「お前今私のことス○トロつったか?」
「言ってな……言ったよ♦︎」
「殺す」
「❤︎」
男の名はカストロ。
彼は特別な血筋の生まれではなかった。
強いて言うなら柔和な笑顔がよく似合うサラサラ髪の美少年で、女の子に非常によくモテた。そういう意味では特別と言えるかもしれない。
しかし彼は凶悪盗賊団の創設メンバーとして名を連ねるような流星街などの生まれではないし、伝説の暗殺一家とやらの生まれでもない。
出生については、親がすでに死んでいることを除けばおおむね極々平凡な少年だったと言って相違ないだろう。
そんな平凡な人生を送っていたカストロ少年に、ある転機が訪れる。
地元ではほぼ知らぬ者のいない程のイケメンとして、同級生も年下の女の子も年上のお姉さんもゴミ出しで顔を合わせる近所の人妻も、果てはヨボヨボのババアにさえ大変よくモテたカストロ少年は、反面男性……とくに歳の近い男子からは大層よく嫌われていた。
やれバカだのアホだのうざい長髪切れウンコだの言われ、追っかけの女性達にバレない程度のあらゆる嫌がらせを受けていた彼は、ある日一足先にエッチなビデオを観て性知識をぐーんとつけるタイプのませたエロガキにこう罵倒されたのである。
「このス◯トロ野郎!」
カストロ少年にとってこの程度の暴言は茶飯事であった。これしきで落ち込んだりはしない。
しかしわずか10歳の純粋無垢なカストロ少年には罵倒の意味が全くわからない。
わからないながらも、聞き慣れない言葉の意味が気になった彼は生来の真面目さからその言葉を調べてみることにした。
本棚にある辞典には記載がない。
「おや?」と首を傾げるも、すぐに「ははぁ、これは
「ヴォエ!!!!!!!」
オエ゛────ッッ!! オ゛ッ!! ヴォ!! ヴォア!!!!
親の遺産で勉強用にと買っておいたままの、チャイルドセーフティなど無縁のPCによって出力された画像の数々を見て、彼は吐瀉物を撒き散らしながらのたうち回った。
衝撃。困惑。脳機能が処理を拒絶する初めての経験は、無垢な少年を容易く絶望の底へと突き落とす。
吐瀉物にまみれ嗚咽を繰り返しながら、カストロ少年は心の奥底に暗く強く澱んでいく怒りと共に、決意した。
ぶっ殺してやる。
カストロ少年の怒りはそれまでの周囲からの嫌がらせ全てを燃料にしたかのように激しく燃え上がった。
彼はまず「健全な精神を育むために」と打ち込んでいた心源流拳法の技を存分に用いてくだんの罵倒をかましたクソガキをボコった。
道場の先生から「三日目にして私が教える事が無くなった」と言わしめたほどの空前絶後の才を以て殴る蹴る等の暴行を加えられたガキは、ポップコーンの様に顔が膨れ上がった。
「
ペッ、ボケが。
顔面のパーツがまともに見つけられないほどボコボコに腫れ上がったガキをぽいと投げ捨て唾を吐きつけた後、カストロは今まで封じ込めていた正直な心にまっすぐに従って次の標的へ向けて歩き出す。
——そう、ムカつくやつはボコれば良いのだ。自分は何を今まで良い子ちゃんを演じていたというのか!
トラウマとも言える出来事に堪忍袋の緒がプツリと吹っ切れたカストロ少年は、ジャポンで流行った漫画の主人公の様に、おだやかな心をもちながらはげしい怒りによって伝説の戦士へと目覚めたのだ!
