Epics of the sky ~天空の叙事詩集〜 作:skyminstrel
0話 世界説明
1. 作品の基本世界観
『Epics of the Sky』作中世界は、魔法のない世界です。 ただし、宗教・神話・騎士道伝説は濃く存在します。
舞台はユミドラル大陸。 社会制度は中世ヨーロッパ的な封建制・地方分権・騎士階級が残ったまま、航空技術だけが1960~70年代相当まで発展した世界です。
この世界では、燃料資源が穀物並みに入手しやすいため、封建制度と内燃機関技術が両立しています。 一方で、通信技術は遅れています。
端的に言って、中世ヨーロッパにおける「馬」の立ち位置が、この世界では「飛行機」に置き換わっています。
* 馬に乗れる者=飛行機を操縦できる者
* 騎乗戦闘技術を持つ者=空中戦技術を持つ者
* 騎士=戦闘機乗り
* 厩舎=格納庫
* 城の馬場=滑走路・エプロン
平民でも、農業・郵便・旅・物流などで飛行機を操縦することは普及しています。 自家用機、農業機、郵便機、旅客機、貨物機などが飛び交い、密輸飛行士、傭兵飛行士も存在します。
ただし、戦闘機で戦う技術は騎士階級のものです。 騎士は幼い頃からペイジとしてグライダーや練習機で飛行訓練を始め、16歳頃には従騎士として師匠の元で戦場に出始めます。
戦闘機は、かつての馬と同じく騎士の私物であることが基本であり、それを所有・維持できることが騎士身分の条件です。 ただしペイジ・従騎士向けの練習機・練習戦闘機は、国や大領主が集中所有し、見習いに貸与することがあります。
これもかつての乗馬技術と同様、操縦技術を持つことは騎士や貴族の子弟(女性含む)の嗜みです。
空に向き合い、操縦を学ぶ過程で否応なく驕りや傲慢を削ぎ落とされるため、上流階級の道徳レベルは比較的、優れています。
誘導ミサイル等は技術的には存在しますが発展途上であり、また高価な消耗品であるため、武装が自前のこの世界では発展・普及は限定的です。 王家直属騎士団など潤沢な予算を持つ部隊を除き、空戦は機銃戦が中心です。
レーダー技術は存在します。戦闘機にも搭載されていますが、機上レーダーの性能はそこまで高くありません。
2. 騎士道・戦争観
この世界の騎士道は、おおよそ中世騎士道に近いものです。
決闘・一騎打ち・団体戦競技が存在します。 ジョストのような一対一の空戦競技、トゥルネイのような団体空戦競技もあります。 演習弾による模擬戦もあれば、機体と命と名誉を賭けた本気の決闘もあります。
敵機を撃墜することは戦場における名誉です。 ただし、すでに傷ついた相手にとどめを刺すことは好まれません。 降伏した敵、脱出した敵騎士、無抵抗の民間機を攻撃することは禁忌です。
捕虜となった騎士は、身代金や捕虜交換の交渉材料になります。
決闘や競技には作法がありますが、戦場は試合ではありません。
実戦では、禁忌を犯さない限り、現実の空戦と同様に奇襲や一撃離脱といった戦術も用いられます。
王同士の全面戦争は存在しますが、頻度は高くありません。 領主間私戦、挑発、小競り合いは頻繁にあります。 宣戦布告や開戦儀礼は、「きちんとした者」同士の戦いなら存在します。
爆撃機や輸送機は平民出身の操縦士が多いですが、多くの騎士は同じ飛行機乗りとして仲間意識を持っています。 ただし、見下す者も一部には存在します。
3. 城
城は、領主の居宅であり、すなわち領主と使える騎士たちのの航空基地です。
城には滑走路、エプロン、格納庫が組み込まれています。 尖塔は管制塔や対空砲塔を兼ねることがあります。
領主の城の周囲には、家士たちの格納庫付き住居が並びます。 小規模な領地では、城の飛行場を民間と共用することもあります。
4. 国家設定
エミトリア王国
ユミドラル大陸南部の大国。 肥沃な大地を持ちます。 物語上は主人公側の国です。
