突如として、さろあ達が再び天使と名乗る者との本格的な戦いが繰り広げられる。最初に動いたのは、天使のセイナだった。
「アハハハッ!もっともっと楽しみましょう??」
セイナはあかばとダインに目もくれず、一直線にさろあに突撃する。セイナのレイピアがさろあを襲う時、さろあはいつの間にか持っている刀で受け止める。
「ふん、俺は何も楽しくはないが」(なんだ?何故あかばではなく俺を狙ってくる?)
さろあの疑問はその通りで、今までの天使というのは、"あかばを殺す"ことを目的で襲撃してきた。でも今は、天使セイナはさろあだけを見ているようだ。
「だ、ダインさん!僕達も加勢しないと!」
「うむ...しかしあのレベル、加勢しても足手まといになるだけじゃ」
二人は目の前で行われている戦闘レベルに追いつける程に強くは無いと、本能的に感じ取ってしまって、加勢できないでいる。
「ほらほらほら!こんなものじゃないでしょ!もっと本気を出しなさいよ!!」
セイナのギアはどんどん上がっている中、さろあはまだ受け身でいる。その時、さろあは一瞬、あかばとダインに視線を送った。それはただ、心配だっただけなのかもしれない。でも、それが最悪な展開になってしまう。
「あぁ...あの二人がいるから、まともに力が出せないのね」
先程まで高ぶっていたセイナの声のトーンが一気に冷たく下がる。そしてその目の先は、確実にさろあから二人に変わっていた。
―――次の刹那・・・セイナは一瞬であかばの前に現れた
「やあああああ!」
何と、あかばはセイナのレイピアでの突きを、剣で受け止めていたのだ。そう、実はあかばは、自身に向けられたセイナの殺気を肌で感じ取ったのか、『
「なんと!?いつの間に!?」
ダインは一切反応できなかったようだ。しかし、あかばがセイナの攻撃を受け止めたことにより、ようやく状況を把握することが出来たようだ。ダインも自身の武器、忍者刀を懐から取り出し、一気に戦闘態勢に入る・・・だが、次の瞬間
「おい...どこ向いてやがる」
さろあが無表情でセイナに向かって刀を振り下ろそうとしていた。それはあかばが初めて見る、誰かに向けた明確な殺意だった。
「そうこなくっちゃァ!」
セイナの興奮した叫びと共に、再びさろあとセイナがすさまじい攻防を繰り広げる。そしてさろあとダインが加勢しようとしたタイミングで、後ろの方から悲鳴が聞こえる。それはこの世界に住む一般人の悲鳴だ、即座にダインが振り向くと、そこには、全身が炎で燃え盛り、市民を襲おうとする異形の怪物の姿があった。
「させんぞおおお!」
ダインはそちらを優先し、異形の怪物に勢いよく突っ込んで斬りかかる。一応、攻撃は届くようだったが、大きさも中々な為、ダインは目の前の怪物を倒すのに時間を使ってしまうだろう。あかばはそれを横目で確認すると、体の向きを変え、そっちに加勢に行こうとした。
「アンタも邪魔よォ!早く何処かへ消えなさいッ!」
"その声があかばの背後から聞こえた時にはもう遅かった"
ドゴォッ!!
大きな音と共に、あかばの体が街の道路の少し上を勢い良く吹き飛んでいく。セイナはあかばの事を容赦なく蹴り飛ばしていたのだ。その威力はとてつもなく、あかばの体は一撃でボロボロになってしまった。アスファルトの上に勢いそのままで体がぶつかり、骨まで損傷が入っている。
「あ・・・・ゲフッ・・・」
あかばは倒れたまま、力なく血を吐く。全身が痛みに襲われ、動くことすらままならない。さろあはそれを認識しているけれど、セイナとの斬り合いを終わらせなければ、助けに行っても今度こそあかばが殺されるだろう。その為、さろあはあかばを助けに行くことが出来なかった。
"状況は最悪だ"
誰もあかばを助けることが出来ない。このまま失血死してしまうのも、時間の問題である。
絶望的な状況の中、あかばの脳裏に映像が浮かぶ。それは、さなぎ村でしてもらった、能力を引き出した時の記憶だった。あの時に、感覚的に能力の使い方を理解したのを覚えている。そして同時に、"何ができるのか"も理解していた。あかばは一瞬の為忘れていたが、確かに他にあったのだ。
―――――――――――――――――――
確かに、頭の中でそう唱えた。本来、
――――――――――――――――瞳の色が緑色に光りだす――――――――――――――――
その瞬間、あかばの体にある傷が、消えるように全て完治していく。その光景はまるで、瞬間的な完全修復だった。傷ついていた骨までも、そして失われた血液までもが再生していく。これが『
「凄い...あんなに痛かったのに、もう全部治ってる...」
あかばが完全回復した。それをセイナは知らないし、さろあとの戦いに夢中で見もしない。でも、その戦っているさろあは、微かに口元に安堵の笑みを浮かべていた。
でもただ回復しただけだ。状況は変わらないまま、あかばはこのままでは、セイナとまともに戦えないだろう。
「さろあさんが負けるのは想像できないし、このまま変に介入しないのが一番かも」
しかしそんな中、一人で思考を巡らせ、この次にどう動こうかを考えているあかばに、ゆっくりと迫る姿があった。
それは、先程ダインが倒しに行った、全身が炎で燃え盛る怪物だ。どうやら、あの一体だけではなかったようだ。
「あの人の負担にならないように、僕がコイツを倒す!」
あかばはそう意気込み、異形の怪物と対峙する。だが、ここから先、更なる絶望があかば達を襲うことになるのだった。