真祖の王は死の王と共に   作:頃音

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1話:目覚めと想い

 

───...何か聞こえる。女の人の、声?

 

「起きてくださいませ...!」

 

いやいや、煩わしい残業を終えて久しぶりの休日だよ?

もう少しゆっくり寝かせてほしいなあ。

 

「どうか、どうか起きてくださいませんか...!」

 

あれいや待て?うちは家政婦さんとか雇ってない。

恋人も妻もいない僕の部屋に女性の声だなんておかしい。

茶釜さんボイス目覚ましとも違う声色だよね?誰ええ!?

恐いよ、目を開けたくないんですけどもお!?

 

「起きてくださいませ、アルカード様...!」

 

......アル、カード?そうだ、昨日は確か《ユグドラシル》にログインして...疲労で寝落ちしたんだっけ。

それならどうしてアルカードの名前が聞こえる?

まさかサーバーダウンの日付を勘違いした、のかな。

とりあえずは恐いけど起きたほうがいいかなあ...(泣

ああもう!アルカードのポリシーは優雅に美しく、だよ。

わからないなら見てみればいいだけの話しじゃないか!

 

「アルカード様っ...お、お加減はよろしいでしょうか...」

 

「ゆ、ユリ...アルファ...?」

 

とても見慣れた、眼鏡をかけた美しいメイドだった。

心配そうな表情だ。僕が起きたと確認したのか一歩引いてすっと一礼をする。

 

「はい。戦闘メイド『プレアデス』のまとめ役を務める、ユリ·アルファでございます。紅玉卿アルカード様」

 

いつも見慣れていた、ノンプレイヤーキャラクターの

行動ではないと困惑する。無機質さはないし表情がある。

『命令』のコマンドではありえない自律行動。何より...

 

会話をしている。唇が動いている。

僕は夢でも見ているのかな、と一瞬考える。

 

「至高の41人のお一人であらせられる紅玉卿様。ナザリック地下大墳墓へのご帰還、心より感謝申し上げます」

 

凛とした表情を保ちながらも、伏せた目からぽろぽろと

雫が流れ落ちている。まるで生きているみたいだ。

いやユリはたしかアンデッドだから生きてはいないなあ、なんてバカげた思考はやめよう。こほん、と喉を整える。

一応、紅玉卿の姿だ。ロールプレイは継続しなきゃね?

 

「出迎えありがとう、ユリ·アルファ。まだ状況がつかめていませんが、起こしていたということは何か事情を?」

 

セバスやデミウルゴスみたいに優雅で紳士的な礼を返す。

あっ、寝癖とか大丈夫かなあ。格好つかないもんね。

 

「はい。我々もまだ把握してはおりませんが、第六階層

円形闘技場にて...────」

 

 

我らが主である、モモンガ様がお待ちです

 

 

 

ああ、よかった やっぱり貴方は

最後まで残っていてくれたんですね

 

 

 

◆◆◆

 

 

「アルカードさん!」

 

「ああっ...モモンガさん!」

 

ついハグしちゃったよ。大の大人が恥ずかしいなあ。

大まかに話しを聞くと、システムコマンドやGMコールは起動しないみたいだ。話しかけてくるNPCに困惑しながらも命令を出し、執事のセバスが周辺を偵察。プレアデスが各階層を見回っていた中で僕を発見したみたいだ。

アルベド、アウラ、マーレの三人で各階層守護者を呼び、1時間後ここに集結させるらしい。

まだ時間はあるし、色々と話しておかないと。

 

「ユグドラシルは、サーバーダウンしたはずですよね。

私の勘違いで昨日ではなかったとか、延期したとか...」

 

「いえ、アルカードさんも見たでしょう?NPCたちが自律行動しているのを。アップデートの線も考えたんですが」

 

モモンガさんがそっと近付いて小声になる。

あっ、骸骨の顔すごく恐い。見慣れてるはずなのにな。

 

「その、実験といいますか。あくまで!実験でアルベドに触れてみたらですね?触れちゃったんですよ、胸」

 

......ツッコミ待ちか、いやセクハラで訴える方かなあ?

アルベド。たしか守護者統括のサキュバスでタブラさんの創造したNPCだね。美人でなかなかの大きさをしてたって思うけどさ。

 

「18禁の規定はかなり厳しいのは俺達も知っての通り。別のゲームになった可能性もありましたが、匂いや脈まで感じ取れた。彼女たちは今、キャラクターじゃなく自我を持って存在しています」

 

モモンガさんの困惑したような声が現実味を引き立てる。

僕の見たメイドのユリも同じような状態、なのかな。

あっ、触りたいとかじゃあないよ。ホントニホント。

 

「モモンガさん。残ったのは、僕ら2人だけですか?」

 

わかりきっていたことを聞いてしまった。

モモンガさんは寂しそうにうつむいた。

 

「はい、ギリギリまでヘロヘロさんがいましたけど。気分がすぐれないみたいで、早めにログアウトしてました」

 

「また噂の絡み酒上司でしょうね。僕のほうもギリギリまで残業でしたよ。おかげでログインしてすぐ寝落ちしちゃいまして」

 

ははは、と乾いた笑い声で伝える。恥ずかしさから目線を反らしていると、同じく気まずそうな苦笑いで返された。

 

「アルカードさんが残業で遅れていたら、この妙な状況に巻き込まれてなかったでしょう。運がいいのか悪いのか...」

 

「いいえ、幸運でしたよ」

 

「え?」

 

「最後の日に間に合わないなんて、後悔どころじゃありません。みんなで築き上げた、僕らのギルド、『アインズ・ウール・ゴウン』のことなんですから。たとえ寝落ちちゃったとはいえ、ログインできて幸運でした」

 

アルカードさん、と小さな呟き声。おそらくだけど、僕とモモンガさんはこの《ユグドラシル》に、このギルドに、似たような想いを持っていたんだろう。

 

「だってこのナザリックは、『アインズ・ウール・ゴウン』は...僕らの、唯一の居場所ですから」

 

「アルカードさん...ありがとうございます!ここに帰って来てくれて!」

 

 

◆◆◆

 

 

沈静化によって昂ぶった感情を抑え込まれたモモンガさんは、煩わしそうな(少なくともそう思えた)表情で額に手を当てため息をついた。

 

「俺と似た...いや、同じ感性のアルカードさん居てくれて助かりました。一人ぼっちだったら、自我を持ったNPC達にどう対応していこうかと...」

 

「あれ?でもさっき、守護者達に集まるよう命令したって言いませんでした?それと同じように話せば...───」

 

あっ

 

「まさかやっちゃったんですか。支配者ロールプレイ」

 

「なんか雰囲気にノセられて...つい」

 

ロールプレイする僕が言うのもなんだけど。

どこか抜けてるんだよねえ、モモンガさんてさ。

 

「あれ、それってつまり僕もしなきゃならないんじゃ...」

 




書いてて気がついたけど紅玉卿って
すごく言い難い呼び名ですよね。
こうぎょくきょう

ソウマにはどこかで一度くらい噛んでもらおうかな
でも格好つかないよなあ
あっ、ちなみにアルカード(ソウマ)はナルシストでは
なくただの美しいものコレクターです。
自分の容姿も仕上げたい完璧主義なだけです。
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