクレオ兄さんのお友達ですか?」
「違うよ。俺はキルアと違って友達なんて作る気はないからね」
「本音を言えばキルアにも友達なんて作ってほしくないけど、まあ、まだ小さいからね」という言葉はわざわざ言わない。
「じゃ、俺はターゲットが来る3日後に出て、そのまま次の依頼に向かうから、それまでうるさくしないでね」
イルミはそのままキッチンに向かった。
陰獣。
十老頭の懐刀。その仕事は様々だ。主に武力だが。
十老頭に属さないマフィアの相手などもする。カキン王国とか。
以前変な女に一緒に世界を滅ぼしましょうとか誘われたっけ。マフィア成り立てで、少女の仇と同じ存在になりながら仇の影も掴めず苛ついていた頃の話だが。
唐突で突拍子もない言葉に苛立ちも吹き飛びまた今度な、と別れたが今どうしているのだろうか。遠くから見ていることしかできなかった『あの時』のクロロを思い出して見逃してしまったが、やっぱ殺しとけばよかっただろうか。
『おい、独蜘蛛。そっちは?』
「何人か逃げてくる奴がいたが、まあ全員対処した」
元はただのチンピラだったが、暴力による支配の手っ取り早さを覚え力を求め力に酔いこの土地のマフィアに手を出した元半グレの武装集団。リーダーがイカれてたな。どこで目覚めたか知らないが念で作った刃物で相手を刺して死ぬか念に目覚めさせる放出と変化を程よくハイブリッドした発の使い手。それ自体はオーラで攻撃する天空闘技場の洗礼のようなものだから容量も圧迫せず、本人は自分の系統である強化を鍛える。
まあ、それでも独学。自分の系統を偶然鍛えてこそいたがただただオーラを練って強化するだけ。銃で撃てばリーダー以外は普通に殺せた。問題は、その過程でマフィア側にも犠牲者が出たこと。
調子に乗らねえよう徹底的に潰せと命が来た。
実際リーダーがいる限り何度でも再起の芽があるわけだし。
友人家族も調べ上げて殺せ、とのことだ。自分は別に死んでもいいと極まった奴も家族や友を殺されるのは嫌がったりするし、そうでなくともそこまで狂いきってない奴等への牽制。徹底的に追い詰め何処までも追いかけ嬲り弄り殺す。
まあ、そこまでは陰獣の仕事では無いのが。
陰獣の仕事は実力者の排除。梟のような特殊な念を使う場合は他の仕事もあるが。
「じゃ、念能力者の死体は貰うな」
『…………いい趣味とはいえねぇなあ』
「お前の雇い主がその趣味だろ」
独蜘蛛の主は自分でやらず映像や光景を眺めたいタイプ。電話の相手、蛭の主は自分でやりたいタイプ。蛭が体内に飼ってる蛭の毒や卵を態々取り出して自分で入れたりする。
「蛭の種類を思えば、性格の合う主らしいな」
『グシュシュ。それこそお互い様だろう?』
独蜘蛛は『念で具現化した毒蟲を操る具現化系』という認識だ。そういう風に見せている。
具現化した多種多様な毒蟲で肉を少しずつ食いちぎったり毒で犯したり。蛭は仲間意識でもあるのかよくお勧めの寄生蛭を教えてくれる。
「あ、俺このあたりで用事あるから先に帰っててくれ」
『そうか? まあ、いい。残党処理までは俺達の仕事じゃないが見つけたなら好きにしな』
通信がキレた。
(さて、サラサの『動画』買ってあの屑どもに小遣いやったクソ野郎の住処はこの近くだったな………)
因みに孤児院を経営している資産家だ。都合が良いんだろうな、作品のあてを見つけるのに。ただあまりやりすぎると怪しまれる。だから発散したくなった時、足のつかない流星街に赴いたのだろう。
(徹底報復が始まってからは頻度も減ったらしいが………)
まあ流星街の連中なんて友達二人以外はどんな死に方しようが知ったことではないが、その二人のために守るのがクレオという男。
恩を返したいというキリコの大人達に周辺を監視してもらい、未だ流星街に手を出す輩を事前に殺す。
それもそろそろ終わりが近いだろう。蜘蛛とか呼ばれる盗賊団が流星街の出身らしい。まだ一部にしか知られてないが、クラピカの件でクルタ族について調べて分かった事だ。
流星街の報復の際の文言。『我々は何ものも拒まない。だから我々から何も奪うな』。まあ、好かん。奪うくせに奪われたくないと、よくもまあほざくものだ。
蜘蛛以外が使うぶんには同意してやるがクルタ族に関しては金のため。事実緋の眼は大量に闇に流れたし、緋の眼を得る為に緋の眼を持たぬ死んでもいい嫁いできた者達を目の前で苦しめ殺す。
その『劇場』は、サラサの死に場所によく似ていた事だろう。
「……………ついた」
考え事をしていると標的の住む屋敷が見えてきた。
子供達を楽しませる庭内遊園地が見える。金のかかったことで。
円を発動。ガスを媒介にした円と異なり凝は使えないしパフォーマンスも落ちる。それでも半径100メートルという、円使いでも上位の範囲。というか円を使える奴がそもそも少ないのだが。
「子供はいねぇな…………」
さて、クレオは独蜘蛛として具現化系を偽っている。実際は毒ガスの形を変えているだけの操作系能力を使う放出系な訳だが。
とはいえ殺し方を変えた程度で独蜘蛛が訪れた場所で出た死者を怪しむなという方がおかしな話である。
なので、バレないために他人の技を借りる。それも有名であればあるほど良い。
龍が落ちれば人が死ぬ。裏社会に生き念を扱う者の全てでなくとも、相応の地位にいるならよく知っている決まり事。
クレオは、念空間だのと複雑でない放出系の技は見れば使える。考え、組み立て、錬磨する工程はなく、完成した絵を真似るのとさして変わらぬそれは別段
ま、早い話才能である。原石大好き、錬磨大好きな少女のフリするくせにガキ扱いにキレる理不尽な師も目を輝かせる、とても頑張って探せばまあ見つかるかもしれない至高の原石。それがクレオである。
(帰ってカタヅケンジャーの映画でも見るか…………)
因みにクレオは読書しながら手持ち無沙汰にイボクリやったりする。ペン回しみたいなもんだからね。