亡き神思ふ神物語   作:星零

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【起点の章第七話 ―始まり―】

―――あれから三日が経過した。あかばとさろあは、すっかり村の生活に溶け込んでいた。

・・・しかしそんな生活も長くは続かなかった。

 

 

「あかば、そして村のみなさん、ちょっと良いか」

 

突然、さろあが全体に向かって耳を傾けてもらう。するとさろあは躊躇うように話し始める。

 

「みなさんには、俺とあかばが大変お世話になりました。ですが...俺とあかばはここを離れたいと思います」

 

それは、あかばも聞かされていない事だった。当然村の人々も「もう少しここにいたら?」と言ってくれるものの、さろあは頑なに離れようとしている。

 

「あの、理由を聞かせていただけますか?」

 

真琴がさろあに、至って落ち着いたまま聞く。

 

「あかばには話していなかったが、元々俺たちはこの世界で少し過ごした後に、すぐに別の世界に行こうとしていたんだ。」

 

さろあの言っていることは、あかばは何となく分かってしまった。確かに、これから先の事は何も聞かされていなかったし、実際この世界に来たのも四日前だ。

 

「あの...それは、さろあさんが前から決めていた事なんですよね。でも、それでも...突然過ぎますよ」

 

あかばが少し寂しそうな声で、さろあに抗議するように言葉を放つ。さろあは一瞬、申し訳ないと言わんばかりに俯く。

 

「すまん、だが...これは仕方ないんだ。この世界の為でもあるし、お前の為でもあるんだ」

 

さろあ自身も少し苦しそうに打ち明ける。二人の間に距離が空きそうになったその瞬間、真琴が口を開く。

 

「ええ、私は構いませんよ。それに、皆もきっと気にしないでしょう。この村では、それもよくある事です」

 

真琴の言葉に続くように、村の人々は暗い顔を見せなかった。勿論本心では寂しいということは嫌でも伝わってくる。ただ、それ以上に、さろあの選択を尊重したのだ。

 

さろあは一言、「すまん、そして...ありがとう」

 

そんな場面を見せられてしまっては、あかばも受け入れざるを得なかった。この村を、そして村の皆と離れるのは寂しい。それでも、さろあはあかばにとっての、大切な師である。師の選択を、頭の奥底にある考えを、疑いたくはなかった。

 

「もちろん、ここで完全にさよならって訳じゃないさ。運命が巡ったら、またここに来るさ。その時になったら、また迎えてくれると嬉しい」

 

その言葉で、あかばはちょっとだけ心が軽くなった気がした。また機会があれば、戻ってこれる。そう思うだけで、今回のお別れも受け入れられる。

 

「あの...さろあさん、最後にお答えして頂きたいことがあります。これは、私個人が気になっていることですが...」

 

真琴の表情が、真剣なものに変わる

 

『"あなたは、何を見据えて、何をしようとしているんですか?"』

 

・・・さろあは数秒黙り込み、そしてゆっくりと口を開く

 

「・・・・・・"世界を進め、神を取り戻す"為の・・・『贖罪』だ」

 

真琴は心の底から驚いたものの、これ以上は何も聞かない。さろあの雰囲気が、話している時に一瞬だけ、寂しそうにしていたから。

そしてあかばはというと、ようやく知れたさろあの目的を理解しようとした。ただ、知らないことが多すぎて、ただ何も言えなかった。

 

「少ない間でしたが、ありがとうございました。また、いつでも来てくださいね。私たち一同、お待ちしておりますから」

 

真琴は笑顔に戻り、二人との別れの言葉を紡ぐ。その目元は、一粒の涙があった。

 

「絶対、また来ますから!」

 

「ああ、また会おう」

 

あかば、そしてさろあも、一時の別れを噛みしめる。二人の間に、心の距離は無い。そしてあかばの覚悟もようやく決まっているようだ。

 

「いくぞ、あかば」

 

さろあはそう言って、別の世界へのポータルをその場に出現させた。

 

「はい、さろあさん」

 

 

二人は足並みを揃え、ゆっくりとポータルを潜っていく。さろあの表情を、一瞬見つめる。そしてあかばは気づくのだ。これは、ほんの"始まり"に過ぎないと。

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