帰り道に幻覚を見ただけ(筆者が夢で見た話)

1 / 1
帰り道

帰り道では雨が降っていた。その日は余り寝れておらずふらふらと半ば気絶したように家へ帰っていた。都会特有の背の高い建物が少なくなってくると帰っている感覚がする。東京に眠らない町はあるだろうが、少しそこから外れると車だけが走っていて、他に歩行者はいなくなる。住宅街に入るとあれだけいた車の音も徐々に遠ざかっていく。ふとめまいがして平衡感覚がなくなった感じがした。自分は倒れたように感じたが、案外そんなことはなく安定して立っていた。しかし、周りは明るくなっていて足取りは重くなっていた。水没都市とでも形容しようか。いや、水没というには水位が低すぎるかもしれない。太陽と水に濡れた都市は美しくしばらく放心しながら見蕩れていた。周りの様子もすっかり変わっていて、日本ではあまり見ないような高層ビルが立ち並んでいた。ふと駅の看板が目についた。日本語、英語、中国語と見慣れた言語に安心を覚え、階段を上って乗り場に向かった。電子マネーは使えないだろうと思い、現金で聞いたこともない駅の名前を眺めながら適当に買った。ホームへ上がり、数分もしないうちに電車が来た。誰も乗っていなかったのでこれ幸いと椅子に座った。椅子に座って落ち着けたのか状況を整理することができた。ここは、異世界なのかタイムスリップでもしたのか。この町は誰もいないのにも関わらず動いている。思い返せば、この世界に来た時近くのコンビニの自動ドアは開いたり閉まったりしていたし、駅の自動改札もまた自分以外に反応していた。まだこれが幻覚かもわからないが疑念はほぼ確信になっていた。この世界に誰もいないというのは間違っている。目に見えないし、触れることもできない。向こうも見えていないし、自分の存在を感じ取れてはいないかもしれない。もしかしたら、向こうの周りには多くの人がいるかもしれないし、存在は知っているが意思疎通はできないという全世界の人間が孤独な世界かもしれない。そもそも彼らは人間なのだろうか。これらのどれかかもしれないし、どれでもないかもしれない。この世界の文明人について想像を膨らませるのもここまでにして真面目に帰り方を考えなければならない。ここまでしっかり考えることができて、行動ができて現実ではないとはできないだろう。そうこうしている間に目的の駅に着いた。ホームのベンチに腰掛ける。睡眠不足からか眠くなってしまって寝てしまった。

 

起きると地下鉄のホームのベンチで寝ていた。帰って来れたようだ。一時はこのまま帰れないかとも思ったが小旅行のようで楽しかった。おそらく夢の中だったとはいえ、幻想的な景色を想像できるとは自分の脳も捨てたものではない。家の近くの駅で降りると雨は上がっていた。その頃にはずぶ濡れの足元も雨の所為かわからなかった。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。