封建制・地方分権国家ですが、リグジェリアよりは王権が強いです。 ただし、その分、辺境への目が届きにくい面があります。 紋章イメージは不死鳥。
リグジェリア王国
ユミドラル大陸北部の大国。 広大だが豊かではない大地を持ちます。 国力はエミトリアと互角ですが、豊かな南方を求める南下願望が民族意識レベルで存在します。
封建制・地方分権国家で、エミトリアより王権が弱く、各領主の権力が強い連邦・連合国的な体裁です。 紋章イメージは黒獅子。
物語上は、ライバルや敵側の国です。
エミトリアとリグジェリアの2国は、航空機発明以前から存在し、数百年以上にわたり長く向き合い続けています。
レバイア王国
エミトリアとリグジェリアの間、大陸東部、アストリア山脈より東にある中立国家。 かつてはエミトリアの小さな辺境伯領でしたが、大陸で初めて航空機を開発・運用したことで大国化しました。 40年前にエミトリア王国との戦争で大敗し、現在は小国ですが、航空技術・地政学的位置・騎士団の強さによって中立を保っています。
レバイアは航空発祥国としての誇りが強く、国民一人一人の航空への関心も高いため、平民に至るまで航空教育に力を入れています。 初期航空兵は騎士ではなく、平民の専門兵だったため、平民の間にも「この国を本当に興したのは空に命を懸けた我々の先祖だ」という誇りがあります。
「国王は、国という巨大航空機の機長である」という思想を持ち、王家は特にエアマンシップを重んじます。
現在は国内需要や騎士用戦闘機を独力で完全に賄う生産力はなく、戦闘機は輸入が多いです。 ただし王家専用工房/研究所があり、王家の人間専用の超高性能機を開発します。 大陸最高技術者集団で、量産性を考えず、機密技術と最高整備を王家のために注ぎ込みます。
紋章イメージは羽ばたく飛龍。
5. 歴史設定
この世界では、銃火器より早く、動力を持たない航空機が生まれました。 現実世界の航空パイオニア的な人物が作ったグライダーや気球が、運命のかけ違いにより早期に成功し、普及した世界です。
最初に航空機を開発したのは、後のレバイア王国の前身である辺境伯領です。 初期には気球やグライダーによる偵察、観測、空挺、爆撃が行われました。 この時代、空を使う兵はまだ騎士ではなく、少人数の専門技術を持つ平民兵でした。
レバイアは、空挺部隊・爆撃・偵察と、元来精強だった騎士団を組み合わせ、瞬く間に一つの国を興しました。
その後、内燃機関が開発されると、レバイアでは「高速で移動できるが風任せだった」グライダーや気球に搭載する研究が進み、飛行船や飛行機が生まれました。
この世界では燃料が穀物並みに手に入るため、航空機の普及は順調に進みました。 その頃には銃も開発され、現実世界同様、馬に乗る騎士たちは火力の前に淘汰されかけます。 しかし騎士たちは馬を飛行機、特に武装飛行機に乗り換え始めました。
馬と飛行機は本質的に似ています。 どちらも乗るには技術が必要で、維持には費用がかかり、所有できる者は限られ、戦場では高速性と突破力を持ちます。
騎士文化が航空へ受け継がれた最大の理由はここにあります。
飛行機は地上の銃では簡単に止められず、飛行機からの銃撃・爆撃は地上兵を圧倒しました。 騎士の高速性と突破力は、軍用飛行機に受け継がれ、騎士の社会的立場は継続しました。
やがて敵の攻撃機・爆撃機を止めるために戦闘機が生まれ、戦闘機同士の戦いが起こるようになります。 戦闘機は最も早く敵航空戦力と戦い、その場の制空権、ひいては戦いの趨勢を決め、最も操縦技術を求められる存在です。 そのため、この世界では戦闘機乗りが騎士の中心的役割となりました。
航空戦力や制空権の優位性が決定的に消える出来事が起きない限り、この世界の騎士の時代は終わらないでしょう。