天使ムクロ襲来の次の日、さなぎ村には再び平穏が訪れた。変わらぬ日々に戻っていく村人の中に、まだあの二人、あかばとさろあが残っていた。そして真琴含め三人で話していた。
「昨日のことだが、やはり申し訳ない...」
そう言うのはさろあだ。村の人々は何も気にしていないのだが、さろあはそれでも少しの申し訳なさが残るようだ。
「いいんですよ、そんなことより、あかばさんの事ですよ」
真琴はさろあの罪悪感を拭うように、気にしていない様子で話を変える。真琴は昨日の天使ムクロ襲来の時、さろあが村の外周を守る中、村人の安全と防衛に全力を注いでいた影の貢献者だった。それと同時に、あかばの戦いを見ていたのである。
「あかばさん、あんなに強かったんですね?」
驚きを見せながら真琴があかばを称賛する。しかし、あかばはそれを自慢するわけでもなかった。
「この村で、真琴さんが僕の能力を引き出してくれたお陰ですよ。これが無ければきっと...勝てませんでしたから」
あかばは右手を強く握りしめ、己の未熟さを実感しているのだ。能力を使わなければ勝てなかったという事は、まだまだ肉体の力が不足している。ムクロとの戦いの中で、そう実感したのだろう。
しかし、真琴はあかばの言葉を否定し、そして励ました。
「あかばさん、その能力も、あなたの立派な力ですよ。受け入れ、もっと能力と向き合うことで、あなたは更に強くなる...そう思います」
その言葉を聞いたあかばは、全て受け入れることはできなかった。ただ、真琴から勇気とヒントを貰えたのは事実だ。
少し重くなってしまった雰囲気の中、口を開く人物がいた。それは、あかばの戦いを目撃できなかった人物でもある、さろあであった。
「なぁ、アイツと戦った時、何か違和感はなかったか?」
あかばは、聞かれた瞬間はいまいちピンとこなかった。でも、少しずつ思い出していく上で、徐々に浮かんできたことがあった。
「あの...そういえばあの時、能力を使っている時に、何か詠唱のようなものを言っていました。確か..."
その返答を聞いたさろあは、一瞬考え込む素振りを見せる。
「なるほど...
「あかば、お前には言っていなかったがな、能力には種類があるんだ」
その事実は衝撃だった。それを言われたあかばだけでなく、隣で聞いていた真琴も驚いていた。
「能力に...種類ですか?それはどういう?」
先に質問したのは真琴だった。まだ全く知らない能力の情報に興味を持ったのだろう。真琴の質問に、さろあはゆっくりと解説し始める。
「能力は現状、三種類あるんだ。その一つが、
さろあの解説に、真琴は一部頷く。
「そうですね、この村でも、私を含めて全ての人が詠唱をして能力を使います。でもそれは、その人の能力次第で出来ることが決まっていますが...」
真琴は、自分が今知っている事を分かりやすく説明してくれていた。しかしこれは、まだこの村では常識の範囲内だった。
「ああ、
その指摘に、あかばはぴくんと肩を震わせ、真琴は首を傾げた。
「あかばさん、それは本当なのですか?」
真琴からの純粋な眼差しを浴びせられ、あかばはこくりと頷いた。
「はい、僕は能力を使う時、
あかばの感覚的な説明は、真琴を驚かせるには十分だったが、さろあは驚いていないようだ。
「ああ、実は
それを聞いて二人が驚いたのは言うまでもないだろう。
「す、凄いじゃないですか!そんなこと、聞いたこともなかったです!」
真琴がさろあに対して、驚きと歓喜の声を上げる。それと同時に、あかばも疑問が解けたように頷く。
「なるほど...じゃあ僕は、できるだけ詠唱しない方がいいんですか?」
あかばの疑問を聞いたさろあが、首を横に振って否定する。
「確かに詠唱しなくても良いんだが...詠唱しておく習慣を身に着けておくと、後から
さろあからのアドバイスに、あかばは素直に頷く
「分かりました。今の内から慣れておきます!」
あかばは、まるで新しい修業が増えたような感覚で、頑張るぞと心の中で意気込んでいた。
「ええ、それが良いと思いますよ。中には、
どうやら、まだまだあかばの知らないことが沢山あるようだ。
―――こうして、さろあによる能力の種類解説は一旦終わりとなった。真琴は村の作業に戻り、さろあも少し手伝いに向かった。そしてあかばも、さろあの背中を追うように村の仕事の手伝いをするのであった。