サツマッチュ転生~地元の島では嫌われている(ファンタジー要素ありIF世界の)島津の戦国四兄弟にあまみんちゅ要素あり竜人として+1されました~   作:oosima

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こんな歴史考証の大半がネタや勢い任せなのがわかるSSも本編十話目になりました。
今回は、主人公の同類(?)が登場します。
面白いと思われれば、時間が出来た時でいいので感想やお気に入り登録に評価付与をお願いします。他の作品も含めて今後の執筆と投稿で励みになります。


知識が却って遠回りさせることもある

 ○皇紀2213年・天文22年(西暦1553年) 日本 薩摩国(さつまのくに) 鹿児島 境迫門(さかせと)

 

「…いやー、今日は良い青空だなー名護丸よー」

「…ア、アハハ…ソウデスネー…」

 

 宴会及び密会の翌日、日が最も高くなった青空の下で青々と茂る樹々に囲まれた山道を、健やかな顔な島津義久に連れられて島津名護丸は乾いた笑みの棒読みで続いていた。

 

(何この言い方!? 刑場では上を仰げないから今の内に青空を見収めておけって言いたいの!? ていうかここが刑場だっていうのは江戸時代からだったんじゃないのー!?)

 

 その理由は、足を踏み入れているこの地は前世の鹿児島の江戸時代にて処刑場として用いられていた地であり、この世界でも同じ用途で使われていたので、昨日までの経緯から名護丸は裏で粛清されるためにここへ連れて来られたのではないかとビビりまくっていたためである。

 

「あ、お久しぶりですなー忠良さ…あ、失礼。今は義久様ですなー」

「うわァ!?」

「おお、そっちもだな。まだ成仏しとらなかったかー。おい、名護丸よそこまで驚かなくともよいだろう」

 

 そして、この世界におけるここ境迫門の警備を島津家より任されている葉加馬(はかば)一族の先代の湯衛門(ゆえもん)が、青白くて半分透けた幽霊の姿で茂みから現れた。

 

「(いやいやいや! 陰陽道とか忍術とか外から来た明国系道術に太平洋の向こうの精霊魔術とかファンタジー要素のある世界観なのは知っているし僕も木系陰陽道はチート要素込みで得意だけどさ! そんなこの場と幽霊の組み合わせなんてそうそう慣れるわけじゃないでしょ!!)あ…あはは…も、申し訳ありません…ここに来たのは久しぶりなのでー…。ゆ、湯衛門殿もー死んだ後までご奉公されるなど…もうそろそろ成仏なさってもよろしい時期なのではー?」

「いやいや、まだまだ島津家から頂いてきたご恩は返しきれておりません。非才の身ではまだまだお返しするのに時が掛かります。それ故にこのようなものも新たに始めました」

 

 自分の身にも迫る死亡フラグの証(?)に感じ取れる湯衛門に名護丸は引きつった笑みでお退きしてもらおうとするが、その彼に同じく青白い半透明状に透けた分厚い紙の束を差し出された。

 

「…え、な、何この分厚い紙の束のようなものー…(も、もしかしてー…前世で悪人面主人公で連載終了数十年後にアニメ化になったあの料理漫画と同じ人で外伝みたいなのを描かれた恐怖新ぶ…ここここれを断ったらどんないちゃもんを付けられるかわからんしどうすれば―――!?)」

 

 前世の漫画知識に悪辣にもマッチした眼前の存在に、自分をこの世界では十分にあり得る呪殺で表向き急死として葬ろうとしているのではと勘繰りして、湯衛門のように顔が真っ青となっていく名護丸。

 

「この辺りをうろついている怪しい連中の似顔絵や調べられる限りの情報を載せたり、まだ成仏しておらん幽霊仲間から聞いたあちこちの噂話を書き記した“競歩瓦版(きょうほかわらばん)”です」

「―――あずこーーーーー!?」

 