そうして悪い奴も悪くない奴もウザければシメまくり、瞬く間に地元のドンへと化したカストロ少年は、しかしすぐに問題にぶち当たる。
極めて不本意ながらカストロの方が悪と判断されて少年院にぶち込まれそうになったりしたのである。
めんどくさいなあ、と考えながら楯突いてきた地元一番のストリートギャングを足で小突きながら悩んでいると、まるで雷に撃たれたようにカストロ少年の頭に天啓が奔った。
そうだ、ハンターになろう。
場合によっては一国の大統領クラスの社会的地位や権限を持つ事さえあるというプロハンターにになれれば、ムカつく奴をどれだけぶちのめしてもお咎めなし、金もガッポガッポでウハウハ、女の子にも今以上にモテモテになれるに違いない。
そうと決まれば話は早い。
善は急げとばかりに、カストロ少年は意気揚々と歩き出すのだった。
……と、そうして街を出たのも今は昔。
ハンター試験に合格したは良いものの、合格者講習会で睡眠学習をキメたせいで再発行可と思い込んだライセンスを適当に売った金を競馬でスッたカストロは、その後は
天空闘技場は手っ取り早く金を稼げるが、諸々の福利厚生がそりゃもう面倒であった。
一度だけ200階に上がったものの、個室付きだがファイトマネーが無く論外なのでリタイア。
230階以上のフロアマスターは1階層丸ごと自分の物になる上にスポンサー契約や自身の流派の看板を貸し出したりして稼げはするものの、諸々の手続きやバトルオリンピアへの参加義務、面倒くさい実力者に目をつけられがちと色々だるいのでそこまで魅力を感じない。
その一方で150〜190階は抽選での強制マッチングは面倒くさいが相手は雑魚ばかり、更に個室付きで1000万ジェニー以上のファイトマネーなど、カストロとしては楽に金を稼げるという事で、彼はその辺りを勝ったりわざと負けたりして主な生息地としているのである。
「ん……なあに、試合?」
「ああ、君はゆっくりおやすみ、レディ」
ベッドで寝ているその辺で引っ掛けた女の頬へキスを落とし、カストロは今日も今日とて日銭を稼ぎに闘技場へと向かう。
あくびをしながらリングに上がると、常に最高潮のテンションで怒鳴り散らす観客席からこの日一番の怒号が上がった。
「死ね!!」
「やる気あんのかテメェ!!」
「さっさと200階上がれボケ!」
「わざと負けんのやめろハゲ!!」
「死ね!!」
「バーカ! バーカ!! バーカ!!!」
「受付のお姉さんに色目使ってんじゃねえダボ!!」
「俺の彼女返せゴラァ!!」
「死ね!!」
「おいカス! どの受付のお姉さんが一番好き!?」
「くたばれウンコ野郎!」
全くもって事実無根である。ひどい言い掛かりだ。
カストロはこの程度の理解不能な罵詈雑言には慣れているが、とりあえず最後の奴はボコボコにしようと決めた。必ずだ。
あとカストロ的には200階の受付のお姉さんが好みである。
「…………っ!」
「ん?」
久しぶりに200階のお姉さんを食事に誘ってみようかと考えていると、なんだか対戦相手の白髪の少年がビビっていた。
(フム……初心者か)
見たところ念は使えないようだが力量差はよく分かっているようで、かなり腰が引けている。少年がごくりと喉を鳴らす音がカストロの耳にも届くほどだ。
格下を甚振る趣味は無いが、ぼろい試合を放棄するつもりもない。
「恨むなよ、少年」
「っ!!」
ゆら、とカストロが軽く構えを取ると、少年はぞくりと肌を粟立たせて飛び退る。飛び退りすぎて場外まで出ていた。その後、少年は静かに審判へ棄権を告げた。
(えぇ……)
天空闘技場に来て数年経つが、流石に初めての勝ち方をしたカストロは困惑しながらリングを降りる。
「大人気ねーんだよハゲ!!」
「バーカ!!」
「死ね!!!」
「ガキ虐めて金稼いでんじゃねえクソボケ!!」
「ウンコハゲ!!」
空き缶や丸めた紙ごみが投げ込まれる凄まじいブーイングへ中指を立てながら、カストロは白髪の少年を見やった。
少年の様子は、自身の行動に対する困惑と
まあ見たところ筋は良さそうだし念の覚えも早いんじゃないの、知らんけど。
武術家の端くれとして今後が楽しみな少年ではあるが、リングを降りる頃には既にカストロの興味は受付のお姉さんをどう食事に誘うかに移っていた。
—————————
「そんなに強かったの? そのカストロって人」
「ああ、兄貴やヒソカみたいなスゲー嫌な感じがした。あの二人ほど禍々しくはなかったけどさ」
ゴンの問いかけにキルアは先日相対した男の圧倒的な闘気が脳裏によぎり、ごくりと喉を鳴らした。
威圧感では
「今思えば、あれがあいつの
納得がいったように呟くキルアの目には、自身とゴンの身体を覆う白い靄のようなエネルギーがはっきりと写っていた。
二人の肉体の裡から蒸気や湯気のように湧き出すそのエネルギーは、今キルアら自身の意志と感覚の力によってその身体の周囲をゆっくりと、しかし濃く、強く沈澱するように滞留していた。
現在のゴンとキルアは紆余曲折を経て念能力の存在を知り、その力を磨くため修練に励んでいる最中だった。
(くそ……自分でオーラを操れるようになってよく分かるぜ)
キルアは思う。
あの日、オーラを纏わずに念能力者の前に立った自身の無謀。
(そして、カストロの力量……!!)
