ここは新世界のとある島。
今、この島では激しい戦闘が行われていた。
戦闘を行っているのは、海軍中将であるモンキー・D・ガープとこの世の全てに絶望したような目をしている少年、ベル・クラネルだ。
「ベルッ!!もうよせ!!」
「うるさいっ!!俺を捨てたあんたの言うことなんか誰が聞くか!!」
「ッ!!」
ベルと呼ばれた少年はそう言い放ち覇気を強めてガープに攻撃する。
「俺をあの地獄から救ってくれったのはロックスおじさんだ!!そのおじさんを殺し、俺をあんなクズ共に売り渡したあんたは俺の敵だ!!」
ベルはロックスがくれた刀、<妖刀夜叉姫>に覇王色の覇気をまとわせながらガープに斬りかかる。
「すまんかったベル」
「ッ!!今更あやまるなあああっ!!!」
ガープの謝罪でさらに覇気の威力が上がるベルにガープは悲しい目を向けていた。
ベルがこうなってしまったのは自分のせいだとガープは思っている。
ガープが初めてベルと出会ったのは今戦っているこの無人島であった。
当時のベルは5歳で何で自分がここにいるのかがわかっていなかったのだ。
それをガープがひろい、マリンフォードにつれて帰って海兵に育て上げたのだ。
ベルは素直にガープの言うことを聞いてすくすくと育っていた。
明るく素直で優しい性格のベルは同僚や市民から可愛がられていた。
ある時、世界貴族である天竜人が『海軍に可愛らしい兎の海兵がいる』と聞きつけてベルをよこせと言ってきた。
もちろんガープやベルを可愛がっている同僚たちは断固として反対し、ベルを田舎に隠した。
しかし何時までも隠し通せるわけもなく、ベルはガープの目の前で政府直属の機関であるCP0に捕まってしまったのだ。
ベルは泣きながらガープに助けを求めたが、ガープがベルを助けることはなかった。
そこからのベルの人生は地獄だった。
最初のうちは愛玩動物のように扱われていたが、それが飽きると殴る蹴るの暴力に始まり、ナイフで刺され、鞭で叩かれ、熱した鉄の棒を押し当てられた。
さらに元々中性的な顔をしていたので、女装させて男どもの玩具にもさせられた。
そんな地獄を死んだように過ごしていた時のこと。
マリージョアが一人の男のせいで騒がしくなった。
男の名はロックス・D・ジーベック。
ロックスは建物を壊し、衛兵をなぎ倒しながら進んでいく。
そしてロックスは偶然ベルがいる建物に吹き飛ばされてベルと出会う。
「ああん?お前もしかしてちょっと前に海兵に売られた兎か?」
「・・・・」
ロックスがそう言ってもベルは何も答えない。
いっそのこと自分を殺してくれないかと思っているぐらい今のベルの心は壊れているのだ。
「ヴォハハハッ!俺様の質問に答えないとはいい度胸してやがる!いや、もう壊れてるだけか」
ロックスがそう言ってもベルは何も言わないし動かなかった。
「おめぇこのままでいいのか?」
「?」
ベルは何を言っているのかわからなかった。
世界貴族である天竜人には誰であろうと逆らえない。
そんなことは小さい子供でも知ってることだ。
「このまんまあのゴミクズたちの玩具で終わる気か?」
「っだ」
「ああん?」
「いやっだ」
絞り出したベルの本音。
ベル自信もこんなところで死にたくはなかったのだ。
光がなかったベルの目にかすかに光が宿る。
それを見てロックスはニヤリと笑う。
「そうだろ!!それがお前の本音だ!!だったらやることは一つだ!」
「えっ?」
ロックスはベルに向かって手を差し出す。
「俺と一緒に世界を壊しに行こうじゃねぇか!!」
そう言ってロックスは強大な覇王色の覇気をはなつ。
覇王色によってマリージョアにいるほとんどの人が意識を失う。
ベルは差し出された手を力強く握る。
「ヴォハハハッ!!行くぞ兎!!ついでにこの家から金目のものもいただいてくか!!」
こうしてベルはロックスについていき、ロックスから戦い方、覇気、航海術、料理など色々な事を教わった。
そしてゴットバレー事件にてロックスはガープとロジャーに討ち取られた。
