亡き神思ふ神物語   作:星零

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【起点の章第六話 ―能力と詠唱―】

天使ムクロ襲来の次の日、さなぎ村には再び平穏が訪れた。変わらぬ日々に戻っていく村人の中に、まだあの二人、あかばとさろあが残っていた。そして真琴含め三人で話していた。

 

 

「昨日のことだが、やはり申し訳ない...」

 

そう言うのはさろあだ。村の人々は何も気にしていないのだが、さろあはそれでも少しの申し訳なさが残るようだ。

 

「いいんですよ、そんなことより、あかばさんの事ですよ」

 

真琴はさろあの罪悪感を拭うように、気にしていない様子で話を変える。真琴は昨日の天使ムクロ襲来の時、さろあが村の外周を守る中、村人の安全と防衛に全力を注いでいた影の貢献者だった。それと同時に、あかばの戦いを見ていたのである。

 

「あかばさん、あんなに強かったんですね?」

 

驚きを見せながら真琴があかばを称賛する。しかし、あかばはそれを自慢するわけでもなかった。

 

「この村で、真琴さんが僕の能力を引き出してくれたお陰ですよ。これが無ければきっと...勝てませんでしたから」

 

あかばは右手を強く握りしめ、己の未熟さを実感しているのだ。能力を使わなければ勝てなかったという事は、まだまだ肉体の力が不足している。ムクロとの戦いの中で、そう実感したのだろう。

 

しかし、真琴はあかばの言葉を否定し、そして励ました。

 

「あかばさん、その能力も、あなたの立派な力ですよ。受け入れ、もっと能力と向き合うことで、あなたは更に強くなる...そう思います」

 

その言葉を聞いたあかばは、全て受け入れることはできなかった。ただ、真琴から勇気とヒントを貰えたのは事実だ。

 

 

 

 少し重くなってしまった雰囲気の中、口を開く人物がいた。それは、あかばの戦いを目撃できなかった人物でもある、さろあであった。

 

「なぁ、アイツと戦った時、何か違和感はなかったか?」

 

あかばは、聞かれた瞬間はいまいちピンとこなかった。でも、少しずつ思い出していく上で、徐々に浮かんできたことがあった。

 

「あの...そういえばあの時、能力を使っている時に、何か詠唱のようなものを言っていました。確か..."分能(さのう)"と言っていました」

 

その返答を聞いたさろあは、一瞬考え込む素振りを見せる。

 

「なるほど...分能(さのう)ね」

 

「あかば、お前には言っていなかったがな、能力には種類があるんだ」

 

その事実は衝撃だった。それを言われたあかばだけでなく、隣で聞いていた真琴も驚いていた。

 

「能力に...種類ですか?それはどういう?」

 

先に質問したのは真琴だった。まだ全く知らない能力の情報に興味を持ったのだろう。真琴の質問に、さろあはゆっくりと解説し始める。

 

「能力は現状、三種類あるんだ。その一つが、分能(さのう)だ。分能(さのう)は、基本的に頭でイメージしたものを言葉にして能力を発現させる。一応、一般的にはこっちが多いな」

 

さろあの解説に、真琴は一部頷く。

 

「そうですね、この村でも、私を含めて全ての人が詠唱をして能力を使います。でもそれは、その人の能力次第で出来ることが決まっていますが...」

 

真琴は、自分が今知っている事を分かりやすく説明してくれていた。しかしこれは、まだこの村では常識の範囲内だった。

 

「ああ、分能(さのう)はそうだ。ただ、おそらくあかばの能力は分能(さのう)じゃない。お前は、五能( うのう)だろ?」

 

その指摘に、あかばはぴくんと肩を震わせ、真琴は首を傾げた。

 

「あかばさん、それは本当なのですか?」

 

真琴からの純粋な眼差しを浴びせられ、あかばはこくりと頷いた。

 

「はい、僕は能力を使う時、五能(うのう)という言葉が感覚的に体に流れてきたんです。でも、僕は最初、詠唱なんてしませんでした。ムクロって人が何か詠唱らしきことをしていたので、やった方がよいのではないかと思ったのですが...やっても効力はあまり変わらなかったです」

 

あかばの感覚的な説明は、真琴を驚かせるには十分だったが、さろあは驚いていないようだ。

 

「ああ、実は五能(うのう)は詠唱はしてもしなくてもいいんだ。頭じゃなくて感覚で発動するものだからな。逆に分能(さのう)は頭でイメージが出来てないと能力を使用できないから、詠唱がほぼ必須になるんだ。」

 

それを聞いて二人が驚いたのは言うまでもないだろう。

 

「す、凄いじゃないですか!そんなこと、聞いたこともなかったです!」

 

真琴がさろあに対して、驚きと歓喜の声を上げる。それと同時に、あかばも疑問が解けたように頷く。

 

「なるほど...じゃあ僕は、できるだけ詠唱しない方がいいんですか?」

 

あかばの疑問を聞いたさろあが、首を横に振って否定する。

 

「確かに詠唱しなくても良いんだが...詠唱しておく習慣を身に着けておくと、後から分能(さのう)を使う時に、間違えて詠唱しないってことを防げるから、オススメは詠唱をすることだな」

 

さろあからのアドバイスに、あかばは素直に頷く

 

「分かりました。今の内から慣れておきます!」

 

あかばは、まるで新しい修業が増えたような感覚で、頑張るぞと心の中で意気込んでいた。

 

「ええ、それが良いと思いますよ。中には、分能(さのう)は後から身に着けたりすることもできると聞きますし」

 

どうやら、まだまだあかばの知らないことが沢山あるようだ。

 

―――こうして、さろあによる能力の種類解説は一旦終わりとなった。真琴は村の作業に戻り、さろあも少し手伝いに向かった。そしてあかばも、さろあの背中を追うように村の仕事の手伝いをするのであった。

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