更に
「おや、キルア君はカストロと試合を?」
「それは……お疲れさまっす」
カストロという頂上すら把握できない山を見上げてキルアが途方に暮れていると、それまで二人とともに
胴着の少年、ズシと眼鏡の男ウイングはまさにゴンとキルアが
「まーすぐ負けちったけどね。てゆーかウイングさん、
「……彼は
キルアの言葉にウイングはページを捲る指を止め、やや答えあぐねたように茶を濁した。
「どういうこと?」
「カストロさんは基本的に優しい人っすけど、その……女性に少しだらしなかったり、初心者との試合でファイトマネーを毟ったりしてるので、その、『初心者狩り』なんて呼ばれちゃってるっす」
「正確には『雑魚狩りのカス』ね」
「そ、そこはオブラートに包んでおいたっす……」
「うーわ」
椅子に腰掛け備え付けのテレビを付けたウイングは、「それに……」と付け加え、画面に映った地域のローカル放送局のニュース番組を指差した。
「ほら」
画面のテロップには『カストロ氏、異例の強制
————————————————
『今回の措置の経緯はどういった事情があるのでしょうか』
『カストロ選手は一度無敗で200階へ到達しており、既に相応の実力は十分にあると認識しています。 その上で彼は不戦敗や明らかに消極的な試合運びでの故意の負けと思われる試合により150〜190階に留まっており、我々運営は氏のこの行為を意図的な階数調整と判断しました。 明らかに200階以上の実力を有する選手によるこの階層でのこういった調整行為は、健全な試合運営や私どもの提供するべッティングサービスに悪影響を及ぼすとの見解に至ったため、今回の措置に踏み切りました』
『なるほどー。 えー尚、この措置に対しカストロ選手は「極めて遺憾です」との事です』
————————————————
「ね?」
「しょーもない事してんのな……」
「そっか、200階ってファイトマネー無いんだっけ」
類稀な強者の意外と俗物的な一面を見た事でやや拍子抜けした様子のキルア達。そして最後に、画面の中のキャスターはこう続けた。
『カストロ選手二度目の200階到達。 その最初の試合は、唯一同氏と200階での試合経験のあるヒソカ氏とのリベンジマッチとなる予定です。 以上、今日の天空闘技場ニュースでしたー!』
—————————
『さあア────ァ遂にこの日がやってきましたアアアァァ──────!!!!』
『お互い「いつになったら本気で闘るんだ」と言われ続けてはや数年!!』
『方やノらない相手は興味ナシ!! しかし一度リングに上がれば鼻歌まじりの蹂躙ショー!! こいつの
『方や小銭稼ぎにしか興味ナシ!! ただしこの
天空闘技場。
飛び交う怒号、耳障りな実況。
「あらゆる武器の使用は認められます」
間に立つ審判の声さえ意に介さず、向かい合う二人の闘士は異なる風情をその貌に湛えていた。
「嬉しいよ♣︎ やっとボクと
「いやクソ運営が勝手に組んだだけだが」
方や微笑み。
方や苦虫を噛み潰した様な嫌悪感を隠そうともしない。
切っ掛けは二年前。
当時からその実力を以て小銭稼ぎをしていたカストロに目をつけたヒソカとの初試合にまで遡る。
女を口説く際の猫かぶりで鍛えた演技力で格下相手にそこそこの接戦を演じてきたカストロに対し
————ああ、そんな❤︎ 青い果実だと思っていたのに、もうとっくに熟れてるじゃないか……!!
百聞は一見にしかず、百見は一打にしかず。
いくらカストロの演技といえど、ヒソカが相手ではその実力の程を僅か一合で見破られてしまったのである。
そして、同様の思いはカストロにもあった。
————こいつ、
結局試合はヒソカへの生理的嫌悪感と階数調整を目論んだカストロが、ヒソカの攻撃をこれ幸いとばかりに場外まで吹き飛びポイントを与えた事で10P先取によりヒソカの勝利。
以降カストロはヒソカのアプローチをのらりくらりと躱し続けていた…………
…………が。
「焦がれていたよ❤︎……この
どろり、とねばついたオーラがヒソカの身体から吹き出した。
「うーわ」
それはヒソカという生き物から分泌される体液の様であり、そのオーラのゆらぎはヒソカが湛える恍惚とした笑みと相まってピクピクと蠕動しているようにカストロは感じた。
「……まあ、良い機会だ」
ようやくこの闘いが不可避であるという現実を受け入れたか、カストロの身体にオーラが満ち始める。
「嫌な用事は早く終わらせるに限る」
ピタ、と定まるオーラ。
まるで彫刻の様に、実像さえ感じられる密度でカストロを覆う練り上げられた
「…………❤︎」
「精々死ぬまで——」
ぞくぞく、と深まるヒソカの笑みと共に悍ましいオーラの揺らぎが大きくなった時。
『「互いにッ誇りと名誉をかけてッッ』」
互いの闘志の昂ぶりを察知したか、実況と審判の絶叫が
「ファ『試合開始イイィィ────!!!!』」
瞬間。
「——踊っていろ、
「!!」
(速い!? いや、間違いなくカストロは前方!! これは……!!)
