闇より生まれたナイアと、黄金の髪を持つ少年。
二人は、繰り返される輪廻の中で大十字九郎の運命を嘲笑う。
「開幕かな」
虚無と狂気に満ちた、短い序曲。
_____________
たぶん2005年ぐらいにガラケーで書いた斬魔大聖デモンベインをもとにした二次小説です。
※角川スニーカーから出ていた小説の影響も有、たぶん
パソコンのデータ整理で発掘したので投稿してみました。


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第1話

 闇が蠢く。

 闇は蠢きながら、カタチを変えていく。

 まるで空を流れる雲のように、絶え間なく。

 闇が徐々に造形され、カタチとしての輪郭が顕になり始める。

 スラリと伸びた四肢。

 ハッキリとした括れ。

 豊満な双丘。

 闇は完璧なプロモーションを備えたヒトにカタチを成す。

 闇より生まれたヒトは周囲を見渡す。

 直ぐ側に美しい黄金の髪を持つ青年の姿があった。

 闇より生まれたヒトは、愉悦に口の端を吊り上げながら青年に歩み寄る。

 

「ご機嫌だね」

 

 声を掛けられた青年は、端整な顔立ちと美しい瞳。

 そして、病的なまでに白い白磁のような肌をしていた。

 青年は、ただただ息を呑むほど整った容姿をしていた。

 しかし、ヒトでは正気を保つことが出来ないほど、暗くて冷たい闇を纏っていた。

 

「……ナイアか」

 

 闇が成ったヒト――ナイアに青年は興味がないのか視線すら動かさずに気だるそうに言った。

 美しい声だった。

 だが、その声には妙齢の老人のような響きがあった。

 さらに底知れぬ渇きを含んでいた。

 

「何のために来たのですか?」

 

 別の声。

 それは落ち着いた抑揚に欠ける冷淡な声音。

 青年に寄り添っていた黒い少女のものだ。

 一瞬前まで、青年に撫でられ微笑んでいたはずなのに、今は刃物のような鋭い視線をナイアに向けている。

 隠す気のない殺意が全身から放たれている。

 

「そう邪険にしないでくれよ。永い付き合いだろう」

 

 ナイアは屈託のない笑みを浮かべる。

 少女の向ける敵意などナイアは意に介さない。

 ナイアの視線は青年に向けられている。

 

「久々だね。君がそんなに愉快そうな顔しているのは」

 

 青年は殺気立つ少女の頭を優しく撫でる。

 

「余が愉快そうか。……確かにそうかも知れぬ」

 

 そう言って青年は愉快そうに唇をゆがめる。

 

「あやつはまた覇道の娘を選ぶ。また己の無知、無力さを思い知り、絶望の中をもがく。これほど愉快な喜劇はないものだ」

 

 青年の忍び笑いは、いつの間にか大きくなっていた。

 

「大十字九郎、また名を変え余には向かう愚かな道を進む。終焉は変わらぬ。いささか物足りない道化芝居だ」

 

 彼の脳裏に浮かぶのは枯れた老人。

 老いてなお精悍な目つきをした老人。

 幾度叩こうが、決して折れぬ刃をその内に宿した老人。

 彼奴を幾度殺したか。

 絶望の淵であっても瞳から希望の光を消さぬ老人を青年は愛おしくさえ感じてしまう。

 

「覇道剛造となって今度はどんな道化を見せてくれるのか。せめて余を退屈させないでくれ」

 

 青年の姿に満足そうに唇を歪めるナイア。

 

「開幕かな」

 

 ナイアの嬉しそうな声。

 その声に青年は静かに立ち上がり、闇に溶けた。

 それが繰り返される輪廻の――

 

 幕開けとなった。

 


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