ロックス海賊団は解散し、ベルは一人で海をわたっていたところをガープに見つかり戦っているのだ。
「あんなゴミクズたちを守って何の罪もない市民を売り渡してるあんたらの何処が正義なんだよ!!」
「・・・・」
ガープはベルの訴えになにも言い返せなかった。
ベルが言っていることは紛れもない事実であるからだ。
「なんとか言えよ!!英雄様よおおぉぉぉっ!!!」
今までにないぐらいに怒りながらベルはガープに斬りかかる。
ベルはこの世界に来る前は田舎でお爺さんと静かに暮らしていた。
そんなベルの楽しみがお爺さんが読んでくれる英雄章であった。
ベルは英雄章を聞いて英雄が大好きになり、いつか自分もなりたいとも思っていた。
なので自分を捨て、恩人であるロックスを倒したガープが英雄と呼ばれていることが腹立たしかった。
「海賊よりも残酷なことをやっているあのゴミクズ共を必死に守って英雄になった気分はどうだ?嬉しいか?」
「・・・・」
ガープは何を言われても答えなかった。
「ちっ都合が悪くなったらお決まりのだんまりかよ」
ベルはそう言うと攻撃をやめてガープに背を向けて歩き出す。
「何処へ行く」
「決まってんだろ。あのゴミクズ共を殺しに行く。もしあんたに罪の意識があるってんなら止めるなよ」
そう言って歩き出すベル。
ガープは思い切り拳を握り、覇気をまとわせる。
それを感じ取ったベルは振り返り刀を抜く。
「お前にはもうこれ以上罪を犯してほしくはない」
「今更何を言っている?」
「そうだ。今更だ。だが!ワシは海兵だ!!人を殺しに行くという海賊をほっとくわけにはいかん!!」
ガープは目元に薄っすらと涙を浮かべながらそういった。
「なら止めてみろ!!」
ベルは全力の覇気えお刀にまとわせて技を放つ
「
この技は、神と呼ばれている天竜人を嫌い、切り裂きたいと思いながらロックスとの修行で生み出したベルの最強の一撃である。
その威力はゴールDロジャーの「
「
2人の大技に島が耐えきれず崩壊していく。
「あっ」
足元が崩れていき、ベルは瓦礫とともに穴に落ちていく。
「ベルッ!!」
「あばよっクソ英雄」
そう言って笑いながら暗い地の底に沈んでいくベルをガープは悲しい顔をしながらただ見ていたのだった。
ここでベルを捕まえてもどうせ天竜人共はよこせていってくるだけだろうとガープは思い、もうあんな苦しみをうけるぐらいならここで安らかに眠ったほうがいいと考えたのだった。
ここはダンジョン都市オラリオ。
この都市では様々な種族が天界から降りてきた神に恩恵をもらい、冒険者となりダンジョン迷宮に日夜挑んでいる。
しかし今は闇派閥と呼ばれる邪神のファミリアが無差別に暴れ回っているので暗黒期と呼ばれている。
今、ダンジョン27階層では元最凶のヘラ・ファミリアである『静寂』のアルフィアと、正義の神であるアストレア・ファミリアが戦っていた。
「福音!!」
アルフィアから放たれる魔法で吹き飛ばされるアストレア・ファミリア。
魔法の威力はアリーゼたちを吹き飛ばしただけではなく、ダンジョンの壁まで破壊する。
ガラガラと音を立てて崩れ落ちる壁の中から白髪の少年が出てきた。
「ったく、あの爺相変わらず化け物だな」
パンパンと服に着いた汚れを払いながらそう愚痴る。
「なんだ貴様は」
「あん?」
砂埃がはれて少年の姿がはっきりと見えた。
白髪に赤い目はウサギをほうふつとさせるが、鍛え抜かれた体とその体に刻まれた数々の傷は凄腕の戦士へと見方を変えられる。
「名をっ名乗れ」
アルフィアは少年の姿を見て声を震わせながら名を聞く。
今、彼女の頭の中では違っていてほしいという思いで埋め尽くされていた。
何故そうなのかと言うと、彼女が闇派閥と手を組んでオラリオで暴れる前、彼女は最愛の妹が残した妹の息子、つまり甥っ子に会いに行ったのだ。
しかし、甥っ子は行方不明になってしまっていて、彼女は甥っ子の似顔絵しか見たことがなかった。
今、目の前にいる少年がその似顔絵にそっくりなのだ。