「ダブル……!」
「「正解」」
カストロ
それぞれが会話さえ可能とする
二人のカストロを視界に収めるように飛び退ったヒソカに対し、カストロ達が続けて口を開く。
「「半分はな」」
「!!」
唸りをあげて背後から放たれた上段蹴りを屈んで回避すると、ヒソカは再度三人のカストロを視界に収めるために舞台の端へ陣取った。
(やはり……! 試合前から
二度目の奇襲を凌いだヒソカに、ち、と小さく舌打ちを漏らしたカストロは「悪いな」と前置きして言った。まるで悪びれもせずに。
「「「
三人分の声が重なる。
分身の上限は、おそらく三体に留まらない。
熱狂し、怒号をあげる観客の中にあとどれだけ分身が隠れているのか。360°上下左右、一瞬でも気を抜けば命取りになり得る。
その現状を認識しながらも、ヒソカは冷静だった。
(かなり精巧な
否。冴えているのは、思考のみ。
(低性能の
努めて冷静に戦闘論理を組み立てていくヒソカの脳細胞とは裏腹に、
(あぁ……素晴らしい……❤︎)
熱く煮えたぎる、
いずれにせよ、退屈はするまい。
自然と上がる口角を自覚したヒソカは、粘ついたオーラと殺気をその身に纏わせてカストロへと踏み込んだ。
—————————
そのころ、とある美食家達の集う高級ホテルのホールの隅に「カストロ」はいた。
「さあメンチさん、こちらがあのグァララワニの肉……の鑑定書と納品書です。数日中には貴女の下へ届くでしょう」
「ウッソ、ホントに!? 並のハンターなら7人がかりでやっとの獲物を……」
「周囲の生態系を崩壊させるほど暴れていたので已むなく仕留めるほかありませんでした」
「でも、どうして? あたしに」
「せめて、最も命の味の有り難みを心得る方に渡る事が供養と考えました。餅は餅屋、良い食材は良いグルメハンターの舌へ渡らねば」
「……あなたの事、ただの軟派な優男だと思っていたこと、謝るわ」
「間違っていませんよ……貴女に対しては」
「調子の良いことを……まぁいいわ、せっかくなら一緒に食べましょ。あなたとグァララワニに感謝して、あたしが腕によりをかけて最高の一皿を作ってあげる」
——もちろんカストロの
——ヒソカが対する
そのころ、とある養蜂場に「カストロ」はいた。
「このコ達がこんなに警戒するなんて初めて……お客さん、あなた一体何者なの?」
「蜂を操る操作系念能力……良い能力ですがお嬢さん、貴女もプロハンターであれば無闇な行使はお控えなさい。(美少女が作っているという)はちみつを買いに来ただけなのにぶんぶん耳元で鬱陶しい」
「ソウサ? ネンノウ……? 何の話? このコ達は私の友達だよ。私の声を聞いてくれるの」
「は?」
「それに私、プロじゃないよ。こないだの試験落ちちゃったもん」
「は?」
「ほんとだよ。あーあ、合格したかったなぁ」
「——お嬢さん。私が貴女を合格させよう」
「え?」
「貴女の才能を放っておくのはあまりに勿体ない。貴女は第二のクルックさんになれる。女の子の弟子欲しかったし」
「え? ちょ、ちょっと何?」
——カストロと全く同じ容姿の
【
——ただし ! そのクオリティと操作性の代償として
——更に
——その極めて危険な
——しかしカストロはこの能力こそが自分に最も適していると確信する ! !
