天使セイナと天使ゴウガの襲撃後、あかば達は壊されてしまった街を修復しようとしていた。
「街が・・・こんなに壊れて・・・」
あかばの眼前に広がるのは、崩れた高層ビル、勢いよく空へと広がる黒い煙、それの元である大火事。その光景すべてが、あかばにとっての辛い過去を思い出させる。
―――脳裏に蘇るあの光景、自分の住む家、綺麗で広い道、笑顔溢れる公園。あかばがずっと見てきた、幸せな光景。それが"一瞬で流されてしまった"という事実。そう、あかばの住んでいた世界は、突如として大洪水に、その幸せごと飲み込まれてしまったのだ。
―――目の前に広がるのは、波ではない。でも、絶望を経験したあかばにとっては、別のものだとは到底思えなかったのだ。
「あの・・・さろあさんの力で、どうにかできないでしょうか!何か・・・何かありませんか!!」
迫真の表情でさろあに訴えかける。自分と同じ境遇になってしまうかもしれない世界の事を、あかばは見過ごせなかった。だから必死の思いでさろあに頼るのだ。
「・・・ああ、俺もそのつもりだ。・・・すまんな、お前にこんな光景、もう一度見せてしまった自分が情けない」
そうしてさろあが右手を正面にかざし、何か能力を使おうとした・・・その時だった。
―――お待ちください!
二人がその声に振り向く。その声の正体はダインだった。何か伝えようとしているようで、その目には確信に近い何かが宿っている。
「さろあさんのお手を煩わせなくとも、この光景を再び戻す方法があるのです!」
方法がある。確かにダインはそう言ったのだ。驚くあかばとさろあ。ダインは言葉を続ける。
「この世界は、科学含め、様々な力のおかげで進化を続けてくることが出来ました!その為、このような街が崩壊するようなケースも、無論想定されております!そろそろですぞ!見ていてくだされ!」
ダインの言葉と共に、あかばとさろあはダインの方を見て待機する。一体何が起こるのだろうか。
―――ブウゥゥゥゥゥン!!
街全体に響く轟音と共に、まるで空間が歪んでいるかのような感覚を味わう。
「な、何ですかこれ!?」
「この空間の質の変化・・・まさか」
あかばとさろあの目が見開かれるような驚きの声を上げる。次の瞬間、街中に転がり落ちている建物の残骸、その全てが逆再生していく。立ち昇る炎は消え、崩れていた建物は直っていったのだ。
「驚いたでしょう?これはこの世界の技術を使った修復プログラムですぞ。この世界に住む我々は、これまで数多の災害を経験してまいりました。その為、街が半壊しても立ち直れるように、技術を集結させて、保存された建物や地形の構造を物質等の力によって再生させるプログラムを完成させたのですぞ」
ダインの説明は、これまで生きてきた誇りのようなものを感じさせる。そしてダインはこう続けた。
「もうこれ以上、さろあさんには頼れませんからのぉ。今までこれでもかというくらいに助けてもらって・・・だから今ここで、心配をかけさせたくなかったのです。安心してください、我々はもう大丈夫です。これからは、良き友として、関係を築けたらと思っております」
その言葉を聞いたさろあは、うっすらと安堵の笑みを浮かべているようだった。
「そうか、お前達も自分の歩く道は自分で作り出す覚悟を持っているんだな。分かった、もう何も手を加えることはないさ・・・でも、今度は友達として、困った時は助けることにするよ」
温かいさろあの言葉に、ダインは涙して感謝をした。きっとこれからもこの世界、『カギリナシ』は自分たちだけで上手くやっていけるだろう。同時に、あかばもこの世界が壊れなくて良かったと表情を和らげた。
こうして天使によって壊された街の修復は無事に完了した。他でもない自分たちの技術によって。
―――それから三日後、あかばとさろあが街から離れた丘の上、最初にこの世界に来た時の丘の上で、カギリナシでの出来事を振り返っていた。ちなみにダインは集落に戻り、今後の事をしっかりと考えていくそうで、今回はもう会えなさそうだ。
「なぁあかば、お前今回で出来ることが増えたんじゃないか。『
さろあの言葉で実感が湧いてきたようだ。確かにこのカギリナシでの戦いで、あかばは回復という重要な力を手に入れた。でもそれは、まだ敵を倒す手段が増えていない事も同時に実感させる。
「あの、さろあさん。僕はもっと強くなりたいです!また剣術の稽古をつけてください!」
やる気は万全のようだが、さろあは修行をつけようとしなかった。
「お前に教えた剣の技術は、とっくに完成されてるぞ。後はお前の動体視力とか、そこらへんの訓練だけなんだ。今度はそっちの修行をつけてやる」
剣術ではなく、心身を強化するというさろあの考えにより、その場で新しい修業が始まった。あかばは緊張するも、やる気はまだまだ万全だ。
「それじゃあまずは・・・目の訓練からだな。今から説明するから、よく聞くんだぞ」
さろあが始める、目の訓練。それは、さろあが出現させた水の泡を高速で動かし、それをひたすら目で追い、偶にあかばの顔目掛けて飛んでくるのを回避するというものだった。初めは少し早い程度だった。それこそ一般の人間でも集中すれば目で追えるくらいだ。
「うわぁっ!?」
でもやっていくにつれ、どんどん水の泡の速度が速くなってくる。顔に冷たい水が勢いよく当たってしまう。しかし、めげずに何度もやって、以前よりも動体視力は上がったのだ。
「はぁ・・・はぁ・・・」
二時間もすれば、一般人よりも僅かにだが目で追える速度が上がった。これで今までよりも少しは強い敵と戦えるようになったと思うあかば、でもセイナの動きはもっと速かったと感じているのだ。
「あの、さろあさん。もっと訓練お願いします!もっともっと強くなりたいんです!」
「よし分かった。じゃあ目の訓練も追加だが、その次は柔軟や力の出し方の訓練もやるか」
そしてこれから、あかばの強化修行が始まる。いつかさろあと隣に立ちたいと願って。