 だが、その紙の束を渡して何故か競歩で去っていく湯衛門にズッコケさせられた名護丸であった。

 

「…い、いたたたた(ど、どうやら呪殺的な仕組みは仕込まれてないし…ちゃんとした情報も面白い話も絡めて載せてるようだし…)…そ、それは良かったですよー…。おお、これは確かに頼りになるなー…。でもこのままだと霊力が尽きると消滅するだろうからその辺りに詳しい術者にちゃんと保管してもらー…!?」

 

 痛む顔を撫でつつ名護丸は渡されたその競歩瓦版を軽く読み通しつつもその出来の良さに感心するが、その中にあるその部分を見やると青かったり白かったりした顔に赤みが急速に浮かび始めた。

 

「おほほ、そうそう、東海の向こうから来た長人(ながびと)(エルフのこと)から融通してもらった春画も載せておりましたので、若様もそろそろ島津一門としての務めを果たさねばならぬ歳が近づいている故にお役立ててくだされ」

 

 そうニヤニヤした笑みを最後にスーッと空気へ溶けるようにこの場を去った湯衛門が渡したその競歩瓦版には、前世で見た古代ギリシアやローマ風のデザインや意匠が強いが前世現代人の名護丸の食指も十分動かす、この時代の成人向け作品である春画も載せられていた。

 

「ななななな何をするのだ湯衛門! 島津の男子とはいえ名護丸はまだ6歳(数え年。戦国時代はこちらが主流)ぞ! おおお主もさっさと手放さんか!」

「のわ!?」

 

 だが、慌てた様子の義久に勢いよく競歩瓦版は取り上げとなった。

 

「こういったものは夜の鍛錬と学びも始める十才ほどから始めるのだ! わかったな! 私もそうだった!」

「…は、はい…(じゅ、十才からならいいのか…そうだったな…。この時代の日本って宣教師がびっくりするレベルで性事情はオープンだったっけ…何度も見たし。まあ…見てみぬふりをしていたのか実際の同じ頃のヨーロッパも性事情の実態は五十歩百歩だったらしいけどー…)」

 

 戦国時代の性教育事情にも触れられた説教に名護丸は微妙そうな笑みながらも緊張と恐怖が消化されていく。

 

「……!? こ…これは大事な情報も載っているから私が預かる! わかったな! さー行くぞ!」

「は、はい…(…あの表情にあの動き…後で春画の方も絶対に楽しむものだな…)」

 

 そうして説教の最中に一瞬だがチラ見してギョッと目を丸くした馬面になった後、競歩瓦版を懐にしまって背を見せた義久の後を、微妙さとニヤニヤが混ざった顔になった名護丸は先ほどまでの緊張や恐怖が晴れた様子で付いていった。

 

「…ここはー、処刑場より山二つ分くらいは離れているけどー…、鹿児島にこんな場所があったのですか。臭い消しの札があちこちにー…けれど、あれだけ張られてても道中からたびたび強めな臭いがしてたしー…けれど、ここは何をー…?」

 

 湯衛門とのやり取りから数十分後、義久達の案内で名護丸がたどり着いたその場所は、様々な糞尿や土に草など様々な腐敗物が積まれた穴が多くあり、それらは雨除けの為か屋根の下で時折は人の手で掘り返されたり、陰陽師とかの術者によって札を張られた杭を打たれたりしており、周囲には見張り櫓も複数ある奇妙な場であった。

 

「…兄上、ここは―――?」

「お頭ー、今日の分の()()()()()()()()()が届きましたー」

「よし、それはこの前に入れ替えた分の七十八番目の穴に入れておけ」

「―――!?」

 

 その場所に名護丸は初め怪訝な顔を浮かべるが、そこで作業している人々の会話の内容から何かに気付いたハッとした顔になる。

 

「…その悟りし顔、やはりそなたも…()()()()()()()のようだな。では…この場所が何に見えるか…言ってみよ」

「………!?」

 