そのころ、とある研究所に「カストロ」はいた。
「サンビカ女史、こちらはアイジエン大陸最北端の流氷帯で発見された光る流氷、そのサンプルです。国際防疫機関にも強い影響力を持つ貴女であれば当然、加盟国からのパイプにより聞き及んでいるはず」
「えっ、そんなまさか」
「そう。暗黒大陸由来の細菌、ウィルスや微生物が採取できる可能性が
「わ、わぁ……すごい……でも、ど、どうしてわざわざ、こんな……」
「貴女が世界で一番これを役立てて下さる。私はそう確信しています。そんな貴女の手に渡る前に各国に掠め取られるのは、私には我慢出来なかった……」
「カストロ、さん……」
——カストロはこの能力を使い複数の女性を同時に口説いていた ! !
——一歩間違えれば全ての女性を同時に敵に回しかねない危険な賭け ! !
——しかし
そのころ、とある豪邸の一室に「カストロ」はいた。
「愛くるしい我が師、ビスケット……フフ、改めて考えればストーンハンターとは何という皮肉でしょう、世界中のどこを探しても貴女以上の美しい宝石など見つかるハズもないというのに……」
「イヤぁ〜〜〜〜ン♡♡♡ ちょっとだめよォ♡ アタシ達、師弟でこんな、こんな……♡♡♡ 」
「ダメ? 何がダメなのです」
「あっ……♡ 」
「華奢で嫋やかな指……裡に秘めるゴリ、女騎士のような凛々しく美しい力強さの一方で、今の貴女はまるでか弱い姫君ではありませんか」
「はうっ♡ 」
「貴女自身の御意思で拒まれるのならば諦めましょう。しかし道徳や常識などという言葉で私を遠ざけようと言うのならば無駄です、可憐なる師ビスケット……私は、そんなものより貴女が欲しい」
「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♡♡♡♡♡♡ 」
——全ては
——より多くの女と関係を持つため ! ! !
——カストロの 執念 ! ! ! !
—————————
「「「「「失礼、レディ。少し雉を撃ちに……」」」」」
——その時、世界中に散らばり女を口説いていた「カストロ」たちが急に席を立った。
彼らは手近な物陰に身を隠し、壁や床に
「ちょっとぉー、いいとこだったのにどこ行くってのよさ」
彼の師だけは、お楽しみの時間を邪魔された事に不機嫌な声を隠さなかったが、それは同時に彼女が
「すみません、
「……ま、んならしゃーないわさ」
腰に手を当てて、フンと一つ息をついた少女は、先ほどまでのデロデロに蕩けた顔が嘘の様に師としての威厳に満ちていた。
「さっさと終わらせといで」
彼女がいなければ、今遠い地でヒソカと対峙する本体は死んでいたかもしれない。
現在の自分の武と念の全てを形作った大恩人にカストロは跪き、彼女の白魚のような手を取るとその甲に一つ口づけを落とした。
「無論です……我が姫よ」
「ンこれこれぇ〜〜〜〜♡♡♡♡ 」
途端に威厳に満ちた顔が嘘の様にデロデロにとろけ始めた師に背を向け、
「カストロ!」
その背に、少女が声を掛けた。
カストロは応えない。念文字はオーラ以上に多大な集中力と精度が求められる。
本来その集中を阻害するはずの雑音。しかしカストロは不快には感じなかった。
「誰が相手か知んないけど、勝っといで」
師の声を聞いていると、
カストロは依然振り返らず、その身体が足先から空気に溶ける様に消えていく。
「仰せのままに……いえ」
完全に消え去る直前。
修行時代を思い出しながら、丹田に力を込めてカストロは気を吐いた。
「押忍」
—————————
「いい加減お前の相手もうんざりだ」
ベッ、と口内の血を吐き捨ててカストロが呟いた。
既にリングの石板はところどころひび割れ捲れ上がり、カストロ、ヒソカ共に満身創痍とはいかないまでも少なくない傷がその全身に見てとれる。
「もともと
そう言うと、リング端の壁で
世界中に散らばったカストロの念がいま、本体の下へ帰る。還る。
カストロのオーラが爆発的な勢いで
「まだまだ、これからって感じだね……❤︎」
口元の血を拭いながらヒソカが応じた。
熱い。カストロのオーラが増大していくにつれて闘技場全体が熱に包まれていく様だ。
ズキズキと心地良い猛りを楽しみながら、ヒソカは笑った。
「私が闘いの為に編み出した能力は一つだけ」
ざり、とカストロが構える。
両の手を鉤爪、否、まるで牙の如く。
指を覆うオーラがあまりの密度に耐えかねたかの様に振動し、生じた音はまさに猛獣の呼気を思わせた。
「その身、その肉で
「——虎咬拳」
能力名は完全にやってますが割と冨樫っぽくて気に入ってます。元ネタに感謝。