しかし甥っ子は今年で7歳になる子供だ。
目の前にいる少年はどう考えても14、5歳ぐらいだから、あの少年が甥っ子と言うことはありえないと思っているが、あんなにも妹にそっくりなのに違うわけがないと思ってしまってもいる。
「ベル。ベル・クラネル」
「ッ!!!そうか」
ベル、その名妹が子供につけたなだった。
っということは今目の前にいる少年が妹の忘れ形見ということになる。
何故そんなに大きくなったのか、何故こんなところにいるのか、今まで何処で何をしていたのか、聞きたいことはたくさんあったが、時間がない事と一目会えたので聞かなかった。
アルフィアはベルに向かって手を伸ばし魔法をはなつ。
「福音」
「ふんっ!!」
放たれた魔法をいとも簡単に刀で切り裂くベル。
それを見て一瞬驚いたが嬉しそうに口角が上がるアルフィア。
「いきなりなんなんだ?」
「こいベル・クラネル。英雄の作法を教えてやる」
「英雄だぁ?」
その言葉と同時に、ベルから物凄い威圧が放たれる。
今のベルに英雄は禁句にも等しいのだ。
「ッ!?」
「おい女、二度と俺の前で英雄なんてクソみてぇな名前を出すんじゃねぇ!殺すぞ!!」
「やってみろガキ!」
その言葉と同時にベルとアルフィアの激しい攻防が繰り広げられた。
「あの静寂と互角に渡り合っているのは誰だ!」
周りからはそんな声が聞こえたり、加勢に入ろうとする者もいたが、ベルたちの戦闘が段違いすぎて入れなかったりしていた。
いったいどれほど続いただろうか。
最後はアルフィアが病のせいでよろけてしまった一瞬の隙を見逃さなかったベルに軍配が上がった。
アルフィアは妹の忘れ形見がこれほどまでに強くなっていたことに喜びと安心感を感じていた。
「これだけできるんだ。もう一人で生きていけるだろう」
「あん?」
ベルは安心しきった顔でアルフィアがそう言ってくる意味がわからなかった。
「メーテリア、お前の息子はたくましく育ったぞ」
「ッ!!」
ベルはアルフィアがつぶやいた名前に聞き覚えがあった。
あの世界に飛ばされる前、一緒に住んでいた祖父に聞いた母の名前だったからだ。
「母を知ってるのか?」
「お前の母は私の妹さ」
その言葉でベルは元の世界に帰ってきたことを知った。
「じゃっじゃぁあんたは叔母さ「ふんっ」べふっ!!」
叔母さんと言おうとしたら殴られたベル。
「叔母さんと呼ぶな!私はそんな年ではない」
「あっはい」
ベルは素直に言うことを聞いた。
女は怒らせると怖いということをロックスからよく教え込まれていたからだ。
「ベル、お前がどうしてそんなに大きくなったのか、どこに行っていたのかは聞かない。だから私たちがなしえなかった事をしろとも言わない。お前は自由に生きろ。私やメーテリアの分まで幸せに生きろ」
アルフィアはそう言って燃え盛る崖に身を投げていった。
ベルはただそれを見つめて涙を流したのだった。
アルフィアとの戦いの後、ベルはアストレア・ファミリアと共にダンジョンから地上に戻ってきた。
地上に出た瞬間、ベルを待ち構えていたのは武装したガネーシャ・ファミリアとロキ・ファミリアだった。
「ちょっとシャクティ!これはどういうこと!!」
アリーゼがシャクティに問う。
「そこの少年が静寂の身内との情報が入った。だから拘束して事情を聞かせてもらう」
シャクティがそう言って周りの団員に合図すると、団員は鎖と手錠をもってベルに近づいていく。
「まずは何処のファミリアなのかを確認しよう」
ロキ・ファミリア団長のフィンがそう言うと、ベルを拘束していた一人がベルの背中をめくろうと服に手をかけた瞬間
「俺に触れんじゃねぇ!!!」
叫び声と同時に物凄い威圧がベルから放たれた。
その威圧によってギルド内にいた全員が気を失った。
ベルはつけられた手錠を壊し、奪われていた刀を取り返してギルドを出て身を隠した。
「なんで叔母さんがあんなことしていたのか、真実を探る。そして俺が叔母さんの悲願を達成する!!」
そう言ってベルはオラリオから姿を消したのだった。