 それを見逃さなかった義久の澄んで怜悧な眼差しに名護丸はビクッと震えて十数秒は沈黙した後、ゆっくりと口を再び開く。

 

「…こ、ここは…まさかー…!」

「そうだな、そなたもやはり…そう、ここは―――」

 

 名護丸の深層に触れられたと感じさせる表情に義久は深い共感性と喜色を浮かべた顔で、その続きを自分の言葉にしようとする。

 

「き、傷薬の工房?」

「―――あぐほぉ!?」

 

 故に、名護丸が悟った顔で口にしたその予想の斜め上を行く珍解答で、今度は義久が勢いよくズッコケた。

 

「…ち! 違ぁアアアアアアぁあうぅうう! な、何故そのような怪我人を早死にさせそうな答えに行き着くのだぁアアアアアア!?」

「…い、いやだってー…この時代―…小便を竹筒に入れてーそれを戦傷の消毒にしたりするって治療は普通って話でしょー…。まだ初陣してないからまだこの目では見てはいないけどー…」

「いやいや! たしかに私も“雑兵物語”とかでそういうのは読んだりしたけど少なくとも()()()()()()()ではそんなトンデモ医術はさせとらん!」

「…え? でもー…確かーこの時代の甲斐武田家の家臣の方で部下の治療として水で似た馬糞を飲ませたって話がー残ってー…」

「その話が載っている“葉隠”が書かれたのは一世紀半以上後の頃だろオオオオオオ!! さすがに創作に決まっとるわ! まあ…多分…」

 

 k緊張が解けた反動もあってか、そのまま義久が押す形で名護丸との間に戦国時代っぽくない(?)要素も交えた口論が始まった。

 

「…な、何か若様の口からー…またよくわからん言葉が出とるがー…」

「あまり気にするな。いい仕事を貰っとる身で盗み聞きするなど恩知らずじゃし、何より殿に深入りすれば命を守れんと言われとるから、後で忘れ薬を貰っとけー…!?」

 

 周囲はその口論にまるで良くて奇人変人を見ているようなチラ見を見せたり、それを嗜めたりとかしているが、彼らが作業している穴の一つに義久が無造作に手を突っ込んだ。

 

「ああ!? 若様ーそのようなお手を汚すような真似をなされてはー!?」

「すぐに済むから構うな! よし…これだなー! これを見てみろ!」

 

 周囲は当然止めるが義久は構わずにその肥溜めのような穴から何かを取り出すと名護丸に見せつけた。

 

「ちょ!? さっきまで衛生的に真っ当そうな意見を言っといて何をー…って、これは!?」

 

 それに初め吐きそうなしかめっ面になった名護丸だが、義久の手に捕まれているその白い小石のようなものに気付くとハッとした顔になった。

 

「…あ、兄上…こ、これってー…種子島に火を吹かせるのに必須のー…」

「…ああ、そうだ。これは…硫黄や木炭と共に、火薬の原料となる“硝石”だ。そしてー…」

 

 その受け取った硝石を興奮と恐れが混じる顔で見つめ始めた名護丸の前で、義久はどこか遠くを静かに見据える表情になって静かにこう言葉を掛ける。

 

「…その硝石が採れるこの工房を作らせた私ー…この世界の義久もお前と同じように()()()()()()()()()()()()()()()。憶えている限りだがな」

「………………」

 

 いつの間にか勘で聞いたらまずいと作業員たちが離れている中で、遠くを見据えたままの義久を名護丸はしばし静かに見上げ続けた。

 その義久に肩を優しく叩かれている感触からの安堵と、それで我が身にも就く汚物とその悪臭で我が目から流れ出ている涙を感じながら。




次回、この世界の義久の経歴がある程度は明かされます。
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総合評価:1935/評価:7.49/連載:122話/更新日時:2026年07月11日(土) 19:53 